蟲の湧く星


 

 

後編


<利岡正樹のビジョン>



「こうやって調べてると、社会性昆虫って、本当に人間とあんまり変わらないよね。もちろん、六脚とか成長過程での変態とか、外骨格とか、見た目は人間と正反対というくらい違い過ぎるけど、集団の中のヒエラルキーとか見てると、………ちょっとゾッとするくらい、似てるところがある」

 利岡正樹は、体育館の舞台で図鑑を捲りながら話す。図書室から持ち出し禁止となっている大型書籍だが図書係も担当の先生も、今は正樹の『裏方AD』として、身を粉にして働くことに生き甲斐を見出してくれている。1−Fの教室で大騒ぎした後で、F組以外の1年のクラスは、担任の先生から学年主任の先生まで含めて、正樹の『雑用スタッフ』になってもらった。もちろん、裏方ADからも雑用スタッフの中からも、数名の選りすぐりの可愛い女子には、この体育館で正樹への性的な奉仕を特命業務として拝命している。綺麗な子たちが、特別に光栄な使命を得て、溌剌と働く姿は、見ているこちらの心も和ませるほど、微笑ましい光景だ。

 一昨日から、「中間試験前の特別合宿」と称して、1−Fの皆や水川先生、そして他学年にいる正樹のお気に入りの子たちと共同生活を送っている。部活が終わる時間になると皆で体育館に寝泊まり。夕食は家庭科室、シャワーはクラブハウスを利用する。霊素蜂に寄生された人たちが暴走しないように様子を確認しながら、一括で定期的な指示も出せるので、効率がいい。これは水川先生の提案だった。

『外骨格が人間と対照的って、言ったかしら? ………貴方はまだ、肉体しか見ていないのね。私たち、霊素蜂の見ている世界では、人間も部分的には外骨格の生き物よ。それは貴方たちの精神。外は殻で固めようとしているけれど、中に行くほどグチャグチャしていて、自分自身でもコントロール出来ていないように見えるわ。………おかげで、私たちが侵入して生育の糧にさせてもらっているのだけどね。』

「昆虫って、種によって、二酸化炭素や紫外線を感知したりも出来るんだね。人間と違う情報を解析して見てる世界って、やっぱり違って見えるのかな?」

 正樹はボンヤリと目を図鑑から体育館に移す。体育館の壁際を、兵隊たちが訓練のために何週も、半裸でランニングしている。前の走者を1人追い抜くたびに、1枚服を身に着けて良いというルールにしているので、抜きつ抜かれつ、着たり脱いだりの、変化があるデッドヒートが見られる。体力のない女の子はとっくに全裸になって床にうつ伏せになってへばっている。1周、周回遅れになるごとに、1人、自分が嫌いなタイプの男子生徒をフェラチオでいかせなければならないという罰ゲームを設定したら、初日よりも頑張って走ってくれるようになっていた。

 中央付近では『調教後の猛獣』となった3年のお姉さまたちが、サーカスのように輪っかをくぐったり、玉乗りを見せたりしている。『家畜』の役割を授かった先輩たちは『種馬』になったつもりの後輩女子に順番に「中出し」の真似事をされながら、涎を垂らして発情期を満喫していた。40頭からの四つん這いの裸が、順繰りに後ろから犯されて、前後に激しく揺れながら性的興奮の唸りを上げている。ペニスバンドをつけた下級生の女子たちには、あえて華奢で幼い体型の子を選んで『種馬』に仕立てた。みんな野生に帰って、牧歌的な繁殖の風景を見せてくれている。

『そうね。私たちは人間や知的生物の脳波も感知するし、脳内物質をコントロールして、快感・不快感も支配する。宿主の思考を複写して考察したりしながらも、宿主の思考に自在に干渉出来る。だからこそ短期間での成長の過程で、自分を規定するロールを与えられていないと、暴走や混乱、自失が生じるの。』

「人間は人間で、霊素蜂は霊素蜂で、大変なんだろうね、きっと」

『フフフ。どうしたのかしら? マサキは急に、君主に典型的なメランコリーにでも陥ったのかしら? 貴方は学園の支配者になったのでしょう? その幸運を精一杯、活用して甘受すれば良いのではないかしら? どのみち、人間も動物も昆虫も霊素蜂も、与えられた生物としての使命とその猶予期間を全うすることしか、出来ないのだから。』

 体育館を隅から隅まで掃除してくれているのは、姉妹のメイドさんコンビ。正樹の母親、春乃と、叔母の冴子。そして執事を務める父の俊樹も、人手不足を補ってくれている。体育館中に愛液や汗がひっきりなしに散らばっていくので、どれだけ拭き掃除をしても仕事は無くなる見込みもない。そんな状況を、喜ぶかのように、美人ライターの冴子叔母さんと、実年齢よりもずいぶん若く見える主婦の春乃が、競い合って雑巾がけをしている。露出の多いパツパツのメイド服から、お尻が丸見えになっている。

 県のコンクールでは上位の常連になっている、この学園の吹奏楽部は、そのまま『楽隊』のロールが与えられていた。けれど楽器はみんな、音楽室にほっぽらかして来ている。新しい楽隊の演奏方法は、自分たちの体を使って音を出すことになっている。豊満なボディが目についた女子たちは、打楽器役となって、自分の体の色んな部分を叩いて音を出す。飛び跳ねながら、バシバシ、ペチペチと、多彩な音を出す。ドラムセットのようにお尻を並べた女の子たちは、水やローション、ハチミツなどを塗られたお尻をドラム担当者に叩かれて、少しずつ違った音を出している。ペアを作った女子たちは、シックスナインの体勢で、お互いの股間に舌を添わせて、指揮者のタクトが振られるのを待つ。合図があると、懸命に舌を震わせて、滲み出てきた愛液と絡めてピチャピチャと音を立てる。曲の激しい部分では、舌が痙攣しそうなくらい激しく音を立てる。吹奏楽部でも一際注目を集めていた、フルート担当の壬生奈菜先輩は、フルートを離れても、やはり目立つパートを担当している。後輩たちが順番にアソコやお尻の穴に口をつけて、空気を吹き込んでくる。お人形のように可愛らしいお嬢様、壬生先輩は真っ赤な笑顔を取り繕いながら、膣や肛門から空気の漏れる破裂音を出して合奏に華を添える。全員、演奏中はどんなに恥ずかしくても情けなくても、演奏後に正樹が拍手をすると、弾け飛ぶような強いオルガスムを浴びて、折り重なって昇天する。意識が戻ってきたころには、またアンコールに応えなければならない。全員、天国で演奏会をしているような気持ちになっていた。

 バスケットのゴールから吊り下げられているのは、美人教師として学園中に名前が知れ渡っている、水川弥重先生。全裸の状態で全身を荒縄で縛られて、両足は棒で固定されて限界まで左右に開かれ状態で足首を縛られている。厳しいけれど愛のある指導をしてきてくれた先生を慕っている生徒たちが並んで、順番に先生の前に来ると、顔の真ん前で開かれている股間から、先生のアンダーヘアーを1本だけ、摘まんで抜いてあげる。真性のマゾヒストになっている先生は、陰毛を1本抜かれるごとに、愛液のしぶきを上げる。綺麗な先生の体を綺麗なまま、怪我をさせないように苛めてあげる方法を、生徒たちで多数決で決めた結果、このような形が定まった。試行錯誤のなかで、せっかくの先生の美貌を歪ませるような、鼻フックもギャグボールも外されることになったが、乳首を摘まんでいる洗濯バサミだけは、弥重先生の懸命な懇願を受けて、そのまま残すことになった。真面目な女生徒が計測したところでは、弥重先生はアンダーヘアーを1本ずつ抜かれている時は3回に1回もしくは6回に1回、エクスタシーに達している(後になるにつれて、頻度は落ちる)。しかしヘアーを抜かれたあとで、剥き出しになっているクリトリスを指で弾かれると、2回に1回の頻度でエクスタシーに達する。さらにその姿を撮影されていることを意識すると、ランダムに30分に1回程度、悶絶しながら失禁する。先生も合意の上で、この映像は海外の変態愛好家のコミュニティに限定販売されて、その売上げで学校の備品を追加購入することになっている。

「レイナ………。前に僕、うちのクラスの級長の小松さんに、目的は何かって聞かれたんだ」

 正樹は脳内の女王に話しかけながら、体育館で過酷な訓練を続けている、クラスのリーダーの姿を探す。小松美佑は「手押し車」という筋トレの変化形に挑んでいる最中だった。通常の手押し車とは、両足をパートナーに掴んでもらい、両手の力で前進する。現在、全裸の彼女たちはさらに、自分の乳首を床にギリギリ擦る体勢を維持したまま、両手で前進することを指示されている。乳首の摩擦から得られる快感で3回イッたところでやっと10分の休憩に入れる。Aカップの美佑は他の女子たちよりも急な角度に肘を曲げ、より辛い体勢でなお、両手で懸命に前進していた。少しでも乳首を床に多く擦りつけるために、蛇行するようにのたうちながら、なお女子兵たちの先頭を進んでいる。心なしか、腕の筋肉も増えてきたように見える、頼もしいリーダーだった。

「僕は最初、聖果ちゃんと付き合えたら……とか、聖果ちゃんが恥をかかないようにクラスメイトを抑えて、とか、先生も、隣のクラスも、………って状況に流されてきたけど、結局自分の欲求を、都合よく垂れ流しているだけのような気がする。でも、君の目的は何なの? 繁殖すること? その先に何があるの?」

 珍しく、レイナの回答が響くまでに、時間がかかった。

『誰も、自分の本当の目的なんて、わからないんじゃなくて? ………もちろん、私には種を存続、繁栄させたいっていう本能がある。けれど、無限の繁栄の先には、多分、緩やかな滅亡があることも、予測は出来るわ。いつか私の母親である、前の女王は、その前の女王から教えてもらったという、御伽噺を教えてくれた。私たち霊素蜂は、いつか宿主と一体化して、宿主の細胞の一部になる。そこで異なる種が混合して、次の次元へ進化するって………。でもそれはきっと、私たちが今の自分たちで無くなること。つまり、滅亡とどう違うのか、私にはわからない。………それでも、それ本当の種の目的なら、私たちはそれに向かって突き進むことをやめることは出来ないんでしょうね。貴方が、罪悪感を抱えながらも、シモベたちを支配する欲求を抑えられないのと同じように。』

 体育館右前方の集団を見てみる。女性教諭と教育実習の女子大生たちが『レクリエーション係』のロールを与えられて、創作ゲームに興じている。両足首を両手で掴んだ姿勢で足を開いて腰を上に突き上げた裸の若い女性たちが、額には天狗のお面をつけて、鬼ごっこのように追いかけ合う。足首を両手で掴んだままの追いかけっこなので、あまりスピードは出ない。相手チームの背後を取った先生は、天狗のお面の鼻の部分を、曝け出された前の先生の秘部に挿入して、首の力でピストン運動をする。イカされた先生はアウト。後で罰ゲームをさせられる。たぶん罰ゲームは、内心で接触を避けたがっていた、生理的に合わないタイプの男子生徒との性行為だろう。2日前にはただ、裸で鬼ごっこに興じていただけの他愛もない先生集団は、今やなかなか複雑で過激なゲームに没頭している。これも、レイナの言う、自然な進化と過激化へのエスカレーションなのだろうか?

「なんで、無限に拡大すると、滅亡に近づくの?」

 正樹が尋ねると、クスリと女王が笑う。さっきよりも声に力がこもっていた。

『通常の種だったら、それは食料を収奪しつくしてしまうことでの、環境変化でしょうね。私たち霊的生物は、ある規模を超えると集団の自死や分裂による確執が起こることが多いわ。そして霊素蜂の宿主となった人間、つまり貴方にとっては、無限に自我を拡大させることと自我の喪失とが同義になるからよ。わかるかしら?』

「難しいことを言うんだね。………よく、わからない」

『さっき私はマサキに、人間の精神は外骨格に見えるって言ったでしょ? 貴方の願望、欲求、自我、コンプレックス、アイデンティティ、全ては貴方が外界と接する、自分の殻のかたちに起因して作られているの。』

『きっと人間は、自分の思い通りにならないもの、自分のコントロールの内と外とに境界線を意識して、それを殻にして自分を成り立たせている。これはただの私の観察よ。でもこれまで私が見聞きしてきた女王の宿主は全て、霊素蜂の能力を使って、無限に自分の支配力を拡大させた結果、やがて自我も、やりたいことすら失って、最後はただの生理的欲求の塊となって朽ちていったわ。貴方には残念なお報せかもしれないけれど、この能力は貴方を全能に近い存在にまで高めて、やがて貴方を消失させてしまうと思うわ。これは私たちがそうしたいのではない。愚かな人間の性なの。いえ、愚かでない生物はいないのでしょうね。私たちを含めて。』

 レイナの微笑む声が、少し今までとは違う響きに変わっていた。見下ろすような女王の冷笑ではなくて、そこに聞こえてくるのは、哀れみの入り混じった慈しみのように聞こえていた。

「僕は、この蟲の力をエスカレートさせて、やがて自分でやりたいことも失って、自分を無くしてしまうっていうこと? ………それをわかっていても、僕には止められないの?」

『そういうサンプルを沢山見聞きしてきた私の先祖の記憶が遺伝子となって私に語りかけてくるっていうだけよ。せいぜい、貴方に出来る限り、足掻いてみては如何? 私はどうなってもよろしくてよ。愛する宿主様のためだもの。私も貴方も、君臨しているつもりになって、何かにお仕えしているだけの存在ですから。』

 正樹が目を閉じてみる。体育館で繰り広げられている歪んだ祝祭から、数秒間、自分の視界を黒くした。そして目を開くと、大量の使役蜂が正樹の周囲を取り囲んで、黄金色の鱗粉のようなものを輝かせていた。まるで正樹の周囲が輝く球体に覆われてしまっているかのようだった。正樹は

「どうせ、最後には僕自身が無くなるっていうんだったら、一度、この街も、この国も、この星全部を、僕の支配下に置いてみようか?」

 フフフと笑い声が脳内に響く。

『勇ましいじゃないの………。王様。………御心のままに………。私の産出能力の限界まで出し切るわ。………どの女王蜂も一度は夢を見るの。自分の能力の限界を超える程、一度に大量の卵を産みだしたら、この星まで埋め尽くすことが出来るのではないかって………。』

 正樹が両手を広げると、彼の脳内でこれまでで一番大きな羽音が響き渡る。
 何万、何億………。百億以上の使役蜂が世界中へ向けて飛び立っていく。レイナが、自分の能力の極限まで、使役蜂と幼虫を輩出した。


「………と、思ったけど…………。ゴメンね。やっぱり、使役蜂はみんな、ありったけの幼虫と卵を抱えて、他の星を目指して、飛んでいくことにしようか?」


『あら…………。…………その発想は無かったわね………。』

 正樹の脳内で、レイナが舌打ちと溜息を混ぜたような音を出した。体育館からは黄金の柱のようなものが立って、上空へと見えなくなるまで伸びていった。



<レイナのビジョン>



『私がこんな小僧にしてやられるとはねぇ………。新しい類型の宿主の発見かしら。』

 霊素蜂の女王は、自分の遺伝子の中にある、人間の類型を綴ってきた図鑑に、新種の宿主の説明を付け加えることを考える。代々の女王たちが編纂してきた、種を繁栄させるための遺伝上の図鑑だった。

 これまでに霊素蜂の女王の宿主となった人間たちは、その強力な力に後押しされた自身の欲望の拡大に耐え切れず、短期間のうちに、その王国を破滅に導くか、自身の自我を喪失していった。そうなる前に、次世代の女王に種の命運を託すというのが、レイナたちの役割だった。しかし今、レイナは一時的に卵の産むことが出来なくなるほど、大量の子供たちを産み落とし、そして失ってしまった。そのことで、正樹はしばらくの間、自分の欲望と正気との折り合いをつけつつあった。


『初めてこの子を見た時から、これまでの男たちよりも欲望の熱量が低いように思えたのよね。この国の若い世代に共通する傾向? それとも新しいタイプの人類が、生まれつつあるのかしら…………。霊素蜂ともう少し、長期間共存共栄が期待できるような………。』


 幼虫を受け入れてから3週間を経過した後で、最初に稲生聖果が脳内の幼虫の蛹化、そして成虫化を経験して、無事に霊素蜂を巣立たせることが出来た。次に正樹の叔母と母。父。担任の水川先生とクラスメイトたち………。順番に、正樹の支配下にあった人々が、正気を取り戻していくことが出来た。後遺症はゼロではない。聖果は正樹に対する燃え上がるような愛情は失ったが、今でも、元・支配者に対しての親愛の情は消えていない。そしてかつて霊素蜂に放出させられた快感の名残を惜しむように、半月に1度は、恥ずかしがりつつも、正樹にセックスをねだって来る。

 正樹の叔母、冴子も、大きな仕事が一段落つく度に、正樹の家を掃除したり、正樹と一緒にお風呂に入って体を洗ってあげたがる。『エッチなメイド』の役割の余韻を、時々思い出したように噛みしめているようだった。1−Fのクラスメイトたちは「健康づくりのため」と言っては、半月に一度は集まって運動や集団行動をする。正樹は若干強引に、リーダーに祭り上げられてしまった。水川先生も、仕事のストレスがたまると、正樹の前で裸になって、罰を与えて欲しいと懇願してくる。しかしそれらもすべて、ゆっくりと頻度を落としていく。2週に1度が、月に1度になり、やがて3ヶ月、半年、年に1度となり、3年もしないうちに、彼らは完全に霊素蜂に寄生された影響から逃れることとなる。レイナからそう告げられた時、利岡正樹は、ホッとしたような、そしてどこか少し寂しそうな表情を見せた。


。。。



「……あのっ…………。正樹君…………。はぁっ…………。そのっ……………。こんなこと、しながら、言うのも、何だけど…………。あのねっ………」

 ベッドに両手をつき、後背位の体勢で後ろから突かれながら、聖果が話す。彼女が正樹の家に来るのは、今では2ヶ月に1度程度。しかし、来た時には必ず、2人はセックスをする。お喋りもお菓子も、繋がったままでする。

「どうしたの…………。聖果ちゃん。………何でも、言ってよ。…………僕たちは、もう、付き合ってはいないけど、…………それでも、体も心も繋がってる、友達でしょ…………」

 柔らかい聖果の体を味わいながら、正樹が言う。喋りながらも、ピストン運動は少しも止めなかった。

「…………私………。あの、…………好きな人が出来たかも…………しれないの………。あぁっ………………。もうっ…………イクっ。…………正樹君………、お願い、………一緒にっ」

 聖果のオッパイを後ろから両手で揉みながら、正樹が腰を突き立てる。聖果の言葉は、正樹にとって衝撃的な内容だったが、下半身は今も、暴発寸前だった。

 聖果のような美少女には、魅力的な異性も沢山声をかけてくるだろう。そして若くて健康な彼女に好きな人が出来たということは、彼女が霊素蜂に寄生された影響から、順調に回復しているというしるしかもしれない。正樹は聖果と一緒に、爆ぜるような快感に震えながら、エクスタシーに達する。2人で結合したままベッドに倒れ込んで、しばらく快感の余韻に浸る。

 その後で、正樹は聖果のオッパイを、さっきまでよりも強めに掴んだ。乳首も摘まんだまま僅かに捩じってみる。聖果はされるがままになりながら、小さく喘いだ。

 正樹の心の中で、複雑な感情が渦巻き始めていた。


 クスリ………と、久しぶりに彼の脳内で、女王の笑い声が響いた。最近は休養のステージに入っていて、ほとんど動きを見せていなかったレイナの、ずいぶん久しぶりの反応だった。

『マサキ…………。そろそろ私の体も、また卵を産めるようになってきた頃よ。………でも、一度成虫まで育てた人間を、新しい幼虫の宿主にするには、前回よりもちょっとだけ、酷使するような使役が必要よ。ハードなロールと過激な支配………。セイカちゃんは今、ようやく他の男に恋するくらい、私たちの影響から脱することが出来た訳だけど、…………どうする? ………王様…………。』

 レイナの声に少しずつ力と威厳がこもって来る。正樹の視界には久しぶりに使役蜂たちの飛び交う曲線と煌めく鱗粉が見えている。正樹の腕の中にいる聖果は、彼の手に弄られるままになって悶えていたが、両目は閉じていて、まるで別の男性のことを想っているような表情だった。


『私たち、まだまだ遊べるし、まだまだ闘えるわよ…………。王国の再建。いえ、進化かしら。それとも、私にもっと新しい景色を見せてくださる? せっかく蟲の湧く星に生まれたのだから、そのことを楽しみましょうか。…………さぁ、どうしましょう? ………私の愛おしい王様。』

 正樹の脳内でレイナの声が響く。こめかみに汗が一粒垂れた。運搬係の蜂が一匹、聖果の頭の周りをゆっくりと旋回していた。

 
 
< 終わり >


 

 

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