BLACK DESIRE


 

 



6.


 2つのグラウンドで行われていた最終戦2試合が終了し、ソフトボールの順位が決定すると僕たち運営委員会関係者はにわかに慌ただしくなった。この後授業時間を延長し、順位発表と表彰、MVP選手の選出を行わなければならないからだ。ルール通りに決定すれば良い順位はともかく、MVPの方は僕の主観が大いに絡むし、みんなからもそうするべきだと暗黙の了解を得ている。(MVP選手との「祝勝会」の絡みもあるからだ。)

 だが、その選考会議の前に僕は委員の1人から言伝をもらい、生徒会長に呼び出された。急いでその場を離れ、指定されたグラウンドの隅っこの用具庫の裏のひと気の無い場所に駆け込む。そこでは、表情には表してはいないもののどことなく憂いを含んだ雰囲気の宮子が立ち尽くしていた。

「……どうかしたの?」

 いつになく物憂げな様子に意表を突かれ、おずおずと宮子に呼びかける。少女は、たった今僕の姿に気が付いたとばかりに一回瞬きしてこちらを見つめ直した。そして、前置き無しにいきなり質問する。

「もう、今日のMVPは決めましたか?」
「んっと……何人か候補がいるけど……」

 実は僕の中ではもう決まっていたのだが、選考会議に関係無い裏方の生徒会長に事前に教える事はできない。どうしてそんな質問をしたのか意図も読めず、この場に呼び出した目的もわからず、僕は慎重に答えた。だが、宮子は相変わらずの沈んだ顔つきでズバリと言い当ててきた。

「あの人……早坂英悧さんではないのですか?」
「ま、まあ。候補のトップではあるね」

 バレていたか。いや、宮子の能力によるものか? 僕は頬をかきながら何とか誤魔化そうとするも、宮子は軽く頷きながらもはや確定事項の様に言葉を続けた。

「早坂さんのソフトボール競技への意気込みは並ならないものが有りました。初日に赤組にMVPを取られると、自分のチームから出なかった事で遠目にも分かるくらいがっかりしてましたよ」
「そうだったんだ」
「その分、今回の優勝は嬉しいでしょうね。更に、自分自身がMVPに選ばれたなら尚更です」
「うん。そう思うよ」

 そこで宮子はいったん言葉を止め、じっと僕の目に視線を合わせてきた。いつもの緑がかった灰色の瞳。だけど、今日はそこにちょっとだけ違う色合いも浮かんでいるように見える。

「な、何?」
「1つ、アドバイスをしても良いですか?」
「え、あ、うん。どうぞ」
「今日、優秀選手に選ばれる事で、あの人の心の中で1つ、壁が崩れます。喜びや、達巳君に対する感情が抑えきれずに、立場を乗り越えて前面に溢れるようになるんです」
「MVPになるから? そんなに嬉しいのかな」
「達巳君に選ばれた、というのが重要なんですよ」

 そして、宮子は僕に聞こえないくらい小さくため息をついた。

「今日は早坂さんの日です。表彰式の後は、他の事を忘れてあの人の事だけ考えてあげて下さい。そして、黄組は今日の祝勝会として『さざなみ寮』を使用する計画を立てているようですが、その前に必ず早坂さんと2人きりになる機会を設けて下さい」
「何かあるの?」
「達巳君の計画にとって有益な事です」
「……そっか」
「話は以上です」

 宮子はそこまで一気に喋り、僕から目線を逸らして口を噤んだ。それは、これ以上未来の出来事を不用意に漏らさない為なのか、それとも、彼女自身の心情によるものなのか……。暫く待ってみたが宮子は立ち尽くすばかりで何も言って来ないため、僕は選考会議に戻る事にした。

「じゃ、行くね」
「……」

 宮子は目線を上げようともしない。仕方無く、背中を向けて一歩を踏み出した瞬間、「あの……」と微かな声が背後から聞こえてきた。

「ん?」

 再度振り返ると、宮子は俯いたまま、何かを堪えるような表情をしている。手を持ち上げ、それを反対の手で押さえ、そして何度も躊躇した後にようやく何かを振り切ったように脚を踏み出して僕の側に早足で歩み寄ってきた。そして、僕の右腕の袖をきゅっと掴む。直接のアプローチにドキンと心臓が跳ね上がった。

「ど、どうしたの?」
「あの……」

 宮子は視線を逸らしたまま、早口で呟いた。

「私だって……人間です。記憶が有っても、待ち望んだ瞬間に高揚する事もあるし、見たくなかったものが現実になって不安になる日も有ります……だがら、おかしな娘と思わないで下さい」
「大丈夫だよ……こうすれば良い?」

 僕は宮子に向かって1歩踏み出し距離を詰めると、そっと手を回してその細い背中を抱いた。「あ」と少女の唇から吐息が漏れ、そして素早く両手が僕の背中に回って抱きついてくる。ぎゅっと僕と彼女の体温が2人の制服越しに混ざり合った。

「……不安になっちゃったの?」
「以前なら、大丈夫だったんです。でも、一度あなたに抱かれてから……それを思い出すと1人でいるのが心細くなって……」
「なら、それが紛れるまでこうしてれば良いよ」
「はい……」

 暫く、そのままお互いの鼓動と吐息を感じていた。10月に入ったのに日差しはまだ夏の残り火を内包し、午後の浅いこの時間はまだ空気に熱が篭もっている。だけど、そんな暑さなど2人にはまるで関係ないくらい、両者の間には高熱の想いが渦巻いていた。
 唐突に、僕の胸の中で狂おしいほどの渇望が湧き上がってきた。僕の前でだけ弱さを見せてくれる宮子。普段の毅然とした立ち振る舞いからは想像も出来ないくらい、か弱く、僕を頼りにしている少女。彼女と1つになった日から芽生えた感情が再び存在感を増し、この手の中に宮子をずっと納めていたいと願う。

「宮子……僕は、君のこと……」

 想いを口走りそうになった瞬間、すっと宮子の片手が動き、綺麗な指先でその唇の動きを止められた。

「駄目、です」
「え……?」
「今日は、早坂さんの日ですから……その言葉は、私にはまだ、とっておいて下さい」

 「そうしないと、私……」と、呟き、少女は俯いた。もう反対の手で僕の胸を押し、一歩下がって距離を取る。

「ありがとう、達巳君。もう、行って下さい」
「……うん」

 僕の返事を待たず、宮子はくるりと背を向けてしまった。その瞬間「あっ」と僕の中で1つの疑問のピースがパチリとはまる。

 宮子が、僕と恋人にならない理由。いや、なってはいけない理由。

 それは、僕の方の問題では無く、きっと宮子自身の内情の問題なのだ。彼女は今も、僕の言葉を止める事で自分の願望をせき止めて見せた。それは、彼女なりの心の防波堤を守る行為だったのだ。
 宮子の情の深さは彼女と肌を合わせた僕には痛いほど良くわかっている。そして、その愛情を強靱な精神力で表に出さないように食い止めているという事も。きっと、僕と『恋人』にならないというのは、これから先黒い本の成就の為に他の女性と上手く付き合っていかなければならない僕の立場を思っての、彼女の最大の防波堤、いや、ダムの様なものなのだ。
 宮子は、これから先僕と彼女の間に起きる出来事、起こらない出来事をどれほど記憶しているのだろう。そこで得られる幸福と、得ることを諦める幸せは幾つ有るんだろう? 彼女しか知らない、知る事も出来ない未来の記憶……僕に出来ることは、宮子が不安がってバランスを崩しかけた時、それを抱きしめて支えてやるくらいだ。いつか、彼女が刻まれる秒針から解き放たれる日は来るのだろうか。そしてそれは、出来ることなら僕の手で叶えて上げたいと、そう願った。





 さて、優秀選手選考会議に於いて、僕の早坂推しは特に問題無く受け入れられた。攻撃力特化の赤組を先発ピッチャーとして抑えきったのも見事だったし、キャプテンとしてチームを統率し、優勝に導いた功績も高く評価された。彼女のフルネームが書かれた紙を確認し、折り畳んで懐に入れて表彰式に向かう。

 各部毎の優勝は放送による発表だけで、トロフィーなどの賞の授与は行われない。Aグラウンドにこじんまりと整列したソフトボールメンバーを前に、観客席のその他の生徒が見守る中粛々と結果が伝えられる。

 1位は先ほどの通り、全勝の黄組「SHOOTING STARS」だ。名前が呼ばれるとわあっと黄色く彩られた観客席の一団が歓声をあげ、星のマークの散りばめられたチームフラッグが振り回される。以下、2位は赤組「RED RACCOONS」、3位青組「BLUE DOLPHINS」、4位白組「WHITE EAGLES」の順だ。
 水泳競技と球技でちょうど1位と4位が入れ替わった形になった。ここまでの合計得点では2位・2位ときた我らが赤組が単独トップ、しかし2位白組から最下位青組までは僅差で、しかも十分最終部陸上競技で赤組との逆転が可能な点差しか離れていない。全チーム、総合優勝が狙える位置にいるわけだ。案の作成段階では何の計算もなく適当に種目を突っ込んだんだけど、どうしてどうして良い勝負してるじゃないか。

 順位が決まったので、最後はMVPの発表だ。放送委員長の水原菊子(みなばるきっこ)が僕の出番を促す。

『それでは、体育祭運営委員長から本日の最優秀選手を発表していただきます。名前を呼ばれた方は前に進み出て、表彰台の前に立って下さい』

 スタンドマイクの前にそそくさと出て、もったいを付けて懐から折り畳まれた例の紙を取り出す。僕の一存で決めた事だけど、選考会議はちゃんとやってますよ、ってアピールだ。両手で紙を開き、マイクに向かってはっきりとした口調でそこに書かれた内容を読み上げてやった。

「星漣学園体育祭・球技の部・3日目。最優秀選手……黄組シューティングスターズキャプテン、3年柚組、早坂英悧!」

 ワーッと先ほどの優勝発表よりも更に大きな歓声が上がった。整列したメンバーの間でも、チームに関係なく全員が惜しみなくぱちぱちと拍手を送っている。当の本人の方を見ると、一回ぱちくりと大きな瞬きした後、ふわっとその顔に輝かしい笑顔が浮かんだ。「はい!」と元気に返事をし、足を踏み出してすたすたと落ち着いたフリをしながら、それでも内心の喜びを隠し切れてない上気した表情と足取りで僕の待つ表彰台の前まで進み出てくる。僕は役員の1人からMVPの証となる紐状の物を受け取り、それを待ち受けた。

「早坂英悧さん。あなたはチームキャプテンとして卓越した指導力を発揮し、黄組を球技の部優勝に導きました。また、自身も先発ピッチャーを勤め、試合での勝利に大きく貢献しました。その功績を認め、ここに全選手を代表し、本日の最優秀選手として称えます。おめでとう」
「ありがとうございます」

 僕の定型文の讃辞に微笑みながら答える早坂。小声で「左手を出して」と言うと、僕の胸の前にまるで結婚式で指輪を貰うときのような手付きで手を差し出してきた。黙ってその手首にMVPミサンガを結んでやる。
 用意したMVPミサンガは、ミサンガという名前だがそれはあくまで便宜的な呼称で紐を編み込んで作ったものではないし、切れるまでずっと身に付けておくべきものでもない。ちょっと豪華な装飾模様の入ったリボンみたいな簡易なもので、ほどけるように結び目も軽くしてやる。だが、それでもそれは早坂にとって勲章のようなもので、僕がそれを彼女の手首に巻いてあげる間、その瞳はきらきらと喜びに輝いていた。

 結び終わって早坂の手首を持ってきつ過ぎないか確認している時、ふと先ほどの宮子の言葉を思い出す。そう言えば、この後2人きりで会うように指示されてたんだっけ。慌てて頭を寄せて小声で話しかけた。

(この後、時間有るかな?)
(え?)
(ちょっと、話があるんだけど)

 早坂は僕の意図が読めず一瞬怪訝そうな顔をしたが、特に問題は無いと判断したのか小さく頷いた。

(いいけど。第2図書館で良い?)
(うん。じゃ、この後そこで)
(わかったわ)

 密談が終わり、寄せていた顔を離す。そして、もう一度今度はみんなにも聞こえるように「おめでとう」と呼びかけた。早坂は「ありがとうございます」と大きな声で返事をした後、くるりとみんなの方を向いて誇らしげにミサンガの結ばれた左手を掲げてみせる。再度、その場にいる全員からの賞賛の拍手が僕達を包んだのだった。





 会場の片付けを終え、校舎1階の受付に駆け込むと相変わらず例の受付嬢は代行を机に据えて留守だった。僕にとっては都合がいいんだけど、ホント、何処行ってるんだろね? 今日の代役は人気ゲームの妖怪猫か……お前も大変だね、とポンと頭を軽く叩いてやってから奥の漫画図書館へと向かう。
 早坂はもう先に来ていて、珍しく両脚をびろーんと投げ出して後ろ手を付いた姿勢で座布団の上に座ってまちぼうけていた。流石に熱戦の後で疲れていたのだろうか? 僕の登場にもスカートの裾からはみ出した膝を隠す様子も無く、そのまま首だけこっちに向けて笑いかけてくる。

「お疲れさま。思ったより早かったわね」
「約束があったからね。待たせちゃったかな、ごめん」
「いいわ。気にしてないから」

 早坂は自分の隣に座布団を1つずるずると引き寄せると、ぽんぽんとそこを叩いてアピールしてきた。異論は無いので、「よっこいせ」と早坂と肩が触れそうなくらい親密な近さで胡座をかいて座る。

「やだ、おじさんっぽい」
「委員長なんてやってると心労で老け込んじゃうんだよ」
「元気が足りないわねぇ。まだまだ体育祭は続くわよ?」
「努力はするよ。成果は期待しないで欲しいけど」
「駄目。頑張りなさい」

 そう言うと、早坂は指を伸ばして僕の鼻をちょんとつついてころころと笑った。細められた瞼を彩る長い睫、バランス良く整った鼻と顎、あどけなく白い歯を見せて微笑んでいる唇……。うひゃぁ……やっぱり早坂って可愛いなぁ。

 僕が笑う早坂に見とれていると、その視線に気が付いたのか、彼女も少し頬を赤らめて「ん?」と首を傾げた。膝を曲げて脚を片側に引き寄せ、崩れた座り方で僕に体を寄せてくる。

「それで? 話って何?」

 ふわっと揺れた彼女のツインテールから、日の光を浴びた良い匂いがした。どぎまぎしながら何とか口を開く。

「う、うん。えっと……あれ? 何だったっけ」
「忘れちゃったの?」
「え、いや……」

 そう言えば、呼び出して2人きりになることばかり考えていて、何を話すか考えていなかったぞ。表彰の後も忙しくてそこまで考えが回らなかったし……どうしよう?
 しどろもどろになっている僕を、早坂は何故か笑ったまま黙って見つめ続けている。僕はその視線にますます慌てた。

(えっと、何か話……話……あ、そうだ!)

 話題になる事を脳内で検索し、唐突に体育祭前にこの場所で早坂に会った時の事を思い出した。慌てていたので良く考えず、咄嗟に口に出してしまう。

「早坂、選手だったからチアガールの衣装着れなかったね」
「え、その話? 何、着てるとこ見たかったの?」
「まあ、うん、そうだけど……」
「残念でした。応援合戦までお預けね」
「え!? 出るの!?」
「そうよ。楽しみにしててよね」

 そう言ってふふっと笑う。何か……凄く距離が近い気がする。物理的にも、心の距離的にも。
 ふと、宮子の言葉を思い出した。壁が崩れたって、この事なのかな。何だか早坂、僕と居るのがとても楽しそうなんだ。これって……好意、なのかな?

 エアリアは、宮子や早坂みたいな気質の人間は役職によって立場を弁えた感情しか表に出さないって言っていた。それを、ペルソナガードと言うのだと。
 どうなんだろう、今の早坂の様子がそのガードを突破した状態って事なんだろうか。しまったな、急ぎ過ぎてそこまで考えが至らなかったから、本を確認するのも忘れてた。もしかして、ブラックデザイアの中にはもう早坂のページが出来ているのかもしれない。

 確認する方法は簡単だ。実際にインサーションキーで彼女の心の裏口を開き、常識書換が出来るか試してみればいい。どれだけ常識とかけ離れた異常な要求を僕がしたとしても、ちゃんと黒い本が働いたならそれを変だとは早坂は気付くこともできず従う筈だ。

「どうしたの?」
「うん……」

 言葉を止め、考え込んでしまった僕を早坂は不思議そうに首を傾げて覗き込む。これ以上不審がられない内に、何か仕掛けてしまった方が良いかも。

 でも、何をさせる? 今のこの学園は宮子による支配のお陰で相当常識外れな恥ずかしい事をさせてもおかしいとは思えなくなっている。こちらの用意した印(しるし)さえ有ればほぼ全裸で野外を歩き回ってもOKだし、僕を喜ばせるためなら放尿姿やお尻の穴を見せつけるのも当たり前、それどころか射精を促すためにフェラチオやアナルセックスまで常識的な行為として解禁されているのだ。早坂に……この可愛らしいツインテールのお嬢様に、それらの行為以外に何をしてもらったら確証を得る事が出来るだろう?

「大丈夫? 本当、どうかした? やっぱり疲れてるの?」

 早坂の顔付きが僕を気遣うような心配げな様子に変わる。その瞬間、僕の心の中でぱっとアイデアが閃光のように閃いた。考えもまとまらないまま、急いで口にする。

「ああ、うん、慣れない事続けたから結構堪えてるかもしれないな」
「そうなんだ。じゃあ、今日はもう帰る? 早く休んだ方が良いわよね? 家まで送って行ってあげようか?」

 早坂は優しいなあ。本気で心配してくれてるこの娘を騙すのはちょっぴり良心が痛まないでもないけど……ま、些末な事か。

「うーん……それより、MVPの早坂の元気を少し分けて貰いたいかな」
「え? 何を言ってるの?」
「君の元気、『応援』で僕に分けて欲しいんだ」

 ぱちくりと瞬きする早坂。でも、僕はその精神の扉の鍵がカチリと開く音を確かに聞いた。思惑通りにいった喜びもあって、口元に笑いを浮かべながら僕は続ける。

「MVP選手が僕のためだけに『応援』してくれれば、きっと元気が出ると思うんだよね。なんたって今日一番輝いていた選手なんだからさ。だからさ、早坂、僕のために『応援』の衣装に着替えて、やってくれない?」
「あ……そ、そうよね。私がMVPなんだから、一番応援の効果が有る筈よね。わかったわ」

 早坂は納得して頷き、立ち上がりかける。

「あ、ちょっと待って!」
「え?」

 いけないいけない。早坂にかけたのはインサーションだから、僕の視界から離れたら効果が解けてしまうんだった。最近ドミネーション能力に頼りっぱなしだから忘れるところだったよ。

「衣装は今、何処にあるの?」
「練習で使ったから洗おうと思って、バッグに持ってきてるけど?」

 そう言って座敷の隅に置かれている星漣マーク入りの濃いブルーのバッグを指さす。ナイスタイミング! これならこの場で生着替えして貰えばOKだ!

「あ、いいよ。問題無し。じゃあ、僕が元気になるよう『応援』の衣装に着替えるところも見せてね」
「ここで? それで本当に元気が出るのかしら」
「勿論だよ! お願いね」
「ふぅん……わかったわ。ちょっと待ってて」

 そう言うと早坂は部屋の隅まで行ってしゃがみ込み、バッグの中から例のイエローのチアリーダー衣装を丁寧に取り出す。そしてそれを持って胡座をかいている僕の前までわざわざ戻ってくると、目の前で制服のファスナーに手をやった。

「着替えるわ。ちゃんと見ててよね」
「うん」

 早坂は僕に断りを入れ、何気ない仕草でしゅるっと薄手の星漣学園制服を脱ぎ捨てた。白い、意外なくらい飾り気の少ない清純そうな彼女の下着が露わになる。思わず口から驚きがこぼれた。

「……白だ」
「何よ、下着までチームカラーで統一なんて決まりは無かったはずよ」
「そういう意味じゃないんだけど」
「じゃあ何なの」

 勝ち気でハーフな早坂な事だからもっと派手なのを着てるのかと思ってたので、これは意表を突かれた。でも、煌びやかな外見と相反するそれは、ギャップもあって何だか凄くイケナイ感じがして興奮する。
 しばらく僕を睨みつけた後、早坂は気を取り直すと手を背中に回してブラのホックを外した。そっか、チアガール衣装はその衣服「のみ」が公式に認められているから、これを着る時は下着を脱ぐのは常識になっているんだった。常識の改変された早坂は、僕が見つめる中すんなりとブラを外す。
 薄い清楚な生地の下から出てきたのはツンと自己主張する生意気そうな2つの膨らみ。先端部は綺麗な桜色で、つやっと光が反射しているかのような薄い色合いだ。柔らかさも申し分無く、肩からブラ紐を抜く時の動きで寄せられた二の腕に挟まれて形を変え、深い谷間が鎖骨から下に出来たのを確認した。彼女は何気ない仕草で指先に引っかけたその下着を畳の上の制服の上にふわっと落とした。行儀が悪いと言う事も出来るが、それは早坂の本質に有る奔放さを表している様で僕には好ましく感じられる。

 続いて早坂は腰に手をやった。いったん僕の方をちらっと見てその視線が自分にちゃんと向いていることを確認した後、残った最後の下着を一気に足首まで下ろす。片足ずつ縮んでまるまった白い布から抜き取り、こちらもほいっとさっきのブラの上に乗せた。
 これで少女は靴下と彼女の勝利の勲章のようなミサンガの他、何も身に付けていない生まれたままの姿になってしまったのだが、それを気にする様子は無い。背中を伸ばしてすっくと立つと、肩に掛かった髪の一房をすぱっと背中側に払った。思わず、その堂々とした立ち振る舞いに見とれてしまう。

「……何よ? 女の子のカラダを見るのは初めてじゃないでしょ?」

 僕が座ったまま前のめりになって食い入るように見ているのを見下ろし、少し呆れた様子で早坂が言った。

「ま、そうなんだけどさ」
「興味津々じゃない」
「金色のあそこの毛は初めてだからさ」
「もう、そんなとこばかり見るのね!」

 「男の子ってみんなそうなのかしら」と文句を言いつつ、別段隠す素振りは見せない。僕は遠慮無く早坂の股間に向けた後、笑顔で視線を上げた。

「綺麗な娘の裸は見てるだけで元気になれるからね」
「チアの格好の方が良いんじゃなかったの?」
「それはまた別腹なんだよ。衣装は可愛さを引き立てるからね」
「……口だけは上手なんだから」

 口ではそう言いつつ、早坂は満更でもない様子だった。僕の褒め言葉に頬を薄く桜色に染めながら、挑戦するような視線で見下ろしてくる。口元に笑いを浮かべ、片手を腰に当てたポーズですらりと立っていた。

 早坂の裸体は、6月に見た時の記憶よりもずっと魅力に満ち溢れている様に感じた。色んな娘の裸を見てきて心に余裕が出来たからかもしれない。スレンダーなのに出るべきところは惜しみなく膨らみ、締まるべきところは急角度に細くなっている。手足はぎりぎりのバランスですらりと長く、足首や脹ら脛なんかはきゅっとモデルみたいに細くなっている。なのに、その上の太腿から腰回りにかけては女らしさを感じさせるふくよかなボリュームが有るのだ。
 乗馬のお陰かお腹には贅肉の欠片も無く、そのくせ2つのおっぱいは手の平に乗るくらい大きくツンと上向きに形を保っている。肩幅は標準的な女の子よりは広く、しっかりした印象が有るが鎖骨からうなじまでの首筋ははっとするくらい細くて色っぽい。
 総じて、とことんそれぞれの部位が魅力を発揮するために自己主張を行いながら全体として調和が取れている、究極の我が侭放題ボディと言っても過言ではないだろう。半分入った外国の血のせいなのだろうか。いや、もしかしたら性格って体つきにも現れるものなのかもしれない。

「……」
「……」

 無言の僕の視線がその肌を舐めていくのを早坂も感じている筈だ。尖った乳首やお腹の窪み、喉元や脇の下、ビキニラインや股間の金髪の茂み。それらを見られているのがわかっている筈なのに、早坂は逆に誇らしげに胸を反らし、ぐいと顎を引いて挑戦的な笑顔で僕を見下ろした。
 何と様になった立ち振る舞いだろう。生まれ持ってのお姫様気質なんだよね、早坂は。僕が今まで出会った星漣の学生の中で、「美少女」という形容がこれほど似合っている娘は他にはいないだろう。その勝ち気な表情のまま、早坂は僕に要求する。

「黙ってないで、何か言ったらどうなのかしら?」
「あ、うん。スタイル良くて、格好いいよ」
「どうもありがと。それで、私を見て少しは元気になったならそろそろ着替えたいんだけど?」
「ああ、ゴメン」

 僕の視線がまだ自分の身体の要所に張り付いているのを見て、再度ふふんと得意げに早坂は口元に笑みを浮かべた。男に素っ裸で身体を見せつけてるって状況、わかってるんだよなぁ……? だんだん僕もこれが黒い本の力によるものなのか、それとも早坂の貞操観念が元々こんな風に大らかだったのか分からなくなってきたぞ。いや、そんな訳無いんだけどさ。

 早坂は先程バッグから出したチームのイエローチアガール衣装を手早く身に付けた。と言ってもバッグに入ってたのはノースリーブシャツと太腿露わなスカートだけだったから、時間をかける要素なんて皆無だったんだけど。

「どう?」

 お臍の見えるミニスカチアリーダーに変身した早坂が、両手を左右に伸ばしたまま片足でくるっと一回転してみせる。ひらっと遠心力でスカートの裾が舞い上がり、何も隠す物のない白くてすべすべのお尻が僕の目前に丸見えになった。

「実にいいね。とってもチャーミング。グッド!」

 僕が親指を立てて有らん限りの賞賛を送ると、早坂は「当然ね」と髪を後ろに払った。……あれ、ちょっと顔赤いぞ。照れてたりする?

「でさ。応援ってどうやるの?」
「それは、普通に踊ったり、声を出したり、リズムに合わせてやるの」
「やって見せてよ」
「無理ね。ポンポンも持ってきてないし」
「リズムなら手拍子してあげるからさ。早坂の『応援』、ここで見られたらきっと元気が出ると思うんだ」
「……もう、仕方無いわねぇ」

 僕の「説得」により、早坂は肩を竦めて承諾してくれた。周囲をぐるっと見渡しポンポンの代わりに振る物が無いかと探す。リズムを取るためにも、両手に何か持っていた方が良いのかな?
 ぽん、とアイデアを思い付き、僕は「ちょっと待ってて」と隣の受付部屋へと靴下のまま急いだ。そして室内をぐりぐり見渡し、目当ての物を探す。

「おっ、これこれ!」

 僕はそれを片手に掴むとすぐに隣へ引き返した。そして棒の先に紐状のふさふさが幾重にも付いたそれを早坂に手渡す。

「片手はそれで良いんじゃない?」
「……ハタキ? ちょっとイメージ違わない?」
「振り回してリズムが取れれば良いんでしょ? 後1つは何にしようかな……」

 再度、同じ様な長さの物が無いか第2図書館内を探して回る。最終的に、何に使うか分からないが40cm位の何の飾り気もない木製のスティックが出てきたのでこれを使う事にした。先端部に何か結び付けてやれば格好が付くかな……ぐるりと首を巡らした時、床に置かれた早坂の制服類が目に入り、思わずにやっと笑いを浮かべてしまう。

「『応援』の効果を上げるために、君の服、ちょっと借りるよ?」
「はぁ? 何言ってるのよ」
「女の子の下着も『応援』で元気を出して貰うためには必要でしょ?」
「……まあ、そうだけど……」

 了解が出たので、僕は例の魔法のリボンも使って早坂のブラとパンツを棒の先に結びつけてやった。さっきまで自分の着ていた下着を見せびらかし、振り回しながら踊るチアガール……何とも変態的じゃないか。

「はい、これでお願い」

 僕は出来合いの2つの応援スティックを早坂の手に押しつける。彼女としては納得がいかないのかハタキと棒の先でぷらぷら揺れる自分の下着を交互に見つめていたが、やがて諦めたのか「ふう」と溜息を吐いて顔を上げた。

「新体操じゃないんだけど……仕方無いわね。いい? 合いの手入れるのならこのリズムでね?」

 右手に持った下着棒をフリフリしてタイミングを指示してくる。「こう?」と試しにパンパンパンと手拍子をすると「そうそう」とリズムに合わせて首を振りながら口元に笑いが浮かんだ。そのまますっくと立ち上がり、くるっと後ろを向いて僕に背中を見せる。そしてびしっと片手を腰に当て、もう反対を横に突き出して静止。タンタンタンと爪先でリズムを取った後、早坂のチアリーディングが始まった。

「フレッ、フレーッ、た・つ・みっ! ファイト! ファイト! た・つ・み! それっ!」

 くるりと回転してこちらを向き、リズムに乗ってダンスが始まる。翻るスカート、ちらりと見える脚の付け根。そしてツインテールを弾ませながら飛び跳ねる。
 いったん始まってしまえば先ほどの不満は何処へやら、早坂は実に堂に入った応援演舞を披露してくれた。腕を上げ脚を上げ、脇の下や足の付け根の微妙なところも惜しげもなく披露し、見られている事を知りながら笑顔を張り付けたままリズムに乗って踊り続ける。ポンポンの代わりに持った飾り付きスティックも彼女のセンスによるものか、絶妙の手首使いでダンスにその動きを組み込まれてよりダイナミックに演出を高める。
 短めの上着の裾から覗く弾む乳房、脚を振り上げた時に見える金色の茂みと割れ目。背中を向けて腰を突き出してお尻を振れば、揺れたスカートの裾の下からつるっと可愛いお尻と、その双丘の間には大事な窄まりがチラ見えする。正にフレッシュ&コケティッシュ&エロティック! 僕は瞬きも忘れて彼女の一挙手一投足に注目せざるを得なかった。

 これだけ激しく動き回っているのに、早坂の足下からはトントントンと軽やかなステップ音しか響かない。膝の使い方が上手いのだろう。僕だったら体重をもろに畳にかけてドタンドタンと大きな騒音を立ててしまうに違いない。

 呼吸が弾み、顔も熱気に赤く火照ってきた。少し汗ばんできめ細かな肌がキラキラと照明の光に輝いている。眩しさに瞬きすると、早坂の身体をまるでオーラのようにその輝きが覆っている様に見えた。これが彼女の生命の息吹の姿なのだろうか? その瑞々しいエネルギーの放射が僕に向けられている様が想像できる。自分で仕掛けておいて何だけど、早坂は本当にチアリーディングで僕に「元気」を分けてくれているんだ。
 そうやって見ると弾む胸も可愛いお臍も、輝く股間の毛も、その下の複雑な割れ目も、全部が彼女の健康でエネルギッシュな肉体を象徴するパーツに思えてくる。ちらちらと適度に隠しながら、それでも重要な決めシーンの瞬間にはそれらの部位を見せつけ、強調するチアコスチュームは身体の良い装飾品だ。そして不思議な事に、そんな早坂の姿を見る事で、いやらしさよりも可愛らしさ、元気さが伝わってきて本当に身体の芯から活力が湧いてくるんだ。

 これは、早坂だけの特性? それとも全世界のチアリーダーの女の子はみんなこんな不思議な滋養強壮能力を持っているの? もしそうなら、今すぐ全員、早坂やこの学園のチア達と同じ様に下着を脱いでやれば良いんだ。きっとみんな、その素晴らしさに気付いて感動する筈さ。

「ファイト! ファイトー! た・つ・みっ!」

 最後に両手を大きく天井に向かって伸ばし、飾り棒をめいいっぱい大きく振って早坂の応援は終わった。手拍子からパチパチと拍手に変えて労うと、「はぁはぁ」と息を乱しながらにっこりと微笑んだ。バッグからタオルを手に取り、汗を拭きながら僕のところに帰ってくる。すとんと女の子座りに腰を下ろして首を傾げた。

「はい、終わり。どうだった?」
「凄く元気出た。感動した、ありがとう。可愛かった! あと、格好良かった!」
「どういたしまして」

 額に汗を浮かべたまま、早坂は照れたような笑みを浮かべた。

 その後、早坂が汗を拭いている間に僕は隣の受付の机の下にあった冷蔵庫から作り置きの麦茶を発見してグラスに注いで持ってくる。ついでにペン立てに刺しっぱなしの団扇も発見したので持ってきて、それで火照った少女を仰いであげた。一応、受付代行には「借りるよ」と断ったので問題は無いだろう。

「ん〜、涼しっ」

 僕に風を送ってもらって早坂はご満悦な様だ。先程の様に脚を投げ出して片手を後ろについた姿勢でくぴくぴと麦茶に口を付ける。風に煽られ、短い上着の裾から胸の方に涼風が送り込まれてふわふわとしていた。……下の方はもっと短いので、正面から仰ぐ僕には太腿の付け根の方まで見えそうになってるんだけど。時折風で裾が浮き、その一瞬だけ天井からの光に何か細い金色のものがきらっと光る。うーん、もっと良く見たいなぁ。
 若干下向きになった風に気が付いたのか、早坂は「あ」と口を開けるとささっと膝を閉じてミニスカートの端を押さえた。上目遣いに僕のことを睨む。自然とニヤニヤ笑いが僕の口元からこぼれた。

「いいじゃん、さっきまで脚上げて見せてくれたんだしさ」
「もう応援は終わり。十分元気になったって言ったじゃない」
「まだ、100%中の100%じゃないからさ」
「100%に0も100も無いでしょ!」

 鋭いツッコミ。だけど、見たい物は見たいし、隠されるとなると尚更だ。それに、下着を脱いで応援する位なら宮子の支配で他の娘でもやってくれるだろうし、もうちょっと早坂に能力が効いてる確証が欲しいな……。うん、もう少し無茶ブリしてみるか。

「まあ、お陰で今はすっかり元気さ。今はね」
「良かったじゃない」
「でもさ、最終日はこれまで以上に大変そうだし、その度に早坂、応援に来てくれたりしないよね?」
「そんなに暇じゃないわ」
「ならさ、せめてMVPの早坂の『応援お守り』を持っておきたいな。疲れ果ててもそれを見れば元気が出てくるだろうからさ」
「何、お守りって……何かあげればいいの? このミサンガみたいなもの?」

 ふふん、流石にお嬢様の早坂にこの発想はできないか。古来より、男を奮起させるために女性から送る物って言ったらこれしかないよね。僕はまじめくさって団扇の先で早坂のスカート……の下に隠れている部分を指した。

「『応援』って言ったら勿論、女の子のあそこの毛さ」
「え? は? ええ!? こ、ここの!? 嘘ぉっ!」
「本気だよ。昔っから、男の人を『応援』する時、女性はお守りとしてそこの毛を渡してたんだよ。知らなかった?」
「……うーん、そう言えば、そうだったかも……」

 困惑しながら早坂は首を捻る。顔を赤らめ、もじもじと膝頭をすり合わせながら上目遣いで僕の方を伺った。

「じゃ、じゃあ……達巳くんは、私のここの、あれが欲しいの?」
「うん。今すぐにでも」

 おっとっと。逃げ道を塞ぐためにも条件を付けとかないとね。僕は急いで付け足す。

「その様子じゃ、そこのどんな毛が『応援』に一番効果的かも知らないでしょ? 僕が選んだ方が良さそうだ」
「え!? 違いがあるの?」
「勿論。下手に選ぶとご利益が無いどころか逆効果な事も有るんだよ」
「そ、そうなんだ……知らなかったわ」

 僕の適当なでっち上げも、黒い本の力で早坂はすっかり信じ込んでしまったようだ。うーんと暫く1人で葛藤した後、諦めたように「ふう」と息を吐いて僕を見上げた。

「どうしても、達巳くんはその『お守り』、欲しいの?」
「早坂の期待に最終日までちゃんと応えたいんだ」
「……わかったわ。だけど、他の人には内緒にしてね?」
「勿論」

 僕の真面目ぶった頷きを信用してくれたのか、早坂は決心したような顔つきになるとスカートの裾に両手をやった。そして顔を真っ赤にして僕に囁く。

「じゃあ……早く、選んで」

 そう言うと、おずおずとお臍の上までスカートを捲り上げ、下腹部を僕に向かって剥き出しにしてくれたのだった。
 早坂的には膝を閉じたまま見えている分の茂みの部分から選ばせて、微妙なトコロは見せないで済ますつもりだったのかもしれない。だが、僕の悪戯魂はそんなに甘くはないのだ。

「脚を閉じたままじゃ選べないよ。下の方が見えないし」
「え」
「待ってね」

 僕は壁際に座布団を持って行くとさっきの早坂のようにぽんぽんと叩いて少女を呼び寄せた。

「背中を付けて座ればいいの?」
「うん、そしたら、膝を開いてがに股な感じで脚を開いてね」
「そ、そんな格好……っ!」
「恥ずかしい?」
「当たり前でしょ!」

 だけど今の早坂は、僕にあそこの毛を選ばせる事が絶対に必要な事だと思い込んでいる。恥ずかしさに顔を染め、スカートを握る手にぎゅっと力を込め、それでも僕の方に腰を突き出すようにしつつ膝が左右の畳に付くくらい一杯に股を開いて見せた。かーっと真っ赤になった早坂の様子にニヤリと笑い、「じゃ、始めるよ」と少女の両膝の間にしゃがみ込んで顔を股間に寄せる。

「早くしてよねっ……!」

 羞恥に耐えるため、目線を反らして眉根を寄せながら早坂は呟いた。まあまあ、ちゃんと選ぶためにもまずはじっくりと観察しないとねぇ。

 早坂の股間の毛は、見慣れた彼女の髪とは若干色合いが異なっているように思えた。少しだけ赤みが強く、光の加減で銅色にも見えるのだ。細い毛質のせいか思ったより縮れてはなく、長い毛の端の方が少しカールしている程度だ。
 クリトリスを守る包皮の上の方が一番茂みが濃く、そこから左右に分岐して降りていくに従ってまばらになっている。お尻に近い方には殆ど産毛しか無いくらいだ。毛の色が肌の色と似てるから、ぱっと見その辺りには何も生えていないかの様にも見える。「ふーん」と妙に感心した僕の吐息がふわっとそれらの毛を揺らし、それに反応した皮膚や襞がぴくぴくっと震えるのが見えた。

「ねえ、まだなの……?」

 押し殺したような声が上から聞こえてくる。僕はそれには答えず、「ちょっと触るよ」と言って指先を伸ばした。片手の親指と人差し指を割れ目にあてがい、ぐいっとそこを押し開く。「きゃっ!?」と小さく悲鳴が上がり反射的に膝が閉じかけるが、僕が内腿の部分をぽんぽんと叩くとおずおずと元の位置まで戻っていった。

 そこは、宮子の見せてくれた未来記憶で一度は目にした光景だ。だけど、それは彼女の言葉通り、実際にその状況に相対した現在にしか得られない感動があった。
 彼女の内心の動揺を反映して可愛く振動している小さなクリトリス。襞と襞の間のスペースに間違いのように小さく口を開く尿道口。僕の指に引っ張られ、窮屈そうに空洞を開いている膣口。そしてその奥に見える彼女の処女膜。それらは色素が薄いせいか目に鮮やかなピンク色をして、さらに剥きたてのゆで卵のようにつやつやと光っていた。こんなところも早坂って美少女なんだな、と訳の分からない納得が僕の胸にすとんと落ちる。

「そこも必要なの……?」

 若干の震えを含んだ口調で少女が尋ねる。おっと、あんまりじっくり観察してると怪しまれるか。

「もちろん。女の子の大事なところを守る毛だからね。位置関係を見て選ばないといけないんだよ」
「……ふーん……良いけど」

 口からの出任せで何とか納得させる。さて、そろそろ目的のブツを選んでしまおうか。

 早坂がもっと毛深い娘だったらイヤらしさ満点のお尻の辺りの毛を選んだんだろうけど、残念ながらというか、予定調和というか、ただでさえあそこの毛の薄い早坂にはそんな物は存在しない。だけど、できるだけ彼女の秘密にしておきたい部分から採りたいのは当然の欲求だ。
 そういう訳で、僕は慎重に検討を重ねた結果、早坂のちっちゃなお豆のすぐ横の皮膚から一本伸びているヤツに目星を付けた。「これが良さそうだ」とつん、と引っ張ると早坂が小さく「きゃっ」と声を上げる。

「急に引っ張らないでよ!」
「ごめんごめん。でも、決まったよ」
「そんなところの?」
「いいところから生えてるからね」

 柔らかい早坂の秘肉に左手をぷにっと沈ませ、あそこの毛をより分けて人差し指と中指の隙間から目当てのモノだけ外に出す。右手で飛び出したその毛をしっかり摘んだ。

「じゃ、抜くよ」
「痛くしないでよ?」
「……努力はする」

 大事なところをモロに触られているのに、敏感なところに走る痛みに対する集中からか羞恥や拒絶の言葉は出てこない。じっと見ていると、すうはあと呼吸で動く下腹部からビキニラインの方へと汗が一滴、つうっと流れ落ちてきた。先程までの運動の残り火か、それとも緊張によるものか。
 僕は心の中でその滑らかなお腹の動きを数え、3回目に早坂が息を吐いたところで一気に摘んだ手を引いた。つん、と伸びた毛がほとんど抵抗無く少女の肌から離れる。

「抜けた」
「え? もう?」

 きょとんとした雰囲気で僕の手の中にある自分の陰毛を見つめる早坂。当人も拍子抜けするくらい何の痛みも無かったようだ。さっき引っ張ったせいで抜けかけてたのかもしれないね。
 僕は反対の手で根本の方に持ち替え、その毛をまじまじと見つめた。光にきらきらと光るその細い毛は金糸の様で、比較的短い早坂の陰毛の中でも長い方だ。それは下着に抑えられていた日々の成果かS字よりさらに1回多くカーブし、正に「あそこの毛」といった外見をしている。そして、室内の僅かな空気の流れによるものか、それとも2人の微妙な吐息か、はたまた僕の手の僅かな揺れによるものか、それはぷるぷると僅かに震え続けていた。

「ちょ、そんなに見ないでよ!」

 火照って真っ赤な顔で怒る早坂。慌てて立ち上がって脱いだ制服のところに向かうと、ごそごそとやってハンカチを手に戻ってきた。

「これに乗せて!」

 手の平の上に広げたハンカチの中央を指さす。僕は笑いながら彼女の毛から目線を外し、言われた通りに真ん中にそれを乗せた。早坂は「お守り」を内側にして丁寧に端からハンカチを折り畳むと、僕に手渡す。

「はい。絶対、無くしたりしないでよ」
「大丈夫、どんな時も肌身離さず持ち歩くよ」

 僕が畳まれたハンカチを左胸のポケットに入れて上から手で押さえる仕草をすると、「そ、そういう意味じゃなくて……」と真っ赤になって顔を逸らせたのだった。

 さて、予定通り能力の確認もしたし、更にオマケのモノも手に入れる事ができたし、早坂とはここで別れても良かった。だけど、僕は彼女に対して黒い本の能力をもう1つ使う事ができる事に気が付いてしまった。僕は何気なく早坂の空になった麦茶のグラスに目をやり、おもむろに切り出す。

「応援のお守りも貰ったし、お礼をしなくちゃいけないよね」
「え?」

 チアガールの衣装から着替えようとしていた早坂は、驚いた様に顔を上げる。

「別に、そんなつもりでやったんじゃないし……いいわよ、そんなの気にしなくたって」
「でもさ、折角2人きりなんだし……黄組のスペシャルポイント、欲しくない?」
「それって……射精してくれるってこと?」

 自分の言葉に恥ずかしくなったのか、ぽっと早坂の顔が赤くなる。僕はにやにやしながら更に言い募った。

「いや、欲しくないってんなら別に良いけどさ。手間が省けるし」
「そりゃ、欲しくないわけじゃないけど……けど、もう競技時間外だし、いいの?」
「ルール的には体育祭実施期間内だったら授業中を除き全ての時間帯でオッケーだよ。場所も限定されないしね」
「あ、そうだったわね」

 早坂は少しの間だけ躊躇するように指先を口元に当てて考えていたが、うん、と頷くと僕に向き直った。

「まだ少し時間有るし、お願いしてもいい?」
「もちろん。ただ、ちょっと幾つか条件が有るんだけど」
「お礼だったんじゃないの?」
「それはそれ、これはこれだよ。なに、全部簡単な事だよ。まず、折角出すもの出すんだし、できれば全部早坂さんに飲んで貰いたいんだけど」
「達巳くんの精子を?」

 きょとんとした様子で聞き直した早坂は、僕が頷くと何でもない様な顔で続けた。

「それくらい良いわよ。役員のみんなも競技の後、達巳くんのを飲み回してるんでしょ? ……でも、本当にそれ、そんなに美味しいの?」
「人による、としか言えないよ。僕は御免だけど」
「自分の飲めない物を他人に勧めないでよね……ま、毒ではないんだし、いいけど」

 僕の精子については宮子経由で「ご褒美」って事になっている。けど、味覚は変更してないのに美味しい美味しいってみんな飲んでくれるって事は、個人個人で味覚を調整する何らかの補完の感覚変容が行われてるんだろうな。だから、実際に早坂が味わってみてどう感じるか見物である。

「他に?」
「後はね、出すまでの間また『応援』してくれない?」
「また踊るのぉ?」
「いやいや、声援だけでもいいし」
「……『ファイト、ファイト』って? ちょっとバカっぽくない?」

 それが良いんじゃないか。まあ、声だけではオカズが足りない気もするから追加要求しとくか。

「もちろん、出すのにふさわしい『応援』は大歓迎さ。紫鶴さんが言ってたじゃない? 早坂さんの手で扱いて『応援』して貰えれば効果も上がるよ。舐めるのもいいね」
「舐めるの? 声が出せなくなるけど?」
「できるだけやってくれればいいよ」

 色々条件を付けたけど、最終的にはチーム想いの早坂の事、不承不承ではあるが僕からの要求を全面的に受け入れる事で決着が付いた。立ち上がった僕に目線をやりつつ、何気なく早坂がスカートの裾を引っ張りながら尋ねる。

「ねえ、服はどうする? このままやろうか?」

 うーんと……。チアダンスの為に着て貰ったけど、踊りをやらないならそれほど衣装にこだわりは無いんだよな。じゃあ、視界を楽しい物にするためちょっと脱いで貰うか。

「そうだね。汚れると洗うの大変だろうから、シャツだけ脱いでくれる?」
「上だけでいいのね?」

 素直に同意し、早坂はノースリーブの衣装の裾を腕をクロスさせて握ると、躊躇う素振り無く一気に脱いだ。再び尖っで格好の良い早坂の双丘がぷるん、と剥き出しになる。僕が見ているのを気にする様子も無く自然な動作で襟から首と髪を抜き去り、裏返しの上着を直して側に置いた。
 すっと立ち上がれば上半身裸、下は靴下とノーパンミニスカートのツインテール美少女の出来上がりだ。ピンク色の先端部に視線を奪われつつ、僕は「じゃこっち来て」と早坂を自分の腰の位置に頭が来るように膝を付かせる。そこは先程からの早坂の裸にぎんぎんに張りつめ、ズボンの前を膨らませていた。

 ジッパーを開け、ちょっと苦労しながらモノを取り出すと早坂は寄り目になってそれをまじまじと見つめ、驚きの表情をする。

「こんなに大きいんだ……」
「初めて見る?」
「うん」

 ま、わかってたけど。間違いなく男性経験に関しては早坂は箱入りお嬢様だ。上向きに自分の鼻先に突きつけられたそれに若干圧倒されながら、「さ、触るの?」と上目遣いに確認してきた。

「握って、扱き出すようにしてごらん」
「……こう?」

 最初はおずおずと、親指と人差し指だけを使ってふわっと羽毛のような優しさで。「もっと強くして良いよ」と僕が言うと、こくんと頷いてカラオケマイクを握るような手付きで指を絡め、するすると扱き始める。明らかな不慣れな様子だが、それを補って余りある早坂のたおやかな指先の感触に僕は興奮した。

「うん、うん。良いよ、その調子」
「これくらいのペースで良いの?」
「気持ちいいよ。『応援』も始めてくれる」
「あ、うん」

 早坂は扱くリズムに合わせて首を揺らしてタイミングを計り、やがて最初は呟くように声を出し始める。

「フレッ、フレッ、た・つ・みっ! 頑張れ、頑張れ、た・つ・みっ……」

 どうやら指の1往復1フレーズでリズムを合わせたようだ。声に出した事で段々と指の動きもリズミカルになり、調子が出てきて声も段々と大きくなる。

「ファイトッ、ファイトッ、た・つ・みっ!」

 チアリーダー魂に火が付いたのか、早坂は空いている手で膝頭をとんとんと叩いてリズムを取り始める。異性の勃起した性器を間近に見ているのに、その顔は先程と同じ輝くようなスマイルに彩られていた。
 果たして、腕の動きに合わせて2つのおっぱいがぷるんぷるんと一緒に揺れているのに本人は気が付いているのだろうか。指摘したい誘惑に駆られるが、その結果この素晴らしい光景が見られなくなると大きな世界の損失なので、ここは黙っておく。

「うっく……!」
「あ、きゃ!? 何か、出てきてる……?」
「そのまま続けて!」
「う、うん」

 程良い刺激に反り返ったモノの先端から先走りの透明液がこぼれ始めた。指先に絡みつくそれに最初は驚くが、僕が気持ちよさそうにしているのを見て早坂はよりいっそうペニスへの奉仕行為に没頭していく。にちゃにちゃと粘った音が少女の指の間から聞こえだした。

「そろ……そろ、出そうだから……! 口、開けて……!」
「こう?」

 応援の台詞を止め、言われた通りにあーんと口を大きく開ける早坂。更に本能的に僕の望むものを理解しているのか、舌を一杯にモノの方に伸ばしてみせる。僕の視点からだと、上目遣いにこちらを伺う早坂の喉の奥の方までぽっかりと開いているのがはっきり見えた。そこは粘膜が部屋の照明に照らされてぬらぬらと光り、先程見た彼女の股の間の光景に負けず劣らずのイヤらしさだ。頬を染め、可愛らしく照れた早坂の笑顔と性器そのものの様な淫靡な唇の内の姿のギャップに高揚し、雄の欲求としてそれを思うがままに汚すべく白濁液が駆け上がってくる。

「うぐぁっ!」
「きゃっ!!?」

 最初の噴出は一直線に早坂の口の中に飛び込み、上顎の裏から喉の入り口、奥歯や舌の上を暴力的に白く染め上げていく。驚いた早坂の手がぶれると同時に続けざまに2撃目が発射され、それは半ば笑顔が張り付いていた早坂の前髪から右目、右頬にかけて斜めにしるしを付けた。さらに3回、4回とビクビクと痙攣し続けるモノから、もはや何処でも良いから少女を汚してやろうと止め処なく精液がぶちまけられる。慌てて空いていた手で受け止めようとするも、その頃には少女の顎や喉、先程から魅惑的なダンスを踊っていた胸の膨らみやその先端部まで白い粘液が気が狂った様に飛び散り、僕の欲望で染め上げていた。

 体中を埋め尽くした快感に荒い息を付く僕と対照的に、驚きの表情のまま息すら止めて凍り付いている早坂。何か文句を言おうと口を動かしかけ、その際に舌の上にたっぷり乗った生温かい粘液の存在を再確認したようだ。眉をしかめ、それでも約束があるからか口を閉じると「んくっんんっ……」とそれを飲み込んだ。

「……はぁっ、酷い匂い……苦いし、粘ついてるし」
「ご、ごめん……」
「あ〜……もう。髪に絡んでるじゃないの。どうするのよ、これ」

 早坂は僕のモノから手を離すと、指先で右の瞼を覆っていた精液を拭った。そして両目を開いて糊の様に糸を引く白濁液をしげしげと見つめる。くん、と匂いを確認して顔をしかめ、自分の胸元に飛び散った同じ物を見下ろし、更にお椀にした片手にたぷたぷと残っている一掬い分の精子溜まりを見て「ふう」と溜息を吐いた。そして「みんな、どうしてこんなのが好きなのかしら」とぶつぶつ文句を言いながら、仕方ないといった様子でぺろっと指先を舐める。

「あっ、無理しなくても……」
「全部飲むって条件だったでしょ?」
「そうだけど……」
「……あれ?」

 唇から指を離した早坂の目が、何かに驚いて見開かれる。綺麗に舐め取られた指先を見つめ、少し急いで胸元から新しい精液を掬い取った。

「どうかした?」
「何だろ……そんなに、悪くない気がしてきたわ」

 今度は舌先で舐めるのではなく、指を唇に入れてしゃぶる様にして口内全体で味わう。もごもごと口を動かすうちに段々と頬が火照り始めた。

「ぷはっ……何これ!? 苦いのに何か、コクが有って……」
「コク!?」
「美味しいわけじゃないのに……。何か、クセになりそう……!」

 顎を上げ、唇まで手の平を持ってきて溜まっていた精液を啜る。粘度の高い液体を舌の上で転がし、口の中全部に塗りつけるように広げ、ゆっくりと味わってから喉を動かしてこくりと飲み干した。「はぁ……」と若干トロンと緩んだ目付きで幸せそうな熱い吐息を吐き出す。

「なんか……暑いわ。これ、お酒でも入ってるの……?」
「まさか! そんな訳ないでしょ」
「でも、良い気持ち……」

 ぽうっと名残惜しげに指先をしゃぶる早坂。半開きの唇の中でぽってりとした舌が妖しく翻っている。その様子にぴくんと僕のモノが反応し、それに気が付いて「あら」と早坂が声を上げた。

「まだ中に残ってるんじゃない?」
「え……あっ!」
「んむ……」

 驚くべき事に、僕が何も言ってないのに関わらず、早坂は自分から顔を寄せて僕のをあっさりと口に含んだ。片手で摘むように竿を支え、尿道に残っていた精液を吸い上げる。舌がおねだりするように裏筋の辺りを撫で、思わず腰が震えてその拍子にぴゅるっと残滓が早坂の舌の上にこぼれ出た。嬉しそうに目を細めてイイコイイコするように舌が先端部をさする。
 早坂が顔を引くと、先端部と唇に粘液のアーチがかかった。自分の涎と混合した白濁液を飲み下し、名残惜しげに僕のを指で弄びながら見つめる早坂。あっと思う間もなく、再度顔が寄ってちゅっと唇が先端に触れた。

「え、なに!?」
「……あはっ。美味しかったから、お礼」

 は、早坂が、こんな可愛い娘が……自分から僕のにキスをするなんて! よっぽど精子が気に入ったのか? いったいどんな常識補完が行われたんだろう。
 早坂は精液の味を反芻するかのように口を動かし、余韻に浸っている。そして、更に熱の高くなった吐息を「ふぅ」と口元から漏らした。

「やっぱり、暑いわ。エアコンが効いてないのかしら?」
「そうなの? 扇ごうか?」

 うん、と頷く早坂を見てさっき放り出した団扇を取りに行く。その途中、ふと気が付いてズボンのポケットの中に片手を入れて魔法のジッパーを開いた。果たして、僕の黒い本の表面は魔力に満ちてすっかり熱くなっているじゃないか。

(これ……早坂と契約可能って事なのか?)

 振り返って見てみると、早坂は火照った顔を緩慢に手で扇ぎつつ、ドロンと焦点の合わない瞳で今にも首がカクンと落ちそうな様子だ。試しに魔力の目だけで確認すると、彼女の肌からはオーラのように銀色の魔力の湯気がしゅうしゅうと立ち上っていた。なるほど、これが早坂の熱気の原因か。
 とりあえず団扇を拾って戻ると、その頃には早坂は「暑い」とぶつぶつ言いながら最後の衣服であったスカートや靴下まで脱ぎ捨てて完全にすっぽんぽんになってしまっていた。汗だくで濡れた白い肌や、股間に張り付いた茂みがとてもヤラシイ事になっている。僕はそれを見下ろしてぐびっと唾を飲み込みつつ、とろんとした雰囲気の早坂に向かって契約の呪文を投げ掛けた。

『受諾せよ(アクセプト)』
「あん……」

 自分の中の何かの変化を察知し、早坂が溜息のように喘ぎを漏らす。周囲に漂っていた魔力のオーラは、今やその魂を捕らえるために長く伸び、複雑な模様を描き始めていた。

『黒き本の使用者、達巳郁太の名に於いて命じる。汝の名を述べよ』
「……」

 早坂はとろんと気怠そうに顔を上げ、そして僕の顔を見つめる。ふわっとそこに笑顔が浮かび、安心したように目を閉じた。

「……早坂……英悧……」
『汝を我が従者とする』

 ポケットの中で本の表紙に触れていた手を抜くと、指先にはちゃんと銀色の魔力の光が転写されていた。片手で早坂の前髪を横に退け、光の宿った指先でそこに印を刻む。指を離すと、描かれた契約の紋章はすうっと早坂の頭部の内へと吸い込まれていった。

「ふぅ……う!?」

 がくん、と身体の芯から襲ってきた疲労感に膝が砕けそうになる。慌てて僕はジッパーの中に再度手を突っ込んで、黒猫から貰った魔力回復の錠剤を取り出した。丸くて紅いあめ玉のようなその粒は、内部に魔力が凝縮されているせいか光に当たらなくてもオーロラの様に揺らめく帯を内包している。急いで口に放り込み、甘みも何もないそれをガリガリと噛み砕いて飲み込んだ。これで、数十秒で魔力の枯渇状態は収まる筈だ。

 一息ついた僕は、改めて早坂の様子を観察した。少女の額では今まさに最後の一片の銀光が消えようとする瞬間だった。それが完全に消えたのを確認し、おもむろに僕は団扇で早坂の顔を扇ぎ始める。風にふわっと前髪が浮き、少女のいつもの髪型に落ち着いた。

「……どう、少しは涼しくなった?」
「え?」

 ぱっと瞼が開き、ぱちくりと瞬いた。僕の方を見上げ、そして団扇で扇ぐ僕を見つけて目が細まる。

「うん。ありがと、良い気持ちよ」

 そして自分の身体を見下ろし、はっと驚いた様に手を上げて胸と股間を押さえた。

「わ、私……いつの間に裸になったの!?」
「暑いからって自分で脱いだじゃない」
「そうだったっけ? そうだったかも……」

 ぼおっとしてた間の記憶が無いのかな? もしかして、魔力が注ぎ込まれてブラックデザイアの支配下あったから記憶が消去されたのかも。まあ、この学園の娘はもう僕の前で裸になっているくらいなら一々大騒ぎする程では無いんだけどさ。
 早坂も覚えて無い間に裸になっていた事自体には驚いたみたいだけど、それで取り乱す様子は無い。ちょっとバツが悪そうに僕の視線を気にして顔を赤らめるだけだ。きょろきょろと見回し、床に置いてある自分の制服に気が付くと座ったまま手を伸ばしてずずずっと側に引っ張ってきた。

「もう応援もしたんだし、涼しくなったし……着替えてもいいわよね?」

 一応、確認はするのね。僕はもうちょっとだけ早坂で遊びたかったので、大げさに驚いたフリをしてみせた。

「あれ? 約束は精子を全部飲んでくれるって話だったよね?」
「だから、飲んだじゃない」
「こぼしたじゃん」
「あれは……あなたのが跳ねるから」
「掴んでたのは早坂でしょ? ビックリ仰天してこぼしたんだよね?」
「う……そ、そうね。じゃあ、どうすればいいのよ?」

 素直に自分の非を認めた早坂はちょっと唇を尖らせながら尋ねてくる。うんうん、早坂って拗ねた顔もやっぱり可愛いんだよなぁ。

「もう一回出してあげるよ。それ、今度こそ全部飲んで」
「え!?」
「ポイントにもなるし、約束も守れるし、僕も気持ち良いし。一挙三得だね」
「い、いいの?」

 お、中々の食い付き。もしかして、本当に精液が好物になってしまったのかな?

「もちろんさ。ただし、今度も手だけじゃ変わり映えしないから、次は口でやってみてくれる?」
「いいわ。達巳くんのを口に入れればいいのね」

 早坂はあっさりと頷くと腰を上げ、僕の前でひざまづくように股間に顔を寄せた。僕がモノをズボンから引っ張り出すと、うっとりと見つめながら指で摘み、まずは唇と舌を使って愛撫を始める。

「こういうのは……どう?」

 唇で竿を部分を軽くくわえながら舌先で筋をなぞるように舐め回していく。てろてろと塗りつけられる少女の唾液に、すぐに僕のモノはべとべとになってしまった。早坂は自分の唾で濡れた肉棒を嬉しそうに片手で扱きながら上目で僕を見つめてくる。どこでこんなテクニックを身に付けたんだ? 天性の才能なのだろうか。

「うん、気持ち良いよ……そろそろ」
「ええ」

 肩にかかるツインテールの一房を背中側に払い、顔を更に近付けた少女の唇に僕のモノが飲み込まれていく。きゅうっと適度な吸引を加えつつ、ずずっと奥まで送り込んで先端部は喉の粘膜に触れそうなところまで届いた。早坂の唇はもう僕のモノの根本に達し、鼻先は陰毛の中に半ば埋もれている。
 そこまで喉に進入を許しながら、少女は落ち着いた様子で今度はモノを口から引き抜き始めた。吸引力が高まり、僕の尻からモノの先端部にかけて一気に吸い出されそうな快感が走る。僕は暴発を防ぐために腰に力を込めてストップをかけなければならなかった。だが、思わず「うっ」と呻きが漏れてしまう。それを、早坂は口に亀頭を含みながら喉を震わせて嬉しそうに笑った。

 実際、早坂のテクニックの上達は素晴らしいものがあった。顔をリズミカルに前後させ、舌も効果的に使って的確に僕のモノに快楽を送り込んでくる。更には腰に抱きつくように手を回し、ズボンの上から睾丸の裏の辺りを撫でるようにしてペニスの根本の辺りにまで刺激を送ってくる。な、なんでこの娘、僕の気持ち良いところがわかるんだ?
 あまりの良さに堪える事も忘れ、一気に白濁液が早坂に撫でられている辺りから吹き上がった。少女はそこがドクドクと射精の前段階に入ったことを察知すると、素早く唇からモノを抜き去り、さっきまで麦茶を飲んでいたグラスに手を伸ばす。

「ここにお願い! ねっ!」
「え!? ああっ!」

 ぐぐん、と最後のトドメとばかりに少し乱暴な手付きで僕のモノが一扱きされ、それを皮切りに爆発的な射精が始まった。鈴口がぷっくり広がり、勢い良く精液が飛び出す直前に傾けたグラスがその先端部にあてがわれる。次の瞬間、吹き出した粘液がびちゃびちゃとガラスの容器の中で弾けた。

「すご……!」

 グラスは見る見るうちに白く濁った粘液で満たされていく。早坂の手はこぼれないように傾きを調整しつつ、反対の手は別の意志が宿っているように的確に僕の睾丸から全部の精子を搾り取ろうとリズミカルに扱き続けている。それは大きめのグラスを満杯にし、表面張力で膨れ上がった水面が縁を越えてぷるぷると震えるくらいになって漸く止まった。

「……こんなに……」

 うっとりと呟きながら早坂は尿道に蓋をするように親指で先端部を軽く押さえると、慎重にグラスをテーブルに置いた。それを見つめて溜息のように熱い息を吐くと、改めて僕を見上げて軽くウインクした。

「お待たせ。残りは私の口に、ね」

 そしてあーんと口を開け、「どうぞ」と舌を一杯に伸ばす。両手を使ってモノをゆるゆるとさすると、尿道に残っていた最後の1しぶきがぴゅるっと少女の喉に飛び込んだ。そしてその後、どろろっとヨーグルト並に固い残り汁が赤く唾液に濡れた舌の上に絞り出される。半固形のその固まりが落ちきると、早坂はにっこりと笑いながら舌を唇の内に入れて、僕に喉の奥の方まで見せつけた。

「へーひ、たべふぁうあね?(精子、食べちゃうわね?)」

 ぷるぷると舌の上で揺れる精子の固まりを存分に僕に晒した後、口を閉じてにちゃにちゃと精子の固まりを噛んでみせる。十分に唾液と混ざったところで、「んっ……んぐ……んぅっ」と声を漏らしながら少しずつ喉の奥に送り込んだ。その度に喉がこくこくと動き、僕の精液が早坂の腹の中へと送り込まれていく様子が良く見えた。

「はぁ……美味しっ!」

 精液臭い息を吐きながら、早坂はちょっと首を傾けて満足そうに微笑んだのだった。



 その後、早坂と僕はテーブルに向かい合わせに座ってそれぞれの飲み物を手に休憩タイムに入った。僕の方は買ってきた毎度お馴染み苺ミルク、早坂の方はグラスに山盛りに盛られた一見ヨーグルトにも見える、ザーメンドリンクだ。それを早坂は一口毎に先程のようにぐちゅぐちゅと噛みしめ、幸せそうに飲み干していく。

 ちなみに、心配せずとも契約は上手くいっていたので自販機に走っている間書き込み内容はちゃんと保存されていた。更には、その途中で本を確認したところによると恒常発動まで有効となっている。薄々そうじゃないかと感じていたけど、早坂も僕の事、そう思っててくれたんだと一人照れる。そして顔が火照ったのが収まるのを待ったせいで、折角急いで買いに走ったのに戻るまでだいぶ時間がかかってしまった。帰ったら早坂がちゃっかりもう制服を着込んでたのが手痛い誤算だったんだけど。

「ねえ、達巳くん?」

 残り四分の一くらいになった精子を名残惜しげに眺めながら早坂が僕に尋ねてきた。僕の方はこの部屋に充満する臭いに少し辟易していたので、窓を開けようかと悩んでいたので少し反応が遅れる。

「……ん、何?」
「この後、暇?」
「暇だけど」

 僕の答えに、早坂はニンマリとした笑いを浮かべる。こんな娘でもハルみたいな顔するんだな。

「じゃあね、この後寮に来ない?」
「寮? 確か、さざなみ寮だっけ?」
「そうよ。黄組のソフトボールチームで簡単な祝勝会をするつもりなんだけど……ゲストで参加する気無い?」

 宮子の言っていたやつか。契約者となった早坂が中心の会だし、行くのはやぶさかでは無いのだが。

「どういう風の吹き回し? 僕、一応役員でクラスは赤組なんだけど」
「赤組は初日MVPの渚の祝勝会に、源川さんも参加させたんでしょ? なら、私のにも他のみんなを呼んでも構わないんじゃない?」
「ポイント稼ぎたいの?」
「チャンスは逃さないのよ」

 そう言った後、少し恥ずかしそうに早坂は目を伏せて自分のグラスの中を見つめた。

「それに、みんなにも達巳くんの精液、振る舞ってあげて欲しいし……」
「何、そんなに僕の、気に入ったの?」
「うん」

 頷き、グラスを持ち上げてちゅるっと一口分だけ口に含む。もぐもぐと顎を動かし、存分に味わった後にこくんと飲み込んだ。

「……最初はヘンな味だと思ったけど、今はどれだけ飲んでも飲み足りないみたい」
「お酒じゃないぞ、それ」
「わかってるわ。でも、達巳くんがこれ、毎日くれるって言うなら何でも言う事聞いちゃうかも」

 そう言って、冗談なのか本気なのかわからない笑い顔を浮かべた早坂。再度、グラスに口を付けて残り1口分を残してグラスを置く。

「あぁ、出来ることならお風呂いっぱいの達巳くんの精子に浸かってみたいわ」
「それは魅力的な提案だけど……僕のは捻れば出る蛇口じゃないんですが」
「残念ね」

 そう言ってころころ笑う。まあ、魔力を大量に消費すれば擬態した精子をそれくらい出すのも可能なのかもしれない。だけど、無駄なのでやらないよ。

「それに、そんな風に精子に浸かったらさ……出来ちゃうんじゃない?」
「何が?」

 きょとんとした様子で聞き直す早坂。おいおい、まさか精子の本来の役目を忘れた筈じゃないだろ?

「だから……入っちゃって、妊娠しちゃうんじゃないかって事」
「ああ……達巳くんので。そっか、そういう事もあり得るわね」

 納得がいったと早坂は笑いながら頷く。そして、最後の精液をぐいっとグラスを傾けて喉奥に送り込んだ。

「……まあ、それはそれで良いんじゃない?」

 グラスを置き、唇をぺろっと舐めつつぽろっとこぼれた呟きは、果たして本気だったのか否か。僕は敢えてスルーしたのでその真意は知る由も無かったのだった。

 
 


 

 

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