Black & White

〜side stories〜


 

 

令嬢詩織


 ピーンポーン

 東京、永田町にあるとある高級マンションの最上階、執務に没頭していた堂島の思考を電子音が遮った。
 のっそりと年相応の動きで立ち上がると、壁に備え付けられたモニターに手を掛ける。

「はい」

 低く、無愛想にな返事にも関わらず、画面から飛び出てくるかと思うほど大きな声が堂島の耳に障る。

「ありがとうございます。香川急便です。山梨の野島様からお荷物が届いております」

 その声を聞いた瞬間にはもう、彼の不機嫌な表情は霧散していた。

「おっ、そうか、聞いておるよ。すぐに上がってくれたまえ」

 ピッと電子音を鳴らし押しボタンから手を放すと、堂島はそのにやけた顔にも気付かないまま、いそいそと身支度を整えた。



 再び鳴らされた玄関の呼び出し音が終わらない内に開かれたドアの向こうには、縦縞の制服を着た配達員とその後ろに置かれた大型テレビ大の段ボール箱。
 帽子を取り、頭を下げながら声を張り上げる宅配員の挨拶もまだ終わっていない内に手に持った伝票を引ったくり、乱暴にサインをすると玄関先に荷物を降ろさせ、早々に追い返す。

 ビリビリッ、バリバリッ、バサッ...

 毟るように剥ぎ取られた段ボール箱の中からは、微かにモーター音を発するアルミ製のケースが現れた。
 手慣れた手つきでその横に取り付けられたパネルを幾つか操作すると プシュゥゥゥーッッ と内部の空気が溢れ出るような音と共に上端の蓋が外れる。
 クリスマスの朝、子供が枕元の大きな靴下を覗き込むような表情で堂島がその蓋を取り去ると、そこには高級そうなパーティドレスに身を包み、髪には豪華なティアラを、そして口には大きな酸素吸入マスクを着けた、”元”令嬢 三田詩織が納まっていた。

「くふっ、くっ、くっくっくっ...これはこれは詩織お嬢様、今日は一段と豪華に着飾っていらっしゃいますな」

 これら小夜子の演出に、至極満足げな高笑いをこぼした堂島は再びパネルに手を延ばす。
 ゴボゴボッという音を残してマスクに繋がるパイプが切り替わると、詩織の頬が次第に赤らみ、息が荒くなりだした。 やがて薄く開いた切れ長の眼に意志の光が戻りはしたのだが、目の前の箱の内側をじっと見つめるばかりだ。

「詩織、俺が分かるか?」

 詩織はまるでギィィィィィ、ガシャンとでも聞こえて来そうな機械仕掛けのロボットのように堂島を見上げ、腹話術の人形のように口を開いた。

「ハイ、アナタハ、ワタシノ、ゴシュジンサマ....」

 マスクの中でその籠もった台詞を響かせる以外、なんの反応も示さない詩織に痺れを切らした堂島は、面倒臭そうに同梱の冊子を取り出しパラパラとめくる。

『ご無沙汰致しております、堂島様。過日ご用命頂きました三田詩織の洗脳が完了致しましたので、お送りさせて頂きました。ドレスとティアラは当研究所よりのささやかなご贈答品とお考えいただければ幸いです。
 尚この度のお荷物は、過去の記憶、一般常識、尊厳、羞恥等の感情を一切排除された状態でのお届けですので、これらの再導入は堂島様の手により、赤ん坊のように一から躾直して頂く必要がございます。
 これら全て若しくは一部の補助プログラムとしてファイルNO.301をご用意させて頂きました。無意識状態に置かれた彼女に対し本ファイルを実行して頂きますと任意の薬液が混合され、自動的に付属のマスクより注入が行われた後、約30分で導入完了致します。
 其他ご不明な点はヘルプファイルをご参照頂くか、野島までご連絡くださればお役に立てるかと存じます。
 それでは、本製品にて堂島様がお楽しみ頂けます事を願って...』

 小夜子の痴態を思い描きしばし瞑想に耽っていた堂島だが、それよりも目の前の楽しみに食指を動かすと、玄関にドカッと腰を下ろし、プログラムを立ち上げた。
 
”人格導入プログラムNO.301(三田詩織専用)”

 パネルの横に設置された5インチ程度の液晶ディスプレイにそう表示された後、微かな機械音を伴い設定リストがズラッと並んだ。

  過去の記憶  Disabled , Enabled − LEBEL  MIN    MAX →Disabled
  一般常識度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →2
  人的尊厳度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →1
    羞恥心  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →5
   痛覚感度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →2
   性的感度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →3
  主人依存度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →5
    尊敬度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →5
    畏怖度  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →4
 動    作  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →3
  論理思考力  Disabled , Enabled − LEBEL  1,2,3,4,5 →3

「まぁ初めはこんなモンか...」

 そんな独り言を言いながら堂島はニヤニヤと薄笑いを浮かべ、スイッチを押した。

 シューッとマスク内に白い気体が溢れるとたちまちの内に詩織の意識は沈んでゆき、元の人形へと戻る。
 しばらくゴポゴポと液体を撹拌する音が聞こえたかと思うと、次には緑色の気体が吐きだされパネルに表示された棒グラフが少しずつ満たされていく。

 その間に堂島はリビングに戻り途中だった執務を再開したのだが、既にそこには無い意識はとても書類に集中出来ようも無い。

「ふぅぅっ..ダメだなこれは...」

 しばらくは書類と格闘していたが、諦め、そう言いながら軽く背もたれを倒すようにのびをした彼の目に留まったのは、リビングの戸口に立つ豪華なドレス姿の詩織。
 『30分程度』と説明されたのに遙かに短い時間で洗脳が完了した事に少し驚きながらも堂島は気色の悪い笑みをほころばせた。

「は、は、はじめまして...ごっ、ごしゅじんさま。わたし、み、みた、しおり、と、もうします。どうか、よろしく、おねがいします」

 それだけ言うのが精一杯といった感じの彼女は、真っ赤な顔で俯き、指先をモジモジと摺り合わせている。
 惚れ抜いた男に初めて自分の思いを告白する少女のような詩織の振る舞いは、彼女の昔を知る堂島にはとても想像出来ない程愛らしい物だった。

 昔の三田詩織....傲慢と尊厳が服を着て歩いているようなその女は周りの全ての人間を軽んじ、全ての男を蔑んでいた。唯一触れる事の出来た彼女の父親でさえ少しでもだらしない姿を見せる事をためらわせる程に厳格で、当然それは内閣官房長官と言えども例外ではなく僅か25才の小娘に畏怖の念すら抱く堂島であった。
 もちろんそれは彼にとって三田財閥の後ろ盾を失う事が怖いのであって、素の彼女に恐れるべき何物もないのは当然ではあるが....。

「あ、あの...ご主人様?わたし、は、お気に召しません、でしょうか?わたし、の、からだ、は、お役に、たてませんでしょうか?...ご主人様、のお気に召す女になる為には、どうすればいいでしょう?どんな事でも致しますので....どうか、どうか...お側に...」

「...ま、こっちに来なさい」

 主人に飼われる事だけを願い、主人に捨てられる事だけを恐れ、主人に奉仕する事だけを夢見ていた詩織の顔がパァッと明るくなった。

「はいっ、ありがとうございますっ!」

 嬉しそうな表情で主人に駆け寄り、詩織は堂島の側で直立する。

「詩織、お前はどうしてわしの奴隷になりたいのだ?」

 突然の質問に詩織は困惑の色を浮かべた。なにしろ彼女にとってこの男の奴隷になるのは心の底からの願いであり、あたりまえの事なのだ。その理由など考えた事も無い。

「あっ、あのっ、わたし...わたしは...その...あっ、もしご主人様の奴隷になれなかったら私が生きている意味が無いからです。私はご主人様に飼われる為に、ご奉仕する為に生まれてきたのですから。それ以外に理由などありません」

「ん?そうか、俺の為にな...それなら命がけで俺に奉仕できる、という事だな」

「はいっ!もちろんです。私の身体も心もご主人様のお望みのままに。もし至らない所がございましたら存分に罰をお与え下さい。それも私の望みです」

 堂島は胸の奥からこみ上げる笑いを噛みつぶしながら、これから始まる詩織の調教に思いを馳せていた。

(ククッ..これがあの三田詩織か?あの傲慢で生意気な女が俺の寵愛を命がけで欲している。クックックッ、だがこれからだな、お楽しみは...)

「ゴホン」と咳払いを一つした後で、堂島は彼女に向かう。

「ああ、それなら先ずすることがあるな。奴隷如きが主人の前でそんなに豪華に着飾るのはおかしいものだ。奴隷にはそれに相応しい姿というものがある」

「はっ、はい...奴隷に相応しい姿とはどのようなものでしょう?申しわけ有りません、お教え下さい」

 なんとか主人に飼って貰う為に、詩織の視線はどんどんと卑屈になっている。

「やれやれ、そんなコトまで教えにゃならんとはな...詩織、奴隷に服は許されんのだ。主人の前では全てを晒して居なければならん。そしていつでも俺の目を楽しませるよう工夫も忘れるな」

「はい、わかりました」

 そう言い、慌ててドレスのホックを外した詩織だが、それを床に落とすのは僅かに躊躇っているようだ。
 それもその筈で、詩織の羞恥心は今最大に設定されている。今までは主人に飼われる為に必死でそこまでは気がまわらなかったようだが...。

「どうした?」

「は、はい...申しわけありません、す、すぐに....」

 ふるふると白い肩を震わせながら押さえていた真っ赤なシルクの布を離すと、パサッと床に纏まった。
 果たしてそれを着けさせる必要があったのか?その中には同じく真っ赤なブラジャーとパンティ、そしてストッキングにガーターベルトまでが詩織の素肌を包んでいた。

「ククッ..小夜子も粋な演出をしよるわ」

 ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべながら舐めるようにまとわりつく視線からなんとか逃れようと、片足を軽く上げ、手は胸の前で交差されている。

「詩織っ!」

 その扇情的な下着と同じように真っ赤に染まった顔を俯けながらモジモジと太腿を擦り合わせていた詩織がビクッと身体を固まらせ、驚いた顔を上げた。

「なんだ、その態度は!お前はさっき俺の為になんでもすると言ったばかりだというのに、俺の目を楽しませろと言ったばかりだというのに、そんなに俺に見られるのが嫌なら服を着てさっさと出て行けっ!!」

 そう言い残すと、にやける顔を隠すかのように堂島は詩織の前から姿を消した。

 詩織の心を絶望が襲う...。主人に捨てられた..いやまだ飼っても貰えていないというのに、自分のなんと愚かだった事か....命までも懸けて尽くし抜くべき主人に何故素肌を隠すなどというバカな真似をしてしまったのか?
 後悔と疑念を振り払い、詩織は引きちぎるように下着をむしり取ると堂島を求めて広いマンション内を探し回った。

「ご主人様?ご主人様?!お許し下さい、ご主人様。もう二度とあんな真似は致しません。どうか、どうか....」

 悲壮な声で叫びながら、各部屋を一つずつ覗き廻るとようやく広い寝室に寝そべっている主人を見つけた。

「ご主人様っ!申しわけありません、お許しください。どうかこの詩織の身体を心ゆくまでご覧ください。お願いします」

 黙って天井を見上げている主人に向かい、詩織は立ったまま”大”の字に手足を開いた。

 さも面倒くさそうに横を向いた堂島の目に写ったのは、羞恥に真っ赤に染まった全身をフルフルと震わせながらむせび泣く、雨の中の捨て犬のように悲哀を込めた詩織の美しい裸身だった。

 だがそんな従順で可哀想な女の姿もただ堂島の嗜虐心を高める為の物でしか無かった。

「ダメだ、許すわけにはいかんな。お前が是非にと頼むから飼ってやろうとしたが、主人の躾を守れないペットは煩わしいだけだ。早く出て行け」

 羞恥に染まった顔から一気に血の気を失わせ絶望に包まれた詩織は、それ以上の反論をして主人に嫌悪されたくないととぼとぼと寝室を出ていった。
 だが未だ僅かな希望を捨てきれないまま、リビングの隅で小さくうずくまり主人の心変わりをじっと待っている。

 この絶望さえも調教の一環なのだと堂島はベッドの上でじっと時が経つのを待っていたが、先にしびれを切らしたのはやはり堂島だった。

 静かに寝室を出、そっとリビングを覗き込むと、未だに小さく肩を震わせながら抱えた膝の上に顔を伏せ「ご主人様、ご主人様....」とつぶやき続けている。
 
 予想通りのその姿を確かめた堂島は嬉しそうな顔を無理矢理造り替え、不機嫌そうにその部屋に入っていく。
 
「っ!!ご主人様ぁんっ!」

 心から欲してやまなかった男の姿を認めると、嬉々とした表情で立ち上がり、駆け寄った。
 だが、その相手は自分の横をすり抜け、まるで詩織など居ないかのように振る舞っている。

「あ、ああ....ご主人様.....」

 愛しい男の背中に細くしなやかな腕を伸ばし、触れる事をも恐れるようにその数センチ手前で空を掻く。

 ガチャッと冷蔵庫の扉を開け、缶ビールを取り出した堂島はリビングのソファにドカッと腰を下ろした。

 それでも諦めず、そっと主人の傍らに忍び寄った詩織は、床に尻をつき、曲げた膝を大きく広げ、手を後ろにつき、胸を目一杯反り返らせ、なんとかその目を楽しませようと、今の彼女に思いつく最もいやらしいポーズを取った。

 再び羞恥の色に染め上がる彼女の肌を眺めながら、ようやくその重い口が開かれた。

「いやらしい格好だな、詩織」

 思いもよらず与えられた主人の言葉に詩織の表情は見る見る内に歓喜に溢れる。
 
「はいっ、ありがとうございますぅ。どうですか?詩織のいやらしい身体はお気に召していただけますか?」

「ん?ああ、まぁまぁだな。どうだ、これからは毎日、四六時中俺を楽しませてくれるのか?」

「はいっ!もちろんです。いつでも何処でもご主人様を楽しませる為にはどんな事でも致します。あの、先程は本当に申しわけ有りませんでした....」

 腿の裏から廻した手で大きく掲げた尻たぶを割開きながら、あくまでも媚びた視線を投げかけ続ける詩織。

「よし、ならお前を飼ってやろう。これからはお前は俺の奴隷だ」

「は、はいっ!ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 転がり、這い、立上り、前から、後ろから、思いつく限りの様々なポーズを取りながら、詩織は主人の優しい言葉に酔っていた。

「では、こちらに来なさい」

 そう言って堂島が膝の上をポンポンと叩くと、「はいっ!」と嬉しそうな返事が終わらない内に飛びかかるようにしなだれかかる。詩織の腹を膝の上に載せ、左手で乳房を、右手では既に湿り気を帯びているその淫裂を、飼い猫の喉を撫でる様にやわやわと揉みしだいていく。

「あ、はぁぁん...ごしゅじんさまぁん..うれしいですぅ...きもちイイですぅ....」

 主人の興を買う為にも発せられたその媚びた喘ぎと熱い吐息が堂島の腕に吹きかけられる。
 そんな感触も含めようやく手の上に乗った獲物を散々嬲り楽しみ、その征服感に酔いしれていたのだが、なにか今ひとつ物足りないような気がし始めてきた。

(ん、そう言えば....)

 なにかに思い当たった堂島は膝の上で激しく喘ぎ、飛び跳ねている詩織の身体を無造作に押しのけ、立ち上がった。
 突然床に転がされた詩織は、またも不安そうな顔で見上げている。

「ごっ、ご主人様...私、また何か、悪いコトを......も、申しわけありません...お許しを...」

 訳も分からず謝罪する詩織をそのままに玄関先へ消えると、放置されていたアルミ製の箱を抱えて戻って来た。
 
「詩織、この中に入りなさい」

「え?は、はい...」

 果たして主人は怒っているのか、そうでは無いのか、この箱はなんなのか、ひょっとして捨てられるのではと、あらゆる疑問が湧き起こるがそれをぶつける勇気も無いまま詩織は黙ってその中で身を縮めた。

 不安そうに見上げる詩織の口に今度はてきぱきと吸入マスクを取付け、プログラムを立ち上げる。
 しばらくモニターの前で思案していた堂島の頬がニヤッと吊り上がると、ゆっくりと一つ一つ迷いながら入力を始めた。


  過去の記憶  → Enabled
  一般常識度  → 2
  人的尊厳度  → 5
    羞恥心  → 5
  痛覚感度  → 2
  性的感度  → 5
  主人依存度  → 5
    尊敬度  → 1
    畏怖度  → 5
 動    作  → 1
  論理思考力  → 3


 ウィィィィィィン...ゴボゴボゴボゴボッ....プシュゥゥゥゥゥゥゥッ.....

 さっきと同じ音を発した後、再び詩織の人格導入が始まった。




「今度はえらく時間がかかってるな」

 時計を見上げ少し不満そうな口調で呟くと、歩み寄りアルミケースを覗き込んだ。

(ん...?)

 見ると、既に意識を取り戻した詩織がマスクを着けたままシクシクと泣いている。

「どうした?詩織」

 堂島の問いかけにようやく気付いた詩織がそっと顔を上げ、泣き濡れた瞳をキッと引き絞る。

「くっ、堂島っ!...よくも、よくも私をこんな目に遭わせてくれたわね....憶えてらっしゃい。必ず、必ずあなたを殺してやるからっ!」

 どうやら全ての記憶を取り戻したようだ。いや無くしていた訳ではない、洗脳によって記憶の引き出しが施錠されていたという事なのだろう。それらを取り出した詩織の顔には堂島もよく知っている、刺すように鋭い視線があった。

「おっと、怖いな...詩織お嬢様。そんなにお望みならそうなされるといいでしょう。包丁は台所に、もしお帰りなら服はリビングに置いてありますから、お好きなように....」

 堂島は余裕の笑みを浮かべたまま横のソファに腰を下ろし、飲みかけのビールをグイッと空けた。

 詩織は堂島の目に極力自らの裸身が触れないように、箱を跨いで出る時もさっきは望んで晒した股間を隠しながら転がるように這い出ると、丸まって落ちている真っ赤なドレスを拾い上げ即座に纏う。
 そして射貫かんばかりの視線を向けたまま後ずさりでキッチンに近寄り、その収納扉を端から開けると見つけた包丁を取り出し、構えた。

「堂島、あなた私がこれを使えないと思ってるんじゃないでしょうね?ここまで辱めを受けて私が黙ってるとでも?」

 その言葉の勢いにいつものように気圧されそうになる堂島だったが、取り直し立ち上がると詩織の前にはだかるように立った。

「ええ、思ってますよ。それとも野菜炒めくらいなら作れるのかな?はははっ」

「くっ、外道がっ!」

 そう言い放ち、その切っ先に体重を込めた詩織が目の前の男へ飛び込んだ。
 ....が、狙ったその先に男は居なかった。避けられたのでは無い。詩織が身体をねじ曲げ、軌道を変えたのだ。

「ど、どうして....」

「ダメですよ、お嬢さん。私の心臓はココです。さ、しっかり」

 ”主人依存度 5”その効果に絶大の自信を持つ堂島は、再びその切っ先を自らの左胸にしっかりと固定し、詩織に促した。

 ”ただそこに体重を乗せるだけでいいのだ。そうすればこの非道な男を葬れるのに。”そう思いながらも一向に身体を操れない詩織。

「あなた、また私に何かしたわね...」

「いえいえ、そんな事はいたしませんとも。私を殺すのを止めているのはあなたですよ。あなた自身の心が私に生きていて欲しいと願っているのです」

 未だにいやらしいにやけ笑いを続ける男に背筋を凍らせた詩織は脱兎の如く玄関へと駆け出した。

 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 鍵は外せた、しかしドアが開かない。いや開けようと出来ないのだ。明らかに詩織の心がここからの脱出を拒んでいる。

「どうしました、詩織お嬢様。そこを出ておうちに帰れば綺麗なドレスも暖かい食事も有るというのに。このような貧相なマンションではあなたには狭過ぎますでしょう?どうですか?その風景、想像してみて下さい。広いお屋敷、豪華な食事、優しいご両親、あなたに傅く者達、高価な宝石、そして..私は..居ない....」

 詩織の顔から怒りが失せ、大きく開いた指で顔を覆いながらズルズルと玄関の扉に背を滑らせ、頽れていく。
 
「いっ、いや...?そんな、そんな所...で、暮らせない....何故?今までずっと住んでいたのに...どうして....屋敷、食事、お父様、お母様、執事、宝石、そして...堂島、は....い...ない?」

「ふふっ、ようやく気付かれたようですな?あなたが生きる為に必要なのは誰なのか、あなたがこの世に居るのは誰の為なのか、それがあなたの行動を縛っていたのですよ」

「そ、そんな...私があなたを、あなたみたいな人を..欲しているというの?そんな筈は...」

「やれやれ『あなたみたいな』ですか?そんな口を利く奴隷にはもっと躾が必要ですな?」

「なっ、なにを...」

 堂島の言葉の意味は分からなかったが、吊り上がった眉とその口調にはっきりと怯えを感じていた。

「詩織っ!!」

 バチィーーンッ!

「キャッ!」

 生まれて初めて受けた頬への痛みにさっきまでの怯えをさらに増大させた詩織は、自分の肩を抱きしめガクガクと震え始めた。
 
 ”畏怖度 5”その数値の程が堂島にもようやく分かり掛けていた。でなければこの程度でこの女が肩を震わせたりする事はないだろう。
 目の前で仁王立ちし、昔の自分にも有った筈の強烈な視線を向けるこの男に、詩織の心は折れかけていた。

「なっ、なんて事を....お父様にも殴られた事無いのに...」

「くくっ...当然ですな。父上はあなたを躾ようなどとは思われておられないようですのでね。代わりに私がお教えいたしましょう。飼い犬の作法というやつをね。くくくっ...」

「飼い犬?...くっ、誰が....堂島っ、いい加減にしないと.....」

 ガァァァァァンッ!

 詩織の背後の鉄扉が堂島の蹴りを受けてその振動音を部屋中に轟かせる。

「ヒィッ、や、やめ...」

 さっきまで無理矢理作り出されていた毅然とした表情は、その一瞬で霧散した。怯えた子犬のような表情で堂島を見つめているが、それはさっきの従順な詩織が見せていた”捨てられる恐怖”とは違う、純然たる畏怖の表情だ。

「詩織、立ちなさい」

 それでも震え縮こまったまま動こうとしない詩織にグイッと顔を寄せ、その尖った顎先を掴み上を向かせる。

「私の言った事が聞こえなかったようだな。耳の悪い牝犬にはもう少しきつ〜い罰が必要かな?」

「や、やめ....たっ、立てば...いいんでしょ....」

 言葉に今出来る精一杯の強がりを含ませズリズリと背中を扉に擦り付けながらようやく立ち上がれた詩織を、堂島は大きく見開いた眼で威嚇する。

「どうやら耳は聞こえてるみたいだな。そうやって素直に言う事を聞いていればお仕置きは受けずに済むものを」

 そう言って後ろに長く垂れ下がる美しい黒髪を一束掴むと、引きずるように寝室へと連れ込む。
 ドサッとベッドに放り投げられた詩織は引きつった恐怖の顔を振り向けた。

 堂島が先程玄関で拾い上げた包丁を掌でペチペチと弄びながら彼女の傍らへと歩を進める。

「詩織...」

「ヒィッ...来ないでっ!」

「詩織、服を脱ぎなさい....犬に服は必要ない」

「そんな..やめて..お願いよ.....」

「そぉ〜か...嫌ならいい。なら私が代わりに脱がせてあげよう。動くなよ」

 まるでドラマに出て来る連続殺人犯を装い、その演技に酔いながら、堂島の足が小刻みに震える詩織の腹を踏みつけた。

「ぐ、ぐぇっ....」

 内蔵の痛みに耐え、迫る切っ先の恐怖に耐えながら詩織の全身が硬直する。
 頬を優しく撫でる刃を必死で寄せた眼で追いながら詩織の身体は指一本動かせなくなっていた。
 やがてドレスの胸元に差し込まれた刃先がゆっくりと降ろされると、文字通り絹を裂く音と共に白い裸身を露わにしていく。

「やめて、やめて....傷つけないで...お、ねが..い....」

 力無く、耳に微かに届く程の音量で流れ込む哀願を聞きながら、少しずつ現れる柔肌に堂島はそっと指を滑らせる。
 真っ白な前身が二つに分かれたドレスの間から覗き、それを隠す程の気力も奪われた詩織の肌は、ふるふると震えながら羞恥に染まる。

 もう必要の無くなった包丁を部屋の隅に投げ捨て、立ったまま指先を軽くその肌に走らせる。

「ん....く....や、やめて...おねがい...もう...」

 ”性的感度 5”...そのレベルの異常性に詩織が気付くのはもう少し先の話だが、”恐怖と快感”この二つを最大に上げられた女が、そしてそれを熟知した男の繰り出す責めに抗う術などないのだろう。
 その指先が胸の双丘を丸くなぞり、やがてその頂に辿り着いた時、詩織の性感が一気に開いた。

「あっ、ああっ....ん、くぅぅ...ん....」

 だが同じく最大に上げられている”尊厳”が快感にその身を委ねるのを辛うじて押し留めている。

「くくくくっ...無理は身体によくないぞ。どうだ、言ってみるか?『もっと触って』ってな」

「だ、誰が....あなた、みたいな..人に...」

 快感が若干は恐怖を晴らしてくれたのか、墜ちる寸前に昔のプライドを思い出したのか、目の光りだけは僅かに昔の強さを戻していた。

「おやおや、まだ『あなたみたいな』ですか。ではもう少し思い知って頂くとしましょうか」

 堂島は詩織の背中に敷かれていたドレスを引っ張り出しビリビリッ幾つかにと引き裂くと、そのしなやかな四肢をベッドの各脚に括り付け、X型に固定する。
 ”身体の自由を奪われる!”今まで押さえていた恐怖が再び詩織の中に湧き起こり、激しい抵抗を促した。

「いやぁぁぁぁぁっ!やめてっ、やめなさいっ!くっ、堂島ぁっ!」

「ふんっ、まだまだ元気はありそうだ、そうでなくてはな。くくっ」

 どこから取り出したのか、卓上掃除用の羽を持った堂島の手がそっと降ろされ、波打つ腹部をそっとなぞった。
 
「きゃぅっ!...そ、そんなモノで...この、変態っ!」

「はぁ、ったく、この程度で変態呼ばわりとは、世間知らずも甚だしいな。そんな事では立派な奴隷にはなれんぞ、ん?」

「だ、だれがっ!」

 額に皺を寄せながらも必死で睨み付ける詩織の視線を楽しそうに受け流し、大きな羽根がその素肌を駆け回る。
 
「んんっ..く、ん、くぅっ.....ああっ、んぐ..く、く、ん..ああああっ...む、ぐっ..」

 歯が折れるかと思うほど食いしばった口からは、微かに、断続的に、艶を含んだ吐息が漏れ始めた。
 
「ほ〜ら、ほ〜ら...気持ちイイかね?それともまだおぞましいかね?」

「ん..おっ、おぞま...しい、わ...んくぅぅ..」

「いいねぇ、いいよ、お嬢様。そんなにおぞましいなら、まさかよがったりはしないんだろうね?」

「あっ、あた、りまえ..よ...だれが、おまえ、なんか、に..そんな、声を...んぐっ、ぁぁぁっ...く」

 下腹部、脇腹、太腿、首筋、足裏、それらを優しくなで続ける羽根の愛撫に詩織の官能は今にも屈しそうだ。
 肌はほんのりと朱に染まり、全身は小刻みに震える。そしてその美しい脚の間、慎ましやかな茂みの奥からはその証がトロトロと流れ、堅くすぼまったままの後ろの蕾をも濡らしながらシーツに大きな染みを広げている。

「おおっ、いつの間にこんなに濡らしていたんだね?まさか感じている訳でも無いだろうに」

「う、あぁぁぁっ...ん、く、そ、そんなワケ...ない..ん、はぁっ...んむ、く、ぐっ...」

「は〜はっはっはっはっ、だろうな。まさかあの詩織お嬢様がこの年寄りのしかもこの変態のような愛撫で、これほど感じるワケは無いだろうからな。ん?と言うことは、この染みは...はっ、ま、まさかお嬢様、粗相をなさったのでは....くくっ。」

 彼女自身その部分が濡れているのはなんとなく分かってはいた。だがあまりにも理不尽なその反応を頭ではどうしても認められず、かといって”おもらしした”とも言う訳にはいかない。屈辱と羞恥と自分の身体を呪いながら詩織は食いしばった歯をギリギリと鳴らした。

「ん?どうした”お漏らしお嬢さん”?と〜っても悔しそうな顔だが、それは言いがかりと言う物だ。私は君が『決して感じたりしない』というからこうやって遊んであげてるんだ。こ〜んなにシーツを汚される位なら初めからそう言ってくれればやらなかったよ。これからはちゃんと言いなさい『感じすぎてお漏らししちゃうから触らないで』ってな」

「くっ、へんたい....」

 睨み付ける目の形は変わりはしなかったが、その端から一粒の大きな涙がこぼれ落ちた。

「ふん、よかろう。それ程言うならもっと変態らしい責めを味わわせてあげようじゃないか...」

 彼女の波打つ肢体を楽しむのも確かに悪くは無いが、今堂島は無性にその涙が見たくなった。あくまでも強い光を放ったままの瞳から零れる涙が...。

 そう言って執拗に嬲っていたその羽根をハラリと落とすと、詩織の正面から覆い被さってゆく。

 首筋をデロンと舐め上げるナメクジのような舌先に、おぞましさと、それを上回る快感が駆け抜ける。
 脇腹をツーッと撫で下ろす害虫のような指先に、嫌悪感と、痺れる快感が渦を巻く。
 そして彼女の淫部をねっとりと揉み込む軟体動物のような手管がそれら全ての感覚を凌駕し、一瞬で彼女の思考を支配した。

「やぁっ..くっ..あっ、あああっ、ダ、ダメよ...こんなの、が、イイわけ...ない...ん、ん、くぅぅぅん.....あ、あはぁぁっ..あ、あ、あんっ....あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、ああああああっ、んうぅぅっ!」

「ははははっ、お嬢さん、ダメですよ、はしたない...そんな声を出したりしたら気持ちイイのかと思ってしまうじゃないですか」

「んんん....ああっ、きっ、きもちイイッ....ワケないっ!....くぅぅっ...ああああん..」

「ですな。なんと言っても”三田財閥の御令嬢”なのですから。少しくらい気持ち良くてもご辛抱頂かねば。間違ってもイったりはしないで下さいよ。ははははははっ」

 ”三田”その家の名前だけが詩織のプライドを守らせていた。だが執拗に責め嬲るそれらの言葉に、まるで上半身と下半身の神経がせめぎ合うかのように詩織の中で葛藤が繰り返される。

(もう、イってしまいたい。この浮遊するかのような快感に全てを委ねてしまいたい。
 ダメ!絶対に..こんな男の前で気をやったりするわけにはいかないわ。私は....三田詩織よっ!
 ああっ、どうして、何故こんなに、アソコが..熱い...腰から下がとろけて無くなってしまいそう。
 くっ!せめて目の前の男が堂島でなければ...どうしてもこのいやらしい男に屈服するのだけはイヤ!
 ん、はぁぁぁっん..気持ちイイ....目を閉じれば、見なければ、今私の身体を愛撫しているのは他の...例えば....あの人なら...
 でも、でも、私のはしたない姿が、この男に見られるなんて...許せない...
 でも、もう我慢出来ない...このまま、ほんの一瞬だけ気を抜けば、目を閉じて、ここを夢の中だと思えば...辿り着ける、あそこに...
 く、くやしいけど...許せないけど...もう、もう、身体が勝手に...あっ、あああっ...今、私を触っているのは..堂島じゃない、こんな醜い老人じゃない...若くて....清潔で...上品な....あの人....
 そ、そうよ、私はこいつの愛撫でイくワケじゃないわ。この指はあの人の指、この舌はあの人の、そしてこの吐息も...)
 ほんの僅かな緩みから決壊し始めた詩織の理性のタガは瞬く間に望まぬ所へと転がり墜ちてゆく。

「あ、あ、あっ、あああああっ!んくぅぅん..あぁん、あん、あん、あん、あん、あ、はぁぁん..ん、くぅぅ...ああああああっ、た、たじまさん..いい..いいの...ぅぅぅぅ、ああ、ああああああああっ」

 唯一許せると思っていた男の名前を呼び、堅く閉ざした瞼の裏にその優しげな姿を浮かべながら詩織の意識はその瞬間を大きく手を広げ迎え入れようとしていた。

「イ、イクッ!」

 ....と、その直前、指は引き抜かれた。突然に冷水を浴びせられたかのように現実に引き戻された詩織は、次第に晴れていく視界の向こうに直視したくない現実と共にその老人の下卑た笑いを捉えた。

「くくくくっ!誰が”たじまさん”だ?そのたじまはこのいやらしい乳首をこんなにとがらせてくれるのか?このだらしないおまんこをこんなに気持ちよくしてくれるのか?そう思うのなら今すぐここにその男を呼んで来るんだな。でなければお前のこの淫乱な身体は満足出来はしないぞ」

 再び降ろされた堂島の指が冷めかけた身体を再び熱病の床へと誘なってゆく。

「あ、くぅっ..あ、あん、ああああっ...もうダメ...た、たじ...」

「ああん?”たじま”じゃないぞ。ここに居るのは、堂島重三だ。お前のだ〜っい嫌いなオヤジだよ。いいのか?俺の指にイかされていいのか?」

「くっ...だっ、だれが..ああああっ!」

「くくっ、やせ我慢しやがって。ほれほれ、イきたかったら『大好きな堂島のおじさまの指でイかせて下さい』って言ってみろ」

「むぐ...んぐぅぅっっ....」

 それほどにこの男を嫌悪しているのか、それともLebel5にまで上げられているプライドが性感を遙かに凌駕しているのか、やがて詩織の堅く食いしばった口元から血が滴り始めた。

(ちっ、”尊厳”を上げ過ぎたか?...いや、それではおもしろくない。何が何でもこのまま墜としてやる....この高慢ちきな口で『おちんぽくわえさせてください』って吐かせんともう気が納まらんわい)

 少し張り切りすぎたのか、微かに息を荒げる堂島は、今度は詩織に目隠しを施し、口にもタオルで猿ぐつわを噛ませた。
 視界と言葉までをも奪われた恐怖に詩織の血の気がまたしても失われる。

 ウーウーと呻き暴れる詩織の肢体を眺めながら、引き出しから取り出したメンソレータムをたっぷりと乳首とクリトリスに擦り込む。
 そのヌルヌルとした感触に、呻きは再び喘ぎに変わり、暴れる四肢は代わりに背中をのけぞらせている。

 だがこれまでとは少し様子が違う用だ。執拗だった淫部への責めは終わりを告げ、堂島の気配が消えた。

(やっと...終わったの?...もう....)

 だがそんな淡い期待はすぐに思い過ごしなのだと知る事になる。
 それまでのようなグイグイと押し上げるような愛撫よりも、ジワジワと股間と胸をとろかせるような不思議な感覚。
 これまでは与えられる感覚一つ一つを嫌悪と取り、憎しみを募らせ耐えていた詩織だが、今はその対象も無く自分の身体の内から湧き起こる欲望に苛まれるかのように悶え苦しんでいた。

「あ、あああっ、あんあんあんっ...くぅぅっ、ん...はぁぁぁぁっ.....んむぅ...」

 ポタッ...

 詩織の肩口に一滴のしずくが滴った。
 それはタラーッと乳房の横を通り脇腹に流れたかと思うと、その軌跡の部分にいつまでも残るスースーとした感覚と柑橘系の香りを残して蒸発した。

(何?これは...なにか揮発系の...整髪料のような...)

 ポタッ...

 2滴目......3滴目.....

 先程淫部に塗られた物と同じようなヒリヒリとした感触を身体に残し、ジワジワと詩織の性感を刺激する。
 3秒後、10秒後...連続的に、3分後に...波打つ腹に、震える乳房に...不定期に、不確定に落とされるその滴を、求めているのか、恐れているのか..分からないまま只々その柔肌が構え、待ち受ける。

「んんん〜....んむぅ...」

 揮発し、ピリピリとした発情の名残がようやく消え去ったかと思うと、その上に再び落とされた滴は詩織を更なる高みへと誘なう。
 決して登り詰める事など出来はしない液体の愛撫だが、最早最大の性感でそれらの感触をいつまでも耐え続ける事など出来ない事も詩織は朧気ながら気づき始めていた。

 そしてそれがいつまでも熱く火照り続ける淫部の蕾へと落とされた時、詩織の背骨が大きく反り返り、少しの液体がピュッとまるで射精のように迸った。

「あっ、あああああああああっ、んくぅぅぅっ....」

「くっくくくくっ...おいおい、お嬢さん、そいつはお漏らしかい?それともあんたがド淫乱の証かな?どっちにしても格好のいいモンじゃないがな。さっきから言ってるだろう、俺のベッドを汚すなってな。まったく躾のなってない牝犬はたちが悪いよ」

 それからも言葉で嬲られる度に無理矢理理性を取り戻させられる詩織だったが、30分も責め続けられた後外された目隠しの中では、既に刺し貫くような視線は無くなっており、涙でアイシャドウをぐしゃぐしゃにした眼の端はだらしなく垂れ下がっていた。
 堂島はその眼の奥までをしっかりと確認すると、にやけた笑みで服を脱ぎ捨てる。

「ほ〜ら、お前の大っ嫌いなオヤジのちんぽだぞ。ほれほれ...もっと嫌がらないとその可愛いおまんこに突っ込まれちまうぞ」

「んん..うむむむむぅっ....」

 顔の真横でその年不相応の剛直を見せつけられた詩織の目が大きく見開かれ、猿ぐつわの内で喉の奥から声を絞り出そうとしている。
 果たしてそれは嫌悪の悲鳴か、淫楽への哀願か...。
 だがその声を聞こうともせず堂島は、中止されていた全身への愛撫を再開し、堅くなった分身の先で赤く染まった頬をペチペチと叩いた。

「ん〜、んふぅぅっ....ん、ん...」

 だがもう詩織は明らかにさっきとは違う、とろけるような瞳でくぐもった喘ぎを漏らしながら首を傾け、頬を堂島のそれに押しつけているようにも取れる。

「おい、詩織っ!お前まさかこれが欲しいなんて言うんじゃないだろうな?お前は三田財閥のお嬢様なんだぞ。まさかそんな事が許されるとは思ってないよな?」

 鬼畜の笑みで詩織の上に覆い被さった堂島は、出っ張った腹を擦り付け、メンソールの味のする乳首に歯を立て、ヒンヤリとするクリトリスを剛直の先で弄ぶ。

「くっくっくっくっ...俺も挿れたいのは山々なんだがなぁ。まさか三田のお嬢様のおまんこに突っ込む訳にもいかんし...くくっ」

 真っ赤に血走った眼で髪を振り乱し、詩織は首を大きく横に振っている。

「なにをキャンキャン吠えてるんだか...野良犬はこれだから困るな...」

 呆れたようにそう言いながら堂島は待ちかねたプレゼントのリボンを解くように、嬉々として拘束と轡を外した。

「おっ、おじさまっ!お願い、イかせてっ!もう、もう、我慢できないの。ねぇ、ねぇ、イかせてよぉぉぉぉぉっ!!」

 さっきまであれ程嫌悪していた老人の腹に縋り付きながら断末魔の絶叫のように枯れた喉から発せられるその哀願は、心地よく堂島の耳に染み込んでいった。

 だがそれが容易く叶えられる事は無く、詩織の頬にしわがれた掌が打ち下ろされる。

 バシィッ!と大きな音を響かせたその平手は詩織の最後の尊厳を打ち砕くのに充分だった。

「キャッ!あ、あ、あああああっ....おじさま.....ごめんなさい、ごめんなさい...許して...もう二度とあんな態度はとりませんから...どうか、許して....」

「詩織、お前はなんだ?どこのお嬢様だ?三田の娘がそんな淫乱でいいのか?」

「ちっ、違います...詩織はもう...三田じゃありません...おじさまの....めっ、牝犬に、なります。だから、だから...どうか、シてください...」

「ふん、意地汚い牝犬だな....だがそんなに餌が欲しいのならまずご主人様を満足させてからだ。ほれ、精一杯しゃぶってみろ!」

「は、はい....。よろ、こんで...」

 未だ僅かな迷いが残っているのか、慣れていないせいなのか、決して”素早く”とは言えなかったが、その表情は裏筋一本をも愛おしいとでも言わんばかりに頬擦りをし、舌を這わせ、小さな唇で包み込んでいく。

 チュパッ、チュパッ、ジュルッ、ニュルッ....

 媚びた視線を上目使いに向けながら、慣れない奉仕を一心に施す詩織。
 その態度に今までの鬱憤をようやく晴らせた堂島は、その美しく長い黒髪を一杯に掴み、ベッドに投げ捨てるように押し倒した。

「よし、よかろう、詩織。餌をくれてやるからその汚いまんこを一杯に広げて見せろ!いやらしくなければ餌はやらんぞ!」

 その待ち望んだ言葉に満面の喜悦を浮かべた詩織は、仰向けに転がった姿勢から両膝を乳房が押しつぶれる程に抱え込み、服従のポーズを取った。

「ありがとう、おじさまっ!ああっ、早く、早くっ!」

 ジュブ..ジュブゥゥッ....

「つ、い、いた....くぅっ、んんっ....」

 あれ程待ち望んだ挿入の刻だったが、その瞬間は流石に破瓜の痛みが詩織の股間をピリピリと引き裂いた。
 だが、それも僅か数秒、”痛覚感度2”の設定が功を奏した。
 堂島の剛直が詩織の最奥を僅かにつつきながらじっと待っているとやがて彼女の額に寄せられていた皺が徐々に緩み始め、弛緩し、だらしなく垂れ下がった目尻が官能の幸福を醸しだし始める。

 嬉しそうに頬を吊り上げ、しがみついた腕と共に腰に巻き付けた美しい脚にギュゥゥッと力を込めた詩織の要望に応え、堂島の腰が少しずつ動き始める。

 ズリュッ、ズリュッ、ジュボッ、ニュルッ.....

「あ....はぁぁっ...キ、モチ...イイ.....」

 その妖艶な吐息に脳を一気に犯された堂島は、これまで溜め込んできた欲望を股間に込め精一杯のスピードと力を込めて詩織の股間を叩き始めた。

 ニュチャニュチャニュチャニュチャニュチャ.....

「あっ、あああああああああああっ!おっ、じさまぁぁぁん....イイっ、ですぅぅっ。おじさまのおちんぽ、おっきくて、堅くて、詩織のおっ、おまんこが、一杯になってますぅぅっ....」

「くぅぅっ...こっ、これ程、とは...最高だ.....し、詩織、おまえは、もう堂島、詩織だっ...」

「あああん、嬉しいっ!おじさまっ、もう、もうっ、我慢しなくていいの?いっぱいイかせてくれるの?ああっ、もう、私、戻れない、戻りたくない...おじさま、これからもずっと可愛がって下さいっ。詩織の身体を、おじさまのものにしてくださいぃぃ...」

「よ、よし、....これからいくらでもイかせてやるからな。く、うぅっ、イ、イくぞっ!」

「はいぃっ!くださいっ、はやく、はやく、詩織の身体を、おじさまのモノで、おじさまの匂いで一杯にしてくださいぃっ」



(ああっ、こんなに、もうお年だというのに、私の為に、こんなに腰を動かしてくださってる。こんなに一所懸命突き入れて下さってる。
 うれしい、この方になら全てを委ねられる...
 どうして家の名前などにあれ程こだわっていたのだろう?
 なんの為にあれ程我慢していたのだろう?
 今この快楽を味わう以上に大切な物など在るわけが無いのに....
 これからこの方に仕えていく以上に私の幸福が在る筈が無いのに....。

 ああ、詩織は幸せです。私は、もっと、この方の為に何かをして差し上げたい、この方の為にもっといやらしい身体になりたい。
 たとえこの方のおちんぽが動かなくなっても、たとえ私の身体に興味を示されなくなっても、この方の傍に居られればきっと私は幸福に違いない。
 でも今は、もっと、私の身体で、気持ちよくなって頂きたい。
 どうか、どうか、私の身体で、私と同じ位、この方も、気持ちよくなって頂けてますように....)

 そんな切ない祈りを込めながら、詩織の腰が一層妖しく蠢き始める。
 そんな必死の願いを露とも知らず、堂島の腰が一層強く叩きつけられる。


 そしてその一突き毎に快楽の頂を乗り越え、人として、女として、通常では辿り着けない程の所にまで飛ばされた心を持って今、隷嬢詩織が生まれ墜ちた。

 
 
< 終 >


 

 

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