Animalize Heart


 

 

Act−1 【tail】


 サキュバス―伝承に語り継がれる淫魔。
 夢の中で男性を魅了し、その精を吸い取ると言う悪魔。
 もっとも、それは伝承でしかない。
 現実に、そんなモノが存在するはずはない。

 ここに、一本の棒がある。
 ちょうど男根ほどの長さ、太さ、堅さを持ち合わせている。

 『サキュバスの尾』

 そう呼ばれているらしい。
 この手のものにしては珍しく―いや、普通ならありえない話だが―何人、何十人、何百人と、今までに持ち主の手を渡り歩いてきている。
 長い歴史の中、その名前は忘れ去られ、そしてその使い方さえも、消えていく。
 当然、その正しい効果など知られるはずも無く・・・

・・・
・・


 パァンッとやたら威勢のいい音が鳴り響いた。
「痛ってぇーな、おい。いきなりひっぱたくなよ・・・」
 乾伊吹(いぬい いぶき)は、いきなり平手で殴られた頬を押さえながら言った。
 じんわりとした痛さがゆっくりとこみ上げてくる。
 っつぅ〜、こいつ・・・本気で殴りやがったな。
 そう思いながら、殴った張本人―海羽遥(みはね はるか)をみやる。
 少し吊り目がちな、それでも整った顔立ちの、その表情は怒りに満ちていた。
「なによ、その目は。なにか言いたげじゃない」
「いや、とりあえず痛いんだが」
「うるさいわね! 男がちょっとひっぱたかれたくらいでビービー言わないの!」
 ビービーなんて言ってねぇって・・・ガキかよ、俺は。
「もう、今日という今日はもう知らないから! もうあたしに話し掛けないで!」
「・・・お・・・」
 遥は言いたいことだけ言うと、つかつかときびすを返していってしまう。
 後には、呆然と立ちすくむ伊吹が残っているだけだった。

 とある学校の、とある一場面。
 傍目から観れば、伊吹が何かやったのだろう・・・そう思われて然りだ。
 しかし、実際のところそうではない。

「くっそぉー・・・いつもいつもパンパン殴りやがって・・・」
 家路につきながら、伊吹はさっき殴られた頬をなでながらひとりごちた。
 何故、殴られたかはよくわかっているつもりだが、それを不条理と言わずしてなんだろう。
 伊吹はがっくりと肩を落とす。

・・・
 
 ことの起こりは、つい先日。
 部活の剣道が遅く、その日も例に漏れず遅くまで竹刀を振っていた。
 近々段級審査があるので、伊吹も練習に熱を入れていたのだ。
 普段は、時間になるときっちり終わって遥と帰宅するのだが、遅くなるとそうもいかない。
 だからこういうときは、帰りは別々だと暗黙の了解で通していた。
 
「乾先輩、今日は帰りは一人ですかーっ?」
 伊吹が着替えて部室を出たところで、後輩―楓夏樹(かえで なつき)に呼び止められる。
 夏樹はパタパタと伊吹のほうへ駆け寄ってくる。
 低い身長と、くるくるとよく動く表情が、どこか小動物を思わせる。
「あ? あぁ、今日はな」
「あ、それじゃ私も一人ですから、一緒に帰りませんか?」
「ん、別にいいぞ」
 部活仲間ということで面識はあるし、段級審査も近いことから話題が盛り上がる。

 ふと気が付くと、もうすぐそこは自分の家。
「それじゃ、俺はこの辺で」
 そう言って別れようとする伊吹だが。
「待ってください」
 呼び止める夏樹。
「・・・ん・・・? どした?」
 みると、夏樹がきゅっと伊吹の袖の先を掴んでいる。
 その顔は、どこか下の方をじっと見つめたまま固まっている。
「・・・どうしたんだよ」
「・・・先輩」
 夏樹が、少し潤んだ目で伊吹の顔を見上げてくる。
「乾先輩は、今付き合ってる人はいますか?」
 唐突に、それでも消え入りそうな小さな声で夏樹が言う。
 一瞬、言葉に詰まる。
 答えなんて、決まっている。

『俺は、遥と付き合っている』
 
 それに決まっている、ハズなんだが・・・
「私、先輩のことが好きでした。ずっと・・・ずっと前から」
「・・・・・・・・・」
 伊吹の答えを知ってか知らずか、夏樹は続けた。
「乾先輩・・・私と・・・付き合ってくれませんか?」
 暫く、沈黙が流れる。
「・・・ごめん、俺・・・付き合ってる奴いるからさ。気持ちは嬉しいんだけど・・・」
 伊吹が言葉を紡いでいる間にも、夏樹の目からはボロボロと涙が零れ落ちていく。
「そう・・・ですよね。は、はは、ごめんなさい無理言っちゃって。・・・あれ? どうして私泣いてるんだろ? なんで・・・」
「・・・ごめん」
「謝らないでください・・・謝られたら、そんな・・・私・・・」
 それ以上、伊吹は何もいえなかった。
 夏樹もそれ以上なにも言わず、ぺこりと頭を下げると、伊吹の前から走り去ってしまった。
 夏樹の足音が去っていく。
「・・・ごめん、本当に」
 伊吹は、誰にとも無くぽそっとそう呟いた。
 
・・・

「あんた・・・また女の子泣かしたそうじゃない!」
 ったく・・・呼び出したと思えば話題はそれかよ・・・
 伊吹は半ばうんざりしながら頭を掻いた。
 確かに、夏樹には悪いことをしたと思う・・・思うんだけれども。
「どーしてそこでお前に怒られにゃならんのだ、この俺が」
「全く・・・女泣かせだとは思ってたけど、ここまでひどいとは思わなかったわ」
「いや、絶対意味違うと思うぞ、それ」
「うるさいわね。あーもう、なんであたしがこんな女の敵みたいな奴と付き合ってるのかしら」
 言いながら、ギリギリと拳を握る。
 今にも殴りかからんばかりの勢いだ。
 つーか、むしろ殴られる。うん。
「はぁー・・・なんで俺もお前と付き合ってんのかわかんねぇよ・・・」
 瞬間。
 パァンと威勢のいい音が鳴り響いた。

・・・
 
 回想終了。
 つまり・・・全部遥の勘違いってわけだ。
 ま、なんつーか毎回毎回似たような感じなんだが。
 思い出したら、また頬の痛みまで戻ってきた。
 はぁー・・・しかし今回ばかりは本当に不条理だな・・・
 遥のためを思ってたのに・・・思いっきり仇で返されるとは。
 伊吹はついさっき遥に言った言葉を思い出す。

『なんで俺もお前と付き合ってんのかわかんねぇよ』
 
 そーいや・・・なんでだろう。
 付き合うきっかけになったのは、遥の告白からだった。
 今となっては想像も出来ないが。
 それで大体半年間。
 その間に、キスはもとより一応セックスまでは経験した。
 それなりに恋人っぽいことをして、それなりに楽しかったのだが。
「ま・・・しょうがないか」
 過去を振り返っても仕方がない・・・
 大事なのは・・・そう、これから。未来だ。
 伊吹はぐっと拳を握りしめる。
 んでも、その前にっと。
「・・・・・・・・・」
 伊吹はすこし頭を捻って考えてみる。
 今まで殴られたり蹴られたり、ひっぱたかれたりした仕返しに、何か出来ないものだろうか―と。
 別れてしまう前に、『何か』仕返しをしなければ気が収まらない。
 伊吹は腕組みをして、仕返しの内容を考えながら歩き続けた。
 
・・・
・・


「・・・っんっ・・・はぁ・・・やんっ・・・」
 喘ぎ声。
 伊吹の愛撫にあわせて、ビクン、ビクンッと遥の身体が震える。
 くちゅくちゅと湿った音が、遥の秘部から聞こえる。
 伊吹の指が動くたびに、遥の体は震え、股間からは音が聞こえる。
 何回も身体を重ね、そのたびにしてきた行為。
 伊吹も、そして遥ももうなれたこと。
 そして、互いに最後になるであろう行為。

・・・

『ちょっとぉ・・・あたしにかまわないでって言わなかったっけ?』
 受話器の向こうから、遥の不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「ん、まぁな。いいよ別に・・・俺もう決めたから」
『は? 決めたってなにを?』
「お前と別れるってこと」
『・・・そう。・・・まぁ、あんたがそういうんなら、あたしは何も言わないけど』
 ひどくあっけらかんとした口調。
 ・・・やっぱりこの程度なのか、と伊吹は嘆息した。
 せめてもう少し別の反応があってくれてもいいだろうに・・・
『でもさ・・・』
「ん?」
『最後に・・・一回くらい、したいね』
「は? なにを?」
『その・・・セックスを』
 正直、伊吹は驚いていた。
 よもや、遥のほうからその話題を持ちかけてこようとは思っていなかったからである。
 そうでなければ、自分から話を持ちかける気でいたのだ。
「ん・・・おっけー。別にいいぜ」
『そう。それじゃあ・・・明日、伊吹の家に行くから』
 それだけ言うと、遥は電話を切った。
 ツー、ツーという発信音だけが残る。
 ・・・まさかあいつのほうから話を持ちかけてくるとはねー・・・
 まぁいいか、と伊吹は考えるのをやめた。
 ともかく、これで小さな復讐の舞台は整ったわけだ。
 
・・・

 伊吹は、遥の股間をいじくっている指を、少しずつ後ろの方へずらしていった。
 しかし、伊吹の愛撫に我を忘れている遥はそれに気づいてはいない。
「ん・・・んぁあ・・・イイ、イイよぉ・・・」
 うっとりとした目で、どこか視点が定まっていない遥。
 伊吹はあまり強い刺激を与えないように気をつけながら、遥のアナルに指をこじ入れる。
「んんぅっ・・・!」
 突然アナルを襲った、快感とも不快感ともつかぬ感触に、遥は一瞬身体をこわばらせる。
 しかし、そのすぐ次の瞬間には、愛撫の快楽に飲まれている。
 伊吹は、遥のひどく感じやすい身体に感心しながらも、アナルをいじってゆっくりとほぐしていく。

 遥とは、アナルセックスの経験はない。
 が、しかしそれでも、興味本位で遥のアナルをいじくることはあった。
 ・・・伊吹は企んでいた。
 アナルにバイブをつっこんでやろう。
 多少痛がって泣いても、ま、仕返しってことだし。
 
 所詮、思いつくのはその程度のことでしかなかった。
 それに伊吹はそれ以上のことをやる気もなかった。

「遥・・・どうだ、気持ちいいか?」
「・・・んっ・・・うん・・・っ」
 伊吹は、用意していたバイブを手に取った。
「そうか・・・んなら、これでどうだ」
「・・・へ?」

ずぶり

「ふああああーーーーーっ!?」
 遥のアナルにバイブを突き刺した瞬間、遥は突然大声を上げた。
 伊吹はそれにかまわずに、一気に奥の方まで押し込んだ。
「んあー・・・んっ・・・あんっ・・・」
 伊吹が異常に気がついたのは、その時だった。
 いくらほぐしていたからとはいえ、遥はアナル挿入は未経験なはずだ。
 それなのに・・・どうしてこんなにスムーズにこれがはいる?
「ふぅん・・・んっ・・・」
 遥の表情に、痛みや苦しさをこらえている様子は見られない。
 それどころか、さっきよりも恍惚とした表情だ。
 その目にはもはや伊吹は映ってはいない。
「・・・?」
 不思議に思いながらも、とりあえず伊吹はバイブを抜こうとした、が。
 抜けない。
「え?」
 抜けないのである。
 遥のアナルの締め付けがきついわけではない。 
 単純に抜けないのだ。
 それどころか、バイブは勝手に遥の内部へと吸い込まれていく。
「ちょ・・・ちょっと冗談じゃねぇ!」
 伊吹が必死でバイブを抜こうとしている。
 そのこととはまるで関係ないかのように、遥はひっきりなしに甘い声をあげていた。
「・・・あ・・・んっ、すご、すごいの! お尻、お尻すごいのぉっ」
 遥の股間はさっきとは比べ物にならないほど、大量の露が流れている。
 まさに、『異常』だった。
 
「ふぅ・・・んっ・・・伊吹ィ・・・すごいよぉ。あたし・・・あたしなんか変なのぉ」
 遥は恍惚としながら、自らの股間に指を差し込む。
 伊吹はそんな遥を見ながら、とりあえず様子を見るしかないか、と考えていた。
 バイブはすっかり遥の中へ入ってしまった。
 まぁ・・・排泄するときに、一緒に出てくるだろ。
 どーせネットオークションで買った安物だし、自分のところへ返ってこなくてもいいか。
 ・・・それにしても。
 伊吹はもう一度、遥に目を戻した。
 
 全裸の遥が、白い肌を紅潮させて喘いでいる。
 右手は自らの股間を、左手は自らの乳房を、それぞれ激しく愛撫している。
 股間からは絶え間なく淫水が溢れ出ている。
 視線は宙をさまよい、半開きになった口からは涎が垂れている。
「あっ、あっ・・・んんぅ」
「・・・・・・・・・」
 はたして、伊吹の目の前で遥がここまで乱れたことはあっただろうか。
 乳首をつまんで引っ張り。
 クリトリスを指で潰してはよがり。
 そうしている間に、遥は自らの愛撫で高まっている。
「ふわっ・・・ふあっ、ふっ、あっ、あっ、ああーーーーっ!!!」
 遥は自分の秘部に指を突っ込んだまま、身体を弓なりにそらして絶頂を迎えた。
 どっと股間から愛液が噴出し、ベッドに大きなシミをつくっていく。
 遥は暫く身体を痙攣させると・・・どっと一気に力が抜けたように倒れ臥す。
「・・・遥?」
 やはり心配になったのか、恐る恐る声をかける伊吹。
 遥は・・・眠っていた。
 すうすうと、静かに寝息を立てている。
「・・・ふぅ」
 とりあえず・・・遥は無事(?)だったからいいとして。
 どーするかな・・・
 伊吹は気持ちよさそうに眠る遥を前にして頭を抱えた。

 
 


 

 

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