アクマは堕ちるとなんになる!?


 

 



後編

天使も家にやってきた






 ――3ヶ月後。

「んもぅ、あたしはこんなにルイ様のこと大好きなのにぃ」

 ……ん?
 なんだ?

 私の体の上に覆いかぶさるような、これは……うん、ティミリアだな。
 昨日の夜もいつものように抱いてやって、そのまま寝たのだから。

「ルイ様ったらなんかクールっていうか、あたしへの愛情が足りない気がするのよね〜」

 なにをひとりでブツブツ言っているのだ?

「だーかーら、これでちょちょいとあたしへの愛を大増量ってね」
「なにをしているのだ、ティミリア?」

 朝っぱらから怪しい気配を感じて手を伸ばす。

「あ゛っ……ルイ様、お目覚めでした?」

 すぐ目の前には、バツの悪そうな表情を浮かべたティミリアの顔。
 そして、私が掴んだその手には小さな瓶が握られていた。






☆  ☆  ☆







「で、どういうことなんだ?」

 とりあえず、ティミリアを床に正座させて問い詰めることにする。

「ええっとぉ……あたしはルイ様のことを大好きなのに、ルイ様のあたしへの愛情が薄い気がしてたんですよねぇ。だから、もっと愛して欲しくてぇ……」

 少し俯き加減で気まずそうに話し始めるティミリア。

 というか、私の愛情が足りないとはどういうことだ?
 おまえを下僕にしてから毎晩抱いてやっているではないか。
 最初は生意気な小娘だと思っていたが、今では可愛い下僕だと思っているというのに。
 だいいち、魔法語を教えているときのおまえの方がよっぽど愛情がないように感じるぞ。
 本人は「ルイ様のために心を鬼にしてるんです!」とか言っているが、ときどき本当に鬼のように思えるくらいなんだからな。

「で、この瓶に入っているのは何なのだ?」

 さっき取り上げた小瓶を手にさらに問い詰める。

「ですからぁ……あたし特製の媚薬です。それを飲んでルイ様にもっとあたしのことを好きになってもらおうと思ったんですぅ……」

 なに? 媚薬だと?
 そんなものをこの私に飲ませようとしていたというのか?

 ふむ……考えようによってはそこまで私のことを好きなのだということか。
 シュンとして項垂れている姿を見ると少し可哀想に思わなくもない。
 だからといって、このような薬を許すわけにはいかないが。

「とりあえずこれは没収だ」
「うううぅ〜」

 そう言うと、ティミリアはがっくりと肩を落とす。

 うむ……。
 しかしそれもこれもはっきりと言ってやらなかった私にも責任があるというものだな。

「だが、おまえへの私の愛情が薄いというのは違うぞ、ティミリア」
「……えっ?」
「いや、コホン……私はおまえのことを気に入っているし、その、なんだ……お、おまえを下僕にして、よっ、よかったと思っているのだぞ」
「ルイ様……本当ですか?」
「あ、ああ……も、もちろん本当だとも」

 私の言葉に、萎れていたティミリアの表情がみるみる明るくなっていく。
 しかし、こちらは妙に顔が熱い。
 下僕に目をかけてやるのは主の務めとはいえ、こんなことを口にするのはやはり恥ずかしいな。

「ルイ様、もしかして照れてます?」
「うっ、うるさい。それよりも早く朝ご飯を用意するんだ」
「はーい!」

 すっかり上機嫌になったティミリアがキッチンに向かった後で、改めてさっきの媚薬を眺める。
 小さな瓶の中の液体は、明らかに妖しいピンク色の光を放っていた。

「やれやれ、こんなものを飲ませようとするとは……悪魔を下僕にするのも思ったよりも大変だな」

 そうぼやくと、その小瓶をポケットにしまい込んだ。






☆  ☆  ☆







「それじゃあ今日もしっかりと魔法語の勉強をしましょうね!」
「……う、うむ」

 結局これからは逃れられぬのだな。

 その日も、いつもと同じく朝食後からすぐに勉強の時間だ。
 机の上には分厚い魔法語の本と辞書。
 そして、メイド服にタスキをかけて頭に鉢巻きを巻くという、謎の気合いの入れ方をしたティミリアが先に席について待ち構えていた。
 いや、むしろ頑張るのは私の方なのだが。

「じゃあ、まずは昨日のおさらいからいきましょうか。さあ、早く座ってください!」

 勉強をする本人よりもやる気満々のティミリアがバンバンと私の椅子を叩いて呼んだ、そのときのことだ。

「きゃあああああっ!」

 突然、悲鳴をあげてティミリアが椅子から転げ落ちた。

「どうしたのだ!?」

 何事かと思って見てみると、ティミリアの体が光のロープのようなものでがんじがらめになっているではないか。

「なんだ、これは? ……痛たたたっ!」

 何が起きているのかわけもわからぬままに光のロープを解こうとすると、指先に鋭い痺れが走る。

「いけません、ルイ様! これはルイ様には危険すぎます!」
「いったいなんなのだ、これは?」
「これはですね……」
「ずいぶんとひさしぶりですわね、ティミリア。あなたの気配を感じたときにはまさかとは思いましたが、人間界に来ていたのですね」

 ティミリアの言葉を遮るように、背後から声が聞こえた。
 振り向くと、そこに金髪の女が立っていた。

 すらりと背が高くて、幼さを感じさせるティミリアとは対照的な、大人の雰囲気を漂わせた美人。
 切れ長の目に口を真一文字に引き結んでいて、ややきつめの印象を受ける。
 それが全身を純白の衣装で包み、剣のようなものを携えていた。
 だが、なにより目を引くのは背中にある一対の翼。
 身を包む衣装と同じ、眩いばかりに白い翼が生えていた。

「これはまるで……天使ではないか」
「そうです。あいつの名前はシルヴィア。何百年も前からあたしを付け狙っているしつこい天使です。クソ生意気でいつも高飛車で、ムカつく女なんですけど。まさかあいつに見つかるなんて、不覚です」

 と、ティミリアは面目なさそうにしているが、縛られているわりにダメージはなさそうな様子にホッと胸を撫で下ろす。
 しかし、次の瞬間いきなり襟首を掴まれた。

「離れて! 彼女は悪魔なのよ! ただの人間が近づいたら危険です!」

 そう言いながら、天使が私をティミリアから引き離す。

「でも、わたくしが来たからにはもう安心ですわ、すぐにこの悪魔を退治してさしあげますから」

 ……この天使はなにを言っているのだ?

 ティミリアが危険?
 退治する?
 的外れも甚だしい。

 我が名はルイ・ノワール。
 下僕であるティミリアの主なのだぞ。

「まあ待て、退治するには及ばんぞ」
「なにを言ってますの? 悪魔を野放しにするわけにはいきませんわ」
「野放しになどしてはいない。なにしろ、私がそやつの主なのだからな」
「いえ、ちょっとなにを言ってるのかわかりかねますが、いったいなんなんですの?」
「ティミリアは下僕として私に仕えているのだ」
「……はい?」

 天使が怪訝そうに眉を顰める。
 しかし、すぐに納得したように頷いた。

「ああなるほど、そう思い込むように彼女に洗脳されているのですね。でも大丈夫です、彼女を倒せば洗脳も解けますから」

 なんだと!?
 言うに事欠いて私が洗脳されているだと!?

 間違いなくティミリアは魔法で私の下僕にしたのだ!
 まあ、私の魔法ではないのは確かだが。

「私は洗脳などされていない! ティミリアは私が召喚して下僕にしたのだ!」
「あなたが? 冗談を言ってもらっては困りますわ。あなたみたいな魔力もほとんど感じないただの人間が悪魔の召喚なんかできるわけないでしょう? ましてや、下僕にしただなんてありないことよ」
「ちょっとシルヴィア! あんたルイ様になに失礼なこと言ってるのよ! それはルイ様は生徒としては出来がよくないし、まだほとんど魔法も使えないし限りなくただの人間だけど、それでもあたしのご主人様なんだからね! それに、その魔力だって最初は本当にゼロだったのが少しは感じるくらいに増えたんだから! ルイ様を馬鹿にするとあたしが許さないわよ!」

 ……いや、ティミリアよ。
 おまえの方が私に対して失礼なことを言ってないか?

 というかどいつもこいつもこのルイ・ノワールをなんだと思っているのだっ!?

「あら、ティミリア、それで下僕の演技でもしてるつもり? 全てはあなたの悪巧みだってこのわたくしが見抜けないとでも思ってますの?」
「はぁっ? 演技なんかじゃないわよ!」

 うむ、演技ではないな。
 あいつは普段からあんな感じだ。

 それよりも、問題はこの天使だ。

「物わかりの悪いやつだな。ティミリアは間違いなく私の下僕だということがなぜわからないのだ?」
「ああもう、あまりわたくしの手を煩わせないでいただけるかしら? あなた程度の魔力の人間が彼女を下僕にできるはずがありませんでしょう。ですから少し黙っててもらえませんこと。天使が人間界で手出しできる相手は悪魔か、死後に地獄に堕ちるような悪人だけなんですから。あなたみたいな何の取り柄もない無害な人間に天使が手を出したらかえって大問題ですわ」
「ふははははっ! ならば心配は要らないぞ! 私は大悪人だからな! なにしろ魔王の娘であるティミリアをこの世に召喚して下僕にしているのだぞ!」
「はいはい、そういう風に洗脳されているんですわね。そうでなければただの妄想ですわ。あなたみたいな凡人にそんなことができるわけがないってさっきから言っているでしょう」
「う、うぬっ……」

 むう、ティミリアの言うとおだな。
 なんて生意気な奴なのだ。
 まあ、ティミリアも初めて私の前に現れたときはかなりのものだったが。
 悪魔とか天使はこんなのしかいないのか?
 しかも、この天使は人の話をまったく聞かないときている。

 傲慢な天使の態度に腹が立って、思わず両手に力が入る。

 ……ん? これは?

 握った拳にコリッと当たる、ポケットの中の硬い物は……。
 そうか! さっき、ティミリアから没収した媚薬の瓶だな!
 ……ふむ、これは使えるかもしれぬ。

「さあ、ティミリア、覚悟なさい」
「だから待てと言っているだろうが」

 ティミリアの方に踏み出そうとした天使の肩を掴んで引き留める。

「もう、さっきからいったいなんなんですの!? あなたみたいなただの人間は引っ込んでいなさいと言っているでしょう? いくら洗脳されてるとはいえ、いい加減にしないと……ふぐっ!? んっ、んぐっ……けほっ!」

 こっちに振り向いて話し始めたその口めがけて、こっそりと栓を抜いておいた小瓶の中身をぶちまける。
 しかし、上手くいったと思ったのも束の間、次の瞬間頬を思いっきり殴られてしまった。

「痛だだだだだだだっ!」
「あなた! わたくしにいったい何を飲ませましたの!? 悪人以外に手出しはできない決まりとはいえ、あまり邪魔ばかりするなら多少は痛い目に……はぁ、はぁっ、痛い目に遭うことになりますわよ。はぁっ、はぁっ…………あら、そんなに痛かったの?」

 あまりの痛さにうずくまっていたら、なにを思ったのか天使が私を助け起こした。

「ああ、ここ、痣になってますわ。ごめんなさい、そんなに強く叩くつもりはなかったのよ。はぁ、はぁ……どうしたら……そうだわ! ……ちゅっ」
「んむむっ!?」

 自分で殴りつけた私の頬を擦っていた天使がいきなりキスしてくる。

「あっ、いえ、違いますのよ。これは、あなたに痛い思いをさせてしまったからそのお詫びにと思って……ですからそれ以上の意味なんか……はぁっ、はぁっ」

 さっきまでの高飛車な態度が嘘のように天使が狼狽えはじめた。
 というか、顔が赤くなって妙に息を荒くしているし、その目もうるうると潤んでいるではないか。
 いや、そもそもその行動がおかしい。

 ふむ、これはひょっとしてあの媚薬が効いているのか?
 ならば……。

「んぐっ!? んむむむむっ!?」

 天使を抱きしめてキスをしてみる。

「んむむぅ……やあっ! なにをしますのっ!?」
「ぐはぁっ!?」

 キスを終えた瞬間、強烈なビンタをくらう。
 しかし、今度もまた……。

「ごっ、ごめんなさい! 痛くするつもりはありませんでしたのよ」

 天使の方から私をぎゅうっと抱きしめてきた。

「あ、あなたがいけませんのよ。ティミリアのことを庇ったり、さっきから変なことばかりしてわたくしの邪魔ばかりするし、それさえなければわたくしはあなたのような素敵な殿方と……ああ、ダメですわ、わたくし、天使なのに人間を相手に、しかも悪魔に洗脳された者を素敵だなんて……そんなのやっぱりダメですわっ!」
「のおわぁああっ!」

 私を固く抱きしめながら耳許で囁いていたかと思うと、天使が今度は思いっきり突き飛ばしてきた。
 と思った端から、よろめいた私の手を掴んでぐっと抱き寄せる。

「危ないですわっ! 転んだらどうするんですの!? ……ああ、やっぱり素敵……こうしてると心臓が早鐘のように……はぁっ、はぁああああ……」

 このドクドク鳴っているのは……私の鼓動ではないな。
 となると、この天使のか?

 ふむ、こんな抱き合ってだけで聞こえるほど心臓が高鳴っているのか。
 というか、さっきからの行動が完全に挙動不審ではあるしな。

 ならば、もう一度試してみるか……。

「……えっ? んむむむむむっ!?」

 天使の顎を指で摘まんで顔を近づけ、もう一度キスしてみる。

「んむむっ! むむむむぅっ……」

 うむ、今度は抵抗はしないようだな。

 さすがに目を丸くしているが、抱きついている私を突き放そうとしない様子に薬の効果が大きくなっているのを確信する。

「んんんんんっ! ……ですからいきなりなにをっ!?」
「すまない。そなたがあまりにも美しいのでつい」
「そんなっ、わ、わたくしがっ?」
「ああ、実に美しいぞ」
「ととと、当然ですわっ、わたくしは天使なのですからっ、うっ、美しいのも当たり前ですわ」
「うむ、そうやって羞じらう姿など、可愛らしいところもあるではないか」
「なななっ、なにを恥ずかしげもなくそんなことをっ!」

 褒めてやると天使は顔を真っ赤にして羞じらっているが、実際本当のことだ。
 少なくともさっきまでのツンとすました態度よりも今の方がはるかに美しく愛くるしい。
 どうやら、もうこちらに危害を与える心配はしなくてよさそうだ。

「私は本当のことを言っているのだぞ? そう、私の女にしたいくらいに美しいのだから」
「そそそっ、そんなっ、あなたの女になんかっ……」
「私の女になるのは嫌なのか?」
「だ、ダメですわ、天使と人間がそんな……いけないことですのに……」
「ダメかどうかではなくて、私の女になるのが嫌なのかどうかを聞いているのだぞ?」
「それは……嫌かというと……」

 言い淀みながら、天使は後で手を組んでもじもじしている。
 やはりさっきまでの態度とは全然違う。

「そうか、嫌なのだな?」
「そんなっ…………い、嫌ではありませんわ……」

 わざと意地悪してやると、伏し目がちに羞じらいながらそれでも天使は小さな声を出して頷いた。

 本当にこれがさっきまで上から目線で好き放題なことを言っていたあの生意気な天使なのか?
 こちらの言うことにやけに素直ではないか。

 この媚薬、なんという効き目なのだ。
 というか、ティミリアのやつ、これを私に飲ませるつもりだったのか……。

 媚薬の効果に驚きつつ、手を伸ばして天使の胸を掴む。
 すると、天使は驚いたように悲鳴をあげた。

「はうううううっ!? いっ、いきなりなにをするんですの!?」
「私の女になるのが嫌ではないのだろう? だったらこのくらい良いではないか」
「それはっ、でもわたくしは天使なのにこんなことっ! ……あぁあああああんっ! やだっ、どうしてっ? いけないことなのにどうしてこんなに胸が高鳴りますの!?」

 うむ、この感触……。
 服の上からでもその柔らかさが伝わってくるな。
 それにこの声もまた……。

 胸を掴んだ手に少し力を入れて揉むと、天使は喘ぎながら体を震わせる。
 しかも、その喘ぎがかなり甘い声だ。

「はぁああああんっ! やっ、なんでこんなにっ! はうぅううううんっ! こっ、こんなの初めてっ! ビリビリしてっ……ふぁあああああんっ!」
「それはそなたがこうされるのを望んでいるからなのだよ」
「そんなっ、わたくしが望んでいるなんてっ……んっ!? はむむむむぅっ!」

 胸を揉みしだきながらその唇を吸い、舌を絡ませる。

 おそらく、3ヶ月前の私ならとてもこんなことはできなかっただろう。
 これも、毎晩ティミリアを可愛がってやった成果と言えようか。
 どうすれば女が感じるのか、今ではかなりわかるようになっていた。

「んんっ、んんんんっ! んむぅ……んん、むふぅうううう……」

 キスをしながら胸を愛撫してやると、腰が砕けたように天使がその場にへたり込んだ。

「ふあああ……こんなの、本当に初めてですわ……えっ? なにをっ? あんっ! ふぁあああああっ!」

 蕩けた表情で座り込んでいる天使の股間に手を伸ばすと、服の上からでもそれとわかるくらいにぐっしょりと濡れていた。

「ふむ、ここがこんなに濡れているではないか」
「そんな……わたくしが、そんなはしたないこと……」
「しかし、事実だぞ。そなたの体は私の女になることを望んでいるのだ」
「ああ……そんな……わたくし、天使なのにあなたの女になることを望んでいるだなんて……そんなの、本当はダメなのに……」
「そうか。ならば止めるか? 私の女になるのが嫌なのだろう?」
「あ……ああ……そんなこと……ありません……」

 意地悪く尋ねてやると、悩ましげに首を振る。

「そうか、ならば私の女にしてやるからその服を脱ぐのだ」
「そっ、それは……」
「どうした? やはり嫌なのだな?」
「……いえ……わかりましたわ」

 一度躊躇った後での私のだめ押しに頷くと、天使は恥ずかしそうに服を脱いでいく。

「おお……」

 一糸まとわぬ姿になった天使は、思わず言葉を失うくらいに美しかった。

 すらりとして身長はあるのに、出るところは出ていてくびれるとこはくびれている。
 胸もティミリアほど大きくはないがその代わりに形がきれいな釣鐘型で、乳首の先がつんと上を向いていた
 透き通るよな白い肌は羞じらいなのか興奮のせいなのかほの赤く染まり、背中に生えた純白の翼が小刻みに震えている。

「うむ、美しいぞ」
「そんな、恥ずかしいですわ……」

 そう言って羞じらう仕草がまた可愛らしく思える。

「なにを恥ずかしがることがある。もっと胸を張ってもいいくらいだぞ。ううむ、実に美しい」
「ああっ……」

 私に見つめられているだけで興奮するのか、天使は内股気味になって体をブルッと震わせるた。

「さあ、私の女にしてやるからそこに座るのだ」
「……はい」

 現れたときの態度からは想像もできないほどのしおらしい返事をして、天使が座り込む。
 そして、私がズボンを脱ぐと現れたものを見て吃驚したように目を見開いた。

「こっ、こんなに大きなものが……」
「そうだ。これがそなたの中に入って、私の女になるのだ」

 そう言いながらその両足を広げようと手をかけると、天使はぎゅっと目を閉じて体を強ばらせる。

「やだ……怖いですわ」
「怖がることはない。私の女になりたいのだろう?」
「ですけど……」
「そんなに緊張しなくてよい」
「そ、そうは言っても……はうううっ!」

 ヒクヒクと震えている股間の裂け目に指を挿し込むと、ひと声喘いだ天使の顎が跳ね上がる。
 そこはもう、指の二本くらいすんなり入っていくくらい充分に濡れていた。

「怖がることはない。最初は痛いかもしれんが、それもすぐに良くなる。この感覚に身を委ねるのだ」
「それは……本当ですの?」
「ああ、本当だとも。だから、体の力を抜くのだ」
「わっ、わかりましたわ……」

 そう返事は返してきたものの、やはり体に力が入ったままのようだ。
 しかしまあ、これだけ濡れているのだから大丈夫だろう。

 そう思って、ペニスを天使の秘部の入り口に押し当てる。

「では、入れるぞ」
「はい……くふっ! くぅううううううううっ!」

 なっ、なんときついのだ?

 挿入するときの、ペニスを押し返してくるようなきつさに驚いてしまう。
 とはいえ、比較対象としてはティミリアしか知らないのだが。
 だが、ティミリアとセックスするときに感じる柔らかな弾力のある締めつけ具合とは全然違う。

 それでも、そのままペニスを押し込んでいくとブツッと鈍い感触がしたような気がした。

「くあっ! はくぅうううううううっ!」

 歯を食いしばった天使の表情が歪む。

 よく見ると、ペニスが挿入されたそこから血がこぼれていた。

 ふむ、処女だったのか。
 話には聞いたことがあったが本当に血が出るのだな。
 さすがは天使といったところか。

「そんなに痛むのか?」
「だっ、大丈夫ですわっ! こっ、このくらい我慢できます!」

 と、本人はそう言っているが、とてもそうには見えない。
 最初からいやらしかったティミリアとは勝手が違って、こちらとしても戸惑いがある。

「しかし、そんなに痛いのならば……」
「この程度の痛みっ、たいしたことありませんわ! わたくしをあなたの女にするのでしょう? それに、痛いけど体が熱くてっ、疼くのっ! だから気にしないでよろしくてよ! ……はうっ、んくぅうううっ!」

 そう言うと、天使は歯を食いしばりながら腰をくねらせ始めていた。

 なんと、これも媚薬の効果だというのか?
 うーむ、本気でこれを私に飲ませるつもりだったのか、あいつは?

「はっ、早くっ、わたくしをっ……んくぅっ! あなたの女にっ……しなさいっ!」
「ならばいくぞっ」
「あうっ! あくぅうううっ! くふっ! ああっ!」

 本人が望むのならばと腰を動かすと、天使の喉から苦しそうな声が漏れる。

「ああっ……くうっ! んんっ! あんっ!? ああぁんっ!?」

 ん? 
 絞り出すような呻き声が少し変わってきたような……。

「あんっ……あっ、はぁああんっ! 熱いっ、熱いのっ! 痛いのに熱くてっ、ビリビリ痺れるようなっ……あはぁあああんっ!」

 やはりだ。
 天使の口から漏れる声が、ティミリアが感じまくっているときみたいな喘ぎ声に近くなっている。
 それに、さっきまでガチガチにきつかったその中が急にほぐれたみたいに弾力のある感触になっていく。
 おまけに、熱くうねるようで、これはなかなか……。

「あはぁあああっ! すごいっ、すごいですわっ! わたくしの中で熱いのが暴れてっ、こんなの初めてでっ、あんっ、んふぅうううううっ!」
「どうだ? 気持ちいいかっ?」
「はいっ、いいっ、気持ちいいですわっ! こんなに気持ちのいいものがあったなんてっ! ああっ、中がいっぱいに擦れてっ、ビリビリしてっ、ふぁああああんっ!」

 天使がついにはっきりと気持ちがいいと宣言する。
 いやはや本当にとんでもない媚薬だな、これは。

 それにしても、天使が感じ始めてからのこの膣の具合はどうだ。
 適度な締め付けが気持ちよすぎてこちらも抑えが効かなくなるではないか。

「うむっ、私も気持ちいいぞっ!」
「ああんっ、そんなっ、激しいですわっ! でもいいっ、すごくいいわっ! あんっ! あぁあんっ!」
「ああっ、私も実にいいぞ! うむっ、まだまだ」
「そんなのっ、ふああっ、おっ、奥まで響きますわ! そんなに突かれたらっ、わたくしおかしくなりそうですのっ! 頭が痺れてっ、なにも考えられなくなるのっ!」
「いいぞ、おかしくなってしまうんだ。そして私の女になれ」
「ふおおおっ! なるっ、なりましゅわっ! あなたの女にっ! あああっ! しゅごいっ、しゅごいのほぉおおおっ!」

 天使の方からこちらに抱きついてくる。
 なんだか呂律も怪しくなっているし、半分意識がないみたいだ。
 それでも、私にしがみついて自分から腰を振っている。

「しゅごいですわぁああっ! これしゅごいっ、しゅごいのぉおおっ!」
「ぬおおおおっ! そっ、そんなにされたら私はもうっ! ……くううううううううっ!」
「ふおおっ! しゅごいしゅごいしゅごいしゅごいぃいいいいいいいっ!」

 あまりの激しい腰使いに私が射精すると、天使がぎゅっと抱きついたまま絶叫する。
 その体がブルブル震え、私のペニスを痙攣しながら締めつけていた。

 しかし、天使の体から急に力が抜ける。

「おい? ……おい、どうしたのだ?」

 声をかけても返事はない。

「ん? ……なんだ、気を失っているのか」

 天使はだらしなく口を開いてぐったりとしているが、息はしている。
 どうやら、初めての絶頂で気絶してしまったようだ。

 と、その瞬間黒いものが天使の体を縛り上げた。

「これは……?」
「ありがとうございます〜、ルイ様。シルヴィアが意識を失ったおかげであたしを縛っていた魔法が解けましたよ〜」
「ティミリア?」

 振り向くと、さっきまで光のロープで縛られたティミリアが立っていた。

 いや、これはむしろまずい状況ではないか?
 なにしろ、ティミリアの見ている前でこの天使とセックスしたのだから。

「ティティティ、ティミリア、い、いや、こ、これはだな……」
「……はい? どうしたんですか、ルイ様?」
「あのだな、ティミリア。もしかして怒ってないか?」
「怒る? あたしが? どうしてですか?」
「いや、おまえという相手がいるのに私がこの天使と、その、セックスをしてしまってだな」
「へ? そんなので怒ったりしませんよ。そもそも、下僕の分際でご主人様にそんなこと言えるわけないじゃないですか。それは、あたしとセックスする回数が減るのは嫌ですけど、ルイ様があたしに愛情を持ってくださってたら全然いいんですよ。だいいち、魔界では強者ほどたくさんの下僕を従えるのがステータスですから。だからルイ様の下僕が増えるのはあたしも誇らしいです。それに、さっきのは良かったですよ〜。シルヴィアのあんなだらしない姿を見ることができて、あたしもスキッとしましたし」

 そう言って、ティミリアはむしろ楽しそうな笑顔を見せる。
 どうやら、人間とは倫理観が違うらしい。
 そういうところはやはり悪魔なのだな。

 というよりも、このような結果になったのはひとえにティミリアの作った媚薬の効果がとんでもなかったからなのだがな。

「それにしても、さっきのルイ様ったら格好つけすぎた三流ナンパ師みたいでしたね〜」
「やかましい! おまえはまたそうやって主人のことを馬鹿にしおって!」
「馬鹿にしてませんって! ただ、なんかルイ様らしいなーって思っただけで」

 いや、それはどこをどう切り取っても馬鹿にしているようにしか聞こえないのだが。

 というか、なにをしているのだ?

 さっきまで軽口を叩いていたティミリアが、いきなり床にしゃがみ込んでいた。

「シルヴィアのみっともない姿を見られたのはいいんですけど、残念ながらあいつはまだルイ様の下僕になったわけじゃないんですよね〜」

 そう呟きながら、ティミリアは床に何か描いているようだ。
 これは……魔法陣か。

「どういうことだ? というかなにをするつもりなのだ?」
「相手は天使ですからね、ルイ様が飲ませた媚薬の効果もそんなに長く続かないでしょう。ですから、これからシルヴィアを完全にルイ様の下僕にするんです」
「む、そうか。……なるほど、あの媚薬はすぐに効果が切れるものだったのか」
「あー、天使相手にはそんなに保たないですよ。でも、人間だったら1年は効果が続きますかね〜」
「おい、おまえな、そんな代物を私に飲ませようとしていたのか?」
「うふふ〜、シルヴィアがルイ様の下僕になるのが楽しみだわ〜。下僕の先輩としてあたしがみっちりと躾けてあげるんだから〜」

 いや、だから少しは人の話を聞け。
 というか、ティミリアのやつ……。

「おまえ、本当に楽しそうだな」
「だって、あたしにはルイ様の一番最初の下僕ってポジションがあるんですもの。これからいくら下僕の数が増えてもあたしが一番なのは変わらないんですよ〜」

 ああ、うん、そういう常にポジティブなところはおまえの長所だな。
 しかし、あまり下僕の数が増えると私の体が保たないと思うのだが。

 と、そんなことを言っている間にティミリアは魔法陣を描き終えたようだった。

「さてと、こっちはこれでよし、っと」

 そう言って立ち上がると、ティミリアの魔法で拘束された天使を魔法陣の中へと蹴転がした。

「……っ!? これはなんなんですの!? ……ティミリア! あなたですわね!」

 衝撃で目を覚ました天使がティミリアを睨みつける。

「あら? ようやく目を覚ましたの? やっぱり薬は切れてるみたいね。でも、見させてもらったわよ〜。さっきのあなたの無様でエッチな姿」
「……そっ、それはっ! やだっ、わたくし、なんであんな真似を? ……あんなのはわたくしではありませんわ! わたしくしがあんなはしたない真似をするなんてありえないもの! あれはあなたたちがおかしなものを飲ませたからっ!」

 ティミリアにからかわれて天使が血相を変える。
 その様子を見る限り、やはり媚薬の効果は切れているらしかった。

「まあそんなことはもうどうでもいいの。ちょっとそこで待っててね、シルヴィア」
「ちょっと! この拘束を解きなさい! ティミリア! 聞いていますの!?」
「はいはい、あたしはやることがたくさんあるんだから」

 喚き散らしている天使を完全に無視して、ティミリアが机に出してあったノートになにか書き始める。
 そして、そのページを破ると私のところに持ってきた。

「それでは、ルイ様にこれを託しますね」

 ティミリアが手渡してきた紙に書いてある長い文言。
 ……これは魔法語ではないか。
 これまでの勉強の成果でそれが魔法文字であることはわかるが、こんな複雑な呪文まではまだ習っていないので意味はまったくわからない。
 ただ、魔法語の上に丁寧にカタカナでルビまで振ってある。

「これは?」
「相手を魂レベルで主に縛り付けて永遠の下僕にする魔法です。その呪文を唱えた後で"魂の全てを捧げて我がしもべとなれ!"と言うと、その魔法陣の中にいる者を永遠に下僕にすることができるんです」
「ほほう」
「あたしですね、ずっと考えていたんです。魔力もほとんどない、魔法語もわからないルイ様がどうしてあたしを召喚することができたのかなって。だって、あたしクラスの悪魔を召喚する魔法はものすごく難易度が高くて、本来は伝説になるような魔術師でないと使えないはずなんですよ。だから思ったんです。もしかしたら、ルイ様は本当に大魔術師なんじゃないかなって。いや、正確に言うと大魔術師の卵ですね。ろくに魔法のことも知らないのにあたしを召喚するのに成功したのはたしかにまぐれなんですけど、そのまぐれもルイ様が未完の大器だから引き起こされたんじゃないかって思ったんです」
「ティミリア……おまえ、やはり私のことを馬鹿にしてないか?」
「そんなっ、滅相もないです! あたしはルイ様の将来性に期待してるんですって! だからこの魔法をルイ様に託すんですよ! この魔法は人間はもちろん、悪魔や天使すら完全に従わせる強力なものです。それだけに並の魔術師では使うことができないんですけど、ルイ様はその潜在能力ゆえにハードルが高ければ高いほどまぐれで成功するんじゃないかもって思ったんです!」
「……いや、やっぱり私のことを馬鹿にしているだろ」
「違いますって! ルイ様はこの3ヶ月の間みっちり魔法の勉強もしてきましたし、その分まぐれ当たりする確率も上がってると思うんです。それに、呪文にはちゃんとフリガナを当ててますから今のルイ様でも間違えずに読むことができるはずです」

 うん、どう考えても馬鹿にされてるような気がするのだが。

「それではお願いしますね。その呪文を唱えてから、"魂の全てを捧げて我がしもべとなれ!"ですよ」

 そう言うと、ティミリアは自分から魔法陣の中に入っていくと天使の横にちょこんと正座をする。

「いや、おまえ、なにをしているのだ?」
「だって永遠にルイ様の下僕になれるチャンスを逃すわけにいきませんよ。だから、シルヴィアとあたしふたりまとめてお願いしますね」
「ちょっと、ティミリア! わたくしをどうするつもりですの!?」
「あんたは黙ってルイ様の下僕になったらいいの。じゃあ、始めちゃってください、ルイ様」
「う、うむ」

 改めて、ティミリアの書いた呪文を見る。
 やはり意味はさっぱりわからないが、フリガナのおかげで読むことに問題はなさそうだ。
 それにしても、かなり長い呪文だな。
 なになに……?

「クェハクチ ヴァサリチ サナア ユスノ モテニク ショティヴィニ イェテシ テソネ ヒノラ ミナソリ ミンゴ イェフシ コリンテ ミトミナ シトア イ ブラヒノヴィチ キミンニ ヒコノマク ハコテハワナ ヴァヨク ヒトハェノ オマフリノア ノハブラ ヤテカシ ノイヴァナ テハヤフェ カヨウン フェハミ ラニクト タヤシシ キヴォイテ スフェアニ ヨヴァハミ ヌェシトニ チトヴァハ リハマト レチ マソラタナ シテモ ヴァララセヌム 魂の全てを捧げて我がしもべとなれ! これでいいのか? …………おおっ!? おおおおっ!」

 呪文を詠唱した後で、ティミリアの言ったとおりの言葉を口にすると、魔法陣から光が溢れ出して輝く柱となった。

「きゃああああああっ!」
「あああっ! いったい、これはなんですのっ! ……出して! ここから出しなさい!」

 魔法陣が作り出した光柱の中でティミリアと天使が悲鳴をあげる。
 それでティミリアの魔法がキャンセルされたのか、体を動かせるようになった天使が立ち上がって柱を内側から叩くが、どうやら強力な結界になっているらしく出ることはできないようだ。

「ひぃいいいいっ! なっ、なんですのっ!? あぐぅっ! ぐぁあああああっ!」

 光の柱から出ようと足掻いていた天使が、いきなり頭を抱えてその場にうずくまった。

「これは……こんなことがっ……わたくしがっ、わたくしの魂が変えられていく……このままではわたくしがわたくしでなくなってしまう……。いやぁっ! そんなの嫌ですわっ! あがぁあああああっ!」

 頭を掻きむしり、恐怖に顔を歪めながら天使が叫ぶ。
 その体が、ガクガクと小刻みに震えていた。

 その傍らでは……。

「きゃうううんっ! これすごいぃいいいっ! あたしっ、ますますルイ様のものになっちゃうぅうううううっ! 身も心もっ、魂も全部ルイ様のものにっ! あぁああんっ、素敵ぃ……はぁああああああんっ!」

 こっちはこっちでやけに嬉しそうだな。

 ……ん? これは?

 私の体から光り輝く鎖のような物が2本現れて、ティミリアと天使の方に伸びていく。
 そして、それがそれぞれの首に絡みついたかと思うと光の首輪となった。

「いやあああっ! このままではっ……あああっ、もうだめっ、わたくし、もう抗えないっ! ふぁあああああああっ!」
「嬉しいいいっ! これで永遠にルイ様の下僕になれるのっ! あふぅうううううんっ!」

 光の鎖で私と結ばれた瞬間、ふたりの体がビクンと大きく跳ね上がる。
 そして、少しの間を置いてその光の鎖も魔法陣が放つ光の柱も消え失せた。




「これは……うまくいったのか?」
「ルイ様ーっ! やりましたね!」
「お、おおっ?」

 事の成否の判断がまだわからないでいると、すぐに立ち上がって抱きついてきたのはティミリアだった。

「こんな難易度の高い魔法なのに見事に成功です! でも、あたしは信じてましたよ、ルイ様はやればできる子だって!」

 そう言って、ティミリアがギュッと抱きついてくる。
 なんか、やっぱり馬鹿にされてるような気がするが……私が自分で成功させた魔法だと思うとまんざら悪い気はしない。
 それにしても前とあまり変わっていないようにも思えるが。

「本当に成功したのか?」
「はいっ! これでもうあたしはルイ様に魂まで縛られた永遠の下僕です!」

 いや、そういうのは普通もっと敗北感を込めて言う台詞ではないのか?

「おまえ、本当に嬉しそうだな」
「当たり前じゃないですか。嬉しいに決まってますよ! ……ね、あなたもそうでしょう、シルヴィア?」

 そう言って、ティミリアは天使に声をかける。

 天使の方はようやく立ち上がったものの、呆然とした表情でこちらを見つめていた。

「ほら、せっかくルイ様の下僕になったんだからなにか言ったらどうなの?」

 ティミリアの言葉に促された天使が、がっくりと肩を落として力なく頭を振った。

「……わたくしの心が、魂があなたのことを主だといっている。そうですのね……わたくし、負けてしまったんですわね……。こんな、ただの人間にいいようにやられてしまうなんて、屈辱以外のなにものでもありませんわ……」

 いや、本当にこれで私の下僕になったというのか?
 ずいぶんな言われようなのだが。

 だが、そう言いながらも天使は一歩こちらに踏み出した。

「しかたないですわね。こうなってしまったらもう従うしかないですもの……」

 少しずつ歩み寄ってきて私の前に立ち、諦めたように嘆息する。
 だが、その虚ろな表情だった天使の、私を見る瞳が次第に熱っぽく潤んでいき、さっき媚薬を飲んだときのような羞じらうような表情を浮かべた。

「きっとこれも運命に違いありませんわ。ですから、あの……これからもさっきのようにわたくしを可愛がってくださるのなら、あなたのことをご主人様と呼んであげてもいいですわよ」

 少し俯き加減で、上目遣いに羞じらいながら言うその顔はドキリとするほどに美しかった。
 同時に、これまで感じたことのない喜びと達成感がこみ上げてくる。

 ふはははははっ!
 私が! このルイ・ノワールが自分の魔法であんなに高飛車だった天使を下僕にしたのだぞ!
 99%はティミリアがお膳立てをしたのだが、そんなことはこの際どうでもいい。
 私がこの魔法を成功させたのだからな!

 と、私が余韻に浸っている横ではとんでもない状況になっていた。

「あざとい! あんたその言い方も表情もなにもかもがあざといのよっ! 天使のくせにあんたのそういうところが昔から気にくわないのよね!」
「はい? あなたにとやかく言われる筋合いはありませんわ。これはわたくしとご主人様の問題ですのよ」
「きぃいいいいっ! あたしの方がルイ様の下僕としては先輩なんだからね! これからきっちり教育してあげるんだから!」
「なにを言ってますの? このわたくしがあなたに教育されるいわれはなくってよ」
「むきーっ! あんたねぇっ!」
「おい、こらこらっ、おまえたち……」

 こうして、悪魔と天使を下僕に従えた私が最初にやらなければいけないのは、ふたりの下僕のケンカを止めることだったのだ。






☆  ☆  ☆







 ――翌日。

「あっ、おはようございます、ルイ様!」
「おはようございます、ご主人様」

 目が覚めると、ふたりの下僕の声が私を迎えた。
 黒いメイド服のティミリアと……。

「なんだ、おまえもメイド服を着ているのか?」

 シルヴィアも、ティミリアと対照的な白を基調にしたメイド服に身を包んでいた。

「そ、そんなに見ないでください。わ、わたくしも少し恥ずかしいと思っているのですわよ」
「というか、おまえ、翼はどうしたのだ?」
「天使の翼は自在に収めることができますからなんの問題もありませんわ」
「なるほど。それにしてもずいぶんと大胆な服だな」

 実際、シルヴィアのメイド服は胸元が大きく開いていて、ティミリアの服よりもいやらしいくらいだった。

「そ、それは、ティミリアに負けるわけにはいきませんもの。ご主人様にご奉仕するにはこの服でなければいけないのなら、着こなして見せますわ」

 と、少し気恥ずかしそうにしているが、シルヴィアの場合もともとの性格を思えばそのくらいの方が可愛らしく見える。

「ふん、あたしに勝とうなんて100年早いわね! それに、重要なのは格好よりもご奉仕の中身なのよ。そういうわけでルイ様! ティミリア特製精力増強スープをどうぞ!」
「なにを言ってますの? ご主人様に飲んでいただくのはわたくしが作ったこの体力回復スープに決まっているでしょう」

 いや、おまえら……。
 なにをふたり揃って私に精をつけさせようとしているのだ?

「もうっ! シルヴィアったらなんでいちいちあたしに張り合ってんのよ!」
「わたくしがあなたに張り合う? ふっ、愚かしいですわ。ご主人様にはわたくしの方がふさわしいのは自明の理ですのに」
「はあっ!? だからあたしはルイ様の下僕としては先輩だって言ってるでしょ!」
「まあまあ、おまえら……」

 ……はぁ、この騒がしいのがこれから毎日続くというのか。






 と、そんなこんなで賑やかな朝食を済ませて……。

「さあルイ様! お勉強の時間ですよ!」
「うむ」

 いつものようにティミリアが机の上に魔法語の本を並べていく。

「ご主人様、お勉強とは?」
「うむ、私を大魔術師にするべくティミリアが魔法を教えているのだ」
「まあっ! いけませんわご主人様。ティミリアなんかに教わってもいいことはないですわよ。どうせいかがわしい魔法しか使えないんですから」

 私の説明にシルヴィアが大袈裟なくらいに肩を竦める。
 すると、それを聞いたティミリアの目が吊り上がった。

「ちょっと! あんたなに言ってんのよ!」
「あら? わたくしは本当のことを言ったまでですわ。……ご主人様、魔法ならわたくしが教えてさしあげます」
「はぁっ!? あんたたち天使の使う魔法なんか悪魔を攻撃する魔法か治癒魔法しかないじゃないの!」
「そんなことはなくてよ。ご主人様、どうぞわたくしの魔法をご覧ください」

 そう言うと、シルヴィアがなにやら呪文を唱えて指を突き出した。
 その、指先の方向にいるのはティミリアだ。

「きゃああああああっ!」

 悲鳴と共に、昨日と同じようにティミリアが椅子から転げ落ちる。

「おおっ! これは……」

 昨日と違っていたのは、倒れ込んだティミリアの服が散り散りに破れ、その裸体を縛める光のロープが見事な亀甲縛りになっていたことだ。
 この縛り方だとバカでかいティミリアの胸が強調されて、その、コホン……いささか目のやり場に困るな。

「どうです、ご主人様。わたくしの魔法はこのようなこともできますのよ」
「なるほど、これはすごい。それにしても、よく亀甲縛りなんか知ってたものだな」
「はい、これからご主人様にお仕えすることになるのですから、夜のうちに主人と下僕について調べておきましたの」
「む、それはなんというか……」

 いったいなにを見て調べたのか、訊くのが怖い気もするのだが。
 一方で、恥ずかしい格好で床に放置されたティミリアはシルヴィアを睨みつけて怒鳴り散らしていた。

「なによ! これって結局悪魔を縛るバインドの魔法じゃないの! ていうかこのあたしになんて格好させてくれてんのよ! それでよく人の魔法をいかがわしいだなんて言えたわね! あんたの魔法の方がよっぽどいかがわしいじゃないの! 早くこれを解きなさいよ! あたしはルイ様に魔法を教えなきゃいけないんだからね!」
「ですから、その役目はわたくしが引き受けると言っているでしょう。あなたはそこで見ていなさい。でも、その前にご主人様……」
「なんだ? ……こ、こらっ、なにをするのだ!?」

 シルヴィアがいきなり私のズボンを脱がせる。

「これからご主人様にお仕えできると思うと胸が高鳴って、体が疼いてしかたがありませんの。ですから……」

 そう言いながら、シルヴィアは胸元のボタンを外して両腕を袖から抜く。
 すると、メイド服の上が完全に脱げて上半身が裸になった。

 というかだな、その格好は……。

「おまえ、下着は着ていないのか?」
「あら? 調べたら心がけのよいメイドは下着は身に着けないとありましたわ」

 だからいったいなにを見て調べたというのだ?
 そんな姿を見せつけられると……。

「まあ、ご主人様、股間の立派なものが大きくなっていますわよ」
「いや、それはだな、生理現象というやつでだな……」

 当たり前だが、こんないやらしい格好を見せつけられて勃起しない男がいるはずがない。

「嬉しい。わたくしの体で興奮なさっているのですね。ああ……本当に逞しくて立派ですわ」
「おわっ!?」

 シルヴィアが私を押し倒して、嬉しそうにペニスを握る。
 そして、ゆっくりと扱きはじめた。

「ちょっとシルヴィア! あんた最初からこれが狙いだったわね! あたしの体を拘束しておいてルイ様を独り占めするつもりだったんでしょ!」
「当然ですわ。今さら気づいても遅いのよ」
「むきーっ! この卑怯者! 悪魔!」
「あら? 悪魔はあなたの方でしょう? わたくしは天使ですわよ。……さあ、ご主人様。わたくしのここは、いつでも準備万端ですわ。さっきからこの太くて大きいのを入れて欲しくてこんなに熱くなっていますのよ」

 そう言って立ち上がると、シルヴィアはスカートの裾を捲り上げる。
 やはり下着を着ていないそこは、真っ赤に充血して蜜を垂らしている秘裂が丸見えになっていた。

「ご主人様、どうぞわたくしのここにその逞しいものを恵んでください」
「おお、おう……」

 これほどの美人にこんなにいやらしい格好をされてねだられたら頷かざるを得ないだろう。
 というか、昨日処女を散らしたばかりだというのにずいぶんといやらしくなったものだ。

「こらーっ! シルヴィアっ、あんたなに勝手なことしてんのよっ!」
「んっ! はんんんんんっ! ……ああっ、これですわ! ご主人様でわたくしの中が満たされて……んんんんっ! 素晴らしいですわっ!」
「おおおおっ! これはっ!」

 喚き散らしているティミリアを完全に無視して、私の上に馬乗りになったシルヴィアが腰を降ろす。
 たちまち、ペニスが熱く締めつける感触に包まれていく。
 これは、昨日媚薬で蕩けた状態の時に勝るとも劣らぬ心地よさではないか。

「ああっ、ご主人様! ご主人様ぁああ!」

 シルヴィアが私を呼びながら自分から腰を振り始める。
 その姿は、まさに淫乱な下僕そのものだった。






 さよう、我が名はルイ・ノワール(本名:黒井類)。
 魔法によって悪魔と天使を下僕に従え、我が大魔術師への道は順風満帆…………。 

「あぁあああんっ! いいっ、奥まで届いてっ! 素晴らしいですわっ、ご主人様!」
「うおおおおっ! そっ、そんなに激しく動くとっ……おおおっ!」
「むきききーっ! シルヴィアっ、あんたねぇっ! いいから早くこれを解きなさいって言ってんのよーっ! あたしにはルイ様を大魔術師にする使命があるんだからーっ!」

 ……………………いや、本当に順風満帆なのかっ、これはっ!?

 
 
< おわり >


 

 

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