悪魔の流儀

〜堕天使たちの挽歌〜


 

 

第9話 前編


 タカトオ・コーポレーション本社ビル 木曜日 

「ふーむ」
 さっきから俺は、腕を組んだままパソコンの画面とにらめっこをしている。
「どうかなさいましたか、局長?」
 俺のデスクにコーヒーを置いた薫が尋ねてくる。
「いや、来週こっちに下交渉に来るっていう、例のアメリカ企業なんだが」
「何か問題でも?」
「うん、特に問題と思われるところはないんだがな」

 ネットで調べた限りにおいて、その会社、マステマ・シティ・エンタープライズに怪しい点はない。
 前年度の営業利益180億ドル。総資産4300億ドル。アメリカでは主に、大型のレジャー施設やリゾート施設の開発を中心とした事業を展開している、この分野ではかなり大きな規模の企業だ。最近の株価も安定している。うちの会社の事業とほぼ重なるが、どうやら、商業施設の開発に長けているうちの会社と提携して、日本で大型商業施設を組み入れたリゾート開発をしたいらしい。
 少なくとも、俺の調べた限りでは、この会社はたしかに存在することになっている。それに、資料にあるこの事業計画。もしこの契約が成立したら、うちにとってもかなりの利益になる。
 
 しかし。
 企業名に付いている、マステマ・シティという都市がどこにも存在していないのだ。この世に存在しない都市の名前を冠した企業なんて、怪しいことこの上ない。
 とはいえ、仮に、俺が調べた会社の業務実態が巧妙にカムフラージュされたものだったとして、肝心の企業名が怪しいってのはお粗末すぎやしないか?

「局長?」
 また考え込む俺の顔を、気遣わしげに薫がのぞき込んでいる。
「あ、いや、なんでもない。きっと俺の気のせいだろう」
 やっぱり俺の気のせいか?イニシャルがあの会社と同じだからって、魔界の気配を感じたのは考え過ぎだったのだろうか。だいたい、2日前に上級悪魔に直接俺を襲わせるなんて荒っぽいことやった奴らが、こんな手の込んだことを仕掛けてくるか?
「その顔は、なにか気になることがあるって顔ですよ、局長」
「ふ、おまえには嘘はつけないな、薫」
 俺は、椅子から立ち上がると薫の肩に手をかける。
「でも、本当にちょっと気になっただけだ。たぶん、俺が気にし過ぎなだけだろう」
 そう、まだこの会社が魔界絡みのものだと決まったわけじゃない。本当に、こういう名前の普通の会社だという可能性もある。
 それに、理由はわからないが、奴らが狙っているのはどうやら俺らしい。なら、俺が気をつけていればいいことだ。薫たちにいらぬ心配をさせることはない。

「それよりも、薫」
 俺は、腕を体に回して薫を抱きしめる。
「え?あ、局長?」
「綾のことではおまえに助けられた。本当に感謝してる」
「そんな、私はただ、綾ちゃんにも局長にも元気になってもらいたくて。それに、結局、私のしたことはそんなに役に立ってないですし」
「そんなことはないさ。そうやって、おまえがみんなのことを考えてくれてる。それだけで充分助かってる」
「あの、局長、本当は私、局長のことを独占したいって気持ちもあるんですよ。それは、私だってひとりの女の子ですもの」
 そう言って、薫は穏やかな眼差しで俺の顔を見上げる
「でも、こうやってみんなを平等に愛してくれる、そういう局長に私は惹かれているんです。それに、私もみんなのことを大好きですし。だから、私もみんなのことを、私の家族のことを考えなきゃって、私も、局長のように」
「薫…」
「それに、私、こうやって仕事をしている間は局長を独占できるんです。だから、私は本当に幸せなんです。本当に、私、みんなに申し訳ないくらいに幸せで……」
 話しているうちに感情が高ぶって来たのか、薫の目から涙が溢れてきて、最後の方はもう言葉になっていない。
「ありがとう、本当にありがとうな、薫」
「あ、局長っ、ん、んふ、んむ」
 俺がそっと唇を吸うと、薫の瞳が一瞬怪訝そうに見開かれる。しかし、すぐに目を閉じてキスに集中し始める薫。
「んんっ、ちゅ、ん、はあぁ、局長?」
「いや、おまえにはご褒美をやらないといけないな、なんて思ってな」
「そんな、ご褒美だなんて」
「いや、今回はおまえがいてくれて本当に助かった。だから、おまえにはちゃんとご褒美をやる。それがいい主人ってもんだろう?」
 そう言うと、俺は薫の頭を撫でてやる。
「あ…」
「それに、おまえが俺に教えてくれたんだ。俺がおまえたちにとっていい主人なんだと、俺と一緒にいることでおまえたちも幸せなんだ、って」

 俺は、薫の上着を脱がせ、ひとつずつシャツのボタンを外していく。スカートも脱がせて部屋のソファーに掛けると、下着だけの姿にして立たせる。
 スラッとして、凹凸の少ない薫のボディーライン。でも、決して魅力が無いわけではない。
「なあ、薫、ちょっと俺の願いを聞いてくれるか?」
 少し恥ずかしげに顔を赤らめて立っている薫に、俺は問いかける。
「な、なんでしょうか?」
「あの事件の時、おまえにやったあれ、もう一度やってもいいか?」
「え?…あ、あの、気功術とかいうのですか?」
「そうだ」
「それは、どうしてですか?」
 薫が、不安げに俺を見上げる。
「あれを使うということが、本当はどういうことなのか知っていて欲しい」
 少し怯えたような薫の目を見つめる俺に、もう迷いはない。
「そして、俺がおまえたちにしてきたことがどういうことなのかも」
「わかりました。局長が、そう仰るのなら」
 一瞬視線を逸らした後、薫は真剣な顔で俺を見つめ返して頷く。

「じゃあ、いくぞ、薫」
 俺は、右手で薫の肩をつかむと、零距離で糸を伸ばし、薫の魂を縛る。
「あっ」
 一声短く叫ぶと、薫の目が見開かれ、瞳孔が小さく震え出す。俺は、薫が自分で喋り、動ける程度に糸を緩める。
「ああ、この感じ、あの、時と、同じです、局長」
 俺の顔を見上げ、途切れ途切れに話す薫。
「今、おまえは俺と繋がっている」
「局長と、私が、繋がって?」
「だから、こういうことができるんだ」
 糸を使って、俺に触られると、どこであろうと強い快感を感じるように思念を送り、薫をきつく抱きしめる。
「ふわぁっ!ええっ!?あくうっ!きょ、局長ッ!?」
 いきなり強烈な快感の波に襲われ、薫が戸惑い混じりの悲鳴を上げる。
「えっ?どうしてっ?きゃんっ、ああっ、あああっ」
 背中に回した手で、ブラのホックを外し、薫の控えめな胸のふくらみに手をかける。乳房をつかむ手に力を入れるたびに、何度も薫の体が反り返る
「はあっはあっ、こんなっ、触られただけでっ?んんっ」
「俺がそうしているんだ。俺が触ると、どこであろうとおまえは快感に感じるはずだ」
「どっ、どこでも?」
「そうだ。たとえばこんな風にな」
「あふうっ」
 頬の涙をぬぐうようにそっと頬にキスすると、薫がビクッと体を震わせて顔を反らせた。
「次は、ここだ」
 俺は、薫の手を取って強く握る。
「はんっ、う、うそっ、手の平でっ、こんなに気持ちいいなんてっ」
「な、俺の言ったとおりだろ。それじゃあ、次は」
「やっ、局長っ、そこはっ」
 俺は、薫のショーツをずらす。薫が悲鳴を上げて、飛び退いて避けようとするのを俺は右手で抱き寄せ、薫のアソコに左手の指を突っ込む。
「そんなっ、今そこを触られたらっ、ひゃあっ、ひあああああああああっ!」
 体を何度も跳ね上げさせて、一気に絶頂まで持っていかれる薫。

「はあっ、はあっ、局長、これは?」
「つまり、俺はこういうことができるってことだ。そしてそういうことを、俺がおまえたちにしてきたってことだ」
「え?」
「だから、おまえたちが俺のことを好きなのも、俺といて幸せなのも、俺にそういう風にさせられた結果だってことだな。言ってみれば、作られたニセモノの気持ちってことだ」
「そんなこと、言わないで下さいっ」
「でも、それが事実なんだよ、薫」
「でもっ、今こうして私が局長を好きなのも私にとっては事実なんですっ。これがっ、これがニセモノの気持ちだと仰るのなら、ホンモノの気持ちはいったいどこにあると言うんですかっ!」
 声を張り上げて、涙をボロボロと流す薫。

 いったい何やってんだ、俺は。褒美をやるつもりが、泣かしちまったじゃないか。

「私っ、前にも言ったはずです!たとえ局長が私たちを操っていたとしても、局長がいい人なら、それで私たちは幸せなんだって!」
「ああ、そうだったな。すまない、薫」
「局長も私たちを愛してくれてるっ。だから、私たちにとって、局長は立派なご主人様なんですっ。それに、それにっ」

「うわっ、薫?」
 俺をソファーに押し倒すようにして薫が抱きつく。
「ふああっ、凄いっ、こんなことができるなんて凄いです、局長っ、くうんっ」
 自分から俺を抱きしめてきて、薫は快感に身をよじる。
「局長っ、今のこの気持ちが私の全てなんです!局長無しの幸せなんて私には考えられないっ。だから、もっと、もっと!」
 俺のズボンをずらして、薫はねだるような目で迫ってくる。
「わかったよ、薫」
 それに応えるように、俺は、モノをゆっくりと薫の中に挿れていく。
「ああ、局長。あっ、んはあああああああっ」
 挿れただけで薫の体が大きく反り返る。
「挿れただけでイったのか?」
「んっ、はいぃ、でも、もっとおおおおおおっ!んくううううううっ!」
 薫は、貪るように腰を動かしはじめ、その度に大きく体を反らして喘ぐ。
「ああああああっ、くはあああああっ、すごいっ、何度もイっちゃって、わたしっ、おかしくなりそうなのおおおおおっ!」
「お、おい、薫?」
「いやあああああっ、やめないでっ、くださいっ、ふあああああっ、ああっ、きょくちょおおおおっ」
 何度も絶頂に達しながらも、薫は果てることなく腰を動かして俺から搾り取ろうとしてくる。
「おいっ、待てっ、薫!」
「くふううううううっ、ま、待てませんっ。んはあああああっ、局長のっ、大きくなってますううううっ」
 より深く、より奥まで俺のモノを飲み込もうと、口を大きく開け、恍惚とした表情で薫は動きをどんどん大きくしていく。
「んああああああああっ、来そうっ、局長のがきそうなのおおおおおっ」
 なにしろ、一回突くごとにイってしまう薫のアソコが、その度に俺のモノをきつく締め付けてくるもんだからたまったものじゃない。
「くっ、薫っ」
「あああああああっ、局長のがきてるうううううっ!んんんんんんっ!ひゃあああああああっ!あああっ、あっ、あぁ」
 俺の精液を無理矢理搾り取って、体をガクガク震わせていた薫の体が、突然糸が切れたように崩れ落ちる。
「薫!?おいっ、薫っ!」
「ん、んん…」
 薫の頬を叩くと、鈍い反応が返ってきて俺は安堵する。
「まったく、何考えてるんだよ」
 俺は、薫の体を横にしてソファーに寝かせてやる。



 それから、しばらく待っていると、薫がようやく目を開いた。
「薫、おい、大丈夫か?」
「ふわぁ、きょくちょお」
 俺が声をかけると、裸のまま、ソファーの上の薫から鈍い反応が返ってくる。
「まったく、無茶をしやがって」
「んふぅ、でも、すごく気持ちよかったですよ」
 蕩けた表情で、満足げに答える薫。
「あのぉ、局長」
「なんだ?」
「やっぱり、その力、あまり使わない方がいいですよ。みんなこれがクセになっちゃったら、困るのは局長ですよ」
「バカ、自分がクセになったって顔して何言ってるんだよ。ひょっとして、このプレイを独占したいだけじゃないのか?」
「うふ、そうかもしれませんね」
「まったく、そんなんじゃ運転は無理だろう。帰りは俺が運転してやるから、早く服を着ろ」
「ふぁい、局長」
 ゆっくりと起きあがった薫が服を着ている間に、俺は荷物をまとめていく。




「本当に大丈夫か?」
 ハンドルを握ったまま、俺は後ろのシートでまだクタッとなっている薫に声をかける。
「あ、こういうときのために、替えの下着は常備してありますから」
「いや、そういう問題じゃなくて、おまえがこんなになるなんて思ってもなかったから。やっぱり、俺がおまえたちにしてきた事は…」
「もう、何度同じことを言わせるんですか。私たちは、局長に愛してもらって、一緒にいられて、エッチなことをして、それで充分幸せなんですから。難しいことを考え過ぎなんですよ、局長は」
「そうか?」
「そうですよ。物事をシンプルに考えるのが、幸せになるコツなんです」
「そんなものか」
「ええ。それに、私だって時には思いっきり乱れたいときもあるんですから」
 その言葉に、普段は有能な秘書としてクールに振る舞っている薫の本心が垣間見えた気がした。




 週末までの間、俺は、その会社、マステマ・シティ・エンタープライズに関してずっと調べ続けたが、結局、ネットで調べた以上のことはわからなかった。
 ただ、調べてみてわかったのは、マステマという言葉。それは、人間界の古い言い伝えでは、悪魔の姿を借りて人をたぶらかし、人間を試す存在だということ。実際、そんな存在がいるのかどうかは俺にはわからない。少なくとも、俺の知る限りでは、魔界にはそんな名前の悪魔はいなかったはずだ。
 それにしても、悪魔の姿を借りて人をたぶらかす存在だと?妙に嫌な感じだ。考え方によっては、俺に対する当てつけみたいじゃないか。

 少なくとも、この会社は普通じゃない。しかし、相手の出方がわからない。



* * *






 大門の寝室 翌週の水曜日 PM10:15

 明日は、いよいよ例のアメリカ企業からの交渉相手が来るという日。

「うん?また大きくなってるのか?」
 部屋の中で、俺は手の先に魔力の弾を出してみる。以前はオレンジ大だったものが、今ではボウリングの玉くらいに大きくなっている。
「俺の魔力が上がってるってことか?まあ、威力が上がるのはいいことだろうな」
 明日は何が起きるかわからない。それに、この先どんな奴が襲ってくるかもわからないのだし。
「とにかく、魔力は完全に回復しているみたいだな」
 本当なら、バティンを消し去ったあの力。あれが出せるかどうかも試してみたいが、さすがに家の中ではできないし、できたらできたで何かと面倒だ。あの力は派手すぎるから人に見られる可能性もある。それに、また魔力を使い果たして寝込みかねない。なにしろ、あの力の出力は俺自身制御できないからな。

 ――コンコン。

 俺の寝室のドアをノックする音。
「いいぞ、入れ」
「失礼します、大門様」
 ドアを開けて入ってきたのは、メイド姿の綾。
「あの、大門様。今夜のお相手は、わ、私が」
 羞恥心に頬を染め、期待と欲情の入り交じった表情を見せる綾。
 この少女のような恥じらいは、うちの家族の中じゃ新鮮だ。
「うん、じゃあ、こっちへ来るんだ、綾」
「は、はい」
 俺が手招きをすると、綾はベッドの脇に立つ俺のそばまで寄ってくる。
「あっ、だ、大門様っ」
 抱き寄せると、綾は体を少しこわばらせていた。
 まあ、先週の火曜日、綾を俺のモノにしたあの時に初めてこいつを抱いただけだしな。
「どうした、綾?まだそんなに恥ずかしいのか?」
「えっ、いやっ、恥ずかしいとかではなくて、あの、なんか、緊張して、きゃっ!」
 首筋に手をかけ、俺が顔を近づけただけで耳の先まで赤く染める綾。
「まったく、可愛らしいやつだな」
「やっ、だ、大門様っ、そんなっ、可愛らしいだなんてっ」
 綾の顔は真っ赤になり、頭から湯気でも出そうな勢いだ。
 初めての時は、極限の精神状態の上に、あいつに洗脳されていたときのフラッシュバックでやたらといやらしかったけど、本当はこんなにウブなんだな、こいつ。

 それにしても、ホントに可愛いやつだ。


「あ、もう、だいぶ良くなってますね」
 俺の服を脱がし、もうすっかり包帯のとれた体を見て、綾が安心したような表情を見せる。
「まあな。俺は人間じゃないから、傷の治りも早いさ」
「そうですね。たった1週間でこんなに良くなるなんて」
 そう言うと、綾は俺の体の傷跡をさする。
「あっ、まだここに青あざが。痛くないですか?」
「ああ、そのくらい何ともない。前にも言ったろ、俺は悪魔だし、結構しぶといって」
「だからといって、あまり危ないことはしないで下さい。悪魔でも、致命傷を受けたら一撃で消滅することもあるんですから」
「おまえ、まるで見てきたように言うよな」
「え、いや、それは、ほら、この間、大門様が消した悪魔もそうでしたし」
「あれは、致命傷どころか、一瞬で消し飛んだ、て言うんだ」
「あ、それは、その」
「まあいい。あ、そうだ、ほれ、これを持っておけ、綾」
 俺はベッド横の引き出しから、箱をひとつ取り出す。
「これは?」
「おまえの携帯を用意しておいた。うちのみんなにも同じ物を持たせているし、まあ、あれば何かと役に立つ。この間のときも梨央の携帯のおかげでおまえらの居場所がわかったんだからな」
「あ、ありがとうございます」
 綾は、俺の手から箱を受け取る。

 それにしても、今では綾が俺の下僕なのは間違いないし、こいつが俺たちに害をなすような存在じゃないことに疑いはない。
 しかし、綾が人間じゃないのも疑いようがない。俺が疑問なのは、そんなやつが、何でこんな所でこんなことをやっているのかがわからないってことだ。
 まあ、わざわざ俺の所に来たんだから、それがたぶん俺絡みのことであるのはわかる。ただ、綾の本来の目的が、ここで俺の下僕をやっていて務まることなのか心配になる。まあ、余計なお世話だろうが。

「なあ、綾。おまえ、俺の下僕なんかやってて大丈夫なのか?」
「どういうことですか、大門様?」
「何も言わなくても、おまえが普通の人間じゃないのは俺にもわかる。そんなやつが、魔界から流れて来た俺の所にいるってことは、俺に関することが目的なんだろ?それが、あっさり俺の下僕になって、本当にそれでいいのか?」
「あ、大門様、今、私のことを疑いの目で見てますねっ」
「いや、疑ってるというかなんというか」
「やっぱり大門様は私のことを信用していないんですねっ。話したくなければ話さなくていいって言ってくださったのに、やっぱり私が何も言わないから、私のことを信用できないんですか!」
「お、おい、綾?」
「結局、私のことを、大門様の下僕になったふりをしてこの家に潜り込んだスパイかなんかだと思っているんですね!」
「誰もそこまで言ってないだろうがっ」
「私はっ、こんなに大門様のことを好きなのにっ。みんなと一緒にいられて幸せなのにっ、それなのにっ、大門様はっ」
「ああもう、面倒くさいなっ」

 俺は、綾を抱き寄せ、その体を強く抱きしめる。
「あっ、大門様っ」
「いいか、綾っ、俺は信用していないやつにこんなことはしない」
「だ、大門様?」
「おまえが俺のモノだから、おまえのことを信じているからこんなことをするんだぞ。たしかに俺は、おまえのことを疑っていたときもある。魔界から俺を狙って差し向けられた者じゃないかってな。だから、おまえが家にいても、これまではこんなことはしなかっただろ?でも今は違う。おまえは俺の下僕だ。そして、俺たちの大切な家族だ。だから俺はおまえを抱いてやるんだ」 
「ああ…」
「どうしたんだ、綾?様子がおかしいぞ。やっぱりまだこの間の事件のショックから立ち直れていないのか?」
「いいえ、それはもう大丈夫です。ただ。」
「どうした?」
「大門様の身の回りで起きていることで、私もなにか大門様のお役に立ちたいんですっ。でも、大門様は」
「なんだ、別に、そんなことしなくてもいいんだぞ」
「でもっ」

 今にも泣きそうな顔で食い下がる綾。ああもう、ホントに面倒くさいやつだな。

「はあ、仕方ないな。綾、そんなに俺の役に立ちたいのなら、ひとつだけ頼みがある」
「え?何ですか、大門様?」
「幸たちを守ってやってくれ。もし、俺がいないときにこの家に何かあったら、おまえが俺の代わりにあいつらを守ってくれないか」
「そ、それはもちろん」
「頼りにしていいか、綾?」
「は、はいっ!」

「うん、いい返事だ。それにな」
 少し表情が明るくなった綾を、俺はそのままベッドに押し倒す。
 こいつには、言葉で言うよりもこっちの方が早いかもな。
 
「あっ、きゃっ、大門様っ、このままだと服が汚れてっ」
「どうせ、服の替えならいくらでもあるだろ」
「でもっ、ああんっ、ひゃうっ、んっ、んむむっ」
 ああだこうだ言いながら、俺がキスをすると、綾は、自分の方から舌を絡めてくる。さっきまでこわばっていた体の力が抜けて、腕を俺の方に絡め、目を細めて俺の唇を貪る綾。
「んはぁ、大門様」
「余計なことは気にせず、黙って俺のモノになれといったはずだぞ」
 俺は、綾のメイド服をはだけさせ、さらけ出された胸に手をかける。
「きゃっ!あんっ」
「それに、ほら、今もこうやってちゃんと俺の役に立ってるじゃないか」
「んっ、もう、大門様。そんな言い方、ひどいです」
「でも、俺のモノになるっていうのは、こういうことだってわかってたんだろう?」
「それは…あっ、ひゃんっ!」
 俺が、綾のアソコに指を突っ込むと、指にトロトロの液体がまとわりつく。
「なんだ、もうこんなにぐっしょり濡れてるじゃないか」
「いやぁ、あのっ、それはっ、きゃうっ、んんっ」
 綾のアソコの中を指でかき回していると、吹き出すように愛液が溢れてくる。
「なんだかんだ言っても体は正直だな、綾。ま、それでこそ立派な俺の下僕だ」
「ふあぁっ、あっ、ああっ、大門様ぁ」
 アソコをいじくり回しているうちに、綾の目がトロンとして来る。

「あ、ああ、大門様、お願いします。私、もう」
 完全に発情した目で、俺を見上げてくる綾。
「もう、なんだ?」
「私、もう我慢できません。あの、大門様のお、おちんちんを私の中に、下さい」
 よく考えたら、今夜は最初からそのつもりで来てるはずじゃないのか?何をこんなに手間取らせてるんだよ。
「いいだろう。くれてやる」
「あっ、ありがとうございます。んっ、ああっ、大門様っ、んくうううっ」
 俺に抱きかかえられるようにして、綾はゆっくりと俺のモノを飲み込んでいく。
「んんん、ああん、あっ!そんなっ!大門様ぁッ、あんっ!あっ、はあっ、はんっ」
 初めはゆっくりと動かしていた綾の体を腰で1回突き上げてやると、甲高い声をあげて綾の動きが激しくなっていく。
「あんっ、はあっ、ああっ、すごくっ、気持ちイイですっ、ああんっ!ご主人様ぁ!」

 ん?ご主人様?さっきまで、大門様、って呼んでなかったか?

「んんっ、はあっ!あっ!激しいッ、ああっ、ご主人様っ、そんなに激しくされたら私っ」
 大きく腰を動かしながら、俺のモノをどんどん締め付けてくる綾。
 つうか、これって。
「んふうっ、ああっ、ご主人様ぁ!」
「くっ、おいっ、綾?」
「あああっ、すごいっ、激しいのぉッ!」
「綾ッ!」
「んんっ、あっ?ご主人様?」
「綾、俺は動いてない。激しいのはおまえだっ」

 一瞬、ほんの一瞬だけ綾の動きが止まる。しかし、すぐにまた、耐えかねたようにまた腰を揺らし始める。
「ええっ?ああっ、いやあああっ!わたしっ、こんなっ」
 目を見開いて、嫌と叫びながらも、綾は、なおも自分で腰を動かし続ける。
「ふああっ、ダメっ、止まらないっ、気持ちよくて止まらないのっ」
「ぐあっ、おい、綾」
 動きが激しいのもだが、さっきからアソコの締め付けがもの凄くて、綾が腰を動かすたびに、俺のモノが強烈に扱かれる。
「うふううんっ、はあっ、んっ、んんっ、あっ、ご主人様っ、出そうなんですねっ」
「あ、綾っ」
「おっ、お願いしますっ、私の中に出して下さいっ!ごしゅじんさまぁっ!ふあああああっ!ああっ、来てますううううぅっ!うっ、んんっ」
 結局、綾は、イってしまうまで動きを止めることができなかった。

「んっ、うっ、うう、くっ、ううう」
 俺にしがみついたまま呻いている綾。最初、余韻に浸っているのかと思ったが、よく見ると、肩が小刻みに震えている。
「綾?」
「大門様、私、こんないやらしい女に。やっぱり、あの男のせいで。くうっ、うううっ」
 そう言って涙を流しながら俺を見上げる綾。
 
 何がもう大丈夫だよ。全然あの時のショックから立ち直ってないじゃないか。

「綾、それは俺が相手だからだろ?」
「あ、はい、大門様」
「俺のことが好きで、だから、俺といやらしいことをしたくて、それでおまえは幸せなんだろ?」
「…はい」
「なら、それでいいじゃないか」
「大門様?」
「どのみち、俺とおまえはもうそういう関係なんだから、いやらしくたっていいだろうが」
「でも、私」
「まったく、おまえはあれこれ考え過ぎなんだよ。もっと物事をシンプルに考えろ」
 それは、この間、薫が俺に向かって言った言葉。
「シンプル、に?」
「もっと自分の気持ちに素直になれってことだ」
「はい」
「じゃあ、どうだ?もう1回やるか?」
 俺の言葉に、頬を赤らめて頷く綾。

 そう、きっと俺も余計なことを考え過ぎなのかもしれない。俺とこいつは、結局は似た者同士ってことなんだろうな。

 
 


 

 

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