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**********5th−day Vol.1**********



明智 祐実:警察組織レディースワット チーム6の若すぎるチーフ。直情的で上昇志向が強く、またほとんどのチームメートが彼女の先輩にあたり、チーム内では浮き気味。
      手に入れた洗脳薬『レディードール』を使い、仲間を操り人形化して手駒にしてまでのし上がりたいと考えている。売春組織『セルコン』の壊滅を手土産に
     レディースワットの局長ポストへの昇進を窺っている。



伊部 奈津美:来るべきオペレーションの詳細を監視する監視官に上部から任命された。明智祐実就任前のチーム6チーフ。事件解決の失敗を問われ降格。



国井 涼子:実戦2年目のまだ駆け出し。経験が未だ浅いことから先輩メンバーとの行動か単独では聞き込みやオペレーションなどの調査活動を担当。
      婦人警官の気分が抜けていず、口が軽く不満などをよく口にしがち。



陣内瑠璃子:身勝手きわまりない気分の女子校生。異能力をもつ。レディースワット・チーム6の追う事件に関係深く、事件解決と売春組織『セルコン』壊滅のための
      キーマンと目されている。奔放な性格らしく、組織側からも危険視?されている帰来がある。


深田茶羅(ふかだ さら):高卒採用の新人。



【前回まで】
尊敬する明智祐実の引き抜きで所轄から動員され、高校生に扮して陣内瑠璃子のいる学院に潜入捜査員として潜り込んだ深田茶羅は、逆に陣内瑠璃子に絡めとられて祐実を襲うために刺客として戻ってきた。
密室となったチーフ室で追い込まれて逃げ切れなくなった祐実を窮地から救ったのは、ポケットに入れ忘れたままになっていたあの洗脳薬『LADY−DOLL』だった。
祐実はためらうことなく薬を茶羅にふくませた。形勢は逆転する。




【LS統括部 会談室1 深夜】



「私は、祐実チーフのためだけに行動します」

 深田茶羅(ふかだ さら)は無表情のまま視線を虚空一点に固定したままセリフの棒読みのように言葉を口にした。

 茶羅からの従属の誓いを聞いて祐実は不敵に微笑む。
「そう。それでいいのよ。あなたは私の命令に忠実でありなさい。私があなたに与えた命令は?」
 クスリは茶羅を陣内瑠璃子の呪縛から断ち切り、茶羅を祐実の手中へと堕としていた。
「私の精神を蝕んで、私の大切な祐実チーフを襲わせた憎むべき陣内瑠璃子を刺し違えてでも連行します」
「そう。そのためにあなたはまだ陣内瑠璃子の手の内にあると彼女に思わせて学園内で接触するのよ」
「はい。祐実チーフのご命令どおりに・・・」

 会議室の中央に立って、無表情で抑揚のない言葉を茶羅が淡々と口にする。
 上半身をはだけたまま真っ直ぐと祐実に視線を向ける茶羅は瞬きさえしていない。まるで生きた人形のようだった。

 数メートル離れたところにパイプ椅子にだらしなくふんぞり返った祐実がその長い足を組みかえた。
「もし、またあなたをアイツが取り込もうとしたら?」
「祐実チーフから頂いたショック弾のスイッチを躊躇することなく押します」
 茶羅のブラジャーと胸の谷間に固定された無機質なカーキ色の小型の円筒がある。

「ウフフフ、茶羅、あなた死んじゃうかもよ」

 ショック弾はもともと催涙弾を改造して閃光火薬と音響で相手の視覚・聴覚と行動のすべてを停滞させるために作られた。
 茶羅に渡したものは対テロ・対凶悪犯局地用にガラス片やベアリングを含んだ殺傷能力のあるものだった。

「私は、祐実チーフのためだけに行動します。祐実チーフの命令は絶対です」
「いい子ね。私に忠実なあなたは大好きよ、茶羅」


「・・・・うれしい」
 祐実の言葉に茶羅は酔ったような薄ら笑いを浮かべた。
 尋常な人間の表情ではなかった。

「汚れた膿を吐き出すのに少々の鮮血が混ざったってそれは仕方のないこと。ヤツの確保の際には手段を選ぶ必要はない。たとえそれが学校の中であったとしても多少の犠牲は構うことはないわいいわね。茶羅もそう思うでしょ?」
「祐実チーフのおっしゃるとおりです」
 祐実の言葉に茶羅は頷いた。

「そうよ。心に刻み込んで決して忘れてはダメよ。私の言葉は常に正しい」
 祐実はゆっくりと立ち上がると茶羅に近づいた。
「はい、信じます。あなたの言葉は常にただしい・・・」
 うつろな表情で茶羅は微笑んだ。

「スーツのポケットに入れて忘れたままになっていたLD(洗脳薬)があって助かったわ。まさかあなたにまで使うことになるなんて思わなかったけど」
 キズだらけでまだ血の滲んだ両腕を目の前にかざしながら祐実は言った。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
 茶羅は無表情のまま祐実を見ている。
「いいえ。いずれは使ったでしょうね、時期が早いか遅いかの違いだけ。今は私を慕い信じてついてきてくれるあなたさえ、いつ私に反抗して命令に背くとも限らない。あなたを私の下僕に貶めるのはただ時期が早くなっただけのことかもしれない」


 数時間前に陣内瑠璃子の手で絡めとられ刺客になり果てたこの深田茶羅に襲われた。
 乱闘の際の擦り傷やミミズ腫れがまだお互いに生々しい。
 暗示によって人間離れした力を持たされた茶羅の前に危機一髪の祐実を窮地から救ったのはポケットにたまたま1錠だけ残っていた禁断の洗脳薬LADY−DOLL。
 そして図らずもなくしたと思っていた残りのタブレットも乱闘で荒れ果てた室内から見つかっていた。

(これで全員を私の操り人形に変えてやる。駒になったチームなら私の意のままに動かせる。例え誰かを死なせたって私は事件を解決して見せるわ)


 腕を茶羅の背中に回して茶羅の首を掴むと祐実は力任せに茶羅の口を自分の口に近づけた。
 唇をねじ入れられたとき、茶羅は一瞬体を硬くしたが、すぐに力を抜くと祐実に抱きついてきた。

「はぁぁぁぁぁ、ほしい、ほしいいです、祐実ちぃふぅぅぅぅぅ」
 祐実は茶羅のウエストからパンティーに手を押し込むと濡れきって熱くなった茶羅の淫唇の奥に指を入れた。
「きゃっふん!いい、いいの、もっとぉ、もっと気もちよくしてぇぇ」

「茶羅。すっかりあなたは変わってしまったわ。前はそんなこと口に出すことさえなかったのに」
「あん。ちぃーふぅ〜、さわって、いじってぇ。茶羅のことかわいがってくださぃぃぃ〜」
 祐実に抱きついて濡れきったパンティーの上から祐実の腿にすり合わせる。
 茶羅の異常な濡れ方は腿から伝わる湿りから容易に判断できた。

「快感は・・・・快感は人のココロを凍らせて奪い取るのには欠かせない要素なのかもね。苦痛には耐えられても人は快感には欲望を抑えきれないんだわ」
 陣内瑠璃子がいかにして短時間で茶羅を自分の思うがままに動く人形に変えたのかを想像すると祐実は背筋に冷たいものが走った。
(一体、彼女はどんな方法で意図も簡単にあれだけの人間を操っているの)


 陣内瑠璃子にいじられた茶羅はまるで人が変わった様に淫乱化していた。
 昨日まで祐実に憧れ、祐実が妹のように可愛がっていた数ヶ月前まで高校生だったあのこどもっぽい少女のような新卒婦警はたった1日で驚くばかりの「牝」になっていた。

「もう我慢できないんですぅ。茶羅のオ○ンコ、熱くて熱くていくら自分でいじってもどうしようもないぐらい」
 チェック柄のスカートのホックを外してパンティーを下げた茶羅は両手で自分の濡れきった部分を愛撫して前かがみになって懇願した。

「チーフぅ、気持ちよくしてください。茶羅を鎮めてくださぁい。可愛がってください。中途半端はイヤぁ!」


「茶羅、飼い猫がご褒美を欲しいときはネズミを狩るのよ。あなたは何をしなければならないか、わかっているわね」
「・・・・はい」
「おゆきなさい、再び学生として学校に潜入しつつ、陣内瑠璃子の身柄、必ず確保しなさい。お楽しみはそれからよ。命令を遂行しなさい」
 懇願して泣きそうな表情の茶羅の額を突き放して祐実は『おあずけ』をすると茶羅の態度は一変した。
「はい。命令を遂行します」

 獲物を狙う鋭い目つきには以前の茶羅のおおらかさなど微塵もなかった。
 茶羅はきびすを返すと振り返りもせずに部屋を出て行った。






【LS統括部 局長室】



 チーフ室での茶羅の乱闘劇から一夜明けた。

「作戦中止を!危険すぎます。犠牲者が隊員からも出て、内情は筒抜けである可能性さえ拭いきれません」
 伊部奈津美は沈痛な面持ちで局長である伏見紀香に詰め寄った。
 早朝、紀香の出勤を待って奈津美はすぐさま局長室に飛び込んできた。


 立ち上げたパソコンのメールに目を配りながら、ため息混じりに紀香は首を横に振る。
「今回のオペレーションは統括参事官の承認を得たケースオペレーション。しかも最優先行動としてS採択に指定されてるの、中止は有り得ないのよ。今朝正面玄関の車寄せで出勤してきた補佐官からも釘を刺された、今夜の決行は動かないのよ」

 紀香は渋い顔で言った。
「危険です。加納美香につづき所轄署員1名と飛鳥井園美までが犠牲になっています。組織内にいるセルコンのスパイ『子猫』の存在もいまだ未解明なのに!」
「わかってる。報告は受けた。補佐官もそれを承知の上で、と言った。園美は昨夜のうちに赤坂中央署から4階留置室Cに搬送されている。メディカルサイエンスセンターの受け入れ準備が整い次第、治療のために移送する」

「受け入れ態勢って・・・・・チーム担当の筒見医師と連絡さえつけば受入は彼女が全部手配を・・・・・・・ま、まさか、まさか彼女まで!」

 奈津美は茶羅と園美の立て続けの騒動に半ば神経過敏になっていた。
「昨日、那智瞳の身内を送迎すると言い残し外出したまま戻らずじまい」
 紀香の表情も暗い。
「そんな・・・」
「でも、今日以降はすでに数日前から休暇願いが申請されて許可も取り付けている。医局は送迎後に直接帰宅する旨の報告を怠った単純なミスだと判断してる」

 説明する紀香の表情も冴えない。
 楽観的過ぎる医局の判断にやきもきしているのは自分だけではないのだと奈津美は感じ取った。
「心配です、念のため彼女と連絡を取らせてください」
 奈津美はためらわずにそう言った。
 京香は祐実の件でも重要な証拠を握っている。
『セルコン』に狙われるよりはむしろ、祐実の手にかかったのではと心配を拭いきれない。
 
「我々は向こうのセクトから見れば部外者よ」
 紀香の回答がすでに交渉済みであることを臭わせた。

「でも・・!」
「心配ないわ、セクトも事件や事故を心配して連絡を入れている。旅行中だそうよ。今朝、携帯電話で彼女の無事を確認できたと言ってきたわ。連絡の不備を誤っていたそうよ」

「そうですか」
 奈津美は胸をなでおろした。
「代任の担当が受け入れに慣れていないのでうちの留置室に午前中を目途に待機させているわ」
「局長。那智、沢村の両名も負傷しています。チーム6の戦力の低下は明らかです。お願いです、作戦中止ができないのなら、せめて動員を増やしていただけないでしょうか。テロ凶悪犯担当のチーム4との共同連携作戦に。彼女の・・・明智チーフの言うような安易な事件ではありません。『セルコン』は私達の想像を超えた力を・・・・・・・・」

 奈津美の言葉をさえぎるように、インターフォンのアラームが鳴った。
「チーム6、チーフの明智です。入室許可を」
 紀香は上目づかいにデスクの前に立つ奈津美の表情をうかがう。

「許可していただいて結構です。ちょうどいいじゃないですか。祐実に話す手間も省けます」
 あなたがそう言うのなら・・・・・・・と紀香は前置き気味に言った後で「入りなさい」と祐実に告げ、ドアロックを解除した。

「失礼します」
 入室した祐実の表情は奈津美を見つけるなり呆れ顔になった。
「ハッ!やっぱり・・・。だと思ったわ、小心者のあなただもの。臆病風に吹かれて園美の一件でオペレーションの中止を進言してたんでしょう?」

 嘲るようにオーバーなリアクションで「呆れた」といった仕草を祐実が見せる。
 侮蔑交じりの悪態をついて祐実は2人に近づいたかと思うと目の前のソファにどかっと腰を落してテーブルの上にブーツの足を投げ出した。

「祐実!何なの、その態度!仮にも上官室でなんて態度なのっ!」
 ふてぶてしい態度をあからさまに見せる祐実に奈津美は我慢ならなかった。

「言っておくけど、オペレーションの中止も変更もありえない。補佐官からも連絡が来てるでしょ、局長?」
 祐実は目を合わせることもなく壁の絵画を見ながら言った。
「・・・・来ているわ。あなたの甘ったれたネコをかぶった進言に踊らされてね」
 紀香が呆れ顔で吐き捨てた。

「それを今さらどうしようっていうの?報告監視官のあなたにも、伏見局長あなたにもこの作戦に関する権限は何もないはずでは?」

 祐実は皮肉交じりに奈津美に笑って見せた。
「祐実、聞いて!『セルコン』はあなたの思っている以上に危険な組織だわ。美香に茶羅、そして園美まで手にかけられたのよ。今いるチームメートがすでに『セルコン』の手に堕ちていないとも限らない。それでチーム6だけで行動するのは私には理解できない」

 奈津美は心底、祐実とチームが心配をしている。
「理解できないのは、あなたが低能だからでしょ?自分のスケールで物事考えて欲しくないわ。作戦はA採択より最優先のS採択が下された。作戦執行、中止いずれの権限も統括参事官がお決めになることよ、わかってる?」

 祐実は強気にまくし立てた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
 奈津美は何も言えない。
「えぇ、わかってるわ。でも部下の監督責任はチーフであるあなたでしか負えないのもわかってるわよね」

 紀香が祐実の言葉に釘を刺す。
「なにが言いたいの、局長?まわりくどい言い方はやめてくださいよ」
「部下の作戦行動に、もしものことがあれば責任を取るのはあなただってことよ。江梨子の殉職で奈津美が降格したように。それに『子猫』というスパイの存在が解明されていない以上、作戦は相当なリスクを負うわ」

 紀香の言葉が祐実の癇に障った。
「イヤな言い方・・・・、そこにいる誰かさんだってまだチーフだったら絶対今日の中止なんて考えないはずよ、江梨子先輩のためにも」

 祐実のあからさまな言葉に奈津美の表情が曇る。
「祐実!話をそらさない。部下に無謀な行動を取らせるようなことがあれば、局長として作戦終了後にチーフ明智祐実を査問会にかけることも辞さないということよ」

「好きにすれば。『子猫』の存在だってそうよ。作戦が成功しさえすれば、内部にスパイがいようが情報が漏れようが関係ないじゃない!私は『子猫』は美香だと思ってる。すでに彼女が失踪した今、作戦の情報が漏れる心配はない」

 祐実は言い切った。
「いいのかしら、そんな風に勝手に決めつけて」
「私の分析といって欲しいわ」
「それで隊員たちが危険な目にさらされたらたまらないわね」
 紀香の言葉は皮肉混じりに祐実に受け取られる。

「局長も私にポストを奪われそうなんで血迷っていらっしゃるのかしら?そこにいる低能なチーフ失格者とグルになって私を貶めようというのね」

 祐実の攻撃的な言葉は2人に敵意さえ抱いているようだった。
「祐実!言葉を慎みなさい!言いすぎだわ!」
 奈津美が怒りをあらわにした。

「部下は全て理解してくれて、私とともに今回のオペレーションに賛成してくれている」
 自信たっぷりに祐実が2人に吐き捨てるように言う。
「そ、そんな・・・・まさか」
 奈津美には到底信じられない言葉だ。
「疑うの?フフン。だったら聞いてみたら?みんな、部屋の外に待機しているのよ。私をかばうために」
「えっ?」
「入室許可を?」
 祐実は自信ありげに紀香に同意を求める。
 紀香は無言のまま、出入口のロックを外す、開いた自動ドアーの向こうからチーム6の面々が入ってきた。
「どう?これでも否定的・批判的な態度で作戦中止を口にする?ウチのチームは全員やる気なのよ」
「ひ、瞳!それに弘美まで!大丈夫なの?」
 包帯の残る痛々しい傷跡を残したまま制服姿の2人が入っているのに気づいて奈津美はうろたえた。
 力のない笑顔で二人はうなづいて見せた。
「私達はチーム一丸で今回のオペレーションを成功させて見せます、私達だけの力で!」
 奈那の言葉に全員がうなづく。

「どう?チームワークは完璧よ。欠員2名については手痛いが当初からいないものとして作戦形成を組みなおして承認された、ついさっきね」

「・・・・・・・・・・・・・・・けが人まで引きずり出して!」
 奈津美には療養必要とまで診断された2人が祐実の強引な命令でこの場にいるとしか思えなかった。
「副・・・いえ、監査官、私達2人は自分の意思でチーフにお願いして原隊復帰したんです」
「ど、どうして!運良くケガが軽かったとはいえ1週間は安静といわれたはずよ」

「オペレーションの方が大事です、『セルコン』の全貌を掴むのにこれが最初で最後のチャンスかもしれない。そう思ったらケガなんて・・・・」

 2人の言葉には力がない。
「無茶だわ!祐実、あなたが2人を無理矢理・・・・」
 奈津美は言葉を失った。
「やめてよ!言いがかりだわ」
「そうです、監査官。これはチームの総意です」
 奈那が一言叫ぶ。
 祐実の背後でチームの全員がうなづいた。
「な、奈那まで・・そんな」
 奈津美はもう言葉にならない。
「もういい、わかったわ。作戦自体をとやかく言う権限は私や奈津美にはない。あなた達の決意が固いこともわかった。私は局長として現場周囲の所轄配置を増員して取り逃がしのないようにサポートさせてもらう」

 苦虫をつぶしたような表情で紀香が言った。
「そうね、局長にお願いしたいのはせいぜいその程度かしら。よろしくお願いするわ、あぶりだした犯人や関係者を取り逃がすなんてヘマのないようにね」
 ふてぶてしい祐実の言葉が紀香に不快感を抱かせる。

「・・・・・・・・・・ただし、オペレーション完了まで奈津美をぴったりとあなたに張りつける」
「フン、どうぞご勝手に。せいぜい巻き込まれてケガでもすればいいんだわ。さて、私達はこれで失礼するわ、園美の様子も見てこなくちゃ」

 祐実を先頭にチーム6が退室していく。
「あぁ・・・・そうだ」
 去り際にドアの前で祐実が振り向いた。
「霧山補佐官から、あとで局長に正式な命令があると思いますけど・・・・・」
「なにか?」
 ふてぶてしいモノの言い方に紀香はいぶかしげに祐実を見る。
「今夜のオペレーション時、局長には現場、PD(署内)、現場指令部からはその身を外していただくことになります」
「な、なんですって!」
「ケースオペレーションS採択。これに部外者が干渉することのなきよう、私が補佐官にお願いしたの」
「部外者ですって!私がいつ干渉するっていうのっ!」
 紀香が怒りのあまり椅子から身を乗り出して叫んだ。

「やだなぁ、もう怒ってる。コレだから叩き上げは使えないって言うのよ」
「ど、どういう意味!」
「どういう意味もこういう意味も・・・・オペレーション進行中に今のあんたみたいに興奮しまくって無線であーだこーだとやかく指図されたくないのよ」

 祐実はゆっくりとソファから腰を浮かせた。
 その仕草に余裕すら感じさせる。
「あなた・・・何様のつもり!」
 今度は奈津美が叫んだ。
 すべて喋らせないうちに祐実が奈津美の言葉をさえぎる。
「とにかく!局長はそこにいるチーフ失格者の臨時雇いから事後の経過報告さえ聞けばいいのよ。そのためのスパイなんでしょ!伊部奈津美はっ!」
「祐実!あんたってコは!」
 紀香は落胆の色を隠さずに首を左右に振った。
「怒らない、怒らない。そうだ、いいコト教えてあげる。統括参事官がね、このケースオペレーションが成功裏に完了したら、局長、あなたが提唱するLSを全国規模に拡大する構想を正式にお考え下さるそうよ。まず犯罪発生率の多い横浜・福岡・大阪・沖縄がすでに対象として上げられているの」

「えっ・・・・・・」
「我々東京LS(レディースワット)はその中央統率機関として全国のLSの頂点に立つ上位組織に位置づけられる。どう?あなたにとっても私にとっても悪い話じゃないわよね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 レディースワットの全国組織化は紀香をはじめ、創設期からのメンバーには悲願とも言うべき夢の構想だった。

「私はその新生東京LSの全権局長としての任に就く」
 自身ありげに祐実が言う。
 すでに今回の作戦が成功すれば補佐官はしかるべきポストを与えたいと考えている統括参事官の言葉を紀香は思い出した。

「好きなだけ言ってなさい、あなたの絵空事には付き合えないわ」
「フフフ、本当の話よ。そしてあなたは西日本方面局長として左遷(とば)されるのよ。アハハハハハアハ、いい気味!自分が提唱して進言したんだもの、せいぜい地方都市の新チーム創設に汗をかくことね、ハハハハハ。今夜作戦実行時にあなたは参事官とどこか夜景のキレイなレストランで食事でもして話してるのかもよ」

「くっ・・・・・・・・・・・・・」
「くやしいのぉ?でもLS全国展開の夢はすべて今回の私の作戦成功にかかっているのよ。私の邪魔をしてあなたの夢をつぶすか、私に協力しないまでも口出しせずにLSの発展を望むか、いくら馬鹿な局長でもわかるんじゃないですか?フフフ、では明朝、いい返事をお持ちしますよ。フフフ今夜、参事官は美味しい食事をご馳走してくださるはずよ。私がお願いしておいたから、あなたの監視役としてね。アハハハハ」

 言うだけ言うと祐実は笑い声を廊下にさえ引きずりながら去っていった。
 祐実以外の全員が局長と奈津美に一礼して去っていく。
「くやしい・・・・・」
 奈津美が唇を噛んだ。
「KEEP COOL!冷静でいなさい奈津美。感情の波は判断を誤らせる原因になる」
 紀香は必死に冷静さを取り戻そうとしていた。
 インターフォンのアラームが鳴る。

「・・・・・・・・・・国井です。チーム6、国井涼子です」
 スピーカーからの涼子の声に紀香と奈津美は顔を見合わせる。
「入りなさい」
 紀香がドアロックを外すと国井涼子一人がドアの前に立っていた。
「あ、あの・・・・どうしてもお話しておきたいことが・・・・」
 思いつめた表情で涼子は2人を見つめていた。
「なに?涼子、何でもいい、話しておきたいことがあるのなら言いなさい」
 奈津美は優しく諭した。
「はい、ありがとうございます」
 そう言いながら涼子は口が重く、言葉が出せずにいた。
 紀香は涼子の意を解した。
「あなたが部屋に戻って来るにはとても勇気がいることだった・・・それは十分理解しているわ。悪いようにはしない、思い切って言って頂戴」
「はい・・・・チームの全員は仕方なくチーフに従っているに過ぎません」
「どういうこと?」
「チーフはこのオペレーション後、局長に昇格すると確信しています。そのためにもオペレーションを成功させなくてはならない。我々の協力が不可欠なんです。自分が私達から信任されていないことを知っているチーフは私達に交換条件を提示してきました」

「交換条件?」
 紀香と奈津美が声をそろえた。
「私達がチーフの指示通りにオペレーションを遂行し、成功のうちに成果をあげることができたら・・・・・・・」
 涼子はそこまで話して言いよどんだ。
「・・・・あげることができたら?」
 奈津美がその先の言葉を促す。
「自分の昇格後、チーム6の次期チーフに副長を・・・・いえ、伊部監査官を次期チーフに任命すると」
「なんですって!」
「『信頼のない私をチーフ6から追い出して、伊部チーフのもと昔のままのチーフ6を復活させることができる。どう?悪くない条件でしょ』それがチーフの言葉でした」
「なんてヤツなの・・・・!」
 奈津美は拳を握り締める。

「待って、国井。それだけであなた達が条件をのんで素直に従うとは思えないわ。しかも負傷して十分に動けない那智たち2人まで復帰して」

「えぇ・・・・・・」
 紀香の問いに涼子の表情が暗く沈んだ。
「言いなさい。オペレーションに成功した時に交換条件があるように、失敗した場合にも祐実は何かを科したのよね」

「・・・・・・・・・・・・・・そうです」
 涼子の表情が暗く沈んだ。
「涼子、何なの?言って、私と局長に・・・他言はしないわよ」

「それが・・・・・・・・・・・・・」
「想像はつくわ、奈津美のことね」
 紀香はすべてを察したように言った。
「わたしの・・・・・・・・・・・?」
「どうなの?涼子」

「・・・・そのとおりです、局長」
「言いなさい」
 涼子の気持ちを察しつつも、奈津美の前で紀香は涼子に話をさせる。
「チーフはこう言いました。オペレーションがもし失敗した場合は我々にも犠牲者がでるコトが予想される。あなた達の働き次第では、例えばオペレーションに随行しながら、ふざけた監視任務のためにオペレーションに加わらない伊部奈津美が巻き添えになる可能性は・・・非常に・・・高い。・・・・・と」

「脅したわけね、自分の部下達を。証拠記録は取れなかったの?」
「はい、私達は昨夜帰宅時に地下駐車場で呼びとめられて急に。那智さん達には見舞いの病室で・・・いきなりだったんで、誰も記録は・・・・・・・・」
「わかったわ。もういい、下がりなさい」
「はい・・・すいません。あと・・・・」
「なに?」
「私達全員がもう一度伊部チーフの下で仕事をしたい・・・・・これがチーム全員の希望なんです」
「・・・・・涼子」
 奈津美の目が潤む。
「いいわ、国井、下がりなさい。早く行かないと祐実に怪しまれるわよ」
「はい。失礼します」
 敬礼をした後、涼子は小走りに去っていった。

「祐実のヤツ・・・・・・・・」
「奈津美、ボイスレコーダを携行しなさい。彼女の言葉をすべて記録するの、わかった?勝手な行動は慎みなさい。私はチーム無線の記録を徹底させておくから」

「はい・・・・」
「キツイ言い方だけど、作戦は中止できない。彼女の思惑通りにコトが進むのは非常に面白くないことだけど、『セルコン』の尻尾を掴むのはそれにもまして我々LSの目的でもある。私情を捨てて作戦遂行を見守り、冷静に祐実の行動を監査しなさい。私情を捨てて・・・ね」

「・・・・・・・はい」
「私もLS用の携帯を携行するから、何かあれば連絡をいれなさい。場合によっては補佐官の命令を無視しても私は現場に急行するから」
「ありがとうございます」
「それと・・・」
 紀香がパソコンを見ながら去りかけた奈津美に声をかける。

「今、メールを見たら補佐官経由で緊急応援の指示書が来てる、あなたを指名して。石原さんからの要請のようね、本日11時から2時間限定の動員要請」

「石原さんですか、ご指名?私を?しかも2時間だけなんて聞いたこともない。しかも大事な作戦の当日にですかっ」
「昨日は祐実が丸一日彼の捜査に動員されている。そして今度はあなた、彼は一体何のつもりかしら?」

「石原さんには情報提供の借りがあります。承知しました。伊部奈津美、本日11:00(ヒトヒトマルマル)本庁特務局の動員要請に応じ本庁に合流します」

 奈津美は紀香に敬礼と復唱で答えた。
「あなたのパソコンにも指示書は届いているはず。見てびっくりしないでね」
「えっ、なんなんです。捜査の内容って」
「捜査内容の説明は現地。指示書ではあなたは『男装』して合流するように指示されている。『命令は絶対』の注意書きまでついてるわ」
 紀香の顔が複雑な苦笑交じりになる。
「だ、男装・・・ですか?」
 奈津美もたじろいだ。
「どう?ふざけてるでしょ。『命令は絶対』ではなくって『命令は接待』なのかもね、あっち系の・・・。用度・調達部での変装用の特殊メーキャップ予約まで取ってあるほどの周到さよ」
 紀香は苦笑した。
「ホストにでも化けさせる気?こんな昼間の時間に」




【4階留置室C】



「放せ!放せーっ!」
 鉄格子を前にして一塊になるチームの横顔はどれもみなひきつっていた。
「放しなさい!ここから出せーっ!」
「まるで別人ね」
 祐実が吐き捨てるように言った。

 涼子がチームに追いつき留置室の通路扉を開けた時、園美の声が響いていた。
 声の主のいる留置室前に涼子が小走りに近づく。
「遅いわ、どこへ行ってたの?」
 鉄格子の向こう側を睨みすえてたまま、祐実は身じろぎもしなかった。
「すみません・・・・・・」
「・・・・・・・トイレ?それとも馬鹿な2人に告げ口でもしてたのかしら?」
 祐実は顔で嘲笑った。
 涼子は顔をひきつらせながらも無表情を通した。

「なにジロジロこっち見てんだよ!放せーっ!ここから出せーっ!」
 涼子は鉄格子の向こう側に目を向けた。
 全身を繭のようにがんじがらめに拘束衣に縛りつけられ、椅子に縛りつけられている園美がこちらを睨みつけていた。
「この窮屈なのをなんとかしろぉーっ!」

 昨日まで一緒にいたあの理知的で冷静な園美とは別人の薬物中毒患者のようなオンナを目の前に涼子は我が目を疑った。
「園美さん、樹里よ!どうしたの?いったい何があったの?」
 我慢できずに樹里が話しかけた。
「関係ないだろ!見てるがいい、私は必ずここから出て必ずお前達を同じ目にあわせてやる!」
 園美の目には敵意がにじみ出ている。

「園美先輩!私たち仲間なんですよ!同じLSの一員なの忘れてしまったんですか?私たちがわからないんですか?」
 雪乃も声を絞り出した。
「雪乃、わかるよ。あなたは今年の新規配属、麻木雪乃よね」
 雪乃の声に今度は急に熱から覚めたような冷静な表情で園美が答えた、元の園美と思わせる口ぶりだった。
「園美・・・先輩・・・・」
「ねえ、そばにおいでよ。わたしとイイコトしよ。いっしょにお○んこ舐め合おうよ」
「えっ・・・・・・・・・」
「ねぇ〜、ねえったらぁ、こんな意地悪な拘束帯外してよぉ。Hしよ、2人でカンジよぉ〜」
「・・・・・・・・・・・」
「2人で互い違いにおま○こ舐めあうのっ!ふっふふふキモチいいよォ。雪乃のおま○こ、私がピクピク感じさせてアゲル」
「やめて!先輩・・先輩から・・・そんな言葉聞きたくありません!」
「あらぁ〜、どうしてぇ?雪乃だってカレシとセックスする時はこれくらいのコト、口にするでしょ」
「イヤ!」
「恥ずかしがらないの。私だって彼氏の智樹とセックスするときにはフェラしてあげる代わりにたっぷり舐めてもらってるんだよ。オマメの部分を舌で転がしてもらってお尻の穴の周りをくすぐったく感じるようにサワサワしてもらうもの」

 雪乃は耳を両手でふさいで顔を園美から背けた。
「雪乃、あなたが冷静さを失ってどうするの!」
 樹里が雪乃をたしなめた。
「・・・・・・・・すみません」

「くそぉー!なんでもいいから自由にしろーっ!オマエたちは敵だ、仲間でなんかあるもんか」
 園美はあっさりと言ってのけた。
「どうして・・・・なぜ敵なの?」
 樹里が冷静に問いただす。
「私の邪魔をするヤツはみんな排除する。私をこんな目にあわせておいて仲間だなんてよく言えるわね」
 敵意に満ち満ちた目で園美は樹里を睨みつけた。

「チ、チーフ。どうしてここまで園美さん拘束されてるんですか!きっと、きっと事件に巻き込まれて動転してるんです。せめてもう少し自由にしてあげられないんですか!」

「雪乃、感情に流されるんじゃないの!さっき話したように園美は赤坂中央署の捜査員3名に重軽傷を負わせているのよ。しかも1人は意識不明の重態、彼女の今の態度を見て判断するのは早計。解放すればまた暴れだし、拘束を緩めれば自慰に耽る。彼女は尋常じゃないのよ、新都心署の西野聡子と同様に『セルコン』の手に堕ちて狂ってる」

「信じられない・・・どうすれば人をここまで変えることができるんですか、薬物ですか」
「それをこれから調べるの。今回の事件で潜入捜査員たちも別人のように攻撃的になってしまっていたそうよ。記憶や知識も本人のまま、周囲すべてを敵視して拘束しないと手がつけられない状態で保護されている。でも、取り押さえた店のコンパニオンが大きな手がかりになりそう・・・」

「チーフ、なんなんですか?手がかりって?」
「そのコンパニオンね、あの歌舞伎町でグスタボを張り込んでいた時に保護した女子大生、大倉由貴子(1st−day登場)だったのよ」

「えっ・・・・・・・・・」
「大倉由貴子って・・・あの」
 全員が顔を見合わせる。
「結局は彼女も『セルコン』の手に堕ちていた。稲田佳美にも学校から所轄に身柄を確保するように手配した」
 祐実が全員に情報を共有するように話をする。

「寮では私も弘美も令状がない以上、手の打ちようがありませんでした。できるならあの寮母の宮城にも聴取をかけたほうがいいと思います」

 美穂が言った。
「勿論よ、今度は徹底的に調べ上げてもらうわ。勿論深層心理の奥の奥まで踏み込んでも手がかりを引き出させる」

「失礼します」
 留置室入り口の扉が開いて1人の男が留置監督主任と共にストレッチャーを引いた数人の男達と入ってきた。
「稲垣さん!(1st−day登場:メディカルサイエンスセンター職員 筒見京香の同僚)」
「やぁ、小雪ちゃん」
 稲垣は小雪に笑顔を向けた後、祐実の元に歩み寄った。
「メディカルサイエンスセンターの稲垣です。受入準備が整いましたので患者の搬送を行ないます」
「ご苦労さま」
 祐実は差し出された書類を一読して稲垣に返した。
「格子を開けてください」
 稲垣の言葉に監督主任が開錠する。
「稲垣さん、姉は・・・・お姉ちゃんは一緒じゃないんですか?」
「いや・・・それがサ、京香さん昨日の昼から会っていないんだ」
「えっ?シフトでですか」
「いや、今日からの3日間は数日前に休暇届が出されてるからいいんだけど、昨日、那智さんの妹さんを送ってから連絡もせずに帰宅しちゃったようなんだ」

「そうなんですか」


「心配はないと思うよ、今日からの旅行に浮かれて、昨日午後直接帰宅する連絡を忘れただけのことなんだろう。今日室長が連絡取れたって言ってたし」
「どこへいったんですか?」
「さあ?小雪ちゃん聞いてないの?つい先日話をしたときには旅行の話なんてしてなかったのになぁ」
「お姉ちゃんが・・・旅行・・・・?」
「あとで電話してみたら?海外だと無理かもしれないけれど。どっちにしても一番いて欲しかった昨夜に連絡つかないから結局はオレが動員だってよ、参ったね」
「すいません、稲垣さん」
「あっ・・・いや、言いすぎだ、ごめん、謝る。君のせいじゃない」
 小雪は曖昧にうなずいて不安げな表情で考え込んだ。

「いや、やめろ!放せっ!はなせーっ!」
 ストレッチャーに固定されてもがくにもがけないまま園美が搬送されていく。
 稲垣は祐実に軽く会釈をすると、小雪に目配せをして去っていった。


「さあ、戻るわよ。オペレーションの最終打ち合わせに入る。園美までこうなった以上、全員にクスリも飲んでもらう」
 祐実の言葉に全員がはっとなった。

「まさか、今さらイヤだなんて言わせないわ。もう誰がシロかクロか分かったモンじゃない今、全員に飲んでもらうわ。薬は昨日の騒ぎで見つかったから」
 そう言って有無を言わさず踵を返して祐実はスタッフルームに向かう。
 (作戦前に全員私の操り人形になってもらうわ。そうすれば『子猫』がいたって分かるはず。最悪、死者が出たってかまうもんか!)

 祐実の一言で全員が彼女につき従うように後から歩いていく。
 まるで大学病院の教授回診のような光景だった。

「陣内瑠璃子の名を騙ったあの女が・・・・・あの小生意気なガキがきっとキーを握っているはずなのに・・樹里!」
「は、はい」
 廊下を歩きながら祐実からの呼びかけに園美のことが頭から離れない樹里はたじろいだ。

「陣内瑠璃子のその後の動向は?」
「あ、あの・・・・・どちらの、・・・・です?本物の陣内ですか、それとも・・・・」
「どっちだっていいわよ!わかっていること、わかったこと、なんでもいいから報告なさい!いちいち言わせるな!役立たず」

「・・・・・・・・・・・」
 樹里の歩みが止まった。
 2〜3歩進んだ後で祐実は樹里に気づいて振り返った。

「なによ!なにか不満?役立たずどころか、美香の時も、園美の時も一緒にいながら何もできずにドジばかり踏んでるあなたを使ってやってるのよ。感謝して欲しいくらいだわ」

 樹里は唇を噛みしめて祐実を睨んだまま重い口を開いた。
「陣内瑠璃子の偽名を使った本件のキーマンと目される少女については、依然としてその消息を掴んでいません。昨日渋谷で保護された本物の陣内瑠璃子については昨日と今日の2日間、所轄の捜査員による事情聴取を継続中ですが、失踪から保護にいたるまでの記憶が欠落しており目ぼしい手がかりは何一つ掴めていない旨、道玄坂署の報告が入ってます」

「そう。あんたも御用聞き位ならできるのね、でも結果が伴わないじゃない。偽陣内瑠璃子を探すように所轄に手配くらいしたらどうなの?」
 言い終わらぬうちに樹里はものすごい勢いで祐実に掴みかかってきた。
 怒りに任せて掴み下げた祐実の襟首で右手がワナワナと震えている。

「フン、馬鹿」
 祐実はそれを見越していたかのようにさっと身をかわすと足払いであっという間に樹里を足元に倒してしまった。
 倒れこんだ樹里を蔑むように見下ろす。
「奈那」
「はい」
 祐実の呼びつけに奈那はすぐ反応して、樹里を羽交い絞めにし祐実の方へ向かせた。
 反抗的な眼差しで刺すように下から祐実を睨みつけていた樹里の右頬を祐実の左足が横殴りに容赦なく蹴り上げた。
「ぐっ・・・」
「あっ」
「ひ、ひどい!」
 誰となく周囲から思わず声が漏れる。
 周囲に彼女達しかいないとは言えPD(署内)の通路上である。

「大事な作戦前、馬鹿なヤツでも人手が惜しい。このくらいで許してあげるわ。お前達もそうよ、私に反抗的な態度は決して許さないからね。作戦の失敗は即ち私たちの失敗。誰かが命を落とすことにもなりかねない。心にしっかりと刻みつけておくことね、行くわよ。馬鹿は放っておくがいいわ」

 うずくまって口元からこぼれた血を拭う樹里に声をかけることすら祐実は許さなかった。
 皆、樹里の肩や頭を祐実に気づかれぬように優しく触れて彼女を残したままスタッフルームへ向かった。

「樹里、口元の血を拭ったらスタッフルームへ来るのよ。30分後、最終打ち合わせに入る」

 オペレーション開始まであと10時間






【PD(署内:通称パドック) 4F WC】


「ちくしょう!」
 手洗いで口元の血を拭いながら、樹里は鏡に映る腫れた右頬を見つめた。
 口内が切れ、しみる痛みは今日一日引きそうになかった。
「あんなヤツが上司だなんて・・・・・・・・」
 悔しさに目が潤んでくる。
 園美の豹変も樹里の心を暗くさせていた。

『美香の時も、園美の時も一緒にいながら何もできずにドジばかり踏んでる役立たず』
 祐実のキツイ言葉がまだ耳から離れない。
「ちがう・・・ちがう!わたしのせいじゃない」
 かぶりを振る樹里は鏡に映る自分の視線からも目を伏せた。

 はっと樹里は人の声に気づいて振り向いた。
 一番奥のブースから人の声がかすかに聞こえた。
(誰かいる・・・・・・聞かれたか)
 早く出よう、そう思って出口へ足を向けようとした時、同じブースからまた人の声が漏れた。
(ここは留置フロアで滅多なことでは利用されることのない使用頻度の低いトイレ・・・なのに)
 漏れ聞こえる声がトイレでは異様な響きに聞こえてくる。
(!!!!!!!!!!!ブース内に2人いる!おかしい)

 樹里の緊張感が高まる。
 コンバットグローブに指を通すと指の先までグローブの奥へと引っ張りながら手になじませる。
 生身の手の感触を奪わない薄い特殊素材合皮のグローブはそれでいて防刃効果は抜群だった。
 声の主は間違いなく2人、タイル貼りの床に音をたてないようにゆっくりと足を運び奥へと進む。
「あ・・・・ん・・・・・・・」
「はぅ・・・・ふ・・・・ふ〜ん・・・・・」
(な、なんで・・・喘ぎ声なんか)
 すでに目の前の扉を前に樹里は耳を疑った。
 扉に手をかけようと更に一歩踏み出した瞬間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 樹里が扉に手をかけようと更に一歩踏み出した瞬間、扉の裏から開錠する音とともに一気に開かれたドアから飛び出した2本の腕が樹里の両手を思い切り掴んだ。
「あっ・・・・・・・・・」
 声を出す間もなく樹里は待ち伏せをくらって捕獲された虫のように一気にトイレのブースの中に引き込まれてしまった。
 勢いよくブース内の壁に押しつけられるとまるで万力で締め付けられるような怪力で顎を握られる、苦しさのあまりあっさりと開いた口に丸めた布を突っ込まれた。
「あぅ・・・・」
 顎を締め付けた手が布を突っ込まれた口元を塞ぐように覆い、そのまま壁に押し付けられている。
 さっき祐実に蹴られて傷ついた口内からまた出血してる。
 当て身の拳が腹部に打ち込まれる。
 局所を外して痛みを残し、動きだけを封じる適切な痛打だった。
(クッ、体に思うように力が・・・。私を殺すつもりじゃない、拉致か?目的は・・)

 ほかに目を覆われ、そして両手をとられ、体すら相手の体を押しつけられて、蹴り返す抵抗すらできなくなっていた。
 頭を壁に打ち、視界が火花を散らしたように定まらない。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 もがいても声にならない。
 樹里の足は狭いブースの中を勢いよく蹴りこむが空を切り壁を叩く。
(ダメ!落ち着いて!落ち着け、わたし!相手はプロだ、素人の動きじゃない。しっかりと把握しなきゃ、敵は何人、凶器は!)
 ココロの中でしきりに自分を落ち着かせようと樹里は必死になった。

「フフフフフ」
「フフフフ・・・・・・・」
(オンナの笑い声・・・・それも2人)
「釣れたのは樹里ちゃんか。樹里ちゃん、まずは落ち着くことが大事よね」
「そう、そして冷静に自分の置かれた立場を把握して、視覚・聴覚・触覚の感覚を研ぎ澄ませて相手の全容を掴むことに努める」
 オンナ達の言葉は訓練の時幾度となく復唱したLSの教本の1文。
「狭いところでは敵はおろか自分までも封じこみかねないことを忘れないこと。でもまさかこんなトイレの中ほどの狭いところに押し込められてたら間合いさえ取れやしないわよね」

(えっ・・・・・・・・・・・・ま、まさか!)
 樹里は背中に汗が流れたのを感じた。
「さすが基本に忠実よね、樹里ちゃん。待ってたわ・・・・必ずココへ寄ると思った。精神的にブレた時、あなたはいつも自分ひとりになって落ち着こうとする癖、あるのよね。特にプレッシャーの大きい時は鏡や窓に映る自分を見て自分自身に諭す」

「人事ネットの個人ファイルは怖いわ。私達個々の癖や性向、ありとあらゆることが記されてる。あなたもびっくりしてるでしょ、あなたさえ気づかない自分のことが調べつくされて記されてるの」

 両目を覆っていた敵の手が外れる。

 しかしその手はすぐに喉を強く押さえて声が出せなくなっていた。

 樹里の視界に飛び込んできたのは、弘美と瞳の2人の顔だった。
 2人の制服はだらしなくはだけて、弘美ブラはフロントで外れてふくよかな胸があらわになっている。
 瞳は優しく微笑んでいても表情はどこか異様でしかも下半身半裸の恰好だった。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 異様さに気づいた樹里の呼吸は、口が塞がれたばかりに鼻から乱れ、鼻息が荒く漏れた。
「フフフ、すみませ〜ん樹里さん、息苦しくさせて。それ私のショーツなの、でも今日下ろしたおニューなんです、だから勘弁してくださいね、エヘへ」

「んー!!んー!!んんんんんんん!!!!」
 2人から逃れようと必死でもがく樹里だったが、異常ともいえる2人の力の前ではなすすべがなかった。
 声にならない声が響く。

「だ〜め、声を出しちゃダメよ。すぐに済むからおとなしくして」
(ひ、弘美、何言ってるの!どうしたって言うの!放して!放して!!)
「トイレのドアは下が数センチ開いてるんだから、中からは樹里ちゃんの位置も足の動きも影で丸見えなのに。詰めが甘いわね、樹里ちゃん」

(ちがう、弘美は『樹里ちゃん』なんて呼び方しない!)

「あ〜ん、沢村さん、わたし・・はやく樹里さんのアソコなめてあげたぃぃぃぃ!はやく仲間にいれてあげよぉ〜よぉ」
「瞳ちゃん、いやよ、沢村さんなんて言わないでって言ったでしょ。弘美って呼んでくれなきゃイヤよ」
「はーい、弘美お姉さまぁ。ちょっとつまみ食いしていい?」
 瞳が押しつけた体を上下にすり合わせて樹里の頬を舐めようとする。
「んー!!んー!!んんんんんんん!!んー!んー!」
 首を左右に激しく振って樹里は必死にそれを拒絶した。
 瞳のショーツが口を塞いでいくら叫ぼうにも声は言葉にならない。
「あん!樹里さんのイジワルぅ〜、いいでしょォ!少しくらい舐めさせてくれたって!」
 瞳は樹里に拒まれて、まるで子どものようにふくれて拗ねている。

 外見はケガの痕が痛々しいだけで普段と変わらない弘美と瞳なのに、その態度や思考は明らかに別人のようだった。
(ダ、ダメ!ここじゃ来る人に助けを求める可能性は低い、とにかく2人を払いのけて脱出しないと!)
 冷静になろうと思いながらも2人の豹変に恐怖すら感じていた。

「弘美お姉さまぁ、瞳、早く樹里さんと仲良くしたいです!早く瑠璃子お姉様の『いもうと』にしてあげてください」
「フフフ、わたしもよ!わたし、『お姉さま』の名前を聞くとHな気持ちになって自分でもどうしようもなくなっちゃうの」
「えへへへへ、『お姉さま』の魔法にかかったままなんですね。いいなぁ、羨ましいなぁ、弘美姉さまは『お姉さま』の名前を聞くだけでシアワセなキモチになれるなんて・・・瞳もそうなりたい」

「さっきチーフと樹里ちゃんが『お姉さま』のお名前を何度も言うものだから、私、それだけでもうヌレヌレなの、あなたのせいよぉ、樹里ちゃん」

 制服の上から妖しげな動きで樹里の股間を弘美が撫でる。

「フフフ、樹里さ〜ん。瞳といっぱい、いっぱい、イイコトしよ。瞳ね、樹里さんのオマ*コ、ココロをこめて舐めてあげる!カンジさせてあげるね!」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 瞳の言葉に触発されて樹里は思い切り抵抗を始めた。
「ホラホラぁ、樹里ちゃん、おとなしくしなきゃダメよ。ききわけのないコねぇ」
(ちがう、ちがう!いつもの弘美じゃない!普段の瞳じゃない!2人とも・・2人とも・・・『セルコン』の手に、陣内瑠璃子に!!!!!!!!)
 2人の怪力はブースの隅に押さえつけられて微動だにできない。
「すぐにそんな抵抗できなくなるよ、樹里さん!フフフ、樹里さんも私たちと同じ、お姉さまの『いもうと』の1人になるの」
 下半身半裸で無邪気な子どものように笑っている瞳は樹里の額に手を当てるようにして頭を押さえつけた。
 樹里は前を見たまま首すら動かすことができなくなった。
「ほらね、樹里さんももうすぐわかるよ。樹里さんもお姉さまのことがとても好きになる。お姉さまがココロの全てを支えてくれる。なにも考えなくていい、お姉さまのために存在するコトの幸せにカラダがヨロコビに満ち溢れてくる・・・フフフ幸せ」

「そうよ、お姉さまのことを考えるといてもたってもいられなくて・・・・・感じて感じて仕方なくなるわ」
「ウフフフ、お姉さまのため、瞳すべてを捧げてしまうの。この気持ちわかってくれるよ、もうちょっとでね」
「大丈夫、痛みもない。むしろ、生まれ変わったような新鮮な気分を味わえるわよ」
「気持ちいいよ、きっと。感じちゃうよ、いっちゃうかも・・・アハハ」
「怖がらないで、樹里ちゃん。あなたのためにお姉様から預かってきた量りきれないお姉様の『愛』をあなたにお渡しするわ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 2人の異様なまでの怪力は樹里をまったく身動きのできない状態にしている。
「樹里さん、私の・・・瞳の目を見て。フフフ、あなたにもア・ゲ・ル。瑠璃子お姉様から頂いたあなたへのプレゼント、きっと気に入るわ」

 まるでフラッシュバックのように頭の奥から閃光が弾ける。
 ありえないことだが樹里には考える余裕さえなかった。
 樹里はとっさに目を背けた。
(いけない!こ・れ・だ!・き・・・っ・・・と・・・園・・・・・・・・美・・・・も・・・・こ・・・れ・・・で・・・・・・・・)

 樹里が精一杯の力で抵抗する。
 四肢を力一杯ばたつかせて2人の拘束から逃れようとする。
 抵抗は少しずつ、だんだんと力が弱くなっていく。
 やがて樹里を押さえつけていた2人の腕が緩む。
 樹里は遠くを見つめたまま、そのまま壁越しに力なくへたり込んだ。
「フフフフフフ、生まれ変わるのよ樹里ちゃん。受け入れるのよ、お姉さまからの『愛』」
「樹里さんもお姉さまのモノ、フフフ。わたしや弘美姉さんと同じ『いもうと』になる」
 瞳はゆっくりと指を伸ばすと半開きになっている樹里の口からスルスルと黄色いショーツを引きぬいた。
 2人は妖しく微笑んで樹里を見下ろしてた。
 2人は見つめ合うとお互い引き寄せあう様に抱き合って唇を重ね合わせた。

「ハァ〜・・・・・・・・・・・」
 ショーツが取り除かれ楽になった樹里の口から吐息がもれた。
 樹里の瞳だけがキョロキョロと慌ただしく周囲を窺う。
 ピクっと電気に触れたようにまるで別の生物のように両腕がゆっくりと感覚を確かめるように樹里の体を這い始めた。
 這い出した指は樹里の胸元や腰に向かうと制服のホックやボタンを緩め始めた。

 開け放された制服から指は一気に胸を掴み、股間を愛撫していく。
「あ・・・・あん・・・・・・・あぅん・・・・・・ん・・・ふん・・・ふ〜ん」
 狭いトイレで足を不自由に広げて樹里は喘ぎ声を漏らし始めた。
 緩慢だった動きはどんどん激しくなっていく。

「フフフフ」
「フフフフフ」
 弘美と瞳はお互いに絡み合ったまま、悶え続ける樹里を妖しい含み笑いを浮べて見つめる。
「あ・・・・あん・・・・・・・あぅん・・・・・・ん・・・ふん・・・ふ〜ん」
 樹里の狂態は続いた。
 すでに樹里の思考は自分の快楽のことだけを考え始め、ほかのことなど全くどうでもいいと思うようになっていた。



【PD チーム6 チーフ室】



「中野・松永入ります」
 祐実に呼ばれて入って来たのは奈那と麻衣子だった。
 祐実はすでに制服から実戦用プロテクトスーツのインナーに袖を通しているところだった。
「最終打ち合わせに入る前に2人に聞いておいてもらいたい」
「はい」奈那と麻衣子は「気をつけ」の姿勢で表情を固くした。
 2人を前に立たせたまま、祐実は今日の作戦に備え身に着けるアイテムの一つ一つを点検しながら装着していく。


「伊部がチームを外れたために、今夜の作戦で私を補佐してもらう副長を新たに決めたい」
 2人は顔を見合わせた。
「松永奈那、あなたにチーム6の副長をやってもらう」
「はい」

「中野麻衣子」
「はい」
「あなたには奈那の変わりに副長補を」
「はい!中野麻衣子、ただ今より副長補を拝命します」
 麻衣子は姿勢を正して敬礼する。

「今回の作戦にミスは許されない。想定されるあらゆる問題を取り去って今日に至ったと思っている。あなた達の働きを期待するわ。打ち合わせ終了後は全員スタッフルーム内で行動開始まで禁足、情報漏えいはないと思うが念のため」
「はい」

「中野、あなたに副長補をやってもらう以上は私の命令に対して疑問やましてや反抗的な態度は許さない」
「・・・・・・・・はい」
 麻衣子の表情が固くなった。その裏には承服しかねる事態がないとも限らないことを顕わにしている。

「わかるわ。つい1年前まで後輩として教育していた私を上司と仰いで、あなたからすれば稚拙とも思える作戦指示に従うことが身を危険に晒すのではないかと危惧するわけよね」
「い、いえ、そ、そんな」
「どうかな。あなたの本音がききたいわ」
 そう言いながら祐実は不敵な笑みを浮かべる。
 麻衣子に気づかれぬよう目配せをした祐実の指示に奈那は無言のまま頷くと並んだ麻衣子からゆっくり一歩退いた。


 麻衣子の表情は祐実の言葉に曇っていた。
「大丈夫。いやでもすぐに本音は出てくる。でも許してあげるわよ、あなたは私の忠実な部下になってくれると信じてる」
「えっ?」
「1時間後には自分でもなぜ私に対して今まで不満や不信感をもっていたのか不思議に思うはずよ。そして全身全霊、全力で私の命令を遂行することだけに悦びを感じるようになってるわ」
「チーフ、一体なにを言って・・・・・えっ!?」

 背後から奈那に両腕と首をとられ羽交い絞めにされた麻衣子は、勢いよく伸びてきた祐実の左手に下あごを取られて思わず口を大きくあけた。
「あうっ」
 祐実の右手から禁断のクスリが麻衣子の口の奥深くに投げ込まれる。
 口と首を激しく揺すられて麻衣子はとうとうクスリを飲み下してしまった。

「すぐに効くわよ。一度に3錠ですもの。許容外だったらどうなるかしら?ウフフ」
「な、なにを!一体私になにを飲ませた!」
 麻衣子は声を荒げて叫んだ。
 祐実の合図で奈那が麻衣子を解放する。

「知らなくていいのよ、知る必要はない」
「あっ、ああっ、あ・・・・は・・・・・・」

 不快感と平衡感覚の欠如に襲われて麻衣子はその場に倒れこんだ。


「これで暗示を刷り込めば、美穂に続き麻衣子も私の人形になる。奈那、時間がないわ。片っ端から堕とすわよ」
「はい。承知しました祐実さまのおっっしゃるとおりに」

 奈那は軽く微笑んで祐実の言葉に目を閉じて軽く頭を下げて服従の仕草を見せる。


「クスリが手元に戻った以上、もう躊躇しない」


 その時、インターフォンが鳴った。
「どうしたの?」
「不破です。チーフ、みなとみらい署から連絡です。入院中の西野聡子が失踪しました」
「ふ、あそこの署も何をやってんだか・・・西野聡子の捜索は任せると伝えなさい。どうせ、今夜私たちの前に彼女もきっと現れるはずだわ」
「了解しました。それと、チーム6全員揃いました」
「わかったわ。麻衣子と奈那と3人で話をしているから終わり次第いくわ」

 インターフォンの通話ボタンを離すと祐実は奈那に向き直る。
「さあ、麻衣子にもあなたと同じように私に絶対服従の暗示を刷り込むわよ。急がなきゃね、まだ何人も残ってるもの。奈那手伝って」
「はい。祐実さまのご命令のままに従います」
 奈那は麻衣子をソファに運ぶ。

 
 


 

 

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