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**********4th−day Vol.8**********


【4th−day あらすじ】

 レディースワット・チーム6のチーフ明智祐実が学院に潜入捜査として遣わせた所轄新人署員・深田茶羅は、陣内瑠璃子の手中に落ちてしまう。一方、明智祐実は上官命令で本庁の捜査に協力することとなり、石原と同行した先で性奴として堕とされた女性達がその自覚もないまま日常生活を送っていることを知りショックを受ける。過去の自分の身にふりかかった忌まわしい封印された記憶に重ね、急な嘔吐に石原たちを心配させる。一方、飛鳥井園美は署をあとに帰宅するがその足取りがつかめなくなっているのを誰も知らなかった。



【 チーム6 チーフ室 】


「ふーっ」
 石原らに送られて戻った祐実はどっかりとソファに体を投げ出した。
 嘔吐後の不快感がまだ胸の中でもやもやしていた。
 刺激的な性的描写を目にするとやもたてもたまらず激しい不快感を伴う嘔吐にさいなまれる。
 
 すでに記憶にないほどの昔からそうだった。
 あるいは自分自身が受け止めきれずに欠落してしまった『封印された記憶』によるのかもしれない。
 自らが辱められた忌まわしい過去の・・・・。

「許さない、絶対許さない。女の敵よ、社会悪『セルコン』は私が潰す!」
 祐実は拳を握り締めた。

 そのとき、インターホンから涼子の声が響く。
「チーフ、茶羅が捜査から戻りました。直接チーフにご報告したいそうです」
 署に祐実が戻ったことを示す出退表示システムが「在室」に変わったのを待っていたようだ。

「・・・・・茶羅が。いいわ、入って」
 祐実がスタッフルームに続くドアを解錠した。
 開いた扉の先に制服姿で微笑む茶羅の姿があった。

「ゆーみさん!ただ今戻りましたぁ〜」
 まるで初対面の時のような女子校生のノリで陽気に茶羅が入室してきた。
 おそらくは、環境順応のため高校生気分が抜け切れていないのだと祐実は思った。

「早かったのね。ならば、陣内瑠璃子の件は承知しているわね」
 祐実は深々とソファに腰掛けたまま茶羅と目も合わさずに疲れた様子で目をつむり天井を仰いでいた。

 すでに陣内瑠璃子の本物が発見され、事件に関わった少女が陣内瑠璃子を騙っていたことが判明した。

 茶羅に学院に潜入してことの真偽を確認させようとした祐実の命令は水泡に帰した。
 これからはあのニセ陣内瑠璃子の行方を捜すことになるだろう、なんの手がかりもないまま。

 ゆっくりとスタッフルームとをつなぐ扉がしまり、再び自動的にロックがかかった。

「は〜い承知していますよ。フフフ」
 茶羅はゆっくりと祐実に歩み寄りながら、短く返事をした。
「あなたには無駄に骨を折らせた。すまないと思う。」
「そんな〜。いいんです、わたし、祐実さんの命令だったら喜んで聞きますよ」
「ありがとう。チームの皆が全員そうだったら、私もどんなにやりやすいか・・・」
「苦労なさってるんですね、祐実さん」
 茶羅はソファにもたれる祐実のすぐ脇まで近づいてきた。

「茶羅、『祐実さん』はないでしょ!職務である以上、正しく役職名で敬称しなさい」
「ウフフフ、わかりましたぁ〜。祐実ちぃーふぅっ。フフ、でもとっておきの情報を入手できましたぁ〜」
 茶羅の答えた言葉に初めて茶羅の違和感を感じ取って祐実は目をあけた。

「えっ・・・・・」
 祐実の視界に真っ先に飛び込んできたのは視界に入りきらないほどに迫った茶羅の顔。
 一気に塞がれた自分の唇と押し込まれてきた茶羅の柔らかな舌の感触。
 そして茶羅の両手で身じろぎも出来ないほど頬を押さえつけられていた。
「ムグ・・・ン・・・ンン・・・ン・・」
 予想だにしない茶羅の行動に祐実は両手両足をばたつかせた。
 それにも増して驚いたのは到底常人では出し切れないような力が茶羅の両手から伝わっていくる異様さだった。


 自由にならない体を小さく丸めるようにして両足を抱え込むと、祐実はありったけの力を込めて茶羅の腹部に両足を押し出した。
 
 鍛え上げた両足から本気で繰り出されたキックは茶羅の腹部を痛打して、祐実から茶羅を引き剥がした。
 強引に引き剥がされた茶羅の両手はもがくように祐実のシャツを掴み、蹴り倒された勢いで一瞬にしてそれを引き裂いた。

「何のつもり!茶羅ーっ!」

 すでに布キレのように垂れ下がったシャツからブラがあらわになった祐実はじゅうたんに倒れた茶羅を睨みつけた。

 右肩にかかっていたブラの肩紐のワイヤーが無残に引きちぎれて垂れ下がっている。
 記者に扮しての潜入捜査から戻ったばかりの祐実はプロテクターはおろか制服すら何も着けない常人のままのスーツ姿だった。
 
 そのとき、一瞬脳裏をよぎった閃光のようなショックが再び祐実に激しい嘔吐を促した。
 近くにあったダストボックスに口を向けるがすでに先ほどの公園での出尽くした胃には嘔吐で戻せるものなど何も残っていなかった。
(いけない・・・いつもの発作・・・)
 口に手をあてて体を起こす。
 茶羅へと向き直る表情に焦りの色が浮かぶ。

「ウフフフ、痛いじゃないですか〜っ。祐美ちぃ〜ふぅ〜、肋骨折れちゃったかもしれないですよぉ」
 そう言って茶羅は微笑を絶やさぬまま、すぐに立ち上がる。
 強烈なキックだったのに茶羅にはまったく堪えた様子は見えなかった。
 転倒の時に唇を切っているのにも全く気がついていない様子で祐実に近づこうとしている。

「うっ、うぇっ・・・ぐぇ・・・」
 すでに胃液に喉奥まで荒れ、吐くものさえない苦痛の祐実が顔をしかめる。
「フラッシュバックですか。チーフも過去にひどい経験をされたって噂、本当なんですね・・・・。いやだなぁ、そんな過去の忌まわしい記憶とこれからの私たちのひとときを一緒にしないで下さい。私がお相手するんですよぉ〜っ」


「ぐぅっ、近づかないで!あなた一体どうしたっていうの?」
「私はチーフに陣内瑠璃子の件で受けた命令の報告に来たんですよぉ」
 茶羅はゆっくりと間合いを詰めてくる。
「一体、学院で何があった。あなたは誰にあったの。何をされたの!」
「ウフフフフ、知ってるくせに」
「なんですって!」

 茶羅は祐実のデスク脇に立つとインターフォン兼用の電話に手をかけた。
「どかしますね。2人っきりになりたいから。これも邪魔!」
 茶羅は微笑んで受話器をとると思い切り電話本体に叩きつける。
 鈍い破壊音と共に受話器が電話機本体に突き刺さった。
 大型の祐実のデスクの縁を片手で掴むと救い上げるように持ち上げると、デスクはいとも簡単にひっくり返った。

「そ、そんな・・・あなた、一体どうしたっていうの、その力・・・・」
「瑠璃子さまが下さったんですよ。わたしがテストにパスできるようにって」
「あ、あなた、あの少女と学院で接触したのね!そうなのね!きっと、そうなのね」

「ウフフ、学院で接触したのは・・・チーフ。チーフとじゃないですか」
「何を言ってるの。あなたと会うのは昨日ここで命令を下したときよ」
「ウソです。チーフの絹のような肌のぬくもり、優しい指使い、とろけちゃうようなキス、私全部覚えてます。最高の経験でしたぁ」
 祐実の表情が険しくなった。
「あなた、まさか・・・・」
「ウフっ、ステキ。とってもステキなひとときでしたね、思い出しただけで私、おま○こジンジンきちゃうっ!」
 そう言うと茶羅は身もだえして自分の乳房を制服の上から愛撫した。



「気をしっかり持ちなさい!茶羅!あなたはあのオンナに操られてるのよ!」
 祐実は間合いを詰めてくる茶羅との間を取るために後ずさりしながら弧を描くように足を運ぶ。
「さっきの私のキス、どうでしたぁ?教わったとおりの舌使いだったでしょ〜ぉ」

 部屋の中で2人は間合いをとりながらゆっくりとソファを間に移動している。
「唇の縁を優しく這って唇を割って、ゆっくりと舌を挿入して舌と舌とを絡めて愛し合う。ゾクゾクしてもう私濡れっぱなしでした」

「茶羅・・・」
 茶羅の両足の内側は筋のように垂れて湿り光っていた。

「ち〜ふぅ、祐実チーフぅ〜。わたし、一緒に仕事したいんです。チーフは私の憧れの人なんです」
「落ち着きなさい、茶羅!思い出すのよ!あなたは警察官なのよ、自分が誰なのか、何に信念を抱いてこの道にすすんだのか」

 霞がかって自我を失った表情の茶羅に諭すように祐実は言葉をかける。


「だいじょぉ〜ぶです。チーフぅ、わたし、課題にパスして見せます」
「課題?」
「わたし、とても感謝してるんです。今まで興味や好奇心があってもどうしても踏み込めないでいたコト、チーフが優しく教えてくださるなんて夢のようでした」

 茶羅は邪魔なソファを1個、また1個とどけていく。
 茶羅の力は常人の域を超え、ソファは片っ端から部屋の隅へ投げ出されていった。

「オトナのオンナってこんな気持ちのイイコトを体験出来るんですね。わたし、いままで損してました。祐実さんに感じさせてもらって私まるで空を飛んでいるような気持ちになれたんです」

「違うわ!私はあなたにそんなこと教えてない!目を覚まして!茶羅!」
「ウソ!祐実さんが教えてくれたんですよ、「恍惚」って体験も、「イクーっ」って言葉も、快感ってことも。ウフフフ、オトナの世界って甘くてとろけちゃうほど気持ちいいんですね」

「かわいそうに・・・・あなた、犯されたのね」

「え〜っ、やめて下さい、そんな言い方。茶羅の、私の『初めて』を祐実さんがもらってくれたんじゃないですか」
「茶羅・・・あなた」
「祐実さん、わたしの祐実さん。愛してます、心から。だから私、祐実さんから頂いたいっぱい、いっぱいの愛を、教えてもらった快感を祐実さんにお返しに来たんです」

「なんですって」
「これが出来れば、わたしもスワット資格があると認めてくれるんですよね。もう私、祐実さんのおかげでバージンじゃありません」

「茶羅・・・・あなた・・・」
「バージンであることはスワット資格なし。私、もう祐実さんのおかげでオンナになったんです。どうすれば悦んでもらえるか、祐実さんは私の体を使って教えてくれました」

「ちがう!それは私じゃないわ」
「ウフフフ、ウソばっかり。そこまで真に迫った演技をしてしらばっくれる意味があるんですか?ここはもう2人きりなんですから、さっきのように飾らない祐実さんでもいいのに。感じてください、祐実さん。祐実さんから頂いたこれで、今度は私の気持ちを祐実さんに受けとめてもらう番です」

 そう言って茶羅は制服をゆっくりと脱いでいく。
 チェック柄のスカートがポトリと落ちたとき、祐実の視界に飛び込んだのはあの黒光りしたペニスバンドだった。

「逃がしませんよ。私を受け入れてもらえるまで・・スワット資格の課題をできるまで・・・ウフフ」
 引き下がる祐実の左手を一瞬はやく茶羅が掴んだ。
「痛っ!」
 その力は訓練で鍛え上げている祐実の力をもってしても引き剥がせなかった。
「ウフフ、つーかまえたっ。もう放しませんよ。祐実さんのマ○コにぶち込むのは私の使命なんですから」

 
 身の毛もよだつセリフが茶羅の口からためらいもなく発せられる。
 祐実は追い詰められる自分を奮い立たせ、思い切り右手手刀を茶羅の腕に打ち込んで自分の左手を引き剥がした。


「祐実さん、これから茶羅が祐実さんをヨガリ狂わせてア・ゲ・ル」
 襲いかかる茶羅に祐実は全力を出して抵抗せざるを得なかった。
「来ないで!」
「大丈夫です。愛し方、覚えてますよ、今度は私が祐実さんを『淫乱なオンナ』にする番です。ウフフ、「淫乱」素晴らしい言葉ですね。濡れてきちゃう、キャっ、フフフ」
 まるでこれからの楽しい遊びに期待に胸膨らませる高校生のように茶羅は頬をほころばせた。



「淫乱・・・・ウフフフ、淫乱。素晴らしい、素晴らしい言葉だわ。その言葉だけで私のこのち○ぽ、堅く尖ってくるんですよ」

「茶羅!その卑猥なそれを脱ぎなさい!汚らわしい、そんなもので私を襲おうっていうの!」

「やめて下さい。そんな言い方。これは私自身のものですよぉ。ほら、大きくて、太くて、温かくて。祐実さんの中に入りたいって言ってますよ。今も痛いくらいに脈打ってるんです。これがまがい物であるはずがないじゃないですか」

「えっ」
 茶羅はゆっくりと自分の着けたペニスをしごく仕草をする。
「ああああんんんんん、き、気もちぃぃぃぃぃ、感じちゃーぅ。いい。すごく敏感、わたしの、わたしのオチ○ぽぉーっ!」
 しごきながら茶羅は全身を快感に震わせている。
 まるで自分の性器であるがごとく刺激に悦んでいる様はすでに以前の茶羅ではなかった。

「茶羅、あ、あなた・・・・」
「フフフフフ、この私のオチ○ポ。瑠璃子様が祐美チーフを犯すためにわざわざ私に生やしていただいたんですよぉ。敏感で触るだけでビクビク感じちゃうぅ」

「しっかりなさい!茶羅、それは作り物よ!あなたの肉体の一部なんかじゃない」
「心外です。この茶羅の股間に生えた立派なオチ○ポを見て作り物だなんて。ウフフフ、そんなこと言ってたって、もう少し経てば祐実さんもこれナシではいられなくなりますよぉ〜」
「来たら容赦しないわよ!命を落としてもいいって言うのっ!」


 茶羅は淫靡な暗い笑いを浮かべた。
「クスっ、ウソばっかり。本当は私のこれを自分のお○んこに咥え込んで激しく愛して欲しいくせにっ!」




「あの・・・なんかチーフ室騒がしくないですか?」
 スタッフルームで物音に気づいて涼子は捜査日誌を打つ指を止めた。
 個々の部屋は防音壁で仕切られてはいるがかすかに音が涼子の耳をついた。

「そう?気のせいじゃない」
 麻衣子が涼子の疑問を一笑に付す。
 含みのある意味深な笑みは涼子には分からない。
「いえ、なんかバタついているような・・・・」

「だったら茶羅に対してPE(緊急実践と呼ばれる訓練:plactice emergency《造語:2nd−day参照》)でもしているんでしょう」

 麻衣子は取り合わない。
「PE・・・・私もいきなりやられました」
 涼子は先日のことを思い出して暗い気持ちになる。
「茶羅はチーフのお気に入りよ。いずれチームにも引き抜かれる。試してるんじゃないの?」

「そうでしょうか。それならいいんですが・・・」
 涼子の気持ちは晴れない。
(涼子、よく聞いて。祐実には十分注意して。うまく言えないけど彼女と二人きりになってはダメよ)
 涼子の脳裏に先日の奈津美の言葉が浮かぶ。

「わたし、ちょっと様子を見て・・・・」
 立ち上がり、言葉を言いかけた涼子の肩に奈那が手をかける。
「あなたが心配する必要はないのよ」
 優しく微笑んでいう奈那の表情の奥に涼子は嫌な胸騒ぎを覚える。
「でも・・・・」
「大丈夫。何かあればチーフから私たちに何か言うはずでしょ」
「麻衣子さん・・・・・」
 2人の先輩に言われては涼子もそれ以上言い返すことが出来ずにいた。
 他のスタッフたちも3人のやり取りにまるで関心を払っていないかのように仕事をこなしている。

「・・・・わかりました」
 涼子がそう言って座りかけたとき、チーフ室につながるドアの向こうから鈍い衝撃音がした。
「麻衣子さん!」

 涼子の声に麻衣子と奈那もドアに駆け寄る。
 涼子もその後に続く。
 全員が慌しく動き出した。

「チッ」
 ドアに駆け寄る麻衣子の舌を鳴らす音を涼子は聞き逃さなかった。

「インターフォン応答ありません。ドアも非常時モードすら開きません」
 雪乃が施設のコントロールパネルを操作しながら大声で叫ぶ。

「メーターボックスを解錠、回線を切って手動でドアをあけるのよ!」
 麻衣子がドアの前に立って言った。
「はい!」
 雪乃がすぐに動く。
「チーフ!チーフ!何かあったんですかっ!」
 ドアを叩いて奈那が大声を張り上げる。

「どうしたの?一体何の騒ぎ」
 たまたま入室してきた奈津美は異常な雰囲気に息を呑んだ。






【 園美の部屋 】



 園美は玄関ドアから続くフローリングの廊下を歩くと一番奥の広いリビングルームの扉を開いた。


「ふぅ〜、くったびれたぁ!」

 目の前のミラーカーテン越しに東京湾へ流れ込む隅田川の夜景が広がる。
 日頃の疲れを払拭してくれる園美の好きな風景だった。
 高層階のマンション、エレベータに乗るわずかではあるが長い時間を園美は好まなかった。
 以前にあてがわれた広尾のマンションは最後まで好きになれなかったのもそのせいだった。
 だが、今のところは転居以来すこぶる気に入っていた。


「少しぐらい、自分の自由になる時間が欲しいな・・・・・」
 勝手に口を突いて出た言葉は園美の正直な気持ちだった。


 レディースワットの日々の仕事から解放されて自宅に戻った安堵感は何ものにも変え難い。
 ようやく一日の張り詰めた緊張の糸を緩めて園美は大きくため息をついた。
 今日の陣内瑠璃子の発見は今後事件の展開を大きく変えていくに違いないと園美は思った。
 園美が気を失っている間にも奈津美は本物の瑠璃子から出来うる限りの情報を引き出してくれた。


 
 渋谷の109の近くで援助交際の電話を友人の美佐子と待っていたこと。
 近くで活動していたレディースワットを見て、その話題がでたこと。
 美佐子に携帯が入り、先に客がついて自分だけ残ったこと。
 そのときに背後から見知らぬ少女に呼び止められた。

 自分と同い年くらいのその少女はポケットから新札の一万円の札束を出してみせた。
 瑠璃子に向かって少女はお金を稼がせる代わりに『あなたを貸せ』と意味のわからぬことを言った。
 
 危険なことはしたくいないと拒絶した瑠璃子に少女はなおもつきまとった。
 少女は何かをポケットから出して瑠璃子に見せた。
 瑠璃子は札束の次に何が出てくるのか怖い反面、ワクワクしたと言った。

 そして、次の瞬間には意識が遠のき、道玄坂署の中で我に返るまでのあいだの数日間何も覚えていないこと・・・・・。




 バックをテーブルに放り投げて、園美は携帯電話をかねたレディースワット用の特殊携帯と時計をテーブルに置く。

 部屋はすでに携帯電話からのプログラムスイッチで入った暖房で暑いくらいに暖められている。
 ダウンライトの薄明るい明かりが今は蛍光灯の煌々とした明かりより癒されるようだ。




《スーツなんて窮屈、早く脱いでしまいたい!》

「あん!もう、なんか窮屈!」
 帰宅してホッとしたのか、スーツを着ていることに急に園美は苛立ちを覚えて脱ぎ捨てる。

 シャツの裾をスカートから引き出して開放感にひたる。

《もう1秒でも早くリラックスしたい!ブラウスを思いっきり胸元から引き裂いちゃえー!》

「えいっ!もうボタンなんかとってらんない!一気にいっちゃえ!あーっ!爽快!きっもちいーっ!!!!!!!!!」
 両手で思い切りシャツを胸元から引き裂く。
 ボタンがプチっプチっっと小さな音を立てて4つも5つもどこかへ飛んで床に転がっていく。
 まるで窮屈な部屋から飛び出したような2つの胸がブラジャーからも弾けんばかりにプルルンと揺れた。

「ちょっと無謀・・・・もったいなかったかな、シャツ」
 今さらながら、自分のやったことに多少後悔している。

 そのとき、テーブルに置かれた電話が鳴った。
「あっ、電話だ」
 園美はすばやくコードレスホンをとると応対をした。

「はい。園美です」
(あれっ?わたし、どうして苗字でなく名前でなんかで言ってるんだろう)

『園美さんのことが知りたいなぁ。簡単なプロフィールやスリーサイズ教えてよ』
 受話器の向こうで声がそう言った。

「いいですよ。名前は飛鳥井園美。ワシントン州立大の心理学部卒です。帰国後、科捜研医科学チームの犯罪心理学プロファイリングセクトからチームに異動しました。スリーサイズは・・・」

(えっ?な、なぜ?わたし、なんでスリーサイズなんて言ってるの!電話の相手が誰なのかもわからないのに!)

『仕事ずくめの生活じゃ、欲求不満もいいトコだ。ムラムラきたりするんだろ?』
 受話器の向こうから男の舌なめずりでも聞こえてきそうな下卑た質問に園美は内心不快感を覚えながらも、口は饒舌に質問に答えていく。

「ありますよ。やっぱり人間ですもの。そういう時は・・・・」
 園美は一瞬口ごもった。
(そうよ、そうなの。こんなのおかしい!誰とも分からない相手に電話で話なんて・・・・しかもHな話になって)

「あ、あの、失礼ですけど、どちら様ですか?」
 園実はやっと心に湧き上がった言葉を出せたような気がした。
 自分の思ったことを口にするのになぜかとても抵抗を感じた。
 なにか自分がいけないことをしている、そんな罪悪感のようなものを感じてしまう。
 自分自身のことを聞かれて堪えることには抵抗どころか爽快感すら伴っているのに、自分から相手に疑問をぶつけようとすると一瞬のうちに嫌悪感が増幅された。

『いいんだよ。気にしないだろ。気にすんな、気にしない、気にしない』
「・・・はい。そうですね、気にしません」
 相手の言葉には妙な説得力があり、それ以上質問を重ねることがまるで悪いことのように思え、相手の言葉を信じて復唱するだけで、なぜか心の中にさわやかな風が通るような爽快感が走る。

『だったら質問に答えてよ。ムラムラ来た時どうしてる?園美ちゃんでもオナニーとかするのかな、何処でするんだろ』

「してますよ、自慰行為。恥ずかしいけど、自分ひとりでやることだし、誰が見てるわけでもなし。ソファやベット、お風呂でだって、します」

 園美が受話器越しに言うと、自分ひとりしかいないはずの部屋の中で「おおぉー」と驚嘆の声のようなものが聞こえた気がした。

「あれ?いま、なにか部屋で物音が・・・・」
 園美は周囲を見回すが、部屋には自分ひとりしか見当たらない。
『自慰行為なんて色っぽくねぇなぁ』
「そうですか?」
(何言ってんのよ!自分からそんなこということ自体、恥ずかしいコトなのにっ!)
 園美の心の叫びと焦りは外面的な表情や仕草にまで浮き上がらずに沈殿していく。

『これからは『オナニー』って言えよ』
「はい、これから私は自慰行為のことをオナニーといいます」
(えっ、わたし、わたし、一体なんてこと言ってるのよ!)
『いや、もとい。あんたはあまりにも理知的でキレるやり手の女に見えるから、家に帰ったときぐらい幼児語の方が可愛いかもな。『オニャニー』にしよう。しゅるんだよね、オニャニー」
「は、はい。園美はオニャニーしましゅぅ」


『フフフ、かわいいぞ、園美ちゃん。園美ちゃんはオニャニー好きだよね。好きだと言って』
「はい、私はオニャニーが好き(しゅき)です」
『そう。『園美はオニャニーが大好きなイヤらしい女の子です』って言って!』
(いやっ!やめてっ!言いたくない!言いたくなんかないーっ!)

「園美はオニャニーが大好き(だいしゅき)なイヤらしい女の子でしゅ」
 園美の心の感情とは裏腹に、今の園美は微笑みながら照れた表情でオナニーを好きだと言い切った。

『ククク、心に思ったことを素直に言葉にすることはとても気持ちいいことだ、そうだろ?そう言え』

「・・はい。心に思ったことを素直に言葉にすることはとても気持ちいいことでしゅ」
 そういった瞬間、園美はえもいわれぬ充足感に全身を包み込まれ、満ち足りた幸福感を味わった。
(な、なんなんだろう。この包み込まれるような満足感・・・)

『さて、園美ちゃんはどうやって始めるのかな?正直に言ってみ』
「最初は指で・・・指でゆっくりと溝に沿って優しく這わせるにょ」
『ククク、どこの溝にぃ〜?』
「どこって、私の性器にでしゅ」
『色気ないなぁ。性器はやめようよ、お○んぴょって言おうよ。決まりね」
「はい。言い直しましゅぅ。私がオニャニーしゅるときは、ゆっくりと優しくお○んぴょに指を這わしぇて、お口をゆっくりと割りましゅ」

「おおーっ」というどよめきが園美の耳に届く。幻聴とは思えない拍手さえ耳に周囲を見渡す。
 気になった園美は窓の外を注意深く覗いた。
 バルコニーには誰もいない。
 いくら周囲を見回しても使い慣れた自分のマンションのリビングで電話をしているだけだった。
 テレビもオーディオもついていないのを園美は確認した。
 何かがおかしい・・・・・、園美は胸の底からこみ上げてくる澱むような不安感に襲われていた。



『園美ちゃんのお○んぴょは、悦ぶんだろうなぁ』
「はい。お○んぴょが感じてくりゅと指への湿りが伝わってくりゅんで、唇は大きく開いて溢れてきましゅ」
『そういう時は嬉しいかい?ククク』
「はい。仕事のことも何もかも忘れてすっきりとした気持ちになることもありましゅ」
 園美は正直に話すことを快く思いながらも、それが自分のあるべき姿ではないことにも、とうに気づいていた。


『もう一度言って。園美ちゃんの感じてくるところは、ド・コかなぁ〜?』
「・・・・・・・・・・・・・・」
 園美は口を真一文字にキュッと結んで、苦しげな表情を見せ始めていた。
『あ、あれ?どうしたの、早く答えてよ、園美ちゃん』

「・・・・・・・・・ち、ちがう・・・・」
『あん?』
「ちがう、ちがうわ。こんなの私じゃない!」
 押しつぶされそうな恐怖心が全身を襲う。
 今まで素直に会話に答えているときの高揚感は一瞬にして去り、寒い暗闇の中に1人取り残されているような閉塞感が園美を恐怖へと駆り立てていた。
 
 でもそれに抗ってまで言わなければ、本当の自分を見失ってしまいそうな気持ちを抑えきれずにさらに声高にして叫んだ。
 
 一瞬にして緊張感が高まり、目の前から霞が晴れるように目つきが厳しくなり、表情がシャープに変化した。

「違うわ!絶対違う!こんなの、こんなの私じゃない!私は、私は、警察官なの!選ばれたレディースワットの一員なの!そんな私が、こんなこと言うはずが・・・」

 そこまで言いかけたとき、心の奥底から湧き上がるような自分の声が聞こえた。

《落ち着いて。ここは園美の、わたしの部屋よ。ここでは警官である必要も、ましてやスワットの一員であることも忘れていい。私が唯一、私自身でいられる空間よ》

 その天からの啓示のように響く声には今までの不安や恐れを消し去ってしまうような幸福感を覚えた。
 園美の気持ちは一瞬にして暗から明にリセットされた。

「あ、れ、わたし・・・・・・・」
 自分の思考に諭されるように園美は落ち着きを取り戻す。
 それと同時に再び園美の目に酔ったような霞がかかり、表情が和らいだ。

《緊張しなくていいの。もう仕事は終わったのよ。自分の部屋でくつろがないでどうするの。友達との会話も、独り言も、秘め事も、園美の部屋なら園美だけしか知らないことよ。隠す必要は何もないわ。今はただの女の子、飛鳥井園美よ》
 自分の心の声を聞いている間じゅう、園美はボーっと虚空を見つめていた。
 
「そ、そうだよね。自分の部屋にいるのに、何考えて興奮してんだろ、私」
 園美は自分に言い聞かせた。
 幼児言葉は消えていた。

《電話の友達がお待ちかねよ》

「あっ、いけない。ゴメンゴメン。考えごとしちゃった」
 何事もなかったように園美は受話器を耳につけた。

『脅かすなよな。びっくりしたぜ、なら、もう一度言ってもらおうか。園美ちゃんの感じてくるところは、ド・コかなぁ〜?』


「お○んぴょ、よ」
 園美は何の疑問を持たず、友人と会話を続けた。

『ククク、もう一回』
「お○んぴょです」
『ククク、もう一回大きな声で単語だけ』
「お○んぴょっ!」
『ククク、友達とのイヤらしい言葉を交わす会話はすっごく楽しいよな』
 再び、言葉に言い表せない高揚感に包まれる。
「えぇ、とっても楽しい」
 園美の表情が緩む。
(やっぱり、楽しいな、友達との会話は・・・)
 園美はなんの疑問も持たずに言った。

『もう一回、もっと大きく!叫ぶ!』
「お○んぴょーっ!!!!」
『もう5回!』
「お○んぴょっ!お○んぴょっ!お○んぴょっ!お○んぴょっ!お○んぴょーっ!!!!」

 園美の耳には自分に向けられた拍手喝采は意識されなかった。


『ケケケ、そういう気持ちにさせてあげようか』
「えっ?」
 その時、ベルが鳴ったような気がして園美は周囲を見渡して首をかしげた。
 ベルが鳴るような機器はリビングにはない。
 
 《本人から何を聞き出すのも、言わせるのも自由ですが、行動を起こすことは主催側のみが行います。ゲストの方は厳禁です。ご退場ください》

「えっ、な、なに!」
 園美は驚いて周囲を見渡すが人の気配もなく、ラジオやテレビも、まして外の喧騒の音すら聞こえない。
 気がつくと受話器からは会話の途絶えた不通音が空しくプープーと鳴っていた。
 園美は受話器をもとに戻した。

 ふとシャツを引きちぎれんばかりに脱ぎ捨てた自分を思い出して疑問がこみ上げてくる。


「・・・・・・どうしたんだろう、わたし。一体なにをしてるの」
 園美はいつもと違う自分に困惑を隠せない。


《いいんじゃない?今日だけは、だらしなくって。いつも生真面目すぎるもの、気にしない、気にしない》


「そうだよね、うん、気にしない、気にしない。たまにはぐうたらだっていいんじゃない?」
 園美は自問自答して独り言で自分の疑問を完結させた。
 今日はなぜか気持ちが昂ぶっていると園美は思った。

《ノド渇いたな、ビールなんか飲むときっととても美味しい》
 心の中に湧き出す自分の気持ちにつき従うようにキッチンへ向かう。


 いそいそと冷蔵庫から出した缶ビールのプルトップを押し上げて一気に一口あおった。フカフカのソファへと身を埋める。
「ふーっ、生き返るってカンジィ〜!おいしぃーっ!」
 ブラとショーツだけの姿であっという間に缶ビールを1本空けてしまった。
 丸見えになった腹部には余計な贅肉など全くついていない美しさがあった。

「どうしたんだろう、私。今日はとてもビールがおいしーい」

 その時、再び電話が鳴った。
「あ、電話だ!出なくちゃ」
 園美はすぐに受話器をとった。
 電話には、必ず、すぐに、愛想よく、出なければいけない・・・園美はそのコトに疑問を抱かなくなっていた。

「はい!園美でっす」
『ちゃお!園美』
 さっきとは別の声だ。
「こんばんは!」
 園美は相手が誰であっても気にならないし、疑問すらすでに湧かない。
 ただ電話にでることは自分の使命のように思えてならない。
 
『男は何人知ってる?今カレシいる?』
「4人だよ。今のタカシで4人目」
 園美はすでに質問に疑問を感じなくなっていた。
『ロストバージンは?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 園美が言葉に詰まったその時、またどこかでベルの音がして園美は周囲を見渡すがどこにも音の発生源を見つけられなかった。

《主催者側から警告します。園美は父親に処女を奪われた過去を持っています。あまりにもこのコの深層心理の微妙な部分をついた質問なのでご遠慮ください。タイムアウトです》

『なんだよ、これで終わりかよ。もっと色々聞き出してやりたかったのに』
 受話器の向こうで男が不満そうに漏らす。
「えっ、終わりってなんのこと?」
 自分に向けられたと思っている男の言葉を園美は理解できずにいたが、電話は勝手に切れてしまった。

「・・・・・変なの・・・・」
 そう言って園美は受話器を置いた。

《時間もおしておりますのでそろそろ主催側で園美の思考を預からせていただきます》

 先ほどから、ふっと耳に入る違和感のある声が何処から来るものなのか園美はとうとう気になって周囲を気にし始めた。


 その時、ふっと気持ちが新しい思考を捉えた。
《今日はとってもビールがおいしい。もっと飲もう!明日は休みだし!》

 そのとたん、今まで抱いていた声の出所探しをまるで忘れたかのように冷蔵庫へ歩み寄った。

「なんか、もっと飲んでも平気みたい。いっか、明日は非番だし!」
 冷蔵庫から更に2本掴んで、その1本に手をかけた。
「あれ?明日・・・・休みでよかったんだっけ?」
 冷静に考えると目前に迫るオペレーション前の休日はすべてPD(署:通称 パドック)待機に変更になるはずだった。
「そ、そうだよね・・・・・ちがう、明日は出なきゃいけないんだ」

《気にしないよ、今日はなんかとっても羽伸ばしたい気分だよね、明日は明日だよ》

「え〜い、気にするもんか。明日は明日だよね」
 そう言ってもう1本の缶のプルトップに手をかけた。
《2本目のほうがもっとおいしいよ。今までで口にしたことのないくらいな美味しさ、一気にいこう!》

「うーっ旨い!なぜ?なぜなの、ビールってこんなに美味しかったの」
 ブラの肩紐がだらしなく二の腕に垂れているのも気にならない。

《少し酔いがまわってきた、気分がとってもいい。ハイな気分になってくる。笑いがとまらない。おもいきり笑っちゃおう!》

「ウフ、うふふふふ・・やだぁ〜、酔いがまわって来ちゃったのかなぁ、あは、あはははは、キャハハ」
 缶ビールを片手に園美は肩を震わせるほど笑っている。
 笑いはいつまで経ってもやむことはない。
 園美は腹を抱え、はたまた膝を叩いて大笑いする。


《さて、ビールを飲み干したらさっさと手放しなさい。体が火照ってきた、いじらしいほどの火照りがゆっくりとそしてだんだんと大きく波のように襲ってくる》

 ニヤけていた園美の表情に淫猥なメスの獣の表情が浮かんでくる。
「なんだか、変な気分・・・・・・・・」
 缶ビールを最後に一気であおると、室内だというのに構わず放り投げた。
 両足を床から上げて、太腿をすり合わせるようにソファに抱え込むと、園美の表情は一変して悩ましげな喘ぎがもれ始める。

「ふ、ふ〜ん・・・・・あん・・・・」
 両手がゆっくりとすり合わせた足の中と肩紐が落ちて乳輪の垣間見える胸へと這い出す。

《誰も見てないもの、何をしてもいい。仕事頑張ってきた分、自分にもご褒美あげなきゃ。ご褒美あげヨ》

「自分にもご褒美あげなきゃ。ご褒美あげヨ・・・・・あん・・・・・・あんんんん」
 右手が臍の上を這うようにパンティにゆっくりと潜り込んでいく。
 股間にもぐりこんだ右手はゆっくりと動きはじめる。
 園美の目は濡れそぼってギラギラと光を放って、視線はいずこへと泳いでいる。

《感じてきちゃったよね、1人きりなんだから言葉には素直に出そうよ》

「・・・・・感じてきちゃった」
《Hな気分になっちゃう》
「Hな気分になっちゃう」
 思ったことがサラリと口に出てしまう。
《かまわないよ、自分の部屋だもん。もっと、もっとキモチよくなろうよ》

「もっと・・・・・あんん・・・・もっと・・・・・・・・・・・あん、感じちゃうう〜」
《ブラ、邪魔》
「・・・ブラ、邪魔!」
 むしりとるようにいそいそとブラをはずす。
 ブラを思いっきり遠くへ投げ捨てる。
 形のいい胸があらわになった。
《パンティーも邪魔》
「これも・・・・・邪魔」
 両手をかけてずり下げる。
《あっ、でも片足にだけ引っ掛けとこう、絵になる》
 園美の手はパンティーから離れ、片足だけにパンティーがだらしなく引っかかってぶら下がった。

《目の前にある姿見の自分を意識したくなった。自分に向かって自分をさらけ出したい。自分で見ても、贔屓目ナシにあなたは美しいわ。自慢の自分よ、顔もスタイルも》

「鏡・・・・・・」
 園美はふと視線を移すとそこにいつのまにか姿見があった。
 姿見には自分の姿が映し出されている。

「そのみ、あすかいそのみ」
 園美は鏡に映る自分に話しかけた。

「いつも、頑張ってるね、仕事のデキる女、強い女、かっこいいよ、そのみ」
 鏡に映る自分の顔やカラダのラインをなぞる。

「あなたは私の理想の女。でももっともっとよくならないといけない。女としてもっと美しく、キレイで・・・」
 自分に言い聞かせるように園美は言った。

《もっとあなたをすべてをよく見せて、わたし》

「もっと、あなたのすべてをよくみせて・・・・わたし」
 心の言葉が、思わず口に出る。
 園美はゆっくりと自分から服を剥いでいく。
 鏡に映る自分に見ほれながら、全身を、背を、すべてをくまなく見えるように、ゆっくりと全裸に。

 《もっと自分のコト知りたいな。自分の奥をよく見てみたい》

「わたし・・・・もっと自分のことを見つめてみたい」


《鏡に向かって言ってご覧、可愛いぬれぬれのお○んぴょを奥まで開いて、『園美のお○んぴょよく見て』》

 園美の視線の先に裸体で乱れる自分が映し出されている。
 鏡の向こうに映る自分と目が合って、園美は自分自身に向かって大きく股を開いて秘部をめくりあげて微笑んで言った。

「園美のお○んぴょ、よく見て」
《奥までぬれぬれなのォ、よく見てよぉ。レディースワットの飛鳥井園美のおっぴろげお○んぴょなのよ》
 心のささやきをなぞるように園美は何の疑問もなく復唱する。
 目の前にある姿見の鏡に映る自分の痴態に向かって誘うように淫靡な仕草と言葉で。

「奥までぬれぬれなのォ、よく見てよぉ。レディースワットの飛鳥井園美のおっぴろげお○んぴょなのよ」

「おぉぉぉぉぉっ!」と、まるで地の底から震えるような驚嘆の声に似た音が園美の耳に入るが、園美が周囲を見渡しても自分の部屋には誰の気配もない。



「えっ・・・・・・・・」
 一瞬、自分の考えに園美ははっとなった。
「わ、私の部屋に姿見なんか・・・ない。姿見は玄関脇の壁にしか・・・・・・・・」
 急に思考が高速回転で動き出す。
 自分の痴態を映していた自分の家のリビングに今存在する姿見は、考えればあるはずがないはずの鏡だった。

「今・・・・・わたし・・・一体・・・」
 両手の動きが止まった。
 思いもかけない自分の考えに戸惑った。

「ちがう、ちがうわ。わたし、わたし、こんなことするはずない!こんなだらしのないこと私ししないもん」

《気のせいよ、さぁ今よりもっと疼いてくる。我慢できない、我慢できない、もう疑問に思っていたことなんて考えていられない。指が自然と動き出すよ》

「あああああああああああ、いやん、なぜ?なぜ?なぜ?気が変になっちゃう。ちがう、ちがう!わたし、そんなふしだらな女じゃない!」

《抵抗しないの。一切の疑問は頭の中から消えてなくなる。今考えていることは自分が気持ちよくなることだけ》

 股間から両手が離せなくなる。その先端の指先が園美の敏感な部分に埋もれていく。
「あん・・・・あん・・・いい・・・いい・・・で、でも・・なぜ・・・ちがう。なにかが違う!」
 ソファからずり落ちて両膝をついて体をのけぞらせる。
 濡れた秘肉の部分がせり出すようにぱっくりと口を開ける。

《往生際が悪いわね。もう絶対我慢できないほど昇りつめてきた。すべての疑問は快感の波に押し流されていく》

「あっ・・・あっ・・・・・・もう・・・・もうだ、えぇ・・・・い・・・いっちゃぅぅぅぅ」
《さあ思いっきり淫らになりなさい。イクのよ、あなた自身の指だけでね、フフフ》

「はっ、はぁん、はっ、はっ、はぁぁぁぁぁんんんん」



《もうなにも考えられない》

「も、もう、なにも考えらんなーいっ!」


《気持ちいい。気持ちイイだけ》

「き、気持ちいい、気持ちいいだけーっ!」


《頭ン中真っ白》

「頭ン中、まっしろーっ!」


《さぁ、おゆきなさい》


 園美の指はまるで別の生き物のように激しく動き、腰が大きくグラインドし始める。

「いっくぅぅぅぅぅぅ〜」
 体を震わせて両膝から崩れ落ちる。膝を折ったまま後ろへバッタリと倒れこんだ。

 思いっきり両膝の開かれた格好から秘唇はあらわになり、ぐちょぐちょの状態が容易に見て取れた。

 表情は満ち足りた疲労感で穏やかに微笑をたたえた寝顔のように緩んでいる。
 自分の部屋での狂態を満足げに終えた園美はそのまま深い眠りへと落ち、周囲に響き渡る割れんばかりの拍手喝采には気づくはずもなかった。


 ここは赤坂にある『セルコン』の営業拠点のひとつ、『FOREST』、園美が自分の部屋と信じていたのは店の中央に配された一際高い舞台の上だった。

 
 


 

 

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