悪魔の流儀

〜堕天使たちの挽歌〜


 

 

第5話


 ――ゴオオォォン!
 私から少し離れたところで爆発が起きた。
「きゃあっ!」
 閃光に続いて、強烈な爆風が私を襲い、私の体は吹き飛ばされる。
「くっ……」
「アーヤッ!」
 懐かしい……聞き慣れた声が駆け寄ってきて、地面に転がる私を抱き起こす。
「あ…姉さま……」
 私が目を開けると、姉さまが心配そうに私を見つめていた。
「怪我はない?アーヤ?」
「うん…だ…大丈夫…」
 私は、姉さまを安心させるように笑みを返す。
「もう…無茶をしたらダメだって言ったでしょ!」
 そう言うと、姉さまは、ギュッ、と私を抱きしめる。
「あ…姉さま……」
 ファサ…と、姉さまの髪が私の顔をくすぐる。私と同じ、白銀の髪が……。



「ん…ねえさま……んん…あ、夢……?」
 目を開けると…ここは、私の部屋のベッドの上。
「いまさら……あの頃の夢を見るなんて……」
 そう……あの頃の私は、新兵もいいところだった。
 姉さまや隊長、そして、そして、部隊のみんなにいつも助けられてばかりで……。
「うそ!?いやだ!もうこんな時間!?」
 私は、時計を見ると、慌ててベッドから降りる。
 急いでパジャマを脱ぐと、私は、膝まである黒のソックスに足を通し、鏡の前に立つ。
 そこにあるのは、白い下着と黒いソックスだけという姿の私……。
 無意識に、私は右の脇腹をさする。
 そこにあった傷は、今はもう跡すら残っていない。しかし……心が負った傷は、消えることはない……。
「もう、私ったら、ボーッとしちゃって!」
 我に返り、私は、鏡の脇に掛けてある服を手に取った。
 その、黒のワンピースを身につけ、背中のファスナーを上げる。
 次に、白いエプロンを掛けて紐を結び、フリルの付いたカチューシャを頭に乗せる。
 
 すると、鏡の中には、白銀の髪をしたメイド姿の私がいた……。

 うん……もうだいぶ慣れたけど……やっぱり…少し恥ずかしい。
 スカートの丈も長めだし、そんなにいやらしい感じはしない服だ。それに、今の私はこの家のメイド―正確にはメイド見習いだけど―なんだし、実際にしていることもメイドの仕事だけで、何もいやらしいことはしていない。
 だから、この格好は、ただのメイドとしての格好で、恥ずかしがることはなにもない……そのはず…なんだけども……。
 鏡の中の私は、恥ずかしげに頬を染め、伏し目がちにこちらの方を見ている。
「さあ…お仕事しなきゃ…」

 キッチンに行くと、私と同じ、メイド姿の先輩ふたりは、もう朝の準備にとりかかっていた。
「おはようございます」
「あ、おはよう、綾ちゃん」
 冴子さんが私の方を向いて微笑む。
 優しくて頼りがいのあるメイド長の冴子さん……そういえば、冴子さんって、髪の色を変えたら、どこか姉さまに雰囲気が似ている気もする……。
「綾さん、おはよう!さ、今日は、卵焼きの練習だよ!」
 梨央ちゃんが、私の手を引っ張る。
 最初は、いつも怒ってばかりで少し怖かったけど、今では大の仲良しだ。
「綾さん、卵焼きを焼くときは、油は少なめ。でも、油をよくなじませないと、すぐ焦げついちゃうからね!」
 梨央ちゃんは、まだ若いのに、なんでもできて、私の知らないことをいろいろ教えてくれる。
 
「冴子さん、梨央ちゃん、綾ちゃん、おはよう」
「みんな、おはよう、今日もいい天気ね」
「あ、奥様、薫さん、おはようございます!」
 下に降りてきた奥様と薫さんに、私は朝の挨拶をする。
 奥様は、とても優しくて、いつも微笑みを絶やさない。落ち着いていて、みんなに気を配ることを忘れない素敵な女性だ。
 薫さんは、いつもはクールに振る舞っているけど、さりげなく私のフォローをしてくれたりする。
 でも、私がお礼を言うと、真っ赤になって照れる可愛らしい一面もある。
 私がこの家のお世話になるようになって、もう一ヶ月近く……みんな、すごくいい人で、ここでの生活はとっても楽しい。
 こんな風になるなんて、最初は想像もしてなかった。
 本当はもっと……。
「おう、おはよう、綾」
「おはようございます、大門様」
 そして……この人が、今の私のご主人様……。
「ご主人様!今日はお休みでしょ!いい天気だし、またみんなでどこか行きましょうよ!」
「すまん、梨央。明日大事な交渉があってな、今日中に、その準備やらなんやらをしなきゃならん」
「ええ〜、そんなぁ〜」
 もう、だいぶ慣れてきた、この家ののどかな朝の光景。
 こうして、今日も、私の一日が始まる……。


「綾ちゃん、旦那様のところにコーヒーを持っていってくれるかしら?」
 昼ご飯の後、私は冴子さんに呼ばれる。
 大門様は、明日の仕事のための資料に目を通して、必要な書類を作るために、食事の時以外、ずっと部屋に籠もりっきりだ。
「私が、ですか?」
 いままでに、この家で私が割った食器の数は、もう数えきれないくらいになっている…それなのに。
「こういうのは、回数をこなして慣れないと。まあ、練習だと思って」
 冴子さんは穏やかな笑みを湛えて、私の方を見る。……ああ、そういえば、昔、姉さまにも同じようなことを言われたことがあった……戦闘の訓練と、メイドの仕事を覚えるのでは全然内容が違うけど……。
「はい……」
「じゃあ、お願いね」
 私は、冴子さんの用意した、コーヒーの入ったポットとカップ、ミルクと砂糖の乗ったお盆を持ち上げて階段の方へ向かう。
 コーヒーをこぼさないように用心しながら階段を上り、なんとか無事に大門様の部屋の前まで来る。
 ドアの横には、腰の高さくらいの台がひとつ。……それは、お盆を運ぶのに慣れていない私のために、冴子さんが用意してくれたもの。
 私は、その台にいったんお盆を置くと、ドアをノックする。
「ん〜、鍵はかかってないぞ〜、入れ〜」
 中から、あの人の声が聞こえた。
 私は、ドアを開けると、お盆を持ち上げて中に入る。
「お仕事中失礼します、大門様。コーヒーをお持ちしました」
「おう、サンキュー」
 大門様は、書類を見ながら、パソコンのキーを叩いていて、私の方を見もせずに返事をする。
「あの、こちらに置いておきますね」
 私は、仕事用のデスクではなく、丸テーブルの方にお盆を置く。
「それでは、仕事の邪魔になるので、私はこれで……」
「……ちょっといいか、綾?」
 私が、仕事の邪魔にならないように、すぐ出ようとするのを、大門様が呼び止める。
「なんでしょうか?」
「どうだ、ここの生活には慣れたか?」
「ええ、奥様も、冴子さんも、薫さんも梨央ちゃんも、みんないい人ばかりで、私にとてもよくしてくれますし……」
「そうか……」
 そう、みんな本当にいい人ばかり……そして、みんな本当に幸せそうだ……。
「本当のことを言えば、最初、私は妙な家に来たなって思ったんです。男の人ひとりに、若くてきれいな女の人が4人で暮らしているなんて、きっと何かあるんじゃないかって、何かおかしなことをされているんじゃないかって……」
「それで、おまえも、なにか俺におかしなことでもされると思ったか?」
「いえ、今の大門様はそんなことはなさいません」
 そう、以前ならともかく、今のこの人は……。それは、このひと月近く一緒に暮らしているとわかる。
 今の大門様は、おそらく私に無理矢理おかしなことはしない。
 だいいち、それなら今まで、いくらでもやる機会はあったのに、そうはしなかった。
 その代わりに、こうやって、私に直接尋ねてくる。今のこの人は、そういう人だ……。
 それは、確信を持って言える。
 だから、今、私は任務のことを抜きにして、安心して、この家でみんなと楽しくすごすことができる。
「今の?まるで前から俺を知っているみたいな口ぶりだな?」
 気づけば、さっきまでパソコンに向かっていた大門様が、私の方を見ていた。
 しまった!私ったら!
「い、いえ、初めてここに来た頃は、ホントに何か怪しげなことでもする人なのかなって思ってましたもの!だって、初めて会ったとき、大門様は、手から何か光るものを出して人を倒したりしてましたし、あの男が使っていた、おかしな機械を見ても平然としてましたから……」
 私は、なんとかごまかそうとする。
「で、でも、一緒に暮らしてみると、みんなすごく幸せそうですし、こうして一緒にいても、大門様はおかしなことをする素振りもないですし……だから、だから大門様は、そんなことをする人じゃないんだって……」
「……なあ、綾」
「……はい?」
「おまえはいったい何者で、何のためにここにいるんだ?」
 大門様の視線が、私を見据えている……。
「そ、そんな、何をおっしゃるんですか、大門様?」
「あのな、白髪ならともかく、おまえみたいに輝くような銀髪は、普通の人間ならまずいない。それに、おまえのその経歴からして信じがたい話だが、おまえと、初めて会ったときの戦闘での身のこなしや、梨央を助けたときの動き、とても並の人間のものじゃない」
「え…と…それは……」
「しかも、そんなやつが、うちみたいなところで、平気な顔でメイドなんかやっている。しかも自分から言い出して、だ。普通おかしいと思うだろうが?そりゃ、おまえが何者か、知りたくなるってもんだ」
 鋭い言葉で私を問いつめる大門様。……でも、なんだろう?私の素性を問いただしているのに、大門様の表情はすごく柔らかい……。
「どうして…どうして、そんなことを直接私に訊くんですか?もし、私が本当に普通の人間じゃなくて、しかも大門様たちに対して悪意のある者だったらどうするんですか?」
「おまえは、そんなやつじゃないと判断したからだ。たしかに、素性もしれないし、いろいろと怪しいところもあるが、おまえは俺たちの敵じゃないと俺は思う」
 ああ、この人は……。
「大門様……今は、今は何も言えません」
「そうか」
「でも、信じてください。私はみんなのことが好きです。みんなとすごす、今のこの生活が好きです」
 そう、それは私の本心でもある。もし、何事もなく、この家のみんなとの、今のこの平穏な日々をすごすことができたら、どんなに幸せだろうか……。
「だから、私のことを信じてください、大門様。今は、何も言えませんが、その時が来たら必ず……」
「……わかった。それが、おまえが今言える精一杯なら、それでいい」
「大門様……」
「それに、もう、おまえを信じる、って決めてしまったしな。だから、おまえのことを信じるさ」
 ……甘い。
 この人は、致命的なまでに甘い人だ。
 ……だけど、私には、この家のみんなが幸せそうな理由が少しわかったような気がした。


「綾ちゃん、悪いけど、今度はお買い物に行ってくれない?」
 大門様の部屋から戻ると、私はまた冴子さんに呼ばれる。
「はい!」
 買い物は、このところ、いつも私の仕事だ。
 まあ、まだまだ私は見習いだし、それに、力もあるので、こういう仕事の方が向いている。
「じゃあ、これが要る物のリストね」
「はい、じゃあ、着替えてきますね」
 冴子さんからリストを受け取ると、私は自分の部屋に戻る。
 あの人は、自分の使用人を、決してメイド姿で外には出さない。なんでも、大企業の重役としての世間体というのがあるらしい。
 ただでさえ、若い女の子が沢山いる家なのに、あんまり変な風聞が立つと困るそうだ。
 それに、私としても、たしかにこの格好で外に出歩くのは、あまりに恥ずかしくてさすがにできない。
 
 部屋に戻って、私は服を着替える。
 7分丈のジーパンを穿き、濃いマゼンタのTシャツに、薄紫色の腰布を巻いて、白のパーカーを羽織る。
 これは、梨央ちゃんが、『綾さんはスラッとして背が高いし、髪が銀色だから、きっとこういうの似合うって!』と言って選んでくれた服……。
「それじゃ、いってきますね」
 私は、冴子さんに声をかけて家を出る。

 いつも買い物に行くスーパーからの帰り道。
 今日は、買う物がいつもより少し多かったので、両手に袋を下げている。
 まあ、そんなに重たくはないんだけど……。
「あれ?あの人……」
 前の方から来る、赤縁メガネにリュックの男……あの男、このところ、よく見かけるような気がする……。
 念のため、私は男の方を警戒しつつ歩く。もし、あれを使う相手なら、携帯電話みたいな物を手に持っているはずだ。
 今のところ、そんな気配はない。
 そして、私はその男とすれ違う。もちろん、警戒は解かない。
「……!」
 男とすれ違った直後、背後から妙な気配を感じ、私はとっさに飛び退こうとする。
 しかし……。
「あっ!」
 路上に停めてあった自転車に荷物が引っ掛かる。
 そして、何かカードのような物が、私の体に当たるのを感じた……。


「あれ……私?」
 私がいるのは……住宅地の中の路地……。どうして、こんなところに……?
「どうしたんだ?」
 声のした方を見ると、ご主人様が、メガネの赤いフレームに手をかけて、私の顔をのぞき込んでいる。あ…れ……さっきまで何をしていたのか、全然思い出せないけど、私、ご主人様と出かけていたのかしら?
「あ!ご主人様!……私、何でこんなところに?」
 ご主人様の方を見上げながら、私がそう言うと、ご主人様の表情がとたんに険しくなる。
「私、だって?自分のことは名前で呼ぶようにっていつも言っているだろう」
 あ!そうだったわ!
「す、すみません、ご主人様!あの、アヤはどうしてこんなところに?」
「それを聞きたいのは僕の方だよ。こんなところをほっつき歩いて」
 ご主人様は、私を見下ろしながら、やれやれ、という風に首を振る。
「ご、ごめんさい、ご主人様……」
「まあいい。さあ、アヤ、さっさと家に帰るぞ」
「は、はい!」
 そのままスタスタと歩いていくご主人様に、私は慌ててついていく。
 前を歩く、ご主人様のリュックを眺めながら、私は、ぼんやりと考える。
 本当に、私は……何であんな所にいたんだろう?
 え?私、こんなに荷物持ってる……こんな所まで、買い物に来ていたの?
 でも、思い出せない……。
「どうした!?遅れてるぞ、アヤ!」
「はい!すみません、ご主人様!」
 考え事をしているうちに、だいぶご主人様から遅れてしまったわ。
 あそこで何をしていたのかを思い出すのは後回しにして、私は小走りになってご主人様を追いかけた。


 ここは、ご主人様の家……。
「まったく、困った奴だな、勝手にフラフラ出歩いて」
 家に戻っても、ご主人様はまだご機嫌斜めだ。……私、ご主人様に黙って出歩いてしまってたの?
「……それに、なんだ、その格好は?お前の服はこれだろうが」
 ご主人様は、後ろを向いて、がさがさと何かを取り出し、私に渡す。
「あ……」
 これは……私の服……。
「ホラ、あっちの部屋に行ってさっさと着替えてこい」
「は、はい!」
 私は、隣の部屋に入ると、鏡の前に立つ。
 なんで、私はこんな格好をしてるんだろう?私の服は、そう、さっき、ご主人様に手渡されたこの服に決まっているというのに……。
 私は、今まで着ていた服を脱いでいく……もちろん、下着も……だって、この服を着るときには、下着をつけていてはいけないんですもの。
 一糸まとわぬ姿になると、私はまず、黒い網ストッキングに足を通した。
 次に、裾に白いフリルのついた黒のワンピースを身につけて、胸元を留める……はめ込み式のロットボタンなので、引っぱると簡単にはずれるタイプだ。
 そして、エプロンの紐を結び、カチューシャをつけて……。

 ……鏡に映る、銀髪のメイド姿の私。

 スカートは膝丈よりも短く、網ストッキングを穿いた足がもものあたりまでむき出しになっていて……襟は肩まで大きく開き、ボタンを外すと、すぐに胸が見えそうな……ああ…なんて、いやらしい格好……それに、この、ゾクゾクするような高揚感。
 そう、これが、ご主人様にご奉仕するときの私の正装。…あ…んん……この服を着て、ご主人様にご奉仕する、そのことを考えただけで、私の体は火照ってきて……息苦しくなってくる……。
 鏡の中の私は、頬を紅潮させ、喘ぐように大きく息をして、胸がゆっくりと上下に揺れていた。

 着替えを終えると、私はご主人様のもとに戻る。
「ご主人様、着替えて参りました」
 両手を前で重ね、頭を下げて、ご主人様に報告する、その私の姿を、ご主人様は椅子に座ったまま眺め、満足そうに頷く。
 よかった……ようやく私は安堵する。
 しかし……。
「うんうん、アヤ、それじゃあ、ちょっと聞くが、僕の名前は何だったっけ?」
 そんな、ご主人様の名前がわからないわけ……え!?どうして!?なんで?なんで私、ご主人様の名前が出てこないの!?
「え…あ……」
 そ、そんなはずは……。
 私の頭は混乱し、ぐるんぐるんとしてくる。
「なんだ、ご主人様の名前も覚えられないのか、メイド失格だな。そんな奴は……」
「いや!ごめんなさい!ご主人様!お願いします!」
 私は、思わず跪いてご主人様にすがりついた。ご主人様を見上げる目からは、涙が溢れてきて、視界がぼやけてくる……。
 すると、ご主人様は私を見下ろしながら、
「そんな奴は、再教育だな。僕のメイドとして、みっちりと教育し直してやる」
 そう言って、笑みを浮かべる。
「はい!ご主人様!お願いします!アヤをッ!この、バカなアヤを教育してください!」
 私は、ご主人様にすがりついたまま哀願する。そう、本当なら、ご主人様の名前を忘れるようなバカなメイドは、ご主人様に見捨てられてもおかしくない。
 それを……ご主人様は私をしつけ直すだけで許してくれるというのだから……。
「じゃあ、まず名前を覚えることだな。僕の名前は山村康太。いいか、ヤ・マ・ム・ラ・コ・ウ・タ、だぞ」
 そう!そうだった!こんな大事なことを忘れるなんて、私、いったいどうしてたの?
「は、はい!ご主人様の名前は、ヤマムラ コウタ様です!もう、決して忘れません!」
 私は、目に涙を流しながら、必死でご主人様の名を復唱する。
 それを聞いて、ご主人様は笑みを浮かべたまま、
「よし、僕の名前を覚えたら、今度は、ご主人様の味と匂いを覚えてもらおうか」
 ご主人様は、すがりついたままの私の体をいったん離し、ベルトを緩めて、パンツごとズボンをずらす。
 私の目の前に出てきたのは……あ…ご主人様の…おちん……ちん。
「あ、ああ……」
 もうかなり大きくなっているご主人様のおちんちんを見て、思わず私の口から、思わずうっとりとした声が漏れる。
「さあ、アヤ、その体に、僕の味と匂いをしっかり覚え込ませるんだ」
「はい…ご主人様……」
 自分の声が、興奮でうわずっているのがわかる。私は、手をさしのべて、ご主人様のおちんちんを握ると、ドクンドクンと脈打つのを感じた。
「ちゅ……んちゅ…」
 私は、ご主人様の股間に顔を埋め、最初は、おずおずとおちんちんの先に口をつける。
 少し生臭いような、刺激のあるような匂い……ああ、ご主人様の匂いだ……。
「あふ…んく……ん…んん…んむ…」
 私は、たまらなくなって、ご主人様のおちんちんを奥までくわえ込み、舌の上で転がすようにする。……ああ、ご主人様のおちんちん……美味しい……。
「ん…んふ…んん…ん…ふん……」
 時には舌を広げて包み込み、また時には、舌先をとがらせて、ツツ、とおちんちんに沿わせる。……息をするたびに、ご主人様の匂いが鼻腔をくすぐり、酔ったようにクラクラとしてくる。
 あ…体が火照ってきて、アソコがじんじんして来るみたい……。
「んふ…む…ん…んん……」
「アヤ、もっと口全体を使うんだ」
 ご主人様の声で、私は我に返る。
 ああ…しゃぶるのに夢中になりすぎてたわ。
「は、はひ…んっ…んっ…じゅる…んふっ……」
 私は、口をつぼめて、頭を前後に動かしていく。すると、ご主人様のおちんちんの先から、ヌルヌルしたお汁が出てきて、一際濃厚なご主人様の匂いが充満してくる。
「ふっ…んん…ちゅるる…」
 舌先で、ご主人様のお汁をすくうと、ご主人様のおちんちんが、ビクビク、と震える。
「んっ…んっ…んむ…ちゅ…んん…」
 ご主人様のおちんちんの膨らみの後ろ側を舌先で刺激すると、ビクンと震えて、また大きくなってくるみたい。
「ふん…んん…じゅる…んっ…」
 もう、口に含んでいるだけで、トクントクンと、ご主人様の脈動が感じられる。
 口の中は、私の唾液とご主人様のお汁でヌルヌルだ。
「んむ…んふ…ん!んん!」
「あ、アヤ!」
 ご主人様のおちんちんが、私の口の中でビクンビクンと大きく震えたかと思うと、ご主人様が私の頭を押さえ込む。
 あ!く、来るんだわ!
「んんん!………………ッ!!」
 私は、むせないように息を止めて、ご主人様の精液を受けとめる。
「んくっ!……んっ!……んんん!」
 私の口の中が、ご主人様の精液の、青臭いような、生臭いような匂いと、舌がジン、と痺れるような味で満たされていく。
「ん…こく……」
 その熱い精液を飲み込んだとき……。
「んん!んんんんんんッ!」
 一瞬、意識が飛んだような感じがして、私の体がビクビクと跳ねる。
 すると、今度は、下半身の力が一気に抜けて、私は床にへたり込んでしまう。……ああ、私、ご主人様の精液を飲んでイっちゃった……。
 朦朧として、意識のはっきりしない状態で私はご主人様を見上げる。
 ご主人様は、満足げに目を細めている……。
「どうだ、アヤ。ご主人様の味と匂いは覚えたか?」
「は、はひ…ごひゅひんさまぁ……」
 頭の奥がジンジンと、痺れるような感じがして、舌がうまく動かない……。
 さっきから、アソコのあたりが、熱くなって、ドクンドクンと脈打つのを感じる……。

「じゃあ、アヤ、次は、おまえの体そのものでご主人様のことを覚えるんだ」
 そう言うと、ご主人様は、視線を下に落とす。
 その先には……ああ、ご主人様のおちんちん……まだあんなに大きいわ……ああ、そのおちんちんを…私の中に…挿れて欲しい。
「さあ、アヤ、こっちに来るんだ」
「は、はい……」
 私は、フラフラと立ち上がる。足に、うまく力が入らない……。
 でも、欲しい…ご主人様のおちんちんが…欲しい……。
 メイドの身で、そんなこと言うのは分をわきまえていないのかもしれないけど…もう、我慢できない。
 私は、スカートの裾を持ち上げて、椅子に座るご主人様のももをまたぐようにして正対する。膝がブルブルと震えて力が入らず、両手をご主人様の肩にかけて体を支える。
「ああ…ご主人さまぁ……」
「さあ、アヤ、自分でやるんだ」
 ご主人様が私を見つめて頷く。
「はい、ご主人さま…」
 私は、片手をスカートの中に入れると、ご主人様のおちんちんを軽く持って、私の入り口に当てる。
「そ、それでは、ご奉仕を始めます」
 私は、ゆっくりと腰を沈めようとする……しかし、力の入らない膝が、ガクン、と折れて、ご主人様のおちんちんが、一気に私の中に入ってくる。
「がっ!あぐうっ!い、痛いいいっ!」
 体を走る激痛に、私は思わず悲鳴をあげた。
 どうして!?どうして痛いの!?まさか、私って…初めてなの!?そ、そんな……それじゃ今まで私は、どうやってご主人様にご奉仕していたの?
「どうした?痛いのか、アヤ?」
 ご主人様が、私の目を見つめて怪訝そうに首を傾げている。
「い!いいえ!痛くありませんっ!ん!んくっ!ひぐうううっ!」
 私は、必死に痛みをこらえて首を横に振る。
 痛い、なんて言ったら、またご主人様に叱られてしまう。今度こそ、見放されてしまうかもしれない……そんなのは嫌だ!
「あっ!くうっ!うくうっ!くはあっ!」
 私は、歯を食いしばったまま、腰を持ち上げてはまた落とす。そのたびに、ミチミチと音を立てて、ご主人様のおちんちんが、私のあそこを押し広げていくような気がする。
 私は、ご主人様の首にしがみついて、痛みをこらえながら、腰を動かし続ける。
「くううっ!かはっ!あぐっ!……あっ!ひゃあっ!」
 私の腰を支えていたご主人様の手が、ブチブチブチッ、と、胸元のボタンを外していき、露わになった私の胸をご主人様が吸う。
「あくうっ!ひゃん!はうっ!ああん!」
 あ……なんだか、ご主人様のおちんちんが入ってくるときの、押し広げられるような感覚が小さくなっていくような気がする。
 ――ヌチャッ!グチャッ!ヌチュッ!
 私が腰を動かすたびに、ご主人様と繋がったところから、湿った音が聞こえてくる。
 ……ああ、私、濡れているんだわ。……だから、ご主人様のおちんちんが、抵抗なく私の中に入ってこれるのね。
 痛みはまだ少しある、でも、今は、ご主人様のおちんちんが私の中に入ってくる感覚の方が強く感じられる。
 ああ…ご主人様が……私の中に……。
 そう思うと、それまでの痛みや、きつさが薄れ、頭から腰まで貫くような快感が走る。
「はうっ!?はああん!あうん!あああんっ!」
 突然、私の体がビクンと跳ね、バネ仕掛けのように首が反り上がる。
 これが…私の…声?なんて…甘ったるくて…いやらしい声……。
「ああうん!ご!ご主人さまぁ!あっ!きもちっ!気持ちイイですっ!」
 体中を、痺れるような快感に犯され、夢中で腰を上下させる私。そのたびに、私の髪が、バサバサッ、と跳ねるのを感じる。
 快感の波に飲まれて、意識がグニャリ、としてくる中、私がご主人様の顔を見ると、……ご主人様は、口を半開きにして、目も半ば閉じ、恍惚とした表情をしている。
 ああ、ご主人様も気持ちよくなっているんだわ……。私はご主人様の頭を掻き抱きくようにして、ご主人様の顔に自分の顔を近づけていく……。
「はん!んん……」
 私の口が、ご主人様の口に吸いつき、舌を差し込むと、ご主人様の舌も私の舌に絡みついてくる。
「んむ!…ん…んん…んちゅ…ん……」
 私とご主人様は、舌を絡ませ、互いの口の中を味わうように、舌を出し入れし合う。
 ん……ご主人様の味がする……。
「んむっ!むむむっ!んんっ!」
 いきなり、ご主人様の左手が私の乳房をつかむ。
 新たに加わった快感に、また私の頭が反り上がろうとする……だけど、ご主人様のもう片方の手が、私の頭をしっかりと押さえていて、動かすことができない。
 ご主人様の舌が私の口の中を犯すように動き、左手が私の乳房を揉み、指先が乳首をつまむ……そして、おちんちんが私の中を蹂躙する。
 ああ…うれしい……今、私の体は、隅から隅までご主人様のモノなんだわ……。
「んむうッ!?んふ!んんーッ!むむむむむッ!」
 突然、体中を電気のような快感が走り回り、一瞬、意識が飛んだような気がした。
「ん!ぷふぁあ!…あんッ!はんッ!はんッ!あんッ!」
 ようやく、ご主人様が私から口を離すと、腰の動きに合わせて、私の喉から、短く甘い声が漏れる。
 もう、私の体は、私のものではないかのように、腰を上下に跳ねさせるのを、自分では止めることができない……私の体が跳ねるたびに、グチャッ、ヌチャッ、と、いやらしい音が響く。
 ご主人様のおちんちんを、体の奥深く飲み込むたびに、ブツッブツッと意識が途切れる。
「あ゛あ゛ッ!はあ゛ッ!ぎもぢっ!イイですッ!ごっ!ごひゅひんひゃまぁッ!」
 頭の中がジンジンと痺れてきて、目の前に火花が飛ぶ……もう、完全に呂律が回らない声で私は叫ぶ。
 ご主人様のおちんちんが、さらに大きくなったような感じがして、私の中で、ビクビクッ、と震える……ああ、ご主人様も……。
「あ!アヤ!僕ももういくよっ!」
「あ゛あ゛ッ!ぎでっ!ぐださひっ!ごひゅひんひゃまのッ!せーえぎっ!あやにっ!」
 私は、力いっぱいご主人様にしがみつく……私の意識は、快感と幸福感に飲まれていって……もう、何も考えられない……。
「ん!くうう!」
 ご主人様も私を抱きしめて、腰を私に向かって突き上げる……。ご主人様のおちんちんが、私の一番奥まで入ってきて……。
「ひゃあ゛あ゛あ゛ッ!ごひゅひんひゃまのッ!あ゛ッ!あづい゛い゛い゛いいいいいぃッ!」
 ご主人様の体にしがみついたまま、私はご主人様の精液を受けとめる……私のおなかの奥で、熱い奔流が荒れ狂い、視界が暗転する。
 ……全身の筋肉が硬直して、私の体じゃないみたい……もしかしたら、このまま全身が固まって死んじゃうのかしら、私?……でも、それでも構わない……だって、こんなに気持ちよくて、こんなに幸せなんですもの……。
「あ!アヤーッ!」
「あ゛ッ!あ゛ッ!がッ!あ゛う゛ッ!」
 ご主人様は、精液を全て絞り出すように腰を突き上げ、そのたびに私は、体を硬直させたまま短い叫びを上げる……周りがまるで、暗いような、眩しいような……大きな渦が巻いているような感じ……もう、私の目は形あるものを映していない。
「あ゛あ゛!?はあああぁぁ……」
 ようやく、ご主人様の射精が終わり、思い出したように、私は大きく息をする……と、その瞬間。
「あ……ぁ………」
 急に、全身の力が抜け、私の意識は遠のいていった……。

 
 


 

 

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