悪魔の流儀

〜堕天使たちの挽歌〜


 

 

第9話 中編


「あんっ、ああん!んっ、はあっ、だっ、大門さまぁっ!」
 俺の上に馬乗りになって、跳ねるように腰を揺らす銀髪のメイド。とは言っても、メイド服のワンピースの上半分は完全に脱げているが。

 ま、なんやかんやあったが、結局はこうなるんだよな。
 少女のような恥じらいがあったのは最初のうちだけで、いったん俺のモノを咥え込むと、完全に快感を貪る女の顔になっている。
 さっき、さんざん泣いたり拗ねたりしてたのはいったいなんだよ?

 はぁ、こいつも、すっかり大門家の標準的な下僕状態ということか。冴子が言うには、家事の方も、少しずつだが進歩しているそうだし。
 まあ、まだまだ半人前だそうだが。
「んっ、くうっ、はあああっ!だっ、大門さまぁっ!わっ、わたしっ、もうっ!」
 綾の動きが大きくなっていき、銀髪がバサバサと跳ね上がる。
 じゃあ、もう一度。
 俺は、両手を伸ばして、それほど大きくはないが形の整った乳房をつかむ。
「んはああぁっ!ダメぇっ!今そんなことされたらっ、はうんんっ!」
 ダメとか言いながら、綾は、胸を揉む俺の手の上から自分の手を添えて、より強い刺激を求めようとする
 顎がガクガクと震え、腰を沈めるたびに首が反り上がる。
 そろそろかな。
「あ゛あ゛あ゛ッ!はぐうっ、あっ、くるッ!大門さまのっ!あ゛づいっ、ああああああああぁッ!」
 俺が下から深く突き上げて、綾の中にそそぎ込むと、綾は、体を仰け反らせてそれを受けとめる。
「ん゛ぐッ!あ゛っ!んんんッ!」
 体を硬直させたまま、最後の一滴まで受けとめる綾。
 ただでさえ筋肉質の体を、カチカチに硬直さてるもんだから、俺の体を挟む両足が、腰のあたりを痛いくらいに締め上げてくる。
「ああっ!はああぁ、んん、大門さまぁ」
 体の力が抜け、俺の上に倒れてくる綾。

「なぁ、綾」
「はあぁ、なんでしょうか、大門様?」
 綾は、蕩けて潤んだ目で、俺の方を見る。
「話を蒸し返すようだが、その時が来たら、おまえのことを俺に話すって言ってたこと、やっぱり、気にはなるんだけどな。まだ、その時じゃないって事か?」
「んふ、そうですね。まだ、ですかね」
 ちょっと考える素振りを見せて、そう答える綾。
 なんか、目が笑ってないか?
「それに、もしかしたら、その時は来ないかもしれませんしね」
「なんだよ、そりゃ!?」
「うふ、大門さまぁ」
 綾は微笑んで、俺に抱き寄ってくる。

 どいつもこいつも素直に主人の言うことを聞かない下僕ばっかりだよな。結局、主導権は、俺じゃなくて下僕たちの方にあるじゃないか。
 こいつも、堕としたというか、勝手に自分の方から堕ちてきたようなもんだし。
 そもそも、こいつの場合、本当に堕ちてるんだかどうだか。俺自身は、綾に対して何の道具も使っちゃないし、何の力も使ってない。
 話したくなければ話さなくていいと言ったのはたしかに俺だが、ただただ、エロくなったこと以外は、俺は綾のことをなにひとつ知っちゃいない。
 それが、あいつに洗脳された時の後遺症みたいなものだと思うとなにか割り切れないものもあるが、俺のモノになることを選んだのは綾自身だ。
 その綾が、今はこんなに幸せそうな笑顔をしてるんだから、きっとこれでいいんだろう。

「ああ、それと、綾、もうひとつ聞きたいことがあるんだが」
「なんですか、大門様?」
「なんで、俺の呼び方が、ご主人様、から、大門様、に戻ったんだ?」
 そう、さっき一瞬ご主人様モードになったが、3日くらい前から俺の呼び方が、大門様、に戻っている。
「だって、ご主人様、って呼ぶと梨央ちゃんの目が怖いんですもの」
 って、何の縄張り争いだよ?
 それでか、この間、梨央が『綾さんは下僕じゃないって言ってたのに!ご主人様の嘘つきっ!』とか言って機嫌が悪かったのは。
 しかも、今じゃ、梨央と綾は親友みたいなもんだから、そういう不満は、結果的に嘘をついたことになる俺の方にぶつけてくるのな。
「だから、私は、大門様、って呼ぶんです」
「さようですか。って、おいっ、こら!なにしてるんだ、綾!?」
「…んふ、大門さまぁ。もう一回お願いしますぅ」
 俺のモノをいじりながら、綾がせがんでくる。
「ね、大門さま。ん、じゅ、ちゅる。ああ、大門様のおちんちん、大門様と私の、いやらしい味が」
 俺のモノを握り、軽く咥えてしゃぶりだす綾。
「ん、んふ。あ、また大きくなりましたよ。ね、お願いします、大門様」
 ひとしきりしゃぶって、俺のモノを大きくすると、綾は悩ましげな表情で俺を誘ってくる。
「ちょっと、綾?」
「もっと自分の気持ちに素直になれって言ったのは大門様ですよ」

 いや、自分の気持ちに素直になるって言っても、限度があると思うぞ、俺は。



*  *  *




 Side:綾 大門の寝室 木曜日 早朝

 目を覚ますと、私はまず時計を見る。まだ6時前。朝の支度を始めるには、もう少し時間がある。
「ん、大門様」
 私の目の前には、大門様の寝顔。今の私にとって、何よりも大切な人。
 やっぱり、私は自分の力でこの人を守りたい。
 私のことを大門様に明かすことはないかもしれないって、大門様にはああ言ったけど。
 それは願望。私の正体なんか関係なく、この家のメイドとしてずっと過ごせたらいいという私の願望。

 しかし、状況は、そうも言っていられないところまで来ているみたいだった。
 昨日、久しぶりに届いた通信。このところ、こっちからいくら連絡しても何の返事もなかった天界から、ようやく帰ってきた通信。
 それによると、どうやら、魔界はほぼ全てがあの男の手中に収まってしまったらしい。
 そして、天界の方も、なにかひどく混乱しているようだった。だから、私の方の支援ができないとだけ伝えて、その通信は慌ただしく切れた。

 それなら、私の力で大門様を守らなければならない。

 大門様を襲わせたのは、きっとあの男。ならば、あの男の狙いは大門様のあの力。
 そうであるなら、大門様を守ることは、私の任務と同義だ。
 それに、あの男が関わっている以上、私の手でなんとかしたい。
 大門様に戦うことは止められているし、危ないことはするなと言われている。
 それでも…。

「起きてたのか、綾?」
 目を覚ました大門様が私に声をかけてくれる。
 あ、今の不安そうな表情を見せちゃいけない。

 大門様の前にいるときだけは、幸せな私でいたい。明るくて、幸せそうで、そうして少しエッチな私で。

「はい、あ、私、朝の準備を手伝わないと!」
「お、もうそんな時間か?」
「はい。それでは、私は自分の部屋に戻って、きれいな服に着替えてきますね」
「おい、裸のままで帰る気か、これでも羽織っとけ」
 大門様が、自分のガウンを私の体に掛けてくれる。
「あ、ありがとうございます」
 私は、昨夜の名残の付いたメイド服を拾い上げ、そそくさと自分の部屋に戻る。
 服の中になにか固い感触がある。あ、これは、昨夜大門様にもらった携帯電話の箱。

 私は廊下を小走りに駆けながら、それをギュッと抱きしめる。
 大門様、きっと私は、大門様の言いつけが聞けないダメな下僕です。
 
 私の目から、涙がこぼれ落ちる。
 それは、大門様の命令に背く後ろめたさが流させた涙。
 しかし、私の心はもう決まっている、私自身の手で大門様を守ってみせると。



*  *  *




 タカトオ・コーポレーション本社 木曜日 AM9:25

「おお!大門くん!ちょうど良かった!」
 その日、俺が会社に行くと、12階のエレベーターホールで声をかけられる。
 この声は、高遠弘志。幸の兄で、現在はこの会社の常務取締役。そして、タカトオ・コーポレーションの次期社長。
 何の因果か、俺に対するこの人の評価はすこぶる高い。いや、この人もダーツで堕ちたくちだから、因果もくそもないんだが。

 それにしても、この人の横にいる金髪美人は、ひょっとして。

「紹介しよう、アメリカのマステマ・シティ・エンタープライズのヒマリさんだ」
「ヒマリ?」
 やっぱり、この人がそうか。て、ん?なんか、どっかで聞いたことがあるような名前だな?
「ああ、変わった名字だろ。実は、ヒマリさんは日系人でな、漢字で書くと、氷に毬と書いて氷毬だそうだ。だから、国籍は向こうだけども日本語もペラペラだ」
 え、氷毬?ますます聞いたことがあるような。でも、どこで聞いたのかが思い出せない。
 俺は、注意深く、そのヒマリという女性を観察する。
 色白で鼻筋の通った端整な顔立ち。スーツ姿でもそれとわかるくらい高い位置にある腰はくびれ、胸にはボリュームがある。そして、腰下まである金髪をなびかせた美人。ありえねぇ、こんな美人ちょっといないぞ。
 というか、その見事なまでの金髪に白い肌で、日系人はちょっと無理がないか?
 銀髪の綾といい、ヒマリとかいうこの人といい、設定に無理のある日系人が流行ってるのか?

「はじめまして、私は、タカトオ・コーポレーションの特別渉外局長をしている、大門、大門武彦といいます」
「はじめまして、よろしくね、大門さん」
 たしかに流暢な日本語で挨拶をすると、彼女が俺を見て微笑む。なんて笑顔だ。クラクラと、目眩がしてきそうな……。

「大門くん、ちょっといいかな?」
「え?あ、はい、何でしょうか?」
 高遠常務の声で、俺は我に返る。あれ、なんか、頭がボーッとする。
「どうしたのかね、大門くん?」
「いや、大丈夫ですよ」
 そうだ、今日はアメリカの企業から交渉役の人が来て…。あれ?俺は何か大切なことを忘れているような気がする。
「ちょっときみにお願いがあるんだが」
 俺の方に体を寄せて小声で囁く。
「はい?」
「ヒマリさんの会社は、うちとの提携を望んでいてね。ヒマリさんは、その下交渉のために日本に来られたんだが、まあ、交渉は明日以降ということで、今日は会社や、このあたりを案内して欲しいんだがね」
「要は、俺に接待しろ、ということですね?」
「うん、まあ、そういうことだ。今回の提携がうまくいけば、うちにとってもかなり大きなプロジェクトになる。これを頼めるのは、君しかいないんだ」
「はあ、まあ、いいでしょう」
「やってくれるか!頼んだよ!」
 常務の頼みを、俺は軽く引き受ける。それにしても、俺は、なにか気になっていたことがあるはずなんだが、それが何だったか思い出せない。えーと、なんだったっけ?いや、まあ、思い出せないんなら、大したことじゃなかったんだろう。
 それに、そうだ、この契約は、たしかかなり大きかったはずだ。まずは目の前の仕事に専念しないと。
 まあ仕事とはいっても、美人の接待なら気分は悪くないしな。

 なんか、俺の後ろに控える薫の方から突き刺さるような視線を感じるのは気のせいだろうか。




 俺はそれから、ざっと社内を案内した後、薫の運転する車で、観光名所などを回ることになった。もちろん、その中にうちが開発に関わっていて、今人気のある商業施設を混ぜておくのも忘れない。



 そうして、夕方近く。

「今日はどうもありがとうございます、大門さん」
「いえいえ、そんな、お礼を言われるほどのことでは」
「ところで、大門さん」
「はい、なんでしょうか?」
「このあたりに、いいレストランはないかしら?」
「レストランですか?それはもう、このあたりには有名な店から通好みの店まで、いろいろありますよ」
「よかったわ。それじゃあ、大門さんのお薦めのところで、ディナーなんかどうかしら?」
 そこまで言うと、ヒマリさんは、声をひそめて囁く。
「できれば、ふたりっきりで」
 ヒマリさんが、あの眩しいほどの笑顔を俺に向けてくる。その金髪から、あたりに花のようないい香りが漂い、俺はまた少しボーッ、となる。
「どう?だめかしら?大門さん?」
「え?あ?はい、もちろん大丈夫ですよ」
 ヒマリさんの、輝くような笑顔にクラクラしながら、思わず、俺は請け合ってしまう。




「そういうわけで、ヒマリさんをこれから接待しなければならなくなったんだ。だから、今日は先に帰っといてくれないか、薫」
「わかりました」
 素直に応じる薫。しかし、目は笑ってない。
「すまん、薫」
「いえ、それよりも、いいですか、局長。もし、火遊びなんかしたら、5人で袋叩きですから」
 おいおい、綺麗な顔して恐ろしいことを言わんでくれ。
「ああ、それよりも、綾ちゃんの打撃系コンボ100連発もいいですね」
 いや、死ぬ!それはマジで死ぬって!
「い、いや、大丈夫だから!おまえたちが心配するようなことは何もしない!俺を信じろ!」
「そうですね、とりあえず信じておきます」
 おまえ、一日中運転手させられたストレス発散のつもりか!?
 まあいい、どうせ、うちじゃ俺の立場は弱いんだ。ご主人様って、えてしてそんなもんだよな。

 結局、俺は会社でよく使う高級レストランにヒマリさんを連れて行くことにした。
 

 

 ――食事の後。

「うん、食事も素晴らしかったし、雰囲気もいいわ。さすがにいい店を知ってるのね」
 そう言うと、ヒマリさんは、満足げに食後のコーヒーを一口啜る。
「お気に召していただいたようで良かったです」
「それでは、大門さん」
 ヒマリさんが俺の方を見て微笑む。何度見ても、クラクラと目眩がするような笑顔だ。
「はい、なんでしょうか?」
「この後は、どこに連れていってくれるのかしら?」
 どこにって?明日は、いよいよ交渉も始まるっていうのに、なにを…言ってるんだ……この人は?
 普通は……このまま…ホテルに戻る…だろ。
 あれ…また…花のような…いい香りが……そうだ……ホテルに…………。


 

「ん?あれ?」
 気づくと、俺はベッドの上に寝ていた。俺は、いつの間に家に戻ってきたんだ?
 そう思って見回すと、ここは俺の部屋じゃない!
「あら、ようやく気がついたの?」
 声がした方を見ると、そこにいたのは。
「ヒマリさん。なっ、なんで裸なんですか!?」
 そこには、全裸のヒマリさんが膝立ちで俺を見下ろしていた。
「あら、あなたも裸じゃない。それに、このホテルにはあなたが連れてきたのよ」
 ホテル?覚えてないぞ。そんなことしたか?俺?
「い、いや、でもヒマリさん、こ、これは!?」
「これは、なあに?ほら、あなたのここ、もうこんなに臨戦態勢じゃない?」
 そう言うと、ヒマリさんは手を伸ばして、俺のモノを握る。
「あっ、なにをっ、ぐあっ!」
 ヒマリさんが握った瞬間、電気のようなものが俺の体を走った。
 俺のモノが、痛いくらいに勃っているのがわかる。

「ねえ、せっかくこんなに元気なんですもの、楽しませてちょうだい」
 ヒマリさんは、妖しく微笑んで、俺の上に跨ってくる。
「んんっ、ああんっ、イイっ、なによっ、なかなかの大きさじゃないのっ」
「あっ、ちょっと、それはっ!くはあっ!ぐああっ!」
 ヒマリさんが腰を沈めると、とんでもない快感が俺を襲う。
「んっ、はんっ、あっ、ああんっ!」
「あっ、くっ!あ、あのっ!ヒマリさん!?」
 快感の波に飲まれそうになりながら、俺はなんとか言葉を発する。
「んんっ、なに?どうしたの?あああんっ!」
「これはまずいですっ。くうっ!」
「でも、気持ちいいんでしょ?」
 ヒマリさんが俺の方を見て、微笑む。なんていやらしい、魅力的な笑み。それを見ているだけ、イキそうなくらい快感が高ぶってくる。
 ああ、なんかもう、考えるのもめんどくさくなってきた。今はただ……気持ちいい……。
「はい、気持ち、いいです」
「うふ、いい子ね。ああんっ!もっと、もっと気持ちよくなってっ、いいのよ!」
 ああ、俺も、もっと気持ちよくなりたい。
「はい、ヒマリさん」
「ダメよっ、私のことはっ、ヒマリ様って呼ぶのっ。あんっ、あなたはっ、私に快感を与えるための奴隷なのよっ。あなたの役目はっ、私を気持ちよくすることなんだから!はんっ、そうすればっ、あなたも、もっと気持ちよくなれるのよ!」

 そう…そうだった。俺はヒマリ様の奴隷。
 俺の役目は、ヒマリ様を気持ちよくすること。

「はい、ヒマリ様。俺は、ヒマリ様に快感を感じていただくための奴隷です」
 ヒマリ様を喜ばせるため、俺は下から思い切り腰を突き上げる。
「はあああん!イイっ!それ!すごくイイわっ!あうんっ!」
 ヒマリ様の喘ぎが大きくなり、腰の動きも大きくなっていく。
「うっ、く!ひっ、ヒマリ様!いっ、いかがでしょうか!?」
 俺はズンズンと腰を突き上げ続ける。ヒマリ様の動きが大きくなるほどに、俺も気持ちよくなっていく。
「あああっ、イイわっ!あなたのっ、はうんっ、とってもイイッ!まあ、倭文様ほどじゃないけどっ、あううんッ!」
 し…と…り?どこかで聞いたような?俺は、シトリ…さまを、知っているのか?ああ、でも、今は…そんなことはどうでもいい。
「ああんッ!イイッ!イイわよっ!大門くん!んはああんっ!」
「くうっ!あっ!ひ!ヒマリ様!」
「ふああんッ!だ!大門くん!いいわよ!きてッ!」
「ヒマリさまッ!くああああっ!」
「ああああっ!イイイイイイイイィッ!」
 俺は、ヒマリ様の中に思い切り射精する。
 自分でも、信じられない量の精液が出ていくのがわかる。
「んはああああああっ!んっ!んんんっ!はぁっ、はぁっ、大門くん」

「はぁはぁ。ああ、ヒマリ様」
「なかなか良かったわよ、大門くん。でもね、まだまだいけるわよね、大門くん」
 ヒマリ様は、全て出し切ってだいぶ萎えた俺のモノを握る。
「くっ!あああっ!ひ!ヒマリ様!」
 すると、ふたたび凄まじい快感が駆け抜け、見れば、俺のモノはまたギンギンに勃っている。

 ああ、これでまたヒマリ様に気持ちよくなってもらえる。

「どう、大門くん?」
 ヒマリ様が、まるで俺を迎え入れるかのように両手を広げた。
「ありがとうございます、ヒマリ様。これで、またヒマリ様にご奉仕できます」
 俺は、体を起こすと、ヒマリ様の胸に顔を埋める。
 俺の顔が白くて柔らかいものに包まれていき、俺は幸福感に満たされていく。
 もう、何も考えなくていいんだ。俺は、ヒマリ様を気持ちよくすることだけ考えていれば、他には何も要らない。

「ふふ、いい子ね。さあ、もっと私を愉しませてちょうだい、大門くん」
「はい、ヒマリ様」
 俺はヒマリ様を抱きしめ、再びモノを突き挿れる。
 そう、それが、俺の役目だ。
「はんんんっ!あああっ!イイわよッ!大門くん!」
 ヒマリ様も腰を揺らし、俺も強烈な快感に包まれる。
「ん!くっ!俺も!気持ちいいです!ヒマリ様!」
 そうだ、ヒマリ様を気持ちよくすれば、俺も気持ちよくなれる。だから、もっとヒマリ様を気持ちよくしてさしあげなければ。
 俺は、そのことだけを考えて腰を振り続けた。



*  *  *




 Side:綾 大門邸 木曜日 PM23:56

「遅すぎるわ。こんな時間になるまで連絡がないなんて、どうしたのかしら、武彦さん?ねえ、薫ちゃん、今日は、武彦さん接待だって言ってたのよね?」
「うん、幸。そう、なんだけど」
 帰りの遅い大門様を待つ奥様と薫さん。
 いつもなら、薫ちゃん、幸、と呼び合うふたりの姿は、見ている方が微笑ましいくらい和やかで、幸せそうな空気をあたりに振りまいているのに。
 今は、ふたりとも表情が曇っている。
「薫ちゃん、今日の接待の相手って、どんな方なの?」
「えっと、アメリカの企業の重役で、えーと、たしか、ヒマリ……。あ、私も名刺もらったんだった。そうそう、ヒマリ・リリスっていう名前の女の人で、金髪のすごい美人だった」

 ヒマリ!?金髪の、美人!?それはっ、もしかして!?

「金髪の、美人ねぇ」
「でね、幸、なんかね、私、ひどく胸騒ぎがするの。あのヒマリっていう人、たしかにすごく綺麗な人だったけど、なんていうか、普通の人じゃないような雰囲気で。うまく説明できないんだけどね」

 間違いないわっ。その女はきっと人間じゃない!

「奥様!私、ちょっと出かけてきます!」
「あっ!綾ちゃん!こんな時間にどこに行くのっ!?」
 私は、奥様の返事も聞かずにそのまま家を飛び出す。メイド服を着替えている暇なんかない。

 ヒマリ・リリス。私の情報が確かなら、その女はあの男のっ!
 だとしたら、大門様が危ない!
 
 私は、夜の街を、全力で駆けていった。

 
 


 

 

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