BLACK DESIRE


 

 



4.


 王国領東方第11区域……俗に極東と呼ばれる東は海、陸は急峻な山脈に覆われている地区である。この区域の中央よりやや北にずれた位置、南部の広い高原を川沿いに僅かに下った場所にある数キロ四方のエリアに、陸軍第21機甲化小隊の陣地はあった。周囲を崖と背の高い針葉樹の森に囲われ、容易には所在が判明しないよう建造物も全て低いものばかりだ。
 その中に今、周囲の木々よりも頭一つ高い巨人が2体、存在していた。緑と茶の森林迷彩の装甲を身に付け、背中には武装搬送用のコンテナを背負う翼を持つ巨人――今朝の戦いを終え、無事自陣へと帰還したガゥルシュミット2141号機、2142号機の勇姿であった。

「ホイール停止確認よーし! 作業魔動機前へー!!」

 グリーンのツナギを着た整備兵の号令でクレーンアーム・ゴーレムが前進し、背嚢コンテナが外される。それだけでも小屋くらいの大きさのあるコンテナは定所まで運ばれて降ろされると、素早く担当の整備兵達によってフレーム枠を分解され、折り畳み収納された武装を露わにする。底の方には2重の衝撃干渉フレームで区分けされていて、そこには弾倉に収まった魔砲弾丸が納められていた。
 弾倉を引き出し、ロックを外して弾丸を抜き出す。種類ごとに発射される弾頭部と加速して撃ち出すための装術包に分けられ、人力で別々の倉庫へと運ばれていった。

 この間にも両巨人の武装解除は進んでいく。コンテナに収まらない太刀や盾は専用の鉄枠を乗せた台車に慎重に乗せられると、こちらも整備兵達が金具を乗せて固定ピンを刺し、ロックする。

「固定完了ー! 2141号機武装解除終了!」
「先に2号機の砲口洗浄するぞ! あと2人運搬によこせーっ!」
「1号から先に動かせ! 固定台座用意いいかっ!?」
「用意よーしっ!」

 全部の武装を外して身軽になれば、いよいよ翔竜機そのものの格納である。
 喧噪の中の通信と、指先のサインでまずは操竜手の操作で内部から機体の防御機能を停止させる。表面の迷彩柄がモザイク状に変化し、そしてドットが欠けるように色を失って地肌の粘土色の装甲が剥き出しになった。これは第4.5世代の翔竜機の一部に搭載されている竜鱗装甲を応用した、竜鱗迷彩機能である。ガゥルシュミットのウリ機能の1つでもあった。
 剥き出しになった装甲はあちこちが削れ、欠け、亀裂が入ってくぐり抜けた激闘を物語る。しかし、その傷口をよく見れば鱗のように六角形の装甲パネルがパキパキと音を出しながら少しずつ再生を始めていた。

「頸椎部固定具異常なし!」
「腰部異常なし!」
「座面接触部クリア! 接合基部異常なし!」

 全周を整備兵達が目視し、格納に支障のありそうな破損が無いことが確認されたところで、一人の整備兵が旗を振り、翔竜機を格納場所へと誘導する。

「台座起こせーっ!」

 ズシンズシンと地面を揺らしながら進む巨人達の前方で、倒されていた2台の格納器具が起こされる。巨人とほぼ同等の高さまでそびえ立つその姿は、一見すれば翔竜機用の身長測定器具のようにも見える。90式人型魔動戦闘機着座固定台である。

 陸軍は海軍の艦載機ほど翔竜機の格納スペースや船の揺れに気を配る必要がないため、その格納姿勢も異なっている。海軍は翔竜機をできるだけ縮こまらせるために片膝姿勢で上体を倒し、チェーンや部位のロック機構でとにかく動かないように固定してしまう。それに対し、陸軍では整備性を重視するため、翔竜機に着席させたような姿勢をとらすことが多かった。

 2141号機がシグナルマンの旗の誘導に従ってその台座の足形に肩幅ほど開いて足を乗せると、背中側の棒部分の金具がスライドして首筋、腰、股下辺りに差し込まれて固定される。引き続き、2142号機も。整備兵達がそれぞれの固定具後側の梯子を登って部位の金具がしっかりとはめ込まれている事を確認し、「固定よし!」の報告を行う。それらの者が待避してからシグナルマンはぐるぐると旗を回した。

 すると、翔竜機の背中側を固定していたアームがゆっくりと変形し始めた。巨人の上半身を後に引きながら、中途で2カ所折れ曲がり、ちょうど人が背を伸ばしたまま椅子に座るような姿勢になるよう、折り畳まれたのだ。それは巨人の腰と膝がちょうど90度の角度になるまで折れ、そこで土台と太いストッパーアームが連結して停止した。再び整備兵が駆け寄って接合部分を確認する。
 土台部分を確認した整備兵から異常なしのサインが送られる。2本の旗がクロスされ、固定が完了したことが操竜手に知らされた。

「台座固定完了! 腕部固定ー!」

 体側に伸ばされていた両腕が持ち上がり、太股に陸軍機用に追加装備された固定ハンドルを握る。その状態で、ようやく翔竜機は火を落とされて両目の光を失った。

「2141号機格納完了!」

 それはまさしく人が椅子に着席した姿勢。この体勢を「着座格納姿勢」と呼び、陸軍機の標準格納姿勢とされているのであった。




 機体を降りた後、シャルロットはホースを持った整備兵達がそれの洗浄を始めるのを見つめていた。圧力をかけた水流が消火の際のように頭からぶっかけられ、その身に付いた泥や返り血や、あるいは再生の済んだ傷口の古い装甲片を洗い流していく。跳ねた水霧の中に浮かぶ虹の揺らぐ様を追いかけていると、ばさっと肩にジャケットが掛けられた。

「おつかれさまです」

 振り返ると、同じように2141号機を見上げながらカノエが立っていた。彼女も自分のアーミーグリーンのジャケットを特殊戦闘服の上に羽織っている。シャルロットは礼を言ってそれに袖を通した。

「シャルロット、何を見てたのですか?」
「別に、なんとなくよ。ランファ達はまだ残ってるのかしら?」
「残党確認と、あとは一応生存者捜索に。1機が未帰還ですから」
「そう……」

 2人は会話しながら歩き始める。ふと、大きな日陰をつくっているコンテナを見上げるシャルロット。自分の使った太刀のシルエットを見つめる。

「……欠けてしまったわ」
「竜隣装甲の技術を使ってるんでしたっけ? それでも折れずに竜の首を切り落としたんですから、なかなかのものでは?」
「地竜程度で欠けては、話にならない。最新のが流れてくるのはいいけど、もう少し練度を上げてもらえないかしら」
「まだ改良の必要有りと報告しておきましょう」

 「……それと、追加申請も」とカノエが呟き、シャルロットも頷いた。2人はパキパキと内部で自己修復を行っている試作竜隣鋼大太刀の脇を通り過ぎる。

「今は誰のワッチだったっけ?」
「確か、ランファです」
「なら、私達で代わらないと」
「そうですね。私のシュミットは弾薬の補充だけで済むそうですから、先にやりましょうか?」
「そうね、お願い」
「では、2号機が準備でき次第配置に付きます」
「ええ」

 シャルロットが了解すると、カノエは「では」と軽く手を挙げて兵舎テントへと向かう。おそらく昨夜から着たきりの戦闘服を交換に行くのだろう。
 しかし、カノエは途中で何かに気が付いたように足を止めると小走りに駆け戻ってきた。シャルロットにもう一度声をかけ、振り向かせる。

「どうしたの、カノエ?」
「忘れていました」

 カノエはかしこまってビシッと敬礼した。

「6匹目の竜討伐、おめでとうございます、ディアナ大尉」
「ああ……そうだったわね」
「これで21小隊もダブルエース持ちです」

 シャルロットは微笑み、敬礼を返した。

「ありがとう、桜院中尉。あなたの援護のおかげです」
「はい。ありがとうございます」
「では、先ほどの通り、配置に付いて下さい」
「了解しました」

 笑いながらカノエが去っていく。「まったく……」と呟きながらシャルロットはそれを見送った。そしてもう一度自分の機体の方を眺める。

(私の方はもうしばらくかかるし……少し休憩しようかしら)

 シャルロットは少しの間、顎に指を当てて考えたがすぐに金髪をなびかせて振り向いた。そして、兵士達の待機所がある方へと歩き出す。そこに……。




 ホムンクルス兵の管理は、各部隊のやり方にもよるが陸軍においては、だいたいが小隊ごとに置かれた一名の管理官によって行われる。ホムンクルス達の稼働状況の記録や劣化具合の検査、要すれば交換の申請や改良の要望などその仕事は配備された武器を管理するのと変わりはない。
 もちろん、一人でそれらの仕事を全てこなすのは無理があるので、兵達の中から日替わりの当番を選んで一体一体のホムンクルスの管理を分業させるのが普通だ。その者は任務を解かれて待機状態になったホムンクルス兵の補給や衛生面の管理、検査のために管理官の場所までの誘導など、彼女たちが「認識できない」軍の備品としての扱いを引き受けることになる。

 例えば、ホムンクルス兵は「食欲」と「性欲」が分化されておらず、その2つは「吸精欲」として同時に満たされる。しかし、その欲求をホムンクルス兵は自力では自覚することはできない。その理由は明快だろう。兵器の一部である彼女たちに、軍の命令以上に優先される欲求が有っては困るのだ。
 だから、ホムンクルス兵は疲れないし、眠らないし、欲を持たないし、痛みを恐れないし、異性に入れ込むことも、死を恐れる事もない。それらの感情を持たないばかりでなく、そういった行為に対する認識が存在しないのである。

 だから、備品管理上彼女たちに補給が必要であると認められた場合、当番兵によって「スイッチ」が入れられる事になる。それはホムンクルス兵の思考プログラムで普段は切り離されているルーチンを起動するスイッチであり、プロテクトモードから自由書込モードに移行するためのスイッチでもある。
 そのモードスイッチは各ホムンクルス毎に細かく条件が定められ、万が一の場合複数の者が同時にモード移行しないようにされていた。例えば、シャルロット=ディアナの場合は……。




「……ディアナ大尉、失礼します」
「え?」

 整備兵の一人だろうか。いつの間にか側にいたツナギの男性が細長い布を掲げてシャルロットの頭に手を回した。彼女の反射神経ならいくらでも避けようのある動作である。だがしかし、シャルロットはまるで体が麻痺したかのように動くことができなかった。ただ黙って立ち尽くし、男が自分に黒い目隠しをするのを受け入れることしかできない。

 瞼の開閉に関係なく世界が闇に閉ざされ、きゅっと頭の後で目隠しが結ばれる。その瞬間、シャルロットの頭の中で何かがカチンと切り替わった気がした。




「よっ……いしょぉおっ!」

 堅牢な弾庫の扉を、肩を当てて力一杯体重をかけて押す。ずずぅんと地響きすらたてて、それはようやく錠前を通すことができる位置まで閉めきられた。はぁはぁと荒い息をつく若い男性整備兵。

「すまんな、新兵。こっちも人手不足でな」
「あ、いえ、気にしないで下さい」

 中年整備兵が頑丈そうな鍵を弾庫にかける。まだ息が切れているのか、青年は膝に手を突いたまま汗だくの首を捻ってにかっと笑って見せた。中年の方はその笑顔にふん、と鼻息を吐いてポケットから出した何かを放る。青年は疑問符を浮かべて空中でキャッチした。

「ちょっと休憩して来いよ。ここは終わりだ」
「あ、はい。ありがとうございます!」

 青年は手のひらの中の王国硬貨から顔を上げ、敬礼と大きな返事をする。そしてくるっと後を向いて小走りに駆け出す。

「あ、おい! どこ行くんだ!?」
「便所です! 行く途中だったんで!」

 よっぽど我慢してたのか、首だけ曲げて返事をする。そのまま弾庫の側の建物の向こうに曲がって見えなくなる。中年の男は差し出した右手の行き場所を無くし、しばらく青年が消えた方を眺めていたがすとんと手を落とした。そして呟く。

「別にわざわざ外の便所使わなくてもなぁ……待機所行きゃぁ飲みモンもドア付きの便所も有るってのによ」

 男は腰に手をやり、もう一度鼻を鳴らす。しかし、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。




「ふぅ〜、危なかったぁ〜」

 青年整備兵は安堵の溜息を吐きながら歩いていた。腰ベルトに挟んだ薄汚れた手拭いをとって無造作に手を拭く。そのまま額の汗を拭おうとしたところで手の中の物が思った以上に汚れていることに気が付き、一瞬躊躇した後に構わず両手を使ってごしごしと擦った。

「ふぅ〜……」

 もう一度、溜息。
 聞いていた通り、いや聞かされていた事から想像していた以上に激務であった。この小隊に配属が決まった時は部隊の配員数を聞いて、竜偽装戦闘機10機程度の部隊に整備兵が150人もいるのかと思っていた。だが、どうしてどうして1機あたり15人がかかりっきりでも人手が足りない。とにかく重くて複雑でデリケートな竜偽装戦闘機は、人員がその倍いてもいいくらい手が掛かるのだ。
 特に最新鋭戦闘機「ガゥルシュミット」はまだ陸軍内でも20数機しか稼働していない虎の子である。古手の整備兵も扱った経験を持つ者は皆無だ。それが急に3機も配備されたのだから、21小隊の整備班は朝も昼もてんやわんやの大騒ぎであったそうだ。

 「あったそうだ」と他人事なのは、青年がそれを人伝に聞いたからである。彼が補充の整備員として最近着任した頃には、歴戦の整備兵達はすでにその最新鋭機の扱いをなんとかモノにしていた。話によるとガゥルシュミットは最新技術の詰め込みすぎで故障が多く、稼働率は75%くらいだというから、この21小隊に配備された3機が3機とも実働任務に就いているのは驚異的なのだそうだ。それを聞いたときは「へぇ」と軽く受け流したが、その稼働率がこの激務に裏打ちされたものだと体験した後では、素直に誇らしいと感じることができる。

 さて、用も足したし、上司の勧めに従って休憩しようかと手拭いを戻して背伸びしていると、横合いから青年に、この男臭い陣地に不似合いにたおやかな声がかけられた。

「あの、申し訳ないのですが」
「は、……はい!?」

 青年は振り向いてそのまま硬直した。金髪碧眼の、美しい少女がそこに立っていたからだ。しかも、露骨なほど体の曲線が露わになった操竜手特殊戦闘服を身に付けている。まるで幻想物語から抜け出してきたかのような可憐な容姿と、劣情を催さずにいられないコケティッシュな格好のアンバランスに青年はしばし言葉を失う。

「すみません、トイレはこちらでよろしいのですか?」
「…………」
「あの、聞こえてますか?」
「……は、はい!」

 ぐいっとその少女が顔を近づけてきて、青年は飛び上がるように反応した。だが、少女の姿から目を離すことが出来ない。細くて柔らかそうで軽くカールした髪。整った眉。小さくまとまった形の良い鼻。色づいた唇。そして顎から流れ落ちて胸元まで垂れた髪の房を目で追い、胸の膨らみの頂点にぽつりと突起が見えている事に気が付いて、ごくりと唾を飲み込んだ。不思議そうにこちらを見つめる顔に気が付き、無理矢理張り付いた視線を上に戻す。そして、少女の瞳の虹彩部がうっすらと青い光を放っている事に気が付いた。

(……ホムンクルス兵だ!)

 教育部隊では学んでいたし、着任してからも遠目に何度か見かけた事はあった。しかし、これほど間近で、それこそ息が掛かるほどの距離で見たのは初めてだった。
 なるほど、よく見れば余りにも整ったその容姿は完成され過ぎていて、人間離れしている。これほど近くにいるのに体温も体臭も感じず、体重すら無いのではないかと思われるほど何処か儚い雰囲気を纏っている。それを不気味と感じる者もいるだろう。だが……。

「あの、トイレはどこかと聞いているのですが」
「は、はい。失礼しました、大尉!」

 青年は顔を赤らめて視線を外した。そんなことを、その顔で聞かないでくれ、と心の中で叫ぶ。それを言った本人より聞いた方が恥ずかしくなってしまう。それくらい、そのホムンクルスは美し過ぎた。
 相手の階級を思い出し、慌てて青年は敬礼する。

「申し訳有りませんが、士官用の便所は……!?」

 流石にこの先の覆いもカーテンも無いただの穴でしかないところを使用させるのはまずいと思い、青年は空いている手で少女が来た方を指さそうとした。しかし、その瞬間ぐいっと首根っこを捕まれて誰かに後ろに引っ張られた。たたらを踏んで後退し、がっしと整備服を来た男の腕に抱え込まれる。

「むご……!」
「ホンペイは初めてか、新米? よけいな事はするなよ」
「ぐむ……」

 ホムンクルス兵を揶揄する呼称に何事かと顔を上げると、男の左袖に役員腕章が見えた。これは、なんの役員のものだったっけ……?
 どん、と突き放されるように男から解放される。胸を押さえて男を上目で見上げると、ぐいっと顎を反らして建物の奥側に顔を向けた。案内してやれ、という事らしい。

 体を起こして少女の方を見ると、茫洋とした表情でこちらの方を見つめている。何が起きているのかわからないといった表情だ。青年はそれに無理矢理笑顔を浮かべた。

(……本当に、必要なこと以外は認識できなくなってるんだ……!)

 青年は半身になると奥の方に手を差し出した。

「申し訳有りません、大尉。勘違いしていました。トイレならこの奥です。案内させていただきます」
「ありがとう。お願いします」

 少女の顔に表情が戻る。青年はこれから起きることへの不安と期待に、複雑な思いを笑顔に混ぜ込んだ微妙な表情のまま少女を先導し始めた。




 倉庫区画の先にある空き地は、一応は「野外簡易便所」とされている。だが、それは単に区切られた区画の地面を僅かに掘っただけの「穴」であり、備え付けの紙や排泄物を流すための水もない。汚物が溜まったら土をかけて埋めて隣に新しい穴を掘るだけの、言わば間に合わせのシロモノであった。大所帯の割りに設置された便所が少ない、それを解消するための苦肉の策である。

「こ、ここです」

 言葉を詰まらせながら青年はその場所を指し示す。こういった仕事は新米の役目であるため、今朝も彼等新米組が新しい穴を掘ったばっかりであった。

「ありがとう……」

 金髪の少女が言い淀んだのを察し、青年はやっぱりダメかとほっとすると同時に、ちょっと残念な気持ちが沸き上がって慌ててそれを打ち消す。

「……あの、あなたの名前は?」
「え?」

 しかし、思いがけない少女の質問に間抜けな声をあげてしまう。あわてて青年は言い直した。

「はい。トバル=マークレイです!」
「案内ありがとう、マークレイ1等整備兵。申し遅れましたが、私はシャルロット=ディアナ特務操竜大尉です」
「了解しました、ディアナ大尉!」
「それで、このトイレはどう使えばいいのか教えてくれますか?」
「はい。え!? こ、ここを使うのですか?」
「いけませんか?」

 いけないもなにもないだろう。狼狽したトバル青年が周囲を見渡すと、いつの間にか何人もの隊員達が集まってきていた。そして青年のうろたえ振りにやんやと喝采を送る。

「余興だ余興ぉ!」
「新米、大尉殿にちゃんと手取り足取り教えてやれよ!」

 その中には見知った顔は誰もいない。せめて同じ班の人間でもいれば助けを求められるのに……。「じゃあ、お願いします」とシャルロットの声と同時に周囲からヒューと口笛が飛ぶ。何が?と振り返ったトバルは、その光景にぶっと両手で鼻を押さえた。

 見れば、誰かに「用を足すときは裸になる必要がある」とでも教わったのか、シャルロットは戦闘服を脱ぎ始めていたのだった。

 手首の部分のスイッチを押して胴体の大部分を覆う防護皮膜を解除すると、薄いグレーだったその部分がさらに透けて、シャルロットの白い肌や胸の先の色付いた部分が見え始める。完全に透明になると、ピンピンに張ったラッピング状の膜が劣化して自動的に切れ目が入り、はちきれるように少女の肢体がまろび出た。この時点ですでにシャルロットの胸から臍、股間、内腿、尻、肩胛骨までの背中は隠す物も無く素肌が晒されている。
 両耳の下のラインから上半身のパーツが前後に分かれ、まずは男達の手を借りて首前から肩、指先までの前面部が脱がされる。更に脇腹と腰部の接続が外され、長い髪が絡まないよう少女自身の手で抑えられている隙に、背中側の上半身パーツがスルリと抜き取られた。
 膝を曲げ、足首のゴツゴツとしたブーツの解放スイッチを押す。バチンと足の甲側のパーツが丸ごと前に開き、ピッチリとつま先まで保護素材で包まれた少女の脚が自由になる。ブーツに脚を入れたまま、片足づつそれを脱ごうとしてふらついていたので、思わずトバルは手を差し出した。きゅっと少女のたおやかな手の感触が伝わり、目が合う。ほとんど裸の少女の微笑みかけに青年は顔を真っ赤にした。

 遂に脚部分の衣装も脱ぎ、再度ブーツを履き直す。これで少女は足首から先を除いて全裸になった。人間離れした白さの肌が首からふくらはぎまで完全に陽光の下に剥き出しになっている。自分の脱いだ両足部の衣装を側にいる男に預け、シャルロットは手を握ったままのトバルに向き直った。

「? どうしました?」
「あ、う……」
「?」

 首を傾げるシャルロット。柔らかそうで豊満な乳房、スレンダーな腰回り、そして股の間の無毛の秘裂……。それらの女性的部位から、目を離す事が出来ない。
 どぎまぎしてるトバルの後ろに、先ほどの当番の男がいつの間にか近づいてぼそぼそと指示を出した。

「別に女の裸なんか初めてじゃねぇだろ? 好きなようにしてみろよ」
「あ、なん……で、でも、ホムンクルスは、その、しなくてもいいはずで……」
「余興だって言ったろ? ちょっとイジればホンペイにも真似事はできるんだぜ」
「でも、どうしたら!?」
「……しょうがねぇなぁ」

 その男はトバルの後ろから離れると、裸のまま微笑んでいるシャルロットに近付き、口を寄せた。1分ほどかけて何事かを伝えると、すっと身を引く。同時にシャルロットはニコッとトバルに向けて笑みを浮かべた。そして戸惑う青年の手を両手で握る。

「じゃ、お願いしますね、マークレイ1等兵」
「は、はい?」
「申し訳有りません。私もこのタイプのトイレは使用したことが無かったので、戸惑わせてしまいましたね」
「えっと……?」

 くいっと引かれた手につられてトバルは少女に着いて行く。目の前で少女の金色の髪と、その下の尻がふりふり振れている。そして、シャルロットは真新しい簡易便所――という名目の穴の前までトバルを連れて行くと、笑い顔のまま振り返った。

「知りませんでした。ここを使うときは、誰かにお手伝いしてもらって、その人に出すところを見ていてもらわないといけなかったんですね」

 おおっと周囲の熱気が高まった。ぱくぱくとトバルは口を動かすが、喉からは何の言葉も出てこない。狼狽してさっきの男の方を振り返り、自分?と指さすと、ただ「そう、お前」とばかりに頷きが返ってきた。他の男達の方に視線をやると「はよやれや」とばかりにニヤニヤ笑いが向けられる。トバルは天を仰いだ。

「やりますよ……やればいいんでしょ……」

 男たちの1人が、「ほらよ」とばかりに工作兵の作った穴あき椅子を持ってきた。どうしても「大」がしたくなって、そして他の便所が塞がっていたときの緊急用だ。トバルはそれを穴の上に設置すると、シャルロットにこれに上がるように指示をした。何となく周囲の者達が期待していることがわかってきたのだ。

「こうですか?」
「も、もっと足を開いてしゃがんで下さい。みんなに見えるように」
「わかりました。これくらい?」
「えっと……はい、それでいいです」

 裸のシャルロットは椅子に上るとトバルの方を向き、左右に足を大きく開いてしゃがみ込んだ。その前に集まった男達の前で、内腿の筋に引っ張られて少女の秘所が口を開く。つつましやかな襞に隠された膣口が陽光に照らされ、露わになっていた。思わず見とれていると、そのわき腹をドンと誰かが肘で突いた。

「ぐほっ! あ、まだですっ。手も使って、広げてください」
「はい」

 素直に頷き、シャルロットは律儀に両手の指を使ってそこをくつろげて見せた。襞を左右に引っ張り、さらに男達の要望に応えて指を穴の縁にかけて限界まで開いてみせる。「見せろ」という声に従って親指で薄皮に包まれた陰核を剥き出しにし、引っ張り上げてみせる。
 シャルロットの秘部の全てがトバルとその周りの男達に隠すものもなく晒された。その卑猥な格好のまま、金糸のような髪を揺らして「これでいいですか?」とシャルロットは首を傾げる。トバルはもうバクバクと鼓動する心臓が口から飛び出しそうになっていて、ブンブンと首を縦に振ることしかできなくなっていた。

「じゃあ、もう出してもいいんですね」
「ふひっ!」

 「はい」と言ったつもりが、裏返った奇妙な呻きのようにしか聞こえなかった。だがそれでもシャルロットには通じたようだ。「出しますね」とにっこり笑う。

 ぴゅっと飛び出したシャルロットの小水は、そのまま勢いを増してトバルたちの掘った穴の中に飛び込んでいった。濡れた地面に弾けてじょろじょろと音が響き始める。
 トバルは頭が熱病にかかったように熱くなり、なんだか夢を見ている気分になっていた。しかし、彼の五感はそれでも執拗に働き続け、目の前の美しい少女の放尿シーンを余すことなく記憶しようとする。

 彼女の尿は不純物が含まれていないのか、透明で匂いも全くない。ただ、雨上がりに感じる濡れた土の匂いが立ち上ってきただけだ。しかし温度は高いのか、湯気のような湿度の高い空気を鼻に感じた。
 水流の発射口は意外に太く、放尿が始まったとたんにトバルの目の前のピンク色の秘部の平らなところに、ぽかりと穴が開くのが見て取れた。そして放尿のため腹に力を入れたとき、その下の限界まで開かれた穴の底に見えた丸いピンク色のものと、その下のつぼまった肛門が一緒にひくりと動くのがわかった。

 見てはいけないという気持ちと、見たって減るもんじゃないしという相反する気持ちがトバルの混乱に拍車をかける。視線を上げると、シャルロットはそんな青年を真顔でじっと見つめていた。恥ずかしくなって慌てて目線を逸らしてしまう。しかし、シャルロットはますますトバルに興味を覚えたようだった。

「トバル……といいましたか、マークレイ1等兵」
「は、はい! その通りです、中尉!」
「では、西の方の出身ですね?」
「バンヘイムです!」
「ご両親は健在ですか」
「至って健康です!」
「そうですか。これからもご両親を大事にしてあげて下さいね」
「ありがとうございます!」

 男達に全裸でじょろじょろと勢い良く放尿する姿を見せつけながら、笑顔でトバルと会話するシャルロット。周囲の興奮もかなりの高まりだ。

 やがて、ちょうど会話の切れ目のところで先ほどの男が何か耳打ちすると、「あ、もういいんですか」と確認し、ぴゅっといきなり勢いが落ち込んで放尿が止まった。どうやら、その気になれば体に蓄積された魔力が尽きるまで何時間でも放尿し続けることが可能だったのだろう。

 その後、シャルロットは誰かから手渡された紙切れで股間を拭うと、トバルの伸ばした手に掴まって椅子から降りる。

(ちょっとイジるって、こういう事か……)

 トバルは穴の縁ギリギリまで溜まった大量の小水を見ながら、「ありがとう、マークレイ1等兵」と微笑む少女に曖昧な笑みを返した。





 その後、トバルとシャルロット達を待っていたのは乱交だった。裸のまま男達に囲まれて待機所のシャワールームに連れ込まれた少女は、到着するなり整備服を脱ぎ捨てた男達に組み伏せられる。その場で休んでいた男達も加え、20人近い男達に好きなように使われる少女。
 トバルも流されるままに着いて行って、なし崩し的にシャルロットの身体の中を味わうことになった。何度果てたのかもわからない。しかし、参加した男達が満足して一人、また一人と去っていくのにトバルだけは彼女に見切りを付けて部屋を出ていくことができなかった。体は疲れ切って足腰立たなくなっているのに、それでも男に抱かれたシャルロットから目を離すことができない。

「若いっていいねえ」

 シャルロットを下から突き上げながら男が茶化した。いつまでも去らないトバルに何か勘違いしたのだろう。青年は座ったままおっくうそうにその男に視線を向けた。

「流石にあんだけヤったせいでちょっと緩くなっちまった。新米、こっちにも突っ込んでやれよ」

 男はそう言ってシャルロットの尻たぶを左右に引き延ばす。こちらも何度も使われすぎて半ば口を開いた尻穴からごぷっと白濁したものがこぼれた。シャルロットは男の言葉に上半身を捻って振り返り、「ああ、トバル?」と笑った。青年の胸の真ん中がドキンと跳ねる。

「いいですよ、トバル。あなたの好きなように」

 シャルロットはこんな状況でも美しかった。白い肌はもうどこもかしこも男達の放出したものに濡れ、強引に掴まれた場所は手の形に赤い跡になっている。穴という穴がだらしなく広がり、そこからは詰め込まれたものが後から後からこぼれていく。金糸のような髪も今は粘つく液体で絡み、ぐちゃぐちゃに乱れていた。しかし、それでもなお、少女は美しかったのだ。

「見ていて下さい」

 更に、シャルロットは両手を伸ばすと、自らその穴を拡げて見せた。両手の中指と人差し指を緩んだ肉穴に差し込むと、見せつけるように開いて見せたのだ。どぼどぼと滝のように白濁液がこぼれ、空いた隙間に少女のピンク色の腸壁が見て取れるようになる。
 トバルはその光景に股間のものが再び力を取り戻すのを感じた。床についていた手に力を込めて立ち上がると、夢遊病者のようにふらつきながらシャルロットの背中に近づいていく。そして、何の予告も無しに空いた穴の中に、有らん限りの力を込めて腰のものを叩きつけた。

 「ぐぷっ」とシャルロットの喉奥から彼女自身の意に反した音が漏れた。目が見開かれ、頬が膨らみ、口に当てた手の隙間からぼたぼたと白い粘液がこぼれる。急激に内蔵を突き上げられ、胃に詰め込まれたものが戻ってきてしまったのだろう。
 しかし、トバルはそれでも容赦しなかった。もう片方の手首をつかみ、しゃむに腰を振り立てる。打ち付けられた勢いでシャルロットの豊満な胸が弾け、誰のともしれない液体の混合物が高く飛び散った。

 少女の下で男が何かうめき声を出しているようだが気にならない。シャルロットの細い背骨がトバルの若い欲望にきしんでいるが、それも気にならない。自分のものでそのまま脳まで破壊し尽くされてくれればいい、それくらいの気持ちでトバルは少女に全てを叩きつけた。
 乱れた髪、赤くなった耳朶。唇の形に跡のできたうなじ……。シャルロットが首を捻ってトバルを見る。その口の端から男達の欲望のあとをこぼしながら、半目で、恐ろしく淫蕩な視線を青年に向ける。

「ぐぅううっ……!」

 まるで魔女の蛇眼だった。トバルは脳髄を握りつぶされたようなショックと共に、シャルロットの中に射精した。そして、許容量を越えた感覚に青年が意識を失っても彼の腰は別の生き物のように痙攣を続け、白濁を少女の中に注ぎ続けたのだった。

 
 


 

 

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