カースト越えて恋


 

 

第3話


 鳥海シュウのいる2−Cには、稜聖学園高校のスクールカーストで言うところの、Eグループに属する底辺生徒がいなかった。結果的にDグループの陰キャであるシュウが、いじられたり馬鹿にされたりしてきた。それがここ1週間で、事態が一変した。毎日、学校に来るのが楽しみで仕方がない。こんな気持ちで登校するのは小学校の頃以来ではないだろうか。

「おはよう、お前ら。今日も生きてっか? ………いい子にしてたら、可愛がってやるぞ」

 対人赤面症からくるコミュ障に苦しんでいたはずのシュウは、今や口調まで偉そうになっている。それでも声をかけられた女子たちは、全く嫌そうな表情を見せない。ポッと顔を赤らめて、上目遣いでシュウをチラチラと見る。そう、これは羨望の眼差し。憧れのクラスナンバー1・イケメンをチラ見する、熱愛女子たちの視線だ。

「お、………おはよう。シュウ君。………今日も、よろしく……ね」

 シュウの席の隣、2−Cの美少女、沢峰ユキノが返事をする。先週までの、クラスの腫れ物扱いが、嘘のような対応だ。ユキノは赤面しながら、制服のスカートのチャックを下ろす。ジャケットを椅子の背に掛けて、その上に解いたネクタイを載せる。シュウの前では、『鳥海シュウの彼女たち』はシャツと下着しか身に着けない。彼が決めたルールには、担任の教師も、クラスの誰も文句をつけたりすることは出来ない。2−Cはシュウの城になっているからだった。脱いでいくのはユキノだけではない。シュウが選んだ2−Cの女子6人は、今、シュウの『彼女たち』として、真面目に集団でお付き合い中となっている。だから朝のキスも、6人の彼女たちとする。シュウにとっての始業前は、なかなか忙しい時間帯だった。

「………ん……。チュパッと。………お前ら、前の奴より濃厚なキスしないと、印象がどんどん弱くなるぞ。俺に忘れられちゃってもいいのかな?」

 これまで誰とも付き合ったことのなかったセイラから唇を離したシュウが、ダルそうに言う。セイラの後ろに並んでいたルミは、表情が固くなる。

「……つ………次、私ですっ………。頑張りますっ」

 ルミは両手をシュウの背中に回しながら、思い切ったキスをする。口を少し開いて、シュウの口の内側に、自分から吸いつくようにして求める。シュウが満足そうな息を漏らす。次に並んでいたメイコは息を飲む。こうなると、メイコは舌を絡め合わないと、満足してもらえないだろう。唾液もはっきりと交換しなければならないかもしれない。後ろに控えるノノは不安と妄想一杯の様子で、頬を両手で押さえている。多分彼女は、胸を押しつけて、体全体でシュウを喜ばせないといけない。その後ろのアヤ、マドカまで行った時には、もう普通のセックスへとエスカレートしているだろう。シュウを取り巻く女子たちは、キスの余韻やイメージトレーニングで、熱にうかされたように上気している。アヤを除く全員が、シュウに対する恋心を抱かされている。Cグループに属していたアヤは、シュウに心までは支配されないから、嫌々、シュウと濃厚なキスをする。胸も押しつけて足も絡める。けれど内心では歯噛みして拒絶したがっている。そんな彼女がいることも、シュウにとっては良いアクセントになっている。

 美少女たちと、かわるがわるハードなキスを繰り広げるシュウの様子を、離れた位置からジトっとした目で見つめているのは、倉前カヤ。シュウのお気に入りの1人なのに、昨日、軽い気持ちで彼女たちから切ってしまった。カヤの腫れぼったい目を見るだけで、昨日は夜遅くまで泣いていたことがわかる。もう彼女でもないのに、カヤも開襟シャツの裾から可愛らしいショーツを見せている。よりを戻してほしくて、シュウの心変わりを必死に待っている、いじらしいカヤ。その様子が、シュウのSっ気をさらに少し刺激してしまう。カヤの前でルミ、ノノと3Pでも見せてみようか。


 他のクラスのカースト底辺男子たちと同じように、シュウも稜聖学園に起こった不思議な事態を理解してから、すぐにクラスの可愛い女子たちに服を全部脱がせた。可愛い子だけではない。最後は質だけでなく量も欲しくなって、クラスの女子全員を全裸にさせた。大人しい優等生に教室の真ん中でオナニーをさせた。秘かに片思いしていた美少女と授業中に何度もセックスをした。美人の先生にはフェラからパイ擦り、シックスナインに玩具を使ったプレイと、大人の知識と体をフル動員させて奉仕してもらった。

 彼に高圧的な態度を取ってきた奴ら、嫌なイジり方で笑いにしてきた奴ら、軽蔑するようなトーンであしらってきた奴らには男子・女子関係なく、手痛い仕返しをしてやった。アンダーヘアを綺麗に剃らせて、下半身裸で学校の裏掲示板に頭の悪そうな馬鹿騒ぎ写真を投稿させた。全員、シュウに言われたことは何でもやった。

 一通りの定型的なストレス発散を終えると、今度はシュウも、自分なりの遊び方、操り方でクラスを支配するようになる。ここからが個性の時代だった。

 今のシュウのお気に入りの遊び方は、うたかたのモテ期を楽しむこと。クラスでもグレードの高い女子たちに、シュウに対する恋心と憧れ、そして荒ぶる性欲を植えつける。ただのフルヌードの洪水にも飽きたシュウは、漫画で読んだ同棲中の恋人みたいに、シャツだけ着せて、下着姿やノーパン・ノーブラの体が薄くて白いシャツから透けたりチラチラとはみ出たりするのを見て楽しんでいる。そして気持ちがノッてくると………。

「ユキノ。こっち来いよ………。ウォラッ!」

 ビビッという布の破れる音と、ボタンの弾け飛ぶ音。

「キャッーっ………。…………もう………、シュウく〜ん。…………授業あるのに………」

 シャツを遠慮なく引きちぎるように開くと、ユキノの小ぶりな胸を守るピンクのブラジャーから慎ましいおヘソまで、丸見えになる。もちろん流れるような動きでブラのカップも剥ぎ下ろす。丸いオッパイと小さめの乳首が顔を出す。

「1限目の授業はこのまんまの恰好で受けろよ。2限からは直しといていいぞ」

 乳首を摘まんで捻り上げるように苛めながら、シュウが笑う。シュウの彼女たちは毎日のように服を縫い直したり、ボタンを付けなおさなければならない。可愛い子ちゃんたちが、従順に裁縫に勤しんでいる姿を見るのも、シュウの楽しみの一つだった。

「1限目はセイラ、ルミ、アヤのトリプルフェラな。最初はセイラがチンコ、ルミとアヤが左右のタマを心をこめてしゃぶるんだぞ。10分くらいで持ち場交代。俺がいいって言うまで続けろ。………カヤ、さっきから必死で聞いてるんだろ。………お前、1限目の間に、フェラされてる俺を見ながらオナニーして、4回イクことが出来たら、また俺の女にしてやろっか? 先生に見つかったらアウトな」

 先週までクラスのリーダー的な存在だった倉前カヤは、ご主人様にすがる子犬みたいな表情で、ブンブンと頭を縦に振る。もう両手がショーツの中に入っていこうとしていた。

「言うまでもないけど、俺に嘘はつけないからな。4回だぞ。………あと1限目の罰ゲームはココミ。………ちょっとテクニックに溺れた感じのキスだったんだよな。ココミはそのペンケースで自分の乳首挟んで、マゾオナニーにチャレンジだ。怪我したり跡が残ったりしないように、いい塩梅で自分を苛めて悶えてろ。………ちょっと救済措置あげよっか? お前は生まれながらのドM女子だったことを今、思い出す。罰ゲームは恥ずかしくて痛いけど、ご馳走でもある。そうだろ?」

 顔が青くなったり絶望に染まったり、何かに閃いたように輝いたり、期待に打ち震えたり。キレイ系のココミの表情が、わずかな時間の間にコロコロと変貌する。Aグループのココミは行動や感情だけではなくて、記憶や人格ごとすり替わってしまうから、その変わり映えはなかなかダイナミックだ。シュウもこの操られっぷりが見たくて、ついつい頻繁に弄ってしまう。美人のオシャレ番長といったポジションだったココミ。その彼女を見る、クラスメイトたちの視線も、最近少しずつ変わりつつある。

「ふー。それにしても………。俺って、思ったよりオラオラ系だったんだな………。それでも、授業をぶっ壊すとか言い出さないあたりが、小市民の枠の中でオラついてる感じだけど。………なあ?」

 椅子に腰かけたシュウが、隣に寄り添うように座ったユキノのショーツの中に無遠慮に左手を入れる。ユキノはビクッと背筋を伸ばしたけれど、すぐに力を抜いて、シュウにもたれかかるようにして、股間を触られるままになった。両膝を大きく開いたシュウの足元に、セイラ、ルミ、アヤの3人が四つん這いで近づいてくる。ズボンのチャックを下ろして、トランクスからシュウのモノとタマを丁寧に引き出す。座っているシュウから見えるのは、机から3方向にハミだしている3人の少女のお尻。シャツの裾から突き出ている、若くて丸いお尻。ショーツの布地を引っ張るような、張りのある丸み。そしてその光景への集中力を削ぐようにして、シュウの下半身に、温かくて湿った感触が絡みつく。モノとタマがねっとりとした粘膜に包まれた。ユキノの肩越しに左後ろを見ると、倉前カヤが既に1回目のオルガズムに近づいていくような切迫感で、アゴを上げていた。

(1限目中に、って言っただろうが………。始まる前にイっても、ノーカウントだからな。)

 意地悪そうにシュウがほくそ笑む。好き勝手にクラスメイトたちを弄んでも、歯向かってくる奴などいなかった。シュウに命令されれば、2−Cの誰も、逆らうことは出来ない。シュウが誰の彼女を裸にさせても、誰にパンツ一丁でパシリをさせても、誰に授業中にお下劣な一発ギャグを披露させても、拒むことの出来る奴はいなかった。

 それでも、シュウは2−Cが崩壊するような無茶はしない。自分の城として遊びながら、どこか許されるラインを探り続けている自分を意識している。それはやはり、自分がEグループにいなかったという自覚からくる、防衛本能だった。

 これまで見聞きしてきた情報から、クラスが違うEグループの底辺キャラからの命令は、教室内ではDグループの自分の命令と同等の支配力しか持たないはずだった。しかしそれもきっと、2−Cという社会が維持されている間のことだろう。2−C自体の秩序が崩壊するようなことまでしてしまうと、自分はクラスという防御壁無しで、Eグループの危険分子たちと向き合うことになる。その時、彼らの命令を無視する自信は、シュウにはなかった。

 小市民で構わない。シュウは異常な偶然で手に入れたこの楽園と彼女たちを、しばらくは自分の城としてしがみついていくつもりだった。


。。。



「ユメカ、昨日は先帰っちゃって、ごめーん。結局あの後、遅くなった?」

 小滝チトセが新崎ユメカの前で両手を合わせて、拝むようにして謝る。

「今度、お茶奢るよ。ほんといつも、ユメカばっかり………。悪いと思ってるんだよ。うちらも」

 北瀬マリナもユメカの肩に両手を添えて、頭を乗っける。親密なボディタッチの様子は、如何にも仲の良い女子グループという雰囲気だったが、真ん中のユメカは複雑そうな表情を見せて目を落とした。

「解放してもらったの、8時だったよ。………お母さんにも遅いって怒られた。………もうちょっと、チトセとマリナがフォローしてくれたり、手伝ってくれたら、早く終わったかもしれないのに………。もう、お茶だけじゃ割が合いません。ケーキバイキングもつけてくれない?」

 冗談めかして要求を吊り上げているのは、まだ仲良し3人組という体を守るため、ユメカの精一杯の我慢と譲歩だった。

「金村に体中触られた? あいつちょっと不潔っぽいでしょ? 臭くなかった?」

 いつも柔和なユメカの表情が一瞬だけ強ばる。

(ご主人様のこと、悪く言わないで!)

 反射的に、ムッとしてしまった新崎ユメカだったが、慌てて曇った表情を和らげる。自分の中の怒りも、急いでかき消した。金村ヒデキがユメカのご主人様だったのは、昨日だけのこと。よく考えると、金村は友人たちが言う通り、ちょっとキモめの不潔男子ではないか。正しいのはチトセとマリナ。ユメカは昨日だけ金村の従順な性奴隷として可愛がってもらった(もらった? これもおかしい!)のだが、今日は自由だ。残り香のように、しつこく漂っている金村への忠誠心などは早く消し去って良いはずだった。

「………あれ? ………ユメカ、もしかして、まだ金村の言葉の力が、残っちゃってる? …………あ、だったら、ゴメン。昨日だけの関係とは言っても、前のご主人様の悪口言われると、気分悪いよね? ゴメンね」

「はぁ? ………ぜんっぜんそんなこと無いよ。ヒデキ様………、違うっ………。金村とは、好きでああなったんじゃないし、今の私は全然正気だし。変な気を遣わないで」

 ユメカが慌てて否定する。顔は赤いが、背筋は凍る思いだ。チトセとマリナに自分のことを金村の永遠の性奴隷という目で見られるようになったら、ユメカの学校生活は終わりだと思った。

「チイ。………ユメカは私たちの盾になって、金村の相手をしてくれたんだよ。ユメカの傷口に塩塗るみたいなの、やめようよ」

 マリナは優しくユメカの髪を撫でてくれる。

「可哀想なユメカ………。金村に酷いことされた?」

「………んっ…………。んん」

 ユメカは不意に瞼を震わせて、痙攣するようにしてくぐもった息を漏らした。マリナの手も、一瞬止まる。髪に触れられて、金村のことを言われた瞬間に、昨日の記憶が不意に甦った。そしてユメカは反射的に、感じてしまっていた。それだけ、昨日の記憶は鮮烈に心身に刻まれていたのだった。

「マリマリ。………ユメカが嫌なことばっかりされて、忘れたがってるっていうのだって、私たちの勝手な思い込みかもしれないよ? ユメカは『金村ヒデキにメロメロの変態性奴隷になる』って言われたんでしょ? ………案外、楽しんだかもしれないじゃん。いや、ユメカ本人が変態だって言ってるんじゃないよ。でも、昨日のユメカは実際に変態になっちゃってた訳だから、それはそれで………」

「もうやめてよ! チトセっ。どうしてそんな、イジワル言うの? 私ばっかり、2人の盾になって、嫌な目ばっかり合うなんて、酷いよっ。2人とも」

 ユメカが綺麗な黒髪を乱して、首を左右に振る。友人のチトセに変態扱いされるのが、耐えられなかった。さっきから、彼女の言葉には微妙に棘が見え隠れする。親密な女子同士の会話で、それが伝わってこないはずがなかった。

「それは………ゴメン。私たち、ユメカに命令出来ちゃうから、低層カースト男子とか来たら、つい反射的に、ユメカを盾にしちゃうんだよね………。そりゃみんな、自分が可愛いでしょ? ユメカだって、逆の立場だったら、私たちと同じことしちゃうと思うな………。別に正当化したい訳じゃないんだけどね。ホントごめん。ユメカ。落ち着いてね」

 すまなそうなマリナが、肩に手をあてて、『落ち着いて』と言ってくる。それだけで、ユメカはひとまず大人しくなる。深呼吸をして、冷静を装う。少なくとも表面上は。

「それにユメカはすっごく可愛いくて元から男子に人気があったから、アタシたち3人のグループトータルで考えると、ユメカが盾になってくれることが、一番みんなのダメージを少なくしてると思うよ。アタシらを操るってなると、陰キャども、みんな限界まで過激なことしないと気がすまないかもしれないけど、ユメカみたいな可愛くて清純なお嬢様となら、ある程度の行為で満足してくれると思うんだよね」

「ある程度? ………チトセ、ほんっとうにわかってない。私きのう、オシッコ飲まされたんだよ? ………これって、ある程度のところで助かってる? ………そう思うんだったら、チトセが私と一緒に……」

「ユメカ。落ち着いて。座ろ………。ね? チイと仲直りして」

 マリナが穏やかに言う。ユメカは仕方なく椅子に落ち着いて、声のトーンをまた下げる。

「………昨日は、本当に大変だったの。………それをわかって欲しかっただけ………。………ちょっとキツい言い方になってたら、ゴメンね。チトセはずっと友達だよ」

「うん。仲直りはいいけど………。ユメカ、仲直りのしるしに、正直に教えて。ユメカはオシッコ飲まされて、すっごく嫌だったって、本当のこと?」

 喉が詰まったような感触。ユメカがチトセを見て、次にマリナを見る。目がキョロキョロと何かを探すように彷徨った。泣きそうな表情になった後で、やっとまたユメカが口を開いた。

「………オシッコは………。私から、お願いしたの。ご主人様のものは全部私の宝物です、精子だけじゃなくて、おチンチンから出るもの………全部………、飲ませてくださいって………」

「泣かないで。正直に答えてくれて嬉しいな。それで、嫌だったの?」

「うんん………。昨日は、その………私………変態だったから、………あったかいのがいっぱい、喉にきて………。幸せ過ぎて、………ボーっとなっちゃってた………けど、そんなこと、友達に知られたくないから………。嘘を………」

「チイ、もういいでしょ。ユメカも黙って良いわよ」

「………はい。ユメカは黙ります」

「マリマリ、私たち親友でしょ? 別に隠しごとする必要ないじゃん。それにこれは、私たちがユメカを盾に使った結果なんだから、ちゃんと私たちで受けとめなきゃ。………ねぇ? ユメカ。………他にも、恥ずかしかったり屈辱だったりして、隠してることあったら、全部言っちゃっおっか?」

「はい。新崎ユメカは恥ずかしい秘密を全部、チトセに言います。………昨日の晩の金村様とのことがショックというか凄い強烈な思い出で、まだ彼の命令が解けきってないみたいで………。その、今朝は、夜のことを思い出しながら、1人でしちゃったの。………そんな自分が許せなくて、さっきはチトセに怒っちゃって………」

 自分の口を溶接してでも閉じたい思いなのに、ユメカの口はボロボロと、恥ずかしいこと、情けないことをチトセに打ち明けてしまう。チトセはユメカに同情するようにウンウンと頷きながら聞いてくれているのだが、表情が少しずつ明るくなっていく。その笑顔は、ユメカにとっては本能的な恐ろしさを感じるものだった。

「ユメカ。本当に私たち、貴方を盾とか道具みたいに使っちゃってる自分たちにも自己嫌悪を感じてるんだよ。そこはちゃんと、分かって欲しいの」

「………でも………。友達なのに、結構コキ使われてる気がするよ………」

 マリナが優しく諭すように話しかけると、ユメカの反論も勢いが弱くなる。

「そんな風に思う時は、どうしてこうなってるか、ユメカなりに考えて欲しいな。貴方が自分を、私たち仲良しグループの中では、1段高いカーストにいる人間だって思ってなかったら、今、私たちの命令に服従しなくて済んでたんだよ。そうよね? これって、私やチイのせいとは、違うんじゃないかな?」

「……………」

 ユメカは何か言いたかったが、言葉を見つけられなかった。

「そうそう。親友とか言ってて、結局、ユメカが先に私たちのこと、見下してたんでしょ? そりゃユメカは抜群に可愛いし、お上品だし、男子にもモテるけどさ。アタシたちのことを引き立て役くらいに見てたから、今、『下層カーストのうちら』の命令に逆らえないんでしょ? 自業自得なんじゃないの?」

 チトセと目が合わせられなくなったユメカは下を向いた。チトセがさらに勢いづく様子。その時、右後ろの方角から、能天気な男子の声がかけられた。

「おー、なに? 揉めごと? ……ケンカするくらい元気だったら、誰かに俺の相手してもらいたいんだけど………。こっちも朝からナニが元気過ぎてさ………」

 ニキビ面の馬鹿男子は久野ケイト。馬鹿なぶん性格はひねくれたりしていないが、デリカシーもない、Cグループ男子。判断の早いマリナがユメカの耳もとで囁く。

「ユメカ。フォーメーションBよ。悪いけど今度もよろしくね」

 弾かれたようにユメカが立ち上がる。マリナやチトセを背中で隠すようなポジショニングで、ケイトの前に立った。

「おっはよう〜、久野君。私たちのなかでは、男子のエッチなリクエストは私、新崎ユメカが担当です。私、こんな可愛い顔して、結構エッチなカラダしてるのよ。久野君にも試して欲しいな〜」

 固さの抜けない笑顔を顔に貼りつかせながら、ユメカが指先で髪をとかすような仕草を見せる。左足を椅子に乗せると、自分のボディラインを強調するかのように上体をひねりながら、左手で胸元から腰回り、ヒップまで撫でおろした。内心、恥ずかしさで火を噴きそうな思いのユメカだが、マリナとチトセにはフォーメーションAからGまできっちり仕込まれているから、プログラムは着実に作動してしまう。

「おぉ〜。ユメカちゃんが、俺に…………。こうやって、話しかけてくれてるだけでも、夢みたいかも」

「……ウフッ。ユメカ、久野君とのエッチなこと想像するだけで、もうアソコが濡れ始めちゃってるの。授業はサボっちゃって、早く、空いてる教室で、たくさんエッチしよ? ………ユメカ、久野君に体中、じっくり舐めて欲しいな〜」

「うぉっ………。あの、ユメカちゃんが………。こんな風になるなんて………」

 ご丁寧にチトセの演技指導まで頂いているので、ユメカにとっては卒倒ものの恥ずかしいセリフも、よどみなく口から出て来る。清純派お嬢様の新崎ユメカにこうして迫られると、大概の男子は、近くでクスクス笑っているチトセや、安堵のため息をついているマリナのことなど、すっかり気にならなくなってしまう。ユメカは心の奥底、深いところで少しだけ、この状況に密かな優越感を感じてもいた。

(私…………、酷いことさせられたり、言わされたりしてるけど、でも私がこうやって媚びたら、結局、男子はみんな、私に夢中になっちゃうのよね………。変なこといっぱいさせられるのはヤだけど、チトセやマリナみたいに、全然選ばれない存在になるのも、ちょっとヤだし………。我慢するしかないのかな?)

 チトセやマリナからケイトを引き離すように、ユメカは腕を絡ませ合って久野ケイトを教室の外へと引っ張っていく。扉を閉めるために一瞬、教室の中を振り返ると、チトセが手を振っている。マリナは謝るように両手を合わせていた。ユメカは貼りついたような笑顔のまま、小さく手を振り返す。いつかこの不思議な事態が終わりを迎えた時に、ユメカとチトセとマリナは、今まで通りのような仲良し3人組に、戻れるのだろうか? ユメカはボンヤリとそんなことを考えながら、胸の柔らかい膨らみをケイトの肘に押しつけて、廊下をエスコートしていった。


。。。



「それでこの御家人たちの争いごとを仲裁するためにつくられたのが……………。………あ………あの………。ほら………。漢字3文字の…………。あれ? …………ごめんなさい………」

 顔を赤くした柴岡ホノカ先生が、教卓に戻って指導者用の教科書をパラパラとめくる。授業中の度忘れのせいでパニックになっているのか、教科書の文章は全然頭に入ってこない。上を見ながら、必死に思い出そうと、声の出ない独り言をあれこれ呟く。それでも、大切なこと、そして簡単な内容に限って、ポッカリと記憶の空洞に入りこんでしまったように、隠れてしまった。全く思い出せるような気がしない。ホノカ先生は恥ずかしさと情けなさにため息をつきながら、シャツのボタンに手をかけていく。

「ゴメンなさいね。何度も授業を中断してしまって。………また、みっともないところを見せちゃいます」

 垂れ目がちのホノカ先生はたまに「タヌキ顔」とイジられることもあるが、それも笑顔でたしなめる程度の優しい先生。豊かなバストと温和でオットリとした性格が人気の、可愛らしい先生だ。そのホノカ先生が、今日は何度も授業につっかえて、そのたびに清楚な白シャツを脱いで、フリルのついた花柄の大きなブラジャーを外してしまう。柔らかそうで大きなバストが、毎回ブルンとこぼれ出る。男子たちの生唾を飲む音が、教室に響くようだ。

「何度も言い訳して、しつこいかもしれないけれど、………その、これは変な意味じゃないからね。………先生のオッパイは、記憶のポンプになっているの。こうやって、………ポンプをムギュムギュってしてると…………あ………、もうちょっとで………思い………出し…………はぁ………ああああんっ」

 重いバストを両手で支えるように下から持って、ゆっくりと乳搾りのような手つきでホノカ先生がオッパイをしごく。さすがに生徒たち全員に見られる中でオッパイを揉み絞っている自分の姿が恥ずかしいのか、照れ笑いを浮かべながら、懸命にこれは真面目な作業だと強調する。何か記憶の断片を掴んだように目を見開いて嬉しそうに考えこんでいる先生だったが、同時に恥ずかしい声も漏れてしまう。授業中に喘ぎ声を漏らしながら、やらしく悶えるホノカ先生。迫力ある巨乳の真ん中には、肌色の乳輪。その乳輪も少しだけ垂れ目のようにハの字を描いていた。

「もっ………問注所! ………そう、………問注所でした。…………みんな、よく覚えておいてね」

 潤んだ目と赤い顔、肩で息をしながら、先生は照れくさそうに両手でオッパイを押さえると、そそくさとブラジャーを身につける。男子生徒たちにとっては、忘れろと言われても難しそうな、刺激的な授業のワンシーンとなっていた。

「ふぅ………。お見苦しいところを、ゴメンなさいね。おばちゃんのこんなところ………。恥ずかしいな。………でも、みんな若いうちに、ちゃんと勉強しておいた方がいいよ」

 まだ26か27のはずの独身女性が、恥ずかしさを打ち消すかのように、おばちゃんアピールで誤魔化す。

「先生なんて、今朝、電車の中で、降りる駅を忘れちゃって。………通勤中の皆さんの前でお洋服脱いで、オッパイ出して、記憶のポンプをギュウギュウして、やっと思い出して………。恥ずかしかったなぁ…………」

 ホノカ先生の告白に、生徒たちが目を丸くする。最前列の女子生徒が質問する。

「先生それ………、電車の中で、今みたいなことしちゃったんですか? …………大丈夫でした? ………捕まりますよ………。普通」

「うーんと………。やっぱり、変な目で見られちゃった………かな………。あはは………。ゴメンなさいね。みっともない先生で」

 申し訳なさそうに口をすぼめながら、ホノカ先生が襟元までシャツのボタンを留める。教室の中で、情報通を自認する生徒たちの何人かは無言で納得していた。これはホノカ先生が担任しているクラスのどれかにいる、カーストDかEグループの生徒の悪戯だ。

 この学校社会で教師はSグループ相当だから、Cグループ以下のカーストにいる生徒だったらホノカ先生の「記憶を操る」ことは出来る。けれど階層3つ越えの支配者は相手の記憶や信念、道徳観念や人格をいじくることは出来ても、その影響を学校の外の社会にまで反映させることは出来ない。「この人はこういう人らしいから、仕方がない。放っておこう」と学校外の赤の他人にまで思わせるような命令が出来るのは、カーストが4つ違う支配者しかいないはずだった。

『ホノカ先生はとても忘れっぽくなります。でもこのおっきくて柔らかいオッパイが、記憶のポンプになるから大丈夫。大事なことを忘れちゃった時は、どんなに恥ずかしくても、その場で上半身裸になって、オッパイから記憶を絞り出しましょう。ちなみにこれ、すっごい快感です。あと、ホノカ先生の周りの人たちも、異常な行動には気がつくけれど騒いだり邪魔したり、通報したりはしません。』

 このくらいまでの情報量でDグループかEグループの生徒が命令を与えると、今のホノカ先生の身に起きているようなことが、当たり前のように現出する。そういうことだろう。

「先生にこの指示を出した人、効果の期限とか、言ってませんでした?」

 心配そうに、最前列の優等生女子が聞く。他人事に思えないようだ。それでも、一線を越えて騒ぎ立てるような気持には、彼女もなれない。

「………誰に何を言われたのかも、先生、覚えてないの。一昨日から、こうなっちゃったっていうことしか………。でもね。先生はまだ大丈夫よ。英語の経堂先生の場合は、記憶のポンプがお尻についてて、しかも結構固いポンプらしくてね。生徒とか他の人に直接、パチーンって叩かれないと、思い出せないって言ってたわ。授業が終わるたびに、お尻が真っ赤になってるって困ってらしたの。それに比べると、先生はまだマシね。………恥ずかしいのは、恥ずかしいけれど………」

 ふわーっと喋るホノカ先生の今の反応が、刷り込まれたものなのか、天然のホノカ先生のものなのかは、生徒たちにもなかなか判断出来なかった。

「先生………。桜田が………。さっきの先生の姿に興奮しちゃって、授業中なのに変なことしてます………。注意してください」

 挙手して隣の男子生徒がおっぱじめたセルフサービスを、ホノカ先生に言いつける女子。柔和な先生は、桜田を叱るために、頑張って怖い顔をしてみせる。

「桜田君。………多感な時期の男の子たちに、あんな姿を見せていた先生が一番悪いんだけど、周りの女の子たちに不快な思いをさせては、いけませんっ。授業中に、勉強以外のことは……」

「駄目でしたっけ? いいんでしたっけ?」

「もちろんそんなことは…………。………え? …………」

 ホノカ先生がキョトンとした顔で立ちすくむ。悪知恵だけはよく働く桜田の顔がパーッと明るくなった。

「先生。………授業中にこんなことしてて………駄目でしたっけ? いいんでしたっけ?」

 ズボンのポケットから股間をしごきながら嬉しそうにいきりたつ桜田の前で、ホノカ先生は急に不安そうな顔になる。

「…………どっちだった………かしら………。ちょっと、今、思い出すから、そこで待っていなさい。桜田君」

「先生、僕、お手伝いしますよっ」

 さっきせっかく来たばかりのシャツを、急いでまた脱ぎ始めてしまうホノカ先生。調子に乗った桜田が、ブラの上からも先生の巨乳にタッチ。豪快に揉み始める。恥ずかしそうにしながらも、御礼を言って、生徒に手伝われるままに、快感にあえぎ始めるホノカ先生。花柄の大きなブラが外されると、またオッパイがブルンと顔を出す。垂れ目気味の乳輪の真ん中で、乳首がもうプックリと火照っていた。

 さっき桜田のことを言いつけた、生真面目そうな女子には、目を白黒させて、加速していく異常事態を見守ることしか出来なかった。「ホノカ先生が思い出すのを助ける会」が発足されたのは、まさにこの日の、この授業後のことだ。


 。。。


 比較的お金に余裕のある家庭の子息が通う、知的で品位のある私立校、そんなイメージだった稜聖学園高校には今や、日常が崩壊してしまったようなクラスが数多くある。そのなかで、2−Fは最もモラルを維持できているクラスかもしれない。支配者の持田シュンタが唯一のEグループのカースト底辺男子として存在しているため、ヒエラルキーが歴然と安定している。そしてシュンタの性格上、あまり大胆なモラルハザードは望んでいないようだ。さらに言えば、『カースト大革命』が始まったその日のうちに、シュンタが望むもの、Sグループの藤沢美緒を早くも独占出来ていた。

 こうしたことから、2−Fの支配者、シュンタがクラスに求めたものは、穏当な平和と安定だった。

『2−Fの生徒たちは、僕の命令以外には不自然に支配されない。出来るだけこれまで通りの日常を過ごそう。』

 シュンタがこう命じた時、教室には沢山のホッとした溜息と、わずかな舌打ちが響いた。とは言っても、シュンタのこの一言で長期間の平和が約束された訳ではなかった。他のクラスにもEグループの底辺キャラはいる。シュンタの命令と真っ向から衝突する命令が出された場合は、同じクラスのEグループ男子、シュンタの命令が優先される。それでもシュンタの命令の翌日に、別のクラスからの侵略者から巧妙な命令が出された場合、2−Fの生徒たちはそれらの命令にも従ってしまうということがわかった。

 平和な統治にも毎日の労務が発生する。シュンタは大人の世界の真実を垣間見たような気分だ。2−Fの生徒たちには、彼らがシュンタの支配を受けている臣民だということを、毎日のようにわからせなければならない。日課として、毎朝、シュンタはクラスメイトたちに、「普通だったら従わない」ような命令を一つ与えて、実行させ、自分たちの立場をよく理解させてから、先の平和宣言を伝えかえすことになった。


「あ、今日は火曜日か。みんないるね。………オホン、今日はストレッチ体操の日だよ。隣同士、男女でペアを作って、制服を脱いで、下着姿になろう。お互いを手伝いながら、柔軟体操だよ」

「はい。シュンタ様」

 2−Fの生徒たちの返事も、最近はずいぶんと綺麗に揃うようになってくる。大勢の人間の返事が綺麗に揃う。これだけのことに、返事をさせているシュンタの側も、揃って返事をするクラスメイトたちも、奇妙な、シンクロする快感を覚える。全体主義の国家が今世紀になっても存続しているのは、こんなシンプルな理由からかもしれない。

 シュンタのクラスメイト、古賀トシヤは制服のズボンを降ろしながら、こっそり周りを見回す。今日は先週よりも、白い下着の女子が増えている気がする。先週、シュンタが藤沢ミオと蔵池チサトの白下着を清楚だと褒めたことが、原因かもしれない。シュンタがどれだけ権力を濫用しないように気をつけていても、女子たちは意外と権力者の嗜好に敏感なようだ。これは女性の本能なのかもしれない。

 そんなことを考えているトシヤにも、シュンタの臣民としての自覚が、少しずつ根づきつつあるようだ。憧れの藤沢ミオ様の下着姿を拝める大チャンスなのに、チラっと見たあとすぐに、畏れ多いような気がして、目を伏せてしまう。トシヤのようなBグループの小物はきっと、隣のナツメのスレンダーな下着姿くらいで満足しておくべきなんだろう。いや、ナツミの下着姿自体、そうとうレアなお宝メモリーなのだが。

「トシヤ、今、こっち見たでしょ」

「………俺? ……見てねぇよ。………自意識過剰なんじゃないのか?」

「………だって………ほら、そこ」

 嫌そうに指をさすナツメ。その方向を見下ろすと、トシヤのブリーフはビンビンの中身に突き上げられて、生地が伸び切っていた。赤面してお辞儀するような姿勢から動けなくなるトシヤ。隣の男子の情けない姿を見ないように顔をそむけてあげつつ、ナツメは溜息をついた。

「もう………。ペアでのストレッチ中に、暴発したりしないでよ………。お願いだから」

 ナツメがぼやきながら、床に腰を下ろして、開脚前屈の姿勢になる。ペアのトシヤは背中を押して、ナツメのストレッチを手伝ってあげる。20秒たったら同じことを、男女交代して行うのだ。トシヤが左右の手のひらをナツメの背中にペタッとつける瞬間、ナツメは「んっ」とだけ、声を出す。すべすべした背中を、ゆっくり力を入れながら押す。脚が開かれているせいで、ショーツの生地が伸ばされている。お尻の丸みの頂点も、谷間の様子も、ピッチリと現わしてしまう、ナツメのショーツ。黒の縁取りがされた、クリーム色のショーツから、お尻の肌色が少し透けて見えるようだった。

「はい、交代」

 今度はトシヤが開脚前屈。体が固いトシヤはナツメが両手に体重を乗せて来ると、「イテテ」と小さく悲鳴を漏らす。

「もうちょっと頑張ってよ。………私たちのペアが真面目にやってないって判断されたら、ペナルティ来ちゃうでしょ」

 ペナルティは、シュンタのアドリブ。でも10回に7回は、今のペアのまま前に出て、下着も脱いで全裸で模範演技役をさせられる。シャイな女子や遠慮がちな男子のいるペアほど、ストレッチが小さくなったり、ペア同士の距離が遠かったりで、ペナルティが降りて来やすいので、要注意だ。

 ナツメがギュウギュウとトシヤの背中に体重を乗せる。急に背中に、ナツメの髪の毛先がかかって、トシヤはビクッと反応してしまう。この体勢で厳しいのは、股間が立っていると下腹部が前屈しづらいという点だ。

 20秒たつと、足上げのストレッチに移る。両手を机に載せたナツメが、右足を伸ばしたまま、ゆっくりと後ろに、蹴り上げるように踵から天井を目指してあげていく。膝の上か、太腿のあたりをトシヤが支えて、さらに上に上げるのを手伝う。トシヤの顔が、ナツメのショーツに大接近しているのを感じて、ナツメがさらに赤くなる。

「………コーチ、鼻息当たってますけど………。匂いとか嗅いだら、殺すからね」

「………余計なことに気ぃ回してないで、集中しなさい。ナツメ選手」

 この動作も、右の足、左の足と続いて、男女が交代する。そのあとは背中合わせでお互いの体を背負ったり、床に腰を下ろしてお互いの足の裏を合わせたら上体を右に左に引っ張りあったり、ブリッジの体勢を維持するのを腰の後ろを支えて手伝いあったりと、下着姿の男女の接触と柔軟体操は続く。朝のHRが終わる頃には、たいていの男子も女子も、パンツに染みが出来てしまう。思春期には色々な事情があるようだった。

 こんな具合に、シュンタは毎朝、少しだけ2−Fの日常を揺るがすためのルーティーンを設定している。そうすることで生徒たちはみんな、シュンタの支配下にある自分たちのことを自覚する。その後でシュンタから改めてクラスの平和を宣言される。すると結果的に、他のクラスから来る侵略者の敵対的な命令への耐性が高まるようだった。月曜は朝のHR時間内に、7人以上の異性とハグをして、クラスの連帯感を高める。火曜は下着になってストレッチ。水曜は出来るだけ新しい男女のペアをつくって、お互いをスクール水着に着替えさせてあげる。木曜は上半身だけ裸になって、ペアの相手が涙を流すまで脇の下や脇腹、耳をくすぐる。そして金曜日は、オナニーの鑑賞会。机の上で全裸になってオナニーする生徒たちを、交代で異性の生徒たちが巡回しながら観察する。自分たちもイク寸前まで自身の体を慰めつつ、クラスメイトの痴態をはっきりと鑑賞する。

 金曜日の朝が、他の曜日と段違いに過激なのは理由がある。その後は土日を挟むために、よりがっちりと、シュンタの支配力を思い知らせてあげる必要があること。そしてもう一つの理由は、金曜の1限目が、経堂シオリ先生の英語の授業だからということだ。学園トップクラスの美人教師、経堂先生はすでに、男子も女子も素早く絶頂に導く、タフで優秀な、セックスマシーンになりつつあった。他にも学園には、ユカリ先生やセナ先生、そして巨乳で可愛いホノカ先生など、生徒たちの青い性を受け止めてくれる美人教師はいる。それでも、一度に3人をエクスタシーに導くことが出来るプロフェッショナルは、今のところ、シオリ先生しかいない。モデル顔負けの端正な顔立ちや、抜群のプロポーション。そしてこれまでの厳しい指導方針からくるギャップもあって、男子生徒のニーズが高く、これまでに相手にした生徒たちの数が、同僚教師たちとは一桁違うのだ。

 シュンタは、2−Fの男子たちには、先生に対してだけ、挿入や中出しを許している。Sグループ相当のカーストにいる先生たちの心だけではなく肉体まで、階層5つ越えとなるシュンタは支配出来る。妊娠予防や性病予防、酷使された体の急回復など、特殊なケアが出来るのはSグループの頂点キャラたちだけなのだ。それが理由で、他のクラスではSグループのセレブ生徒たちが酷使されているケースが多いようだ。2−F? もちろんシュンタは、Sグループのミオは自分一人で独占している。その結果、クラスメイトたちには先生とだけヤラせるようにしているのだった。


「はい、そろそろストレッチしゅーりょー………。……あれ? ……マコト?」

 ミオとチサトに両頬を舐められながら、クラスの王様だけに許される3Pに興じつつ、号令をかけていたシュンタは、廊下の窓から教室を覗きこんでいたマコトの姿に気がついた。

「順調そうじゃん、シュンタ。………ちょっとこっち来れる?」

「ん」

 シュンタの意図を瞬時に理解して、裸のミオとチサトはすぐに体を起こして下着と制服を身につけ始める。チサトは服を着ながら、シュンタに代わってクラスメイトたちに、柔軟体操後の後始末まで指示する、級長ぶりを発揮している。そのテキパキとした『シュンタ王国』の運営ぶりに満足をおぼえながら、シュンタは扉を開けてマコトの前に立った。R・K…Bの親友に、一応平和で効果的に維持されている自分の領地を見てもらうのは、誇らしいことだった。

「うまくやってるみたいだな。シュンタ」

 マコトは廊下の左右を気にしながら、小声で話す。

「うん。まあまあ。………マコトは大規模なクラス替えをしたって聞いたけど」

 マコトの2−Aは、隣のクラス、2−Bと半数近くのメンバーを入れ替えたらしい。2−Bを今、仕切っているのは、『腐女子が平伏す蠅の王』と呼ばれた、腐女子中の腐女子、越峰カナエだった。主に男子生徒同士の絡みを得意分野としている『女帝カナエ』に、自分のクラスの男子を8割がた提供したマコトは、かわりに2−Bの女子を8割がた貰い受けて、自分の領地を女子だらけにした。一部、マコトのボディーガードやパシリ、肉体労働を引き受ける男子を残して、あとは全員女子というクラスの支配者になったマコトは、きちんとビジュアル的にも隙の無い環境を整えた上で、自分の力の実験と、『カースト大革命』後に起きている諸現象の観察に勤しんでいるそうだ。相変わらず、マコトの動きは戦略的だった。

「まぁ、俺やシュンタは慎重というか、考えすぎなのかもしれないけどな。ノリユキなんか、男子も女子もあんまり気にせず、大乱交の毎日だぞ。2−Dの近くを通るだけで、なんか匂ってくる気がするよ」

 シュンタは苦笑いを噛み殺す。親友ではあるが、天パのデブがスパークしているところは、出来れば直視せずにやり過ごしたいと思った。

「………今日来たのは、ただの近況報告じゃない。そろそろ学校中の支配者、Eグループのメンツが出揃いつつある。この学校が完全なカオスから、群雄割拠の時代に移るって言いに来たんだ」

「Eグループのメンツ………。まだ出揃ってなかったんだ」

「不登校だったり、コミュ障で異様に環境変化に疎かったりする奴もいたんだろ。スクールカーストの底辺に蠢いていた怪物たちがようやく腰を上げて各クラスの支配に乗り出したってことだよ。Eグループに入るようなキャラがいなかったクラスは、近くのクラスに吸収されたり、周囲のクラスの草刈り場になったり、自分たちで相談してどこかのクラスの支配下に入ったり。なんだか戦国時代の国盗り合戦みたいな様相だよ。シュンタも、いつまでも自分の領土の中だけで平和を維持できないかもしれないぞ、って忠告しにきたんだよ。RKBのよしみでな」

 学園中のEグループのモンスターたち………。ゴシップに疎いシュンタは、あまり多くのメンツを思い浮かべることは出来なかった。

 シュンタがわずかに思い起こせるのは、3年にいる『笛吹男爵』松園ヒロオミ。この人は昔、クラスの女子の水着や下着を大量に盗んで、毎日着て、ほつれなどあれば丁寧に補修して返却していて捕まったはずだ。普通は停学明けにイジメられたりして不登校などなりがちだが、この人はその後も皆勤だという。中学時代から夜ごと女子のリコーダーを舐め続け、笛吹男爵と呼ばれるまでになった、伝説の鋼鉄メンタルな変態だ。そして『蠅の王』、『女帝』と言われた越峰カナエ。以前にマコトから、腐女子サークルを出禁になった危険人物として聞いていた。他には、1年の女子で『ミツヨ・ド…ブス』と仇名される顔面問題児がいるとか、『酢の天使』と呼ばれる体臭問題児がいるとは聞いたことがある。

「シュンタ。これからは駆け引きも出来ないと、お前の領地も、ミオちゃんも、守れないと思った方がいいぞ」

 マコトに言われて、生唾を飲んだシュンタは、無意識のうちに教室の中を見回していた。身だしなみを整えている藤沢ミオ。着るのが遅いクラスメイトたちの面倒を見ている倉池チサト。そして従順に制服を着直して、他愛のないお喋りを小声でしている2−Fの生徒たち。シュンタはこのクラスメイトたち全員を、守り通したいと思うようになっていた。ミオのことだけを考えていたのが僅か5日前のことだったと考えると、短い時間のうちに、欲が大きくなったのだろうか。それとも、これが王としての自覚なのだろうか?

「マコトから提案があれば、極力乗るようにする。動く時は言ってよ。………ノリユキは、大丈夫かな? 数に数えられる?」

 シュンタが聞くと、マコトは首を縦や横に振るのではなく、シュンタの目をまっすぐ見て答えた。

「………どうしようもないバカだけど、あのバカさが戦力になる時があると思う。3人揃ってRKBだろ?」

 頷いたのはシュンタだった。

 カーストの深遠に息を潜めていたはずのモンスターたちが、日の当たる場所に顔を出し、学園を闊歩しはじめた。シュンタはすでに非武装中立というスタンスが許されない時代になったことを静かに理解した。廊下に掛かる「2−F」というプレートを見上げた後で、マコトの顔を見ると、もう一度だけ頷いた。

 
 


 

 

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