超越医学研究所HML


 

 

女の戦い


 ――神保主任の海外出張が伸びたんやて?
 ――するといま、キャシー竹橋はどないなっとるんや?
 ――つまり、ノーマークっちゅうわけやな。
 ――えらい好都合やんか。

 ――試して、みるか?

 チロチロチロと水が流れるような音がする。
 ややあって、細く、しなやかな指がボタンを押すと、今度は勢いよく水が噴き出す。
 ビデが、感じやすい部分を洗い流してくれている。
 ザバ―――――――ッ
 最後にコックをひねり、タンクの中の水を一気に便器に流し込む。
 彼女はいつも、用を足すとき、研究所地下三階の女子トイレ一番奥の西洋便器を使う。

 超越医学研究所研究員・江錦華。
 自称・中国はニュー香港出身の女医。大学時代に日本への留学経験があることから、流暢な日本語を話す。
 長い黒髪。真紅のチャイナ・ドレスの上に羽織った白衣。
 化粧室の洗面台の大鏡に顔を映して、錦華は不敵な笑いを浮かべる。
 すっと虚空を掴むかのように右手を泳がせると、クモの糸らしき銀色のか細い筋がキラリと光った。

 錦華は超越医学研究所の、病棟に続く長い廊下をひたひたと足早に歩いていく。

 キャシー竹橋は、元女兵士。現在はここの入院患者である。主治医である神保美紀主任研究員の計らいで、リハビリ目的で研究所内において見習い介護士としての職務などをこなしているが、ふだんは病棟の個室で寝起きしている。

 入院患者としてはどうでもよい。被験者として興味がある。
 特記すべきは、彼女の身体能力、運動能力が、異常に抜きんでていることである。
 しかもそれは、後天的な形質によるものであり、また単なるトレーニングで鍛えられたにしては限度を超えている。
 自分のたてた仮説が正しいとするなら、キャシー竹橋の肉体の秘密に迫ることは、医学・生理学上の一大発見になりうるし、もしかすると軍事上の価値がある話かもしれない。

 キャシー竹橋、元女兵士。経歴は不明。
 彼女が所属していた第999歩兵遊撃隊・通称サイコマンダー部隊は、どこの国家にも属さない傭兵部隊であり、世界各地の戦争・紛争の舞台裏で暗躍した謎の戦闘集団とされていたが、ごく最近の軍事行動に際し、キャシー竹橋ひとりを除いて全滅。
 彼らはマインドコントロール等の方法より作り出された「強化人間」の集団であったと考えられる。
 錦華がこれまでに到達した仮説を、頭の中で復唱しているうちに、めざす場所に着いた。
 一般病棟の23号室。

 ――ここや。
 ロックを解除すると、扉が横すべりに音もなく開いた。
「失礼するで」
 ――おった。
  キャシー竹橋。
  昼間っから、ベッドに寝そべってプロレス雑誌を読んどるわ。
  タンクトップに、ジーンズの脚をカットしてパンツにしてはいとる。
  部屋着とはいええらい無防備なカッコや。

「何だよ、あたしに何か用か?」
 キャシーはふらりと部屋に入ってきた江錦華を一瞥すると、また視線を雑誌に戻した。
 錦華はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れると、話し始めた。
「神保主任の出張が予定より長引きよってな……。
その間、うちが代わりにあんさんの担当を頼まれたっちゅうわけや。
で、ま、定期検査やな」
「あたしゃ見ての通りピンピンしてるよ。あんたにゃ用はねえ、帰んな」
「患者は患者らしくしとくもんやで。医者の言うことは聞くもんや」
「笑わせるんじゃねえ。いつからあたしに指図できるほど偉くなった?」
 錦華はチッと小さく舌打ちしたが、とくだん動じる素振りもなく、白衣のポケットに手をつっこんだまま、悠然とキャシーを見下ろしている。
 この女兵士が自分に好意を持っていないことなど最初から承知している。と、いうか、この女が主治医である主任研究員・神保美紀以外の人物に心を開くことはまずない。
 だからこそ、神保主任が不在の今が、キャシー竹橋に公然と接触できるチャンスなのだ。

 ――注射器を使わせてくれるような雰囲気とちゃうな。ほな、いつもの手でいこか。

「いつまでそこに突っ立ってやがるんだ。とっとと出ていき……」
 キャシーがいきり立とうとしたその時、チクリ、と何かに刺された感覚があった。
「いて!」
 キャシーがとっさに首筋を手でたたいた。
「何でえ、このクモ?」
 手のひらの上でつぶされたクモを見つめて、いぶかしんだキャシーだが、急にぐらりと頭を揺らすと、そのままベッドにがっくりと倒れ伏した。
 一部始終をながめていた錦華は、狡猾そうな笑みを浮かべた。

 ――チョロいもんやで……。
  さて、とりあえず血液と、DNA採取……メンタル・テストはどないしよ。

 本格的に検査するなら自分の実験室まで運ぶのが一番だが、誰かの手を借りるわけにもいかないし、このままここで処理することにしようか。
 鼻歌まじりに考えをめぐらしながら、江錦華が横たわるキャシーの顔に手を伸ばして触れようとしたその時! 彼女の手首がいきなり乱暴に掴まれた。
 同時に、キャシーがくわっと目を開けた!
「!!」
 キャシーはガバッとベッドから身体を起こすとともに、掴んだ腕をひねり上げ、錦華に逆ねじをくらわせた。
「ひッ!」
 錦華はとっさに事態をのみこめなかった。
「アホな! とびきりの神経毒を分泌するキマダラゴケグモを使ったんや! 半日は身動きできんはずや!」
「あいにくだったな……。あたしゃ、毒物を少しずつ体内に注入する訓練を受けててな。あらかたの毒にゃ免疫ができてんだ」
 と、言いながら、キャシーは錦華をとらえた腕に力をこめる。
「誰に頼まれた?! 白状しやがれ!」
「誰にも頼まれてへん……。医者としての個人的興味ってやっちゃ。い……痛い!」
 錦華が苦痛に顔をゆがめた。
 口ほどにもない……と、一瞬キャシーが手をゆるめたその時、錦華の目がキラリと光った。

 錦華は一瞬ふわりと身体を沈めたかと思うと、勢いよくガバッと反転し、その反動を利用して、キャシーの腕を振りほどいた。同時に数メートルほども飛びすさると、キャシーの手には錦華が着ていた白衣だけが残った。
 真紅のチャイナ・ドレス姿となった江錦華は、大きく股を開いて腰を沈め、両腕を鶴が翼をひろげたかのように開き、拳法の構えをとった。

「ほお……陳式太極拳か。面白え、食事前の運動にはちょうどいいか」
 錦華のドレスのスリットから、真っ白な太ももがあらわになっている。
 さらに摺り足でずい、と間を詰めて、今にもキャシーに踊りかからんとする構えを見せた。
 決して素人ではない。かなりの使い手と思われるが、それを見たキャシーはあざ笑うかのように、まるで散歩にでもいくかのような気楽さで自分から錦華との間合いを詰めた。

「柔よく剛を制すってか? 残念だがそんな生兵法じゃあたしは倒せねえぜ」
 どこからでもかかって来いといわんばかりに、無防備な姿勢で錦華の前に立ちはだかった。
 錦華の額に脂汗が浮かんだ。

 ――誘っているんか? まさか?
  でも、スキだらけやないか?
  ちゃうで……ヤツは、油断しとるんや……。
  絶対、勝てる!

 錦華は「いける!」と判断した。
「キィエエエエエエエエエッ!!」
 裂ぱくの気合をこめた正拳が、キャシーに襲いかかる。

 キャシーは後ずさりながら、錦華の拳をかわし、蹴りをさばいた。
 錦華の連続攻撃は目にもとまらぬはやわざで、キャシーに反撃の機会を与えず、一気に壁際まで追いつめたかに見えた。
 しかし、キャシーの表情には、余裕があった。
 錦華が勝利を決定づけようと繰り出した、気合のこもった回し蹴りの大技!
 キャシーはまるでそれを正面から力でぶち破るように、ただ一発の正拳突きを「むん!」と放つと、狙いはたがわず、錦華の下腹にめりこんだ。
「ぐはあッ……!!」
 大きくバランスを失った錦華の真紅のドレスがひるがえり、横転する。それはまるで空飛ぶ火の鳥が墜落し、地面に叩きつけられたかのようであった。
 急所に拳を入れられ、床の上でもんどりうって苦しむ錦華。それでも必死に反撃体勢をとろうとして、顔を上げた。
 その時、ふわっと頭上からキャシーの手のひらが目の前に覆い被さってきて、まぶたを閉ざすかのように、錦華の顔をなでおろした。すると、どうしたことか、瞬時にして錦華は意識を失い、へなへなとその場に崩れ落ちた。
 キャシーは勝ち誇ったようにニヤリと笑い、
「サイコ戦って知ってるか? お姉ちゃん」
 すでに返事はなかった。どうやら錦華は催眠状態に陥ってしまったようである。
「さて、おまえの目的が何だか聞かせてもらおうか」
 キャシーは、ぐったりとした錦華の身体を抱えあげると、乱暴にベッドの上に放り投げた。
 そして、錦華のかたわらに座り込むと、まるで錦華が覚醒しているかのように質問を始めた。
「まず名前だ。おまえの名前は?」
 じっとりと脂汗が錦華の額に浮かび、唇が動いたが、言葉にはならない。
「名前だよ! な・ま・え!」
 ややあって、喘ぐような声が、口から漏れた。
「江……錦華」
「偽名じゃねえ。本当の名前は?!」
「う、ウソやない……。うちの名前は江錦華……」
 錦華は苦しそうな表情を浮かべ、目を閉ざしたまま、キャシーの質問に答える。
「フン……まあいい、次だ。おまえの生まれはどこだ?」
「中国……黒龍江省」
「ん? こいつ確かニュー香港のイイとこの嬢ちゃんだって吹いてやがったのに。
北東部の出身じゃねえか。
たたきゃあ埃が出そうだな。こうなりゃとことんつきあってもらうぜ」
 キャシーは舌なめずりをして質問を続けた。

 一時間後――。
 チャイナ服の錦華は、目を閉じたまま、しどけない姿でベッドに横たわっていた。全身にじっとりと汗をかき、荒い息で胸を波打たせている。
 キャシーは腕組みをして、考えを整理していた。

 ――どうやら「大佐」の筋とは関係ねえな……。がっかりさせやがる。
  中国の息がかかっているのは確かなようだが、個人的興味ってのも嘘じゃないらしいな。
  何考えてんだコイツ?
  さて、どうするか……?
  首の骨へし折ってやるのは簡単だが、問題起こすとあとで美紀がうるせえ。
  と、くりゃあ……。

 キャシーは、錦華のチャイナ・ドレスに手を伸ばすと、ボタンをはずし、前をはだけた。
 錦華は下着をつけていなかった。
「チッ、変態が!」
 小ぶりだが形のいい乳房、キュッとくびれたウェストライン、カモシカのようにスラリと伸びた脚、透きとおるような白い肌。
 キャシーは錦華をすっかり裸にすると、彼女の内腿に指をはわせた。
「ん……」
 反応があったが、目を覚ます気配はない。
 キャシーは右手の指で、股間の感じやすい部分を刺激した。錦華は陰毛をキレイに剃り上げている。
 ワレメに沿って、指先でなであげると、錦華はビクッと身体をふるわせた。
「んんっ……。はあぁっ……!」
 さらに指使いを激しくする。ヒダヒダをこねくりまわし、その奥まりに中指の第一間接までめり込ませる。
 錦華は無意識のうちに、いやいやをするかのように身をよじった。
 股間の柔肉のあいだから、透きとおった蜜液があふれ出してきた。
 錦華の顔が、真っ白な肌が上気し、ほんのりと赤く染まる。
 錦華の悶えるさまをニヤニヤしながら見下ろしていたキャシーは、頃合をみはからって、おもむろに中指を根元まで突き入れた。
「ひッ!」
 錦華は裸の身体をのけぞらせた。どうやら催眠状態からは覚醒しつつあるらしい。

 錦華がうっすらと目を開け、顔をめぐらせてあたりを見回すような仕草をした。そして、自分が裸でいることに気づいて、反射的に身を縮めた。
「よお、姉ちゃん。お目覚めかい?」
「うっ……うちに何を?」
「別に何もしちゃあいねえ。これからするのさ」

 キャシーは、自身のTシャツをがばっとたくし上げ、脱ぎ捨てた。さらに、下に穿いていたカットジーンズを、下着ごと一気にくるぶしまで下ろすと、無造作に蹴り飛ばした。

 目の前に立ちはだかった全裸のキャシーを見て、江錦華は息をのんだ。
 身長180センチ、バスト110、ウェスト62、ヒップ105の、鍛え上げた肉体。
 誇らしげに上を向くバスト、かぐわしく匂い立つ若草のようなアンダー・ヘア。
 同性とはいえ、いきなり超セクシーな裸を見せつけられて、錦華は気が動転した。
「ああああ……」
 度肝を抜かれた錦華は後ずさろうとしたが、キャシーはそれを許さなかった。彼女はベッドに飛び乗り、立て膝で錦華ににじり寄ると、その足首を掴まえ、強引に引き摺り寄せた。

「おとなしくしな。可愛いお人形さんよ」
「ど、どうしてそれを?!」
 錦華はキャシーの言葉にギクリと反応した。
 中国人形……愛玩人形。
 それは江錦華にとって、昔の心の傷に触れる言葉であり、誰にも話したことのない秘密のはずだった。

「おまえは金持ちのお嬢ちゃんでもなんでもねえ。山奥の貧しい村で生まれ育った百姓の娘だ。一生片田舎でイモでも掘って暮らすはずだったところが、顔立ちがキレイだったおかげで沿海州に売られてきたと……。資産家の愛玩物としてな。大出世じゃねえか。
 まあそのおかげでとても口に出せねえ苦労もしたようだがな」
「し……知らん! なんのことや……?!」
「おまえは自分を守るために、あのけったいな蟲術(こじゅつ)や拳法を身につけ、飼い主をたぶらかしカネと自由を手に入れた。
さらには死ぬほど勉強して大学まで進み、医者の資格を取ったその裏で、闇の世界に身を沈め、政府の秘密機関のイヌにまでなりさがった……ってのが、江錦華センセイの一代記ってわけだ。
泣かせるねえ」
「そ……! そんな話、誰に?!」
「誰にも聞いちゃいねえよ。ぜんぶおまえが自分でゲロしたんだ。覚えてねえのかい?」
 錦華はキャシーから顔をそむけ、耳をふさいだ。

 ――醜悪な顔をした、まるで脂肪の塊のようだった資産家のあるじ。
 ――そのご主人様の欲望のままにもてあそばれ、恥辱にまみれた地獄の日々。

 あの頃の自分は、屋敷のメイドとは名ばかりの性の奴隷だった。
 主人のどす黒い男性自身を咥えさせられ、白濁液を飲まされた。
 複数のメイドたちと一緒に、屈辱的な体位でSEXさせられたこともある。
 大勢の客の前で、裸で踊らされ、果ては自慰まで強要された。
 自分と同じ立場の多くの娘たちは、ある者は発狂し、ある者は自殺し、ある者はいずこへともなく連れ去られ、二度と戻ってこなかった。
 自分は生きのびたい一心で媚を売り、主人を悦ばせる術を身につけたのではなかったのか。

 思い出したくない過去の忌まわしい記憶が、まるでいきなり目の前に汚物でも突きつけられたかのように甦ってきた。
「いや―――――――――ッ!!」
 錦華は叫び声をあげた。
 それはキャシーの仕掛けた精神攻撃だったのだが。
 すでにキャシーは錦華に対して、完全に優位に立ってしまっていた。

 キャシーは錦華を捕まえたまま、放さなかった。
 背中から錦華に覆いかぶさり、自分の膝の上に抱きかかえた。
 まるで、母親が幼児を膝の上に乗せてあやすように。
「いやッ! 何さらすッ?!」
 幼児というには大きすぎるし、聞き分けなどあるはずもない。
 屈辱的な体勢から逃れようとして暴れるのだが、背後からキャシーの怪力にとらえられては、それこそ赤子の手をひねるようなもので、どうすることもできず、ただむなしく手足をばたつかせるだけであった。
 壁の大鏡に、ちょうど正面から映るように体勢を持っていった。
 大きく股を開かされた、恥ずかしい姿が鏡に大映しになった。
「見てみな、自分のオ×ンコが口をあけてるところを」
「い……いやあッ!」
 さらに……。キャシーは背後から錦華の感じやすい部分を刺激した。
 乳房、首筋、腰まわり、さらに股間に手を伸ばし、荒々しく、まるでレイプするかのように錦華の肉体をもてあそんだ。
 その一部始終が目の前の鏡に映し出されている。
 ぶるぶるっと、背筋に電気が走るような感覚が錦華を襲った。
「あっ……! はぁんっ! ひィッ……!」
「いやらしい声出しやがって。お高くとまった女医センセイでも、こんな卑猥な声が出せるんだな!」

 背中にキャシーの巨乳が押しつけられている。
 身をよじるたびに、硬くなった乳首がコリコリと背筋を刺激した。
 キャシーは右手の中指と薬指を、鉤のように曲げて、錦華の膣に突き入れた。
 ずぶう……。
「ひ――――――ッ!!」
 たまらずに錦華が悲鳴をあげる。
 乱暴に指を出し入れし、こねくりまわすと、錦華がビクンビクンと身体をふるわせた。
「いやアんッ! や……やめてぇッ!!」

「ほれ、四つんばいになってケツを向けな」
 無理やり犬のように這いつくばらされると、お尻の谷間にキャシーの顔が近づいてきて、ふうっと熱い息が吹きかけられた。
「きゃッ」
 キャシーの舌が、柔肉をかきわけるようにして侵入してくる。舌をとがらせ、なめずり、感じるスポットを刺激する。
 錦華は、シーツをかきむしり、押し寄せてくる快感の波に、必死になって耐えている。
 エリート女医としてのプライドもかなぐり捨て、あられもない叫び声をあげていた。

 さらに、キャシーの攻めは、指や舌を使ったペッティングにとどまらなかった。
 錦華は目を疑った。
 ベッドの上で、仰向けにされた錦華のうえから、キャシーが覆いかぶさってきた。
 まるで男が女と交わろうとするかのように。
 自分たちは女同士なのだ。キャシーの下半身にあのオスの器官がついているはずもない。
 しかし、キャシーは何の躊躇もなく、錦華の股をこじあけ、腰を割り込ませてきた。
 たぷたぷとしたキャシーの巨大な乳房が、錦華の視野をふさいだ。

 それはいままで経験したこともない感覚だった。
「す……すごッ……!」
 自分とキャシーの生殖器は、隙間なくぴったりと合わさっていた。
 と、いうより、からみ合っていたといった方がふさわしい。
 何か大きな軟体動物が、自分の下半身の唇に吸いつき、舐めまわし、触手を伸ばしているような。
 お互いの分泌する体液が混じりあい、ぬめぬめとした生温かい感覚が下半身をおおいつくしていく。
 キャシーが腰を浮かせると、口を使っているかのように、ワレメの奥のヒダ肉が吸い出された。信じられないというように、錦華が叫び声をあげた。
「ひやぁッ! す……吸いついて……くるうッ!」

 ピストン運動のようにキャシーが腰を使う。
 粘膜がこすりあわされ、充血し、コリコリにしこったクリトリスがこねくりまわされる。
 錦華はいつのまにか、自分から腰を振りはじめた。
「いひッ! いいひッ……! ぐちゃぐちゃに、してぇ!」

 男根のように硬くはない。ぐにゃぐにゃした得体の知れない何かが、自分の粘膜を犯して突き入ってくる、そんな感覚だった。
 より深い結合を求めるかのように、キャシーは自分の股間を錦華の股間に割り込ませた。
「ひいッ!!」
 お互いの秘所から、とめどなくあふれ出てくる蜜液が混じりあい、肉がこすれ合って、いやらしい音がする。
 クチュッ……ヌチャッ……ヌプッ……!
 錦華は髪をふり乱し、完全にイッてしまった目で、ヒィヒィとあえぎ続けている。

「さて、そろそろフィニッシュといこうか……」
「や、やめんと……そこッ……!」
「なに甘ったれたことぬかしやがる!」
 キャシーは、ヒップをぐいと突き出した。
「ひぎいいいいいいいいいッ!!」
 腰が浮き上がるほどに突き上げられて、錦華は悲鳴をあげた。
 キャシーの腰のひねりに振り回され、無様にベッドの上に叩きつけられたそのとたん、生暖かい液体が、錦華の股間から、「ブシャアッ」とほとばしった。
 それは、性腺から分泌された愛液ではなく、感きわまった拍子に漏らしたオシッコだった。
「うわっ、きったねえ」
 小馬鹿にしたようにキャシーがせせら笑った。
 しかし錦華は何の反応もしめさず、精も根も尽き果てて、ベッドの上に横たわっていた。
 端正な顔は涙とよだれでベトベトになり、ハアハアと喘いでいる。

「フン! これに懲りたら、二度とおかしな気は起こさねえこったな!
おっと、てめえが漏らしたションベンとスケベ汁の跡は、ちゃんとキレイにしときな!」
キャシーは鼻歌を歌いながら、無造作に服を着ると、部屋を出て行った。飯でも食いにいくつもりらしい。
 あとに残された錦華は、それでも快楽の波に打ちのめされて、いつまでも動くことができなかった。



 翌日の昼下がり……。
 神保美紀の目が届かないのをいいことに、この日も自室でサボりを決め込んでいたキャシー竹橋。
 室内テレビは昼ドラを映し、キャシーはベッドの上で寝転んで、スナック菓子をむしゃむしゃとむさぼり食っている。
 その時、突然部屋の扉が開き、外気がすうっと部屋に入ってきた。
 おや、と思ってキャシーが目をやると、そこに立っていたのは超越医学研究所研究員・江錦華。

 懲りずにまた来やがった。
 意趣返しに来やがったのか?
 キャシーはむくりと身体を起こし、あわてて口の中に残っていたスナック菓子を飲み込み、ペットボトルのジュースをがぶ飲みした。
「昨日の仇を来たってか?! 何度やっても同じだぜ!」
 すると……。
 いつもの冷たい眼差しで、キャシーを見下ろしていた錦華であるが、何を思ったか、急にしなを作り、ベッドの上にあぐらをかいたキャシーににじり寄ってきた。
 ぴったりと身を寄せると、人差し指でキャシーで膝のあたりをなぜまわした。
「なあ……キャシーのアネさん。うちのこと、もっといじめて欲しいねん……。お願いやさかい」
 目をうるませ、頬をほんのりと赤く染めている。耳元でささやく錦華の息が、耳たぶにかかり、キャシーの背中にぞわわっと、寒気が走った。

 ――ぶん殴ってやろうか? しかし……。
  たとえ殴ってもアヘアヘとかいって、悦びそうな雰囲気だな……。

 長い黒髪が、キャシーの鼻をくすぐる。
 そろそろと伸びてきた指が、剥き出しになっている太もものあたりをまさぐった。
 キャシーは思わず身を固くした。

 ――こいつ、レズっ気があったのかよ……orz

 
 


 

 

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