黒と白


 

 

07. 館


「ご主人様、今日は少しご機嫌がよろしいようですね」

 主人の気分が伝染したのか、胸以外は細めの肢体を質素なメイド服に包んだ風見麻里が嬉しそうに言う。

「ん?いや別にそんなつもりはないんだが」

「今日は横浜でございますか?」

 その屈託の無い笑顔の中に、全てを見透かされているような気にさせられた影一は、少し困った風な顔を見せると、

「お前、少し先回りしすぎだ。だんだんと茜みたいになってきやがる」

「あら、茜お姉様だったら光栄ですわ。でもご迷惑なら少し自重しましょう」

 少しうつむきながら麻里が一歩下る。

「いや、まぁ、迷惑って程でも無いが...」

 口の端を少し引きつらせながら、少しの間彼女を見つめると、顎を少ししゃくり...促す。

 それだけで主人の想いを全て理解したのか、しずしずと足下に跪き三つ指をつく。

「失礼致します」

 影一のパジャマと下着をゆっくりとずらし、高価な陶磁器に触れるかの様にそっと主人の肉棒を取出すと、愛おしげに舌と指を這わせ、暖かな唇で包み込んでいった。

 くちゅくちゅ、じゅるっ、ちゅぱっ、ちゅっ、にゅるっ...

 耳に届く音ででも奉仕したいといった風に、いやらしく官能的な音を充満させながら最高の舌技を駆使し、少しずつ、確実に主人の心を高めていく。

 奉仕の手を休める事無く、するすると紺色のメイド服が落されていくと、中から絶妙な形を保つ大きめの乳房が姿を現し、主人のそれに押しつけられる。優しく包み、揉みこんでいるかと思うと乳首の先でくすぐる様に先端から根本までをなぞり上げている。
 少し刺激が足りないかと思う寸前には、再び口に吸い込まれ激しく頭を前後させながら胸の先で太股の内側や陰嚢を弄ぶ。

 唇、舌、指、音、乳房、唾液、髪、視線..それら全てが完璧に調和のとれた彼女の奉仕は、あくまで優しく、そっとした動きであるにも関わらず、影一の神経を足先から背筋を通り頭の先までをじりじりと焦がしていく。

 自分の感じる所、感覚を高める囁き、安らげる空気、それら全てを見透かし、絶妙に攻め立てる麻里の動きは影一に逡巡の隙をすら与えない。

 どぴゅっぴゅっ、どくどくっ

 ついに崩壊したその先から迸る白濁液を、口腔内でかき混ぜ、咀嚼し、恍惚の表情で飲込んでいく麻里。
 そして肉茎内の最後の一滴までを丁寧に搾り取ると ちゅぽん という音をたてて唇から解放し、膝立ちのまま一歩下がり再び三つ指をついた。

「ご主人様、ふつつかな牝犬に貴重な餌を恵んで下さいまして、ありがとうございます」

 麻里は口上を述べると額を床に着けたまま、主人の次の言葉をじっと待っている。

 影一はそんな従順な人形に僅かな憐憫の情を覚えながら、立上がり、告げた。

「食事にしよう...ああ、それから今日は横浜だ。準備してくれ」

「はい、かしこまりました」

 従順に了承の言葉を返しながらも、その表情には僅かにいたずらっ子の様な笑みが浮んでいたのを見逃さなかったが、それ以上は追求せず影一は逃げるようにさっさと食堂へと向かって行った。




 緻細な彫刻が部屋の随所に装飾され、天井からは蝋燭が数十本立てられた豪華なシャンデリアが吊下がる食堂には、こちらも名工の手による物と思われる両側20人は座れる重厚な食卓が鎮座していた。 
 しかしその周りには、本来その大きさに相応な組で置かれるべき椅子が端に1脚有るのみで、それはその席で食事することのできる身分の物が一人しか居ない事を示している。

 その席の主、天野影一は玉座の如き椅子に深々とこしかけたまま手を肘掛に乗せている。

 その両横では全裸にメイド用のエプロンだけを身に付けた牝犬達が、丁寧に食事を、熱い飲物は細心の配慮を持って口に運んでいる。
 そしてその一歩後ろでは紺色のメイド服に身を包んだ麻里が、時折他の牝犬達に指示を送りながらナプキンを手に直立していた。

 影一の足下、白いテーブルクロスの中には今日初めて地下室から出ることを許された、本田優子が一心不乱に口淫奉仕を施している。
 既にどろどろの淫裂をぐちゃぐちゃと掻き回したり、乳首を挟んで引張り下げる器用な足指も時折は舐め清めながら、こみ上げる情欲に流されない様、必死で主人への奉仕に意識を集中しようとしていた。

「ちっとは上達したみたいだな...調教の腕は俺よりいいんじゃないのか?麻里」

「とんでもございません。未だにご主人様の御心も判りかねる牝犬が他の者達にご奉仕の機微を伝える事など出来ようもありません...ただ、私の伝えた技術に多少なりともご主人様の感じ入る所がありましたら嬉しく思います...」

「相変らずご謙遜だな。その辺は茜と足して割ってくれてもいいんだが」

「申し訳ありません。ご主人様の御心に沿う様努力致します」

「言ってるそばから直ってねぇな。ま、それも麻里だ...かまわんがな」

 影一は指を少し曲げ麻里を呼寄せると、顎を掴み食後のデザートに彼女の唾液を啜り取っていった。






「後は頼んだぞ」

「行ってらっしゃいませ。お気を付けて..」

 手を腹の前で組み、腰を45度に折曲げ、視線を落したまま微動だにしない麻里を後にし、門外の延々と続く街路樹を眺めながら歩いていく。

 数分程歩き、駅への曲り角に差掛かった時、ふと気になって館の方へ視線を向けると、少し開いている鉄製の門格子の間から今もこちらに向かいお辞儀をしたまま動かない麻里の姿が見えた。
 その光景に他愛ない興味が沸いてくる..。

(あいつは一体いつ顔を上げるんだ?何十分もあのままなんだろうか?)

 それを確かめる為しばらく見ていたい衝動に駆られたが、思い直し、方向を変え再び歩き出す。

(きっとあいつには見なくても俺がどこに居るのかが判るに違いない。ご主人様センサーかなんかが付いてやがるんだ。
 ...するとさしずめ茜に付いてるのは”俺の好みの女センサー”だな)


 そんな下らない想像に僅かな苦笑を漏しながら、影一は駅の改札をくぐって行った。

 
 


 

 

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