黒い虚塔

〜その時、魔界が動いた〜


 

 



第3話


 最近、街角(もちろん魔界の、だが)で、カラス翼の黒猫や、コウモリ翼の黒猫をよく見かける。
 変わり種では、尻尾が蛇になった猫や狼なんかもいたりする。
 なんだかな〜、と一瞬思ったが、ああ、新型アプリか、と気付く。
 自分でアイデアを出しておきながら、正直、このアプリはここまでヒットするとは思ってなかった。
 そのおかげで、今や、魔界にいる悪魔の8割がディー・フォンを持っているご時世だ。

 そんなある日。
「クレームだって?また人間界から?」
 またもや、ディー・フォン担当の部署からクレームの報告があがる。
「いえ、魔界使い魔協会からです」
 ……そんな団体があったのか。
「で、なんと言ってきてるんだ?」
「ディー・フォンの動物アプリのために、魔界に連綿と続いてきた使い魔の伝統が破壊される、と」
「……ほっとけ」
「いいんですか?」
「いいんだよ。自分で使い魔を従えたい悪魔が、伝統を守っていけばいいじゃないか。伝統芸能と一緒」
「相手が納得してくれますかね?」
「納得するもなにも、今現在、こうして動物アプリが売れているのが現実ってものじゃないか。その現実が見えない奴は放っておけばいいんだよ」
 はぁ……こんなことの対応もしなきゃならないのか。
 まあ、うちの会社、クレーム対応専門の部署って無いからなぁ……。

 気を取り直して自分の仕事に取りかかろうと、机の上を整理すると、見慣れないディスクが目にとまる。
 ん?こんなもの前から置いてあったっけ?
 よく見ると、CMサンプルって書いてある。
 ……?たしか、今日はCMのサンプルチェックの話はなかったはずだな。
 とりあえず、パソコンを立ち上げて、ディスクの中身を確認する。
「あのMCEから、注目の新商品!運命の金屏風!」
 ……いや、そんな商品許可してないぞ。
「この金屏風の前にふたりで座れば、キミはたちまち相手の運命の人に!これで、即結婚成立!」
 その前に、こんなド派手なもんの前にどうやってふたりで座るんだ?
 それに、結婚が成立するのは役所に届けてからだ。
「いまならなんと!MCE特製高砂もセットでお付けします!」
 そんなもの付けるなぁーッ!
「さらにさらに!今ご注文のお客様には、なんと!金屏風と高砂のセットをもうひとつ!」
 そんなのふたつもいるかぁーッ!
「これで!アナタの結婚相手はふたりに!」
 重婚罪で捕まるわーッ!
 はぁはぁ……はっ!今、なんかあいつみたいにつっこんでなかったか!?
 落ち着け落ち着け、……帰ってこい、いつもの冷静な僕。
 ふぅー(深呼吸)……。
 だいたい、うちのCMは魔界向けで、人間界には流してない。というか、流せるわけがない。
 誰だ、こんな悪質な悪戯したのは?
「製作……MCE広報部宣伝課 波留間浩平」
 ……なんでCMにエンドロールが流れるんだ?
 つうか、あの人、今、宣伝課?てっきりどこかの製作課だと思ったのに……。
 と、とにかく、このサンプル、突っ返して厳重注意だ。



「お〜、倭文じゃーん、久しぶり〜」
「あの、波留間さん……。いちおう、僕の今の肩書き、商品開発部部長補佐兼統轄マネージャーなんですけど」
「あー、でも俺、今、商品開発部じゃないし〜」
 そういう問題じゃないでしょ……。ああ、でもこの人の場合、そんなことに頓着しそうにない気がする。
「ところで、これ置いていったの波留間さんですか?」
「あー!そうそう〜、見てくれた〜、それ?」
「見たもなにも、何のつもりなんですか!?」
「あ〜、俺、今まで商品開発部だったしぃ〜、広報部の仕事初めてだから練習〜。いちおう商品も考えてみました、て感じ?」
「こんな商品売れませんって!というか、そもそも人間向けのCMなんか作ってないでしょうが!」
「まあ、練習だし〜、つかみはOKじゃね?」
 それ決めるのあんたじゃないし、と、言おうと思ったとき……、
「おんどりゃー、倭文さんになんちゅう口の利き方しとんのじゃあっ!」
 可愛らしいながらも、ドスの効いた声がしたかと思うと、波留間さんの顔はデスクに埋まっていた。
「商品開発部の部長補佐兼統轄マネージャー相手に、あんたみたいなぺーぺーのヒラ社員がタメ口きいていいと思っとんのかあっ!」
「うわー!痛ててて!痛いですって、植春さん!」
「おのれが悪いんじゃあ!おのれがっ!」
 白地に濃いサーモンピンクのストライプのシャツに、紺のスカートという、女子社員の制服を着たコが、僕の目の前で波留間さんをどつき回している。
「……あら!?私ったら、恥ずかしい……オホホホホホ」
 その展開に、唖然としている僕を見て、そのコが急に可愛い子ぶる。
 ……もう手遅れだと思うんですけど。
 でも、この人見覚えあるな。たしか……広報部の植春……愛那だったか。
 以前から意味もなく第2製作課に顔を出してたし、やたら好感度が高かったんで、この眼鏡でちょっと悪戯したことがあったっけ……。
「と、とにかくっ!このバカには後で教育的指導入れておきますから!」
「ちょ、植春さん……教育的指導ってなんスか〜」
「おのれは黙っときんしゃいっ!」
「ぐはあっ!」
 裏拳が顔面にクリーンヒットし、波留間さんがダウンする。
「さあ!倭文さん!こんなバカ放っておいて、こちらにどーぞ!お茶でも淹れますから!」
 結局、ここに何しに来たんだっけ、僕?

「ささ、どーぞ、倭文さん」
 応接スペースのソファーに僕を座らせ、お茶を勧めてくる植春愛那。
「すみません、倭文さん……もう、あのバカったら、いつまで経っても先輩気分で」
「いや、まあ、会社では波留間さんの方が先輩ですから」
「とんでもない!今は倭文さんの方が立場が上じゃないですか!そんなこと言ってたら、あのバカつけあがるだけです!もうこんな事は二度としないようにきっちり教育しますから!」
 ていうか、この子広報部の中でどれだけ力あるんですか?
「もう、あんなバカだから、あんな変なダーツ作るんですよねぇ」
「え?」
 いや、その話は……。
「……あ、いえいえ、なんでもないです!」
 そのことを知っているのは、当事者だけ……。
 そもそも、あの事件の詳細な真相は公にはされていない。
 それに、あれを使って事件を起こしたのはあいつだ。
 そのもとになったダーツを作ったのが、波留間さんだと知っている者はほとんどいないはずだ。
 そもそも、そんなダーツの存在自体が公表されていない。
 ……本人が喋っていれば別だが。
 いや、仮にもひとりクビになってるくらいだ、それを自分でペラペラ喋るほどあの人もバカじゃないだろう。
 だったら、なんで……。
「あ、あの、倭文さん?」
「え?あ?いや、こちらこそ何でもないです、植春さん」
「きゃ!」
 何の気なしに、相手を見つめ、名前を呼んだだけで、あからさまに顔が赤くなっている。
 ……そういえば、こいつには、この眼鏡効きやすいんだったっけ?それなら……。
 僕は、力を込めて植春を見つめる。
「え!?あ?あの?ど、どうしたんですかっ!?」
 真っ赤になってうろたえる植春。
「いや、よく見たら植春さんて、キレイな人だなー、って」
 いきなりこういうこと言われたら、普通引くよな。
「えっ!?やっ!そ!そんなっ!…………バフッ!!」
 ん?バフッ?何の音だ?ていうか、今、頭から蒸気みたいなもの出なかったか?
「あ!あの!し、倭文さん!」
「ハイ、なんでしょう?」
「ちょっと、こっちに来て下さい!」
「う、うわぁ!」
 グン、と、ものすごい力で腕をつかまれ、僕は引きずられるように植春の後についていく。

 で、ここは給湯室。
 これはまた、えらいはずれにある給湯室まで連れてきたもんだ。
「ちょ、ちょっと!植春さん!?」
「あの!し!倭文さん!」
「ハ、ハイ!なんでしょう!?」
「ずっと前から倭文さんのことが好きでした!」
 えーと、どこの女子高生の告白シーンですか?
「だ!だから!ワタシの!もらって下さい!」
 あー、さすがにそれを言う女子高生は少ないだろうなぁ。
「お願いします!倭文さん!」
 すがるような目で迫ってくる植春……て、いつの間にシャツのボタン外して!胸元丸見えじゃないですか!
 しかも、よく見たらそのスカート短っ!うちの制服そんなに超ミニじゃなかったでしょ!
 ていうか、なにこの展開?さっきのバフッて音、頭のどっかの弁でも外れた音だったのか!?
「ねぇ、倭文さん……後森部長の次でもいいですから……」
 いや、そういう問題じゃ……て?まただ……。
 部長と僕のことは、まだ社内では知られていないはず……。
 波留間のダーツのことといい、こいつ、一体……。
「倭文さん?」
「あ、い、いや、ところで、部長の次って一体どういうことですか?」
 とりあえず、シラを切ってみる。
「どういうことって……あ!わ、私ったら!ご、ごめんなさい!怒ってます?」
 いや、怒ってるというよりか、どこまで情報を知っていて、どうやって手に入れたのか知りたいだけです。
 んー、どうしたもんかな……あ、そうか、ヒラ社員にはセンサー付いてないはずだから、道具使ってしまえばいいんじゃないか。
「い、いや、怒ってないですよ、それにしてもおかしな事を言いますね、植春さんは」
 僕の方に体を寄せてきている植春の背中に腕を回して、抱き寄せると見せかけ、玉を埋め込む。
「え?あ……倭文……さ……ん?」
 ビクン、と体を震わせ、植春の瞳の力が弱まる。
 しかし、さすがは悪魔だけあって、意識はだいぶはっきりしているようだな。
 この状態で命令モードを使うと、あとあと歪みが残りそうだ……。
 だったら、認識誘導で……。
{倭文にキスをされると、気持ちよくて何も考えられなくなる}
「本当に、おかしな人ですね、植春さんは」
 そう言うと、僕は微笑みを浮かべて、植春に口づけをする。
「あ!んん!んむむ!んんん……ん……」
 瞬間、植春の目が大きく見開かれるが、すぐに、トロン、としてくる。
{倭文に体を触られると、自分は倭文の言葉に疑いを持たなくなる}
「ん……ぷふっ……はぁはぁ……あ!し、倭文さん!」
 服の中に手を入れられ、小さく悲鳴を上げる植春。
「ん、どうしたんです?こういうことをするために、僕をここに連れてきたんじゃないんですか?」
 答えがイエスなのはわかり切っている。実際、僕をここに連れ込んだのも、迫ってきたのもこいつの方だ。
 とりあえず、最初の問いを肯定させておけば、暗示が定着して、その次に進みやすい。
「……はい……そうです……んん!」
 そう返事をする植春の目は、だいぶ蕩けてきている。だが、まだこれからだ。
「じゃあ、植春さんは、僕のこれが欲しくて、ここまで来たんですよね」
 そう言うと、僕は自分のズボンをずらして、おもむろにソレを取り出す。
「あ……はい……倭文さんの……欲しいです……」
「それでは、まず、これを舐めてもらいましょうか」
「はい……ちゅ……ふむ……んん!」
 植春は膝をついて、僕のモノを持ち上げ、しゃぶりつく。
「ん……ふん……ちゅ……くちゅ……」
{倭文のモノを舐めると、自分も感じてきて止められなくなる}
「んんん!むむ!ん!ぴちゃ……ふふん!ちゅる……んむむ!」
 僕のモノをしゃぶる植春の動きが前後に頭ごと動かすように大きくなり、くぐもった呻きが大きくなる。
{倭文のモノをしゃぶればしゃぶるほど、倭文への服従心が大きくなっていく}
「じゅ……ちゅる……むむむ!んん!ふ!ん!ん!ん!んむう!」
 熱心に僕のモノをしゃぶり続ける植春。彼女に埋め込んだ玉からは、意志の力もだいぶ低下していることが伝わってくる。
 これだともう大丈夫だろう。最後のとどめに命令を送る。
【愛那、この精液を飲んでイクんだ。そして、精液を全部飲み干せ、そうすれば、おまえは僕の忠実な奴隷になる】
「んんんんんっ!むむむむっ!くっ!んんんんんんんーッ!」
 射精と同時に、ものすごい呻き声が上がる。
 しかし、命令のため、むせることもできずに全部飲み干そうとする。
「ん!んんん!……こくっ……むむむ!……むうぅ……んく!……はぁ……」
 精液を飲み干して、ようやく僕のモノから口を離す愛那。
 口の端を白い液体で汚し、イったばかりで焦点が合っていない目で、僕を見上げる。
「ん……あ……あ、し、倭文さま……」
 ようやく焦点のあってきた目で僕をとらえた愛那の表情は、淫蕩さに満ちていた。

「愛那、気分はどうだ?」
「あ…あ、最高です。わたし……倭文さまの精液、いっぱい飲んで、気持ちよくて……」
「愛那、今のおまえは、僕の何だ?」
「あ、わ、私は、倭文さまの……ち、忠実な……ど、奴隷です!」
「じゃあ、おまえは僕の言うことはなんでもきくんだな?」
「は!はい!もちろんです!」
「じゃあ聞くが、波留間のダーツのことはどうやって知った?」
「いろいろな……噂や情報からそう判断しました……」
「……どうやって?」
「あの日、後森部長が大門課長を第5会議室に引っ張り込んだのは、数人の社員が目撃しています。そして、その直後にあの事件が起きました」
「ふんふん?」
「事態の収拾にあたった保安部の方から、ダーツのような物を回収したという情報が漏れてきましたので、それが鍵となる道具だと思いました」
「それで?」
「大門課長は、事務処理能力や判断力はありましたが、悪魔としての力は中級悪魔ですので、部長をどうにかできる道具を作れるとは思えません。そして、あの後、第2製作課は解体されましたが、倭文さまは、昇進されたことから考えてそのダーツには関係ないかと……」
「なるほど?」
「残った3人のうち、あの時点で、伴天院さんは刀、倍紋さんは銃にはまっていたことはわかっているので、ダーツを作ったのは彼だと判断しました」
 ……こいつ!バカかと思ったら、かなり切れる……いや、噂や、不確かな情報から、正確な答えを出す分析力に長けているのか?
 何が凄いって、悪魔としての能力と関係ないのが凄い。
「僕と部長のことは?」
「そちらの方はもっと簡単です。数は多くありませんが、ふたりで行ったバーや、部長のマンション周辺での目撃情報がありましたから」
 こいつ、広報部じゃなくてまるで諜報部だな……。
 しかし、こいつを駒にしておくと、何かと使えそうだな。
 人間以外を完全に堕とすのは、もの凄く久しぶりだが、やってみるか……。

「よし、愛那、今後は僕のために情報を集め、分析しろ」
「は!はい!もちろんです、倭文さま!」
「いい仕事を期待しているぞ。そうしたら、もっと可愛がってやる」
「ああ……かしこまりました、倭文さま……」
「よし、じゃあ、契約料代わりだ……反対側を向いて、流し台に手をつけ」
「は、はい」
 くるりとこちらに背中を向け、流し台に手をついて腰を突き出す格好になる愛那。
 こうなると、超ミニのスカートなのが都合がいい。
 その下のショーツ全体がぐっしょり濡れている。
「なんだ、ショーツがこんなにぐしょぐしょじゃないか、愛那」
「ああ……そ、それは……倭文さまの精液が美味しくて……気持ちよくって……あ……」
 ぴったり張り付いたショーツをずり下げ、愛那に言う。
「いいか、愛那。おまえは僕の奴隷だと言うけど、僕はまだおまえを奴隷にしたつもりはない」
「え!そ、そんな……」
「まあ、そう早まるな。奴隷にしないとも言っていないだろう」
 そう言うと、僕は愛那の裂け目に、指を突っ込み、かき回す。
「あああ!ひああん!」
 愛那の喉から、甘ったるい声が漏れる。
 完全に愛那を堕とすため、僕は愛那に問いかける。
「良く聞け、愛那。ここに僕のモノを挿れられたら、おまえは完全に僕の奴隷になって、もう戻れなくなるぞ、それでも構わないのか?最後の選択だ、おまえに選ばせてやる」
 拒絶されるわけがないのはわかっている。
 これは儀式。自分から進んで僕の奴隷にったことを、はっきりと認識させるための儀式。
 すでに、道具による認識誘導でそうさせられていたとしても、僕の言葉として受け取り、形だけでも自ら選んだことにすることで、僕の奴隷としての認識は、より深く強固になる。
「お!お願いします!し、倭文さまのお○んちんを、わ、わたしの中に入れて下さい!どうか!わたしを倭文さまの奴隷にして下さい!」
 愛那は、顔をこちらに向け、真剣な目で哀願してくる。
「よし、わかった。そこまで言うのならおまえの願いをきいてやろう」
「あ、ああ……ありがとうございます、倭文さま」
「だが、覚えておけ、これはおまえ自身が望んだことだとな」
 そう言うと、僕は、愛那の奥まで一気に突き入れる。
「あ!あ!はいいいいい!倭文さまぁっ!」
 愛那の中はすでにドロドロになっている。
「おまえが望んだことだから、僕にこうされると、おまえはとても気持ちよくなれる」
「は!はい!すごく!気持ちイイですっ!」
「この快感をおまえに与えられるのは僕だけだ!」
 抽挿を繰り返しながら、僕は愛那への暗示を深めていく。
「ああ!倭文さまっ!だけっ!」
「そして、この快感は、おまえが僕のために働いた褒美として与えるものだ!」
「あ!はいいいい!」
「だから、この快感を得るために、おまえは最高の仕事をしろ!」
「は!はひい!」
「そのために、僕の言うことには、どんなことでも従え!」
「はひ!はひ!ど!どんなことで…も!し!従い……ますっ!」
「僕のために仕事をし、快感を与えられる度に、おまえの僕への服従心はますます深くなり、僕から与えられる快感はどんどん大きくなる!」
「は!はひいいいいいぃっ!」
「わかったら、射精と同時にイクんだ!そうすれば、おまえを完全に僕の奴隷にしてやろう!」
「はあああっ!しとり!さまのっ!かんぜん!な!どれい!に!あああ!う!うれしい!あ!ああああああああっ!」
 僕の奴隷になれる悦びとともにイッてしまう愛那。
「う!……んん!……はぁ……ああ…し、倭文さまぁ……」
 肩で大きく息をしながらこちらへ振り向いた愛那の顔には、僕への絶対の服従心が刻まれていた。


「愛那、とりあえず、ふたりきりの時以外は、僕のことを、倭文さま、と呼ぶな。倭文さん、と呼ぶんだ」
「え……で、でも……」
「どうした?僕の言うことに従えないのか?」
「……はい、かしこまりました」
「それから、おまえは少し口が軽いところがある。集めた情報に関しては、僕以外には絶対話すな」
「はい、もちろんです!」
 ……こればっかりは、もともとの性格を考えたら多少不安だが、まあ、気休めにはなるだろう。
 これで、とりあえず手駒がひとつできた。
 役に立つ日が来るかどうかはともかく、いて損はない駒になるだろう。
「まあ、これからどうなるかはわからないけどね……」
「……何かおっしゃりましたか?倭文さま」
 僕がひとりごちると、不審げに愛那がこちらを見る。
「いや、なんでもない。それよりも、あまりふたりでいるところを誰かに見られると面倒だから、僕は先に出るぞ。おまえは、服を整えて、しばらくしてからここを出て、広報部の仕事に戻れ」
 そう命令すると、僕はドアを開けて給湯室から出ていった。

 
 


 

 

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