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********** 3rd−day   Vol.2 *******






明智 祐実:レディースワット チーム6の若すぎるチーフ。直情的で上昇志向が強く、またほとんどのチームメートが彼女の先輩にあたり、チーム内では浮き気味。
      手に入れた洗脳薬『レディードール』を使い、仲間を操り人形化して手駒にしてまでのし上がりたいと考えている。売春組織『セルコン』の壊滅を手土産に
     レディースワットの局長ポストへの昇進を窺っている。



伊部 奈津美:来るべきオペレーションの詳細を監視する監視官に任命された。明智祐実の身勝手な指令から隊員たちを守ってやりたいと考えている。



国井 涼子:実戦2年目のまだ駆け出し。経験が未だ浅いことから先輩メンバーとの行動か単独では聞き込みやオペレーションなどの調査活動を担当。
      婦人警官の気分が抜けていず、口が軽く不満などをよく口にしがち。



加納 美香:売春組織『セルコン』の支配を受けて催眠尋問途中に祐実の銃弾に足を撃ちぬかれながらも逃走。現在行方不明。



陣内瑠璃子:身勝手きわまりない気分の女子校生。意外な能力をもつ。レディースワットチーム6の追う事件に関係深く、事件解決と売春組織『セルコン』壊滅のための
      キーマンと目されている。奔放な性格らしく、組織側からも危険視?されている帰来がある。



会員制BAR エリオットのママ:組織の一員で今回のパーティーを仕切るひとり。



ナイトホーク:組織の『ブリーダー』と呼ばれる能力者の一人。加納美香に『五十嵐晴香』という別人格を植え付けて組織の人形に仕立てた。


伊集院琥南:東京世田谷の高級住宅街に住む子ども。




【 新宿 会員制BAR エリオット本店となり 会員制喫茶SEA-BOSE 】




 夜も深くとばりを下ろし、歌舞伎町界隈は行きかう人の群れでざわめいていた。
 煌々と照らされたネオンのせいで、今にも降り出しそうな雨の兆候さえ見上げる空からはうかがい知ることができない。

「全治3週間ってトコだな。骨に被害が及んでないとは思うがレントゲンを撮ってみるようだろう」
 入念に傷口を見てから医師の隈井は言った。

「銃創もうまくすればそんな気にならん程度には消せるだろう。今回の出品はあきらめナ、次回は大丈夫だ、保証するよ」
 薄暗い店内でスポットライトを傾けた1箇所のボックスシートだけが明るく照らし出されている。
 そのソファにまるでマネキン人形のように足を投げ出して下半身だけ下着姿のまま無表情のままピクリとも動かずに座る加納美香の姿があった。
 その足元の床には血まみれのズボンが無造作に投げ捨てられている。

 美香はスワット内で犯罪組織『セルコン』に心を取り込まれて操られた『子猫』と呼ばれるスパイではないかとの容疑から催眠尋問を受けた。
 その尋問中に『セルコン』に埋め込まれた「ブラックボックス」と呼ばれる組織の商品価値を守るための人格保護プログラムが発動し、署から逃走してここに辿り着いていた。逃走の際にチーフである祐実に足を撃ち抜かれていた。

 隈井は黒服が用意したボールを看護士の柴崎香子にもたせて血のついた手をゆっくりと洗った。香子は憮然として表情を強張らせているが隈井は気にも留めずに話を続ける。
「あとはオレの病院へ運んでくれよ。手配はあとでするから地下駐車場から霊安室経由でな。最高級・ハイレベルな処置と手厚い看護を約束するよ」
「先生、くれぐれも彼女のことはご内密に」
 隈井の背後には15分ほど前に、銀座の会員制BAR『エリオット』から駆けつけたばかりのママが不安げに立ち言葉をはさむ。
 ママの言葉に看護士の柴崎京香は一瞬顔をしかめた。ママはその表情を見逃さず、香子に心配ないわと言わんばかりに微笑む。
 香子は射抜くようなキツイ視線でママを睨むとママの視線をあえて無視した。

「分かっているよ。ママにはいつも世話になってるからな。最上階の個室を用意して偽名で入院させる。無論、スタッフも専属にする。担当医は私と栄作君だ、ならばママも心配なかろう。それに看護士はここにいる柴崎君と私の忠実な部下の麗奈にやらせるよ」
「まぁ、それは願ったり叶ったり、栄作先生に麗奈ちゃんなら秘密が漏れる心配はないわ。警察の捜査が及んだとしても『あしらい』もお願いしますわね」
 ママは胸をなでおろす仕草をした。警察の捜査と聞いて看護士の香子は一瞬不安げな顔つきになるがすぐにその切れ長の目で隈井とママの2人を交互に睨みつけていた。
「大丈夫、心配すんなよ、ママ。まぁ、この先のママの気持ち次第ってトコロもあるがね」
 上目遣いにママの顔を隈井がチラッと見た。
「ウフフ?お金の心配してらっしゃるの?隈井先生?私を誰だと思って?それとも今の言葉、『セルコン』を侮辱したものと受けとってよろしいかしら」
「はいはい。無用の心配でした。はぁ〜ママならオレが何を言いたいのか分かってくれる思ったのになぁ」
 そう言って隈井は深いため息をついた。ママは気にもとめずに話を続ける。

「でもそうすると、栄作先生と隈井先生のどちらか今度のパーティーに来れなくなるのでは・・・」
「あーっはっはっはっ!心配は要らんよ、やつぁ、いま全くのゲルピン、無一文ってヤツだ。バカラ賭博に嵌まって大事なパーティーの前にスッテンテンだ。なまじ軍資金を増やそうとするからそのザマだ」
 医師の隈井は口を大きく開けて高らかに笑った。店は美香の治療のため準備中にしていたため彼らのほかは全員店の者達だった。
「商品的にも極めてハイグレードなこのコの入院姿を見ればきっとヤッコさん、大そう悔しがるに違いない。やつは人一倍巨乳好きで、あの年末バーゲンにはご執心だからな。少しは博打も手控えるだろうよ」
「先生、おやめになって下さい、『年末バーゲン』だなんて。まるでスーパーの安売りでもしてるみたい。我われはパーティとオークションを皆様にご提供申し上げているんですのよ」
「あ、こりゃ失敬。いつも口が悪くてすまんな。でも今回も楽しみだよ、こんなコがわんさか出てくるんなら金がいくらあったって足りん、私も軍資金稼ぎに博打にでも走りたくなるよ。今回も上物が仕上がっているようだ」
 そう言って隈井はまた大声で笑った。2人の会話に京香は軽蔑にも似た表情を隠さなかった。


 ママは香子のそういった態度を鋭く察知しつつ、視線を香子に流しながら隈井に話しかける。
「そう、そう。先生、こちらの看護士さんも美香の面倒を見てくださるご担当と言ってらっしゃいましたわね」
 怪訝そうに2人の会話を聞いていた看護士の香子が話題を自分に振られて一瞬電気に触れたようにビクッと体をこわばらせた。
 親しい友人の急患治療のために、看護士として隈井に同行してくれと頼まれて着いて来たものの、クスリでも打たれているのかピクリとも動かない女性の、しかも貫通した銃創の処置であったことに香子は驚きを隠せなかった。
 いつもは闊達で口は悪いが人のいい隈井がここにあっては、まるで別人のような危険な会話をまるで日常会話でもするように得体の知れない女と話している。
 京香は表裏のある人間をとても嫌悪していた。今日、その中にこの医師の隈井と得体の知れないママも嫌悪の対象にエントリーされたことは疑う余地もなかった。

「まぁ、つまり、・・・・なんだな。患者を匿っての相当期間の治療は、どう無理したって2交代じゃないと治療する側がまいってしまうよ。医師も2人、看護士も最低2人だな」
 隈井は頭をポリポリかきながら、なぜか子どものように恥ずかしさを隠そうとしていた。
「まぁ、先生も口がうまくなったわね。私が信頼できる人間がどういう人間かを知った上で、あえてこのコを連れて来たんじゃないかしら?香子さんでしっけ、ウフフフ」
「ん?んんん、まあな。かなわんな、ママには。なんでもお見通しってワケかい、ウヒヒヒヒィ」
 あえて気づいて欲しかったという隈井の思惑に違わず、ママが隈井の意思を代弁してくれたことにより隈井は卑しい含み笑いを隠せずにいた。


 日頃、目の当たりにすることさえなかった下卑た隈井の表情に香子はとうとう怒りをあらわにした。
「あの、お言葉ですが、ご心配には及びません」
 血色に染まった水の入ったボールをぶっきらぼうにテーブルに置くと香子は立ち上がった。思ったより背が高い。香子は嫌悪すべき2人を見下ろして鋭い視線で睨みつけた。
「あら、まぁ、どうして?」
 ママは動じることなく余裕のある含み笑いを浮かべた。
「アタシのことを信頼していただかなくて結構です。アタシは隈井先生になんと言われようとこの方の看護担当になるつもりはまったく!ありませんから!!」


「おい、おい。そう声を荒げるな。なにを怒っているんだね。もう治療は終わった、すぐに帰るから、そう心配すんな」
 隈井が落ち着けよと言わんばかりにポンポンと香子の腰を叩く。
 香子はキッと隈井を睨みつけて思い切りその手を跳ねのけた。
「痛っ!そう、とんがるなよ。君を見込んで連れてきたんだぜ」
 隈井の態度からママは隈井が香子にかなりのご執心であることを悟る。
「アタシを見込んで?フン、なにをどう見込んだか知らないけど、こんなヤバイ仕事なんてこっちからお断りだね!」
「おぉぉぉぉ、き、香子クン、今の君のセリフ、すごく『ヤンキー』入ってないか?ゾクゾクしちゃったぞ」
「ざけんなよ!」
 香子のピリピリしている様子が誰の目にも明らかだった。


「ふ〜ん、先生も最近は好みが一様ではなくなってきましたのね。今までは麗奈ちゃんのような無垢でおとなしめの可愛いスレンダーなコばかり相手にされましたのに。気の強い暴走族のレディスあがりのような子がお好み?」
 そう言いながらママは香子の顔をまざまざと見入った。
「ちょっと、失礼なんじゃない!人の性格や外見をとやかく言わないでほしいよね!ババァ」
「まぁ、口が悪いこと。あなたこそ茶っぽく染めた髪も下手な化粧の具合も見るからにレディスあがりよ。うちの店にきたらあなた見習いからスタートだわ」
「治療が終わったのなら、帰らせてもらう!先生はその人と積もる話もおありでしょうから後からゆっくりと帰ってきて下さい!このクソオヤジ」
 そう言うと香子は自分の持ってきた荷物だけ手早く片付け始めた。

 あっけにとられている隈井の胸ぐらを勢いに任せて香子は掴み上げた。
「きゅ、きゅぅぅぅ、く、くるひぃぃ、香子クン苦しいってばようぅ」
 華奢っぽく見える体のどこにこんな力があるのかと思うくらい、腰の浮くほど隈井は香子に掴みかかられている。
「先生。今日あったこと誰かに言うつもりもないし。あたしは何も見ていない。だからあんた達もこれ以上あたしを巻き込まないでくれる?結構ワルもやってきたけれど、犯罪に加担するような真似しないとこの香子さんは仲間同士誓ったんだ」
 毅然とした態度に隈井はかえって聞きほれていた。ママはうすら笑いを浮かべてる。

 香子の悪態を見かねた店の黒服のひとりが、香子に注意をしながら香子の肩に手をかけた瞬間、香子の足蹴りが黒服の鳩尾に嵌まり男は昏倒して倒れてしまった。
「気安くさわんな!」
「このまま帰れると思って?ウフフ」
「帰るっつってんだろ。それ脅してるつもり?オバサン」
 香子は治療の片付けに紛れてポケットに隠したメスに手を添える。眼つきは鋭くママを睨み返して物怖じしている様子すらない。むしろ、冷静で落ち着き払っていた。
(今までだって同じような台詞、何度も聞いてきたけれど、いつだってアタシは無傷で戻ってきた!)
 数年前までいた地元のレディスの頃の記憶が香子の心の奥からよみがえる。
「ウフ、それがあなたの地なのよね。やっぱり暴走族?チーマー?」
「関係ないでしょ!」


「香子ちゃんっておっしゃるの?美香のことをよろしくお願いしますね、私の大事なコなの。動かないのはお行儀がいいからなのよ」
 いつの間にか自分の背後に回っていたママに耳元で囁かれて香子は飛び跳ねるように隈井の方へ身を寄せた。
(ウソ!いつの間にっ!)
 香子の心の中に驚きと一瞬の恐怖が宿る。その恐怖を慌てて打ち消すように香子は今までより声を荒げた。
「言ったでしょ、アタシはコイツの看護なんかゴメンこうむるわ」
 香子の言葉を意にも介さず、ママは隈井へと視線を移した。

「ウフフ、これも隈井先生に返しておくわね。はい、先生」
 ママはいつの間に取り上げたのか香子がポケット越しにしっかりと掴んでいるはずだったメスを隈井に手渡した。
「そ、そんな。あんた、いつの間にアタシのポケットを・・・」
 そう思った瞬間、香子は、まるで怯えた小鹿のように目を潤ませて震えて始めている自分に気がついた。
 これでは思うように動けない。足がまるで根が生えたように重くなった。
(びびってるていうの?・・・このアタシが)
 香子の背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。

「ウフフフ、怖がってるのね香子ちゃん。心配いらないわ、ちゃんと先生ともども帰してあげる」
「香子、ママには敵わないよ。オレだってママには逆らわないぞ」
 隈井は焦りの色が見え始めた香子を見てにやけている。
「香子ちゃん、わたしの今日最後のお願い聞いてくれるぅ?」
「最後の願いだって?知るもんか」
「香子ちゃんに私のケガを見て欲しいのよぅ。それが終わったら先生と一緒に店の車で送ってあげる。美香を連れてね」
「ア、アタシは、あんた達のやってることに加担するつもりは一切ない!それにあんたはアタシが信用できないって言ったじゃない!」
 ママを睨んで強がる香子の顔はまだ引きつっている。
「いいの、いいの。それはもう分かったわ。それであなたと言い争うつもりはない。あなたが自分で今日のことを他言しないと言ってくれたから、それでいいの。その点ではあなたを信頼するわ」
「ははははは、なんだ、ママも怪我してるのかぁ?いいよ、俺が見てやるから」
 隈井が腰を上げてママと香子に近づこうとするとママは後ろから香子に抱きついてイヤイヤをした。
「だめよぉ!恥ずかしいわ、隈井先生じゃ。見て欲しいのは女の大事なト・コ・ロなんですから。それなら香子さんも診てくれるでしょ、けが人よ、わたし」
「・・・・ケガしてるって言うんなら診ないわけには・・いかない」
 香子はイヤイヤながら返事を拒絶の渋った。看護士の仕事だけは断りきれない。
「ありがとう。私の大切な美香さんを見ていただく看護士さんは自らすすんで『看護する』と言っていただける方にするから、あなたは心配しないで」
「別に。アタシには関係ないね」
 香子がふてくされたように吐き捨てた。ママの目が妖しく光る。


「ママよ、オレは治療するの全然かまわんよ。なんたってオレは名医だから。ママの大事なところなら金を積んだって拝ませていただきたい!是非私が治療してあげよう」
「ダーメ、このコじゃなきゃイヤ!ねえ、香子ちゃん。あなたが見て。そして先生じゃなきゃ治療ができないのなら、あなたから先生に診たままを伝えて欲しいのよ。直接先生に見られるの、私恥ずかしいわぁ」
「診るだけなら・・・・・・」
「じゃあ、ちょっとブースを移りましょ。私だって恥ずかしいのよ。心配しないで、振り向けば隈井先生が見えるところまでしか連れて行かないから。それなら安心でしょ?」
「あ、ああ」
 やむなく香子は同行の際に持ち出した隈井の治療グッズの入った鞄をもって、ママと2人でブースを移る。
「なあ、ママ。どこにキズがあるんだい」
 黒服が出してきたコーヒーをソファにふんぞり返って飲みながら、にやけている隈井が問いただす。
「うふふ、会陰裂傷よ。おま○こが擦り切れてるのっ!」
 隈井はソファからずり落ちた。


「香子ちゃん、座って」
 少し離れたボックスに2人は座った。
「それじゃあ、悪いけど見てくれる?」
「あぁ。わかったよ」
「分かってる、そう嫌な顔しないで。香子ちゃんは見たままを隈井先生に伝えてくれればいいのよ。先生に伝えるだけ、それだけよ。それが終わったら先生と帰ってくださって結構よ」
 香子はうなづいた。
「そのかわり、細部までもらさずしっかり伝えてね」
 そう言うとママは香子の目の前にゆっくりと両手を差し出す。
「その前に、この私の手、ちょっと見てくれる」
「手?」
「2人きりになれてよかったぁ。うれしいわ、あまりヒトがいすぎると気になって、あの程度のフリーズしか堕としこむことができないから」
「な、何を言ってるの!あんた、一体・・・・!」
「眠って」
 香子の目の前にいきなり突き出すように右手を出してパチンと指を鳴らした。
「えっ・・・・・・」
 香子の表情から意志の光が消える。
「香子ちゃん。教えてあげるわ、私が信頼する人間って言うのはね、この組織にどっぷりと浸かり切っている隈井先生や栄作先生のような我われが『客』と呼ぶ人種か、あなたの同僚の麗奈ちゃんのようにすでに意志の自由を私たちによって握られた『商品』になった人種のいずれかなのよ。わたしがあなたを信頼すると言った以上、あなたがどちらになるのかは分かりきったことじゃないのかしら?ウフフフ」



【チーム6 チーフ室】


 夜の9時を過ぎて署内(PD:パドック)の電気は必要最低限におとされ、廊下の電気は2つおきに照らされている。
 いつもは夜ですら鉄火場のようにざわついている各チームのフロアも今日に限っては静かだった。こんな穏やかな日がいつも続けばと奈津美は思わずにはいられない。
 処分期間でありながら監視官に任ぜられた奈津美はチーム6のスタッフルームに身を置くこともできずに静まり返った小会議室の一室で来るべきオペレーションのシミュレーションチェックでパソコンにかじりついていた。
 監視官として命令を受けた以上、奈津美は作戦終了までは署内に常時待機してチームの行動把握が重要な任務となる。
 今までにも内部監視などで監視官の役回りは何度か経験したが、仲間の欠点を指摘するようで気乗りしない仕事だった。しかし、今回だけは今までとは違う。
「もう誰も死なせやしない。祐実の犠牲になんかさせやしない!」
 画面に映し出された作戦指示書をみつめながら、作戦上の時系列の各人の行動を細かにチェックし、危険度のポイントを絞る奈津美の独り言にも力がこもった。

『伊部監視官、チーム6チーフ室まで』
 署内放送で祐実の事務的な呼び出しが天井スピーカーから流れた。
 やれやれ、と言った表情で奈津美は腰を上げた。


 チーフ室には祐実だけがひとり、椅子にもたれて奈津美が来るのを待っていた。
「どういう風の吹き回し?しかもオペレーションを目前に控えて私になんか会いたくもないでしょうに・・・」
 奈津美はそう言いながらゆっくりとチーフデスクの前に近づいた。
 以前は自分が使っていた馴染み深い場所が、すでに祐実の私物も置かれた他人の机に変わっていた。
「監視官様に一応承諾をもらっておこうと思ってね、後からあげ足とられるのもイヤだし」
「あげ足・・?それはあなたでしょ」
 奈津美は苦笑した。
「私、冗談は嫌いなの。あなたに言っておくことは今回の作戦とは別捜査を同時進行で行う。指揮権は当然、私にあるわ」
「別捜査?他になにか事件でも?」
「あなたも知っての通り、今回の事件では『セルコン』が絡んでいることは間違いない。グスタボという糸口の男さえ失った今となっては、どんな小さな手がかりでさえ見逃しがたい」
 奈津美を前に立たせて祐実は椅子にふんぞり返って視線すら合わそうとせず、自分の手の爪をいじっている。
「まぁ、祐実。あなたにしては模範的ないい考えね」
 逸らせていた祐実の視線が鋭く奈津美を射抜く。このオンナ、いちいち気に障るとでも思ったに違いない。

「言ったでしょ!私は冗談を言う馬鹿は嫌いよ。今回の事件であるキーマンのひとり、『陣内瑠璃子』の捜索と行動監視を徹底する。そのために聖オスロー女学院への潜入捜査を行う」
「着目の意味も理由も理解してあげるけど、作戦を目前にして皆が皆、自分の役割分担に集中しているこの忙しい時に誰を潜入させるっていうの?潜入捜査に人を割く余裕はないはずよ」
 祐実は「もちろん、わかってる」と言いたげに余裕のある含み笑いを浮かべると自分のデスクトップの液晶モニターを奈津美の方へ振りむけた。

「『オチャラ』覚えてるでしょ?彼女の動員要請をして30分前に許可が下りたの。彼女ならこの潜入捜査、うってつけだと思わない?フフフ、学院に潜入させるのに教師である必要はないじゃない。むしろ生徒であるほうが好都合、それは実証済みのはずよね」
 そう言って祐実はフフンと鼻を鳴らした。液晶画面に展開された人事ファイルには『 深田茶羅 FUKADA SARA 』の文字とまだあどけない可愛い少女の顔写真があった。チーム6では知らない者のいないほど去年の事件捜査では一躍「時の人」となった少女だ。
「ちょ、ちょっと待って。まさか深田さん一人にその任務、任せるつもり?」
「もちろん、彼女もすでにこちらに向かってる。転校手続の書類もできて今夜からでも生徒として潜り込めるはずよ。陣内瑠璃子と同じ学年、うまくいけば一緒のクラスにね」

「民間人協力徴用制度は昨年度一度きりの上部の実験採択だったはずよ!今回は危険がありすぎるし、賛成できない。なぜ許可が下りるの?」
 奈津美はまくし立てるように言った。
 低年齢化する犯罪の発生に捜査の情報収集の限界をこぼす第一線の意見から上層部と、文科省の黙認の下、非公式に行われた民間人徴用協力制度。
 いうなれば学生達の中から選考した者を危険度のない情報収集活動に限って採用した実験的な試みだった。学校という踏み込み難い聖域の中に捜査の手を伸ばすため、教員資格をもつ捜査員が臨時教師として潜入し、容疑のかかる学生の周囲の情報を同じ年齢の協力学生が収集して教師役の捜査員に伝えるものだった。
 都内で15ケースが行われ、うち11件に少なからず通常捜査では入手できなかったであろう交友関係の情報と素行を洗い上げた。なかでも、生徒売春の噂のあった都内校に送り込まれた教師役の祐実と深田のペアは校内の薬物売買までも洗い出し摘発まで導いた。
 見事な結果を残したことに上部は喜び、協力した深田茶羅には方面本部長から非公式ではあるが功績多大を理由に褒賞まで出ていた。
 毎日の日次報告を理由に(報告は教師役として潜入している祐実にだけしておけばよかったのだが)、チーム6のスタッフルームに茶羅は入り浸った。
 物怖じしない性格と人なつっこさですぐにチームの仲間と打ち解けたどころか、人見知りのある祐実でさえ彼女のことは可愛がっていた。



 祐実は再びフフンと鼻を鳴らした。
「よくファイルを見てくださいよ、監視官殿。彼女、深田茶羅は本年4月採用の正式な警察官なんですよ」
「えっ?」
 あらためて画面の人事ファイルをに奈津美が目をおとす。
 深田茶羅は間違いなく本年4月に高卒枠で採用された婦人警察官として都内の目黒白金署の生活安全課に配属されていた。警察では4年制大学卒業資格者の採用以外にも短大卒や高卒採用が若干名ではあるが未だに残っている。
「彼女、私たちに憧れて進学もせずに警察官になったのよ。採用試験の面接ではレディースワットの一員になりたいとまで豪語したそうよ」
「知らなかった・・・」
 奈津美は始めて聞かされる話に二の句が出ない。
「所轄署員の協力要請なら、なんら問題ないわね。あの西野聡子と扱いは同じなんだから。上は一も二もなく快諾よ、これでまた話題づくりにでもなればイメージアップにつながると安易に考えたんじゃない」
 祐実の言葉に奈津美が反論する余地は残されていなかった。
「すでに上部の許可を得ている以上、監視官の立場から言わせてもらえば承知するしかない。でも、半年前まで学生だったコよ。経験だってあの雪乃より浅い。無茶はさせないで」
 不安げな表情で奈津美は祐実に懇願するように言った。

 その時、当直の涼子からインターフォンが入る。
『チーフ、当直の国井です。実は今、あのチャラが・・・』
(チャラじゃありませーん!涼子先輩!サラです、もう同じ警察官なんだからちゃんと呼んでくださいよぅ〜!)
 インターフォンごしに涼子の背後からあの人なつっこい声がこぼれていた。
「いいのよ、通して。オチャラは私が呼んだの。チャラ、お入りなさい」
 そう言ってチーフ室とスタッフルームをつなぐ扉のロックを解除した。
(あーっ、祐実先生までおチャラっていってるぅ!)

 小走りにチーフ室に入ってきた深田茶羅は以前のままあどけない笑顔で奈津美と祐実に近づいてきた。
「目黒白金署、生活安全課 深田茶羅巡査長。レディースワットの協力要請によりただ今参りました」
 そう言って背筋をピンと伸ばして敬礼をした姿はさすがに去年の彼女とは違っていた。
「来てくれて嬉しいわ。元気そうでなにより」
 あのクールビューティーな祐実の顔がほころんでいる。
「昇任されたんですね、おめでとうございます。祐実先生」
「先生ではないわ、チーフよ。チャラ、ここに来た以上は階級を重んじなさい」
「は、はい。失礼しました、明智チーフ。あっ・・こ、これは・・奈津美チー・・・伊部チ・・・あの・・その」
 祐実に気を取られすっかり奈津美がいることを忘れていた茶羅は、祐実の昇任の祝いの言葉を言ってしまったことに気まずい表情をあらわにした。
「いいのよ、チャラ。私も今までどおりチャラって呼ぶ、あなたも気にせず呼んで。もうチーフではないので、『さん』でいいわ」
「は、はい。奈津美・・さん、お久しぶりです」
「深田!伊部は今、監視官なの。正しく伊部監視官と呼びなさい。風紀を乱すな」
 祐実が厳しく見咎めた。
「は、はい。す、すみません」
 極度の緊張と萎縮で茶羅は本来の明るさを失って泣きそうになっている。

「祐実、あなたって本当にカタ過ぎる。チャラ、いいのよ。肩の力を抜いて。あなたにはこれから私たちの力になってもらうんだから」
「あんたがいいって言うのならいいけれど、わたしは許さないからね。まあ、この場だけは大目に見てあげるけど」
「す、すみません。どうかお2人とも、私なんかのためにケンカなさらないで下さい」
 不安げに茶羅は両者を見渡した。
「チャラ、それはそうとそれ、そのカッコ、どうしたの?」
 茶羅はブレザー姿にチェック柄のミニスカート、紺のソックスにローファーといういでたちだった。
「あの聖オスローの制服です。呼び出しが来て、署に行ったらこれに着がえてから行けって・・・」
「アハハハ、まさか。あなたの体にあわせて調整した制服を署に届けるように手配はしたけれど、来てこいなんて一言も言ってない。あなた、職場でからかわれたのよ」
 祐実は笑った。
「えーっ!」
 茶羅の頬がぷっと膨らんだ。
 祐実の苦笑に奈津美もつられた。でも、どこから見てもれっきとした聖オスローの生徒として板についていた。少し場が和む。
「私たちがそれ来て潜入できるのは学校ではなくて、どこかのヤバイ店になるけれど。あなたはまだ本当に学生っていう気がするもの」
「ですよね〜。駅からここに来るまで職質かけられました。身分証みせたらびっくりしてすぐに解放です。3月まで制服着てたんですからまだまだ十分通用します」
 茶羅はおどけて腰に手をあたてて胸を張った。本来の屈託のない茶羅の表情だった。
「話は十分伝わってると思うけど、ターゲットを見つけ出し、その素性、行動、交友関係を探り、逐次情報をこちらへ送って欲しい。まずは冬休みに入るまでの5日間」
「了解しました。深田茶羅、聖オスロー女学院の潜入捜査の任に就きます」
 茶羅は敬礼をもって応える。

「チャラ、相手をただの学生と思ってはダメ。油断は禁物、それから危険を察知したら無理をしないこと。気をつけてね」
 奈津美が一言添える。
「はい!これから学院寮へ向かいます」
「気をつけて」
 奈津美の言葉に茶羅は微笑んだ。スタッフルームへの扉が開く。茶羅がチーフ室を出て扉が閉まりかけたとき、『あっそうだ!』と思い出したように声が出て祐実と奈津美の2人は茶羅の方に視線を投げた。
「もう、わたしもいっぱしの警察官なんですから、お2人とも『チャラ』って呼ばずに「サラ」って呼んでくださいねぇ〜。これ私のお願い」
 閉まりかけた扉の向こうから茶羅がおどけて手を振っていた。
「学校の転入手続書には成績不振により留年ってことになってるわ。だからあなたは19歳のままでいいのよ、そこんトコよろしくね、おチャラ!」
「あーっ祐実先生ひどーっ!」
 全てを茶羅が言い終わらぬうちに扉が閉まった。

「初々しいわね」
 奈津美の言葉に祐実も苦笑した。
「あれが以前のあなたよ」
 奈津美の続けざまの言葉に祐実のほころびかけた表情が硬くなる。
「何ですって!私冗談が嫌いだと言ったはずよ、くどい!」
「私が教官としてあなたを教えていた頃の姿そっくりだわ。あどけなくて、明るくて、真っ直ぐで」
「やめてよ」
「どうしてあなたはそうも冷たくなってしまったの?上昇志向もいいけれど、昔のあなたはそんなじゃなかった」
「やめて、それ以上言ったら私への中傷とみなして上に報告するわ」
 奈津美は何も言わない。
「事件の鍵、すべてはあの『陣内瑠璃子』が握ってる、私はそう睨んでる!キーマンは『陣内瑠璃子』」
 祐実は独り言のように言った。






【 新宿 会員制BAR エリオット本店となり 会員制喫茶SEA-BOSE 】



「まったく、喫茶店とはいえ、酒ぐらい置いておけよな!コーヒーだけそう何杯も飲んでいられんぞ!」
 テーブルの上の灰皿は山のように積みあがっては何度も取り替えられ、コーヒーはすでに7〜8杯は空にしている。
「隈井様、コーヒーのおかわりはいかがでしょうか」
 黒服が極めて丁寧な態度で歩み寄ってきた。
「もういい、もう要らん!まったくどいつもこいつも同じことばかりオウムのように繰り返しやがって!」
 そう言いながら半分吸いかけのタバコをまた吸殻の山の中に突っ込んだ。
「隈井様、どうかお静かに」
「静かにもクソもねえだろう。腰がぴったりソファに吸い付いてトイレにも立てないどころか振り返って2人を見ることすらできやしない!ママは一体オレに何をしやがった!」

「すみません、隈井先生。もう結構よ、お待たせしました」
 ママの声が後ろからしてママの手が隈井にポンと置かれた。
 反射的に振り返った隈井はそこでやっと椅子から腰を浮かし、振り返ることができるようになったことを悟った。
 振り返った先にはママと看護士の香子が立っていた。
「隈井先生に振り向かれたら、私の恥ずかしいカッコ見られちゃうでしょ。ちょっとの間だけ、先生にはおまじないをかけておいたのよ。ごめんなさい」
「ふん、ママのやりそうなこった。そうやって肝心のところは俺達には見せやしない!オレにも催眠をかけたのか」
「お怒りにならないで。見よう見まねでやってるものだから、見られてると思うと妙に緊張しちゃうのよ、ウフフ。隈井先生への今のフリーズはお客様になられる条件として、緊急時などに運動支配を組織の指示で受けることをご承諾いただいて催眠を受け入れていただいているはずですよね」
 ママは意味深な笑みを浮かべた。

「ふ〜ん、緊急時ね。今日は気分を害した、治療に来てやったのに。終わったんなら帰るぞ。車を回してくれ!」
 憮然と隈井が言い放つ。
「あら、イヤよ、先生。短気は損気、お医者様はいけませんわね、いつも自分の行為を患者に対して『してやってる』という感覚しかお持ちにならなくて」
「何がイヤなもんか!こんなに時間がかかるとは。1時間以上待ったぞ」
「彼女の、香子さんの話をお聞きになっては下さいませんの?彼女には私の状態のすべてを話しておきましたの」
「そんな回りくどいことを・・・。直接オレに言ってくれれば、すぐにでも診て処置してやるものを」
「彼女、私と2人きりでお話したら美香の看護を喜んで引き受けてくれることになったんですのよ」
「えっ?」
 隈井がソファから不審そうに2人を覗きこんだ。
「そうよね、香子さん」
「はい、ママ」
 素直にうなづいた香子は、先ほどの怒りがウソのように落ち着きはらっていた。

「えっ?ありゃりゃ、そうなの?」 
 香子とママを交互に見ながら、隈井はママに訴えかけるような視線を投げる。
 ママは含み笑いを浮かべながら黙ってうなづいた。
 香子はママの横にぴったりとすり寄って、黙ったまま口元が薄ら笑いを浮かべているように緩み、少し頬を紅潮させ上気しているようにも隈井には見て取れる。
「酔ってるの?」
 隈井は香子に問いかける。
 香子は隈井が言うようにまるで酔っ払ったような妖しげな笑みを浮かべて首を左右に振った。
 顔全体がピンクがかったように火照っているようだ。

「先生、この店にアルコール置いてまして?」
「い、いや。そうだったな」
「実は香子さんが自らすすんで美香の看護をしたいと言って頂けた以上、私もそれを拒む理由はありませんわ。香子さん、隈井先生の言いつけを守って美香の看護お願いね」
「はい、ママ。私は自らすすんで美香さんの看護をします。心からそうしたいと願っています」
 そう言って香子は隣にいるママの顔を目を潤ませ、切なげに見つめている。
 隈井の目の前で隣にいるママへ首を傾けて自分の頬をママの肩にすり合わせた。
「あら?もう我慢できずにおねだりなの?香子さん」
「ああああ、ママ、ママ。もっとこうしていたい。香子、ママのこともっとよく知りたいの」
 横にいるママにしな垂れかかる様にしてさらに香子はママの胸の辺りに頬ずりをして甘えた声を漏らす。
 隈井は香子の変貌ぶりに目をパチクリさせるばかりだった。


「香子さん、私のケガの具合、しっかりと先生に伝えて下さいね」
「はい、ママ。香子がお伝えします」

 そういうと香子はすぐに隈井のいるブースに立つと上気させた表情から微笑んでゆっくりと衣服を脱ぎ始めた。
「おいおい、柴崎君?」
 いきなり下着姿にまでなった香子に驚いて、隈井はまた香子のことを『柴崎君』とよぶ。
「ママの会陰裂傷について先生に報告します」
 そう言ってブラとパンティだけの姿になった香子は黒服がいそいそと片付けたテーブルの上に四つんばいになって乗ると擦り寄るように隈井に顔を近づけた。
 明らかに香子の表情は先ほどママや隈井に向かってタンカを切ったレディスっぽい荒々しさが消えて、上気した表情が妖しい女のメスの匂いを漂わせている。
 ママは含み笑いを浮かべたまま、隈井の隣に座った。

 ゆっくりとブラとパンティを体から外していく。
 隈井とママに向かって両足を開いて投げ出すように開脚させると香子はおもむろに両手で自分の会陰の部分をぱっくりと開いて見せた。
「おっほほほほ、キレイでいい色をしているじゃないか」
 ショーの始まりに隈井の機嫌はあっという間に直っていた。
「隈井せんせぇ、見てぇ、これが香子のなのぉ」
「きれいだ、すごくきれいじゃないか」
「香子。隈井先生に見られるとあなたはとても嬉しいはずよ。嬉しくて嬉しくてさらに幸せな気分で一杯になって感じてしまう」
「あん・・・・あふん」
 ママの言葉に引っ張られるように香子の襞が膨張して湿り気を帯びて緩んで開きスポットライトに輝いてくる。
「す、すごい!一瞬にしてこの変化はすごい!ママも大したテクニックを持っているじゃないか」
 隈井は香子の股座に顔を目一杯近づけて観察する。
 そんなスケベ親父丸出しの隈井を自分の両足の間に見下ろしながら、さっきの不機嫌な表情とはうって変わって香子は微笑んでそれを許していた。


「せんせぇ、こっち来て。手伝って」
 香子の甘ったれた言葉に隈井はママの顔色を窺う。
 ママは微笑みながら、「どうぞ」と隈井をテーブルの上に促した。黒服が背後で邪魔なソファを片付けてテーブルをさらに数卓つないでいく。
 まるで小舞台のようにヒトが2人乗っても十分なキングサイズのベットくらいに広がった。
「はむ」
 舞台に隈井が上がるや否や香子は手際よく隈井のベルトを緩めると膨張しかけていた隈井のイチモツに頬づりしたあとくわえ込んだ。
 咥え込んでは抜き、舌をカリに這わせ、また包むようにくわえ込んで舐めあげ、裏筋や袋に舌先を微動させて刺激を与える。
「う、うめえぇ、うますぎるぞぉ。し、刺激してくれるな、で、で、で、出ちまう!」
 隈井のそれは瞬く間に最大膨張してそそり立った。
「まぁ、まぁ、香子、すごいじゃない。センスと経験がモノをいっているようね。こっちの方は香子がお店で働くことになっても教えることはなさそうね。他のコたちにも見習わせたいくらいよ」
「お、おぉぉ、おおおおお、ママ、すごいよ、これ。しゃぶりなれてるどころじゃない!口だけでこれほどとは大したもんだ」
「ウフフ、先生もご存知だったのでは?こういう素行のコほど遊び慣れしてて、セックスにかけては若い頃から経験が豊富でテクニックの熟練度も高いのよ。そういった意味では麗奈のようなウブな世間知らずなコに逐一教え込ますような手間が要らずに要求はストレートに伝わるからセックスマシンとしては香子のほうが上じゃないかしら」
「まさに、まさに!麗奈もいい買い物だったが、あまりにもウブでなにも知らなさ過ぎた。教えてやらせてもすべてが稚拙で満足いくようになるまで時間がかかって苦労したもんだ」
「このコは特別よ。ファッションヘルスでのバイト経験もあるそうよ。さっき教えてくれたわ」
「ヒヒヒヒ、だから・か・・うをぉぉっ!そ、そんな、そんなとこチロチロされたら、あぁぁ、た、たまらん!」


「せんせぇ、そのままでいてね。香子が嵌めるから動かずに『マグロ』のままでいて」
「ひゃっはは、『マグロ』かい!いいよ、いいぞぉ香子」
 怒張しきって天井に向かってピンと屹立した隈井のイチモツに香子は自分のを差し込むように腰を落し始める。
 隈井は香子の生暖かい感触が自分のイチモツをゆっくりと包み込んでいくのを今か今かと下りて近づいてくる香子の豊満な胸を見ながら期待に胸躍らせていた。
 次の瞬間、ゆっくりと下りてくるはずの香子の体重が一気に隈井の腰に落ちてきた。
「うおぅっ!」
 びっくりして隈井は奇声を上げた。
 その隈井の腰の上で香子は隈井のモノを下半身に深く差し込んだまま激しく腰を振り体をくねらせ始めた。
「たたたたたたたた、たんま、タンマ!壊れる!壊れちまう!痛ててててっててててえ、そ、そんな激しくすんな」
「ダメ、ダメなの、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと」
 香子はさらに激しく上下前後左右に腰を大きくグラインドさせる。
「小休止!すこし小休止、いっちゃった、でちゃった、萎えちゃうって、てってててててていてててて」
 激しい腰使いにあっという間に果ててしまった隈井は香子を味わう間もなく、しかも拷問のような痛みに耐えかねて声をあげた。

「ウフフフ、大丈夫。先生にも私からご褒美の前渡し致しますわ。復活したらこのコが果てるまで先生もいつもより大きく太く元気なまま、このコが果てた瞬間に一気に吹き上がるわよ」
 苦悶の表情を浮かべる隈井の額にしなやかなママの指が優しくツンっと触れた。
「うおっ、元気になっちゃったぁぁぁぁぁ!」
 隈井がまるでCMのようなおどけたセリフを吐く。
「いいっ!あぁぁぁぁあぁ、いい!いいのぉぉぉぉ!隈井先生ぇ、隈井先せぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっぇ」
「たたたたたたたたたあーっ!吹きでる!発射ああああああっ」
「いやぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁぁっぁぁあぁ」
 香子の豊満な胸がどっぷりと隈井の胸から顔にのしかかってくる。
 

 隈井は今までにない大きな波のような余韻に浸っていたが、香子は間もなく自分から隈井とのドッキングを解いて再び開脚姿勢で隈井の前に腰を近づけた。
「見て、先生。わたしのお○んこ見て。グチョグチョでしょ。でもママのはもっとひどく傷ついているの」
 隈井との壮絶なセックスバトルの余韻が残った股間を香子は大きく押し広げて隈井に言った。隈井が香子の中に残したものがゆっくりと滝のように流れ出てくる。
「そ、そうなのか?」
 隈井の言葉に香子の背後でママは笑いながら首を左右に振った。
「安心して。このコ、今日は安全日らしいわよ」
「フフ、ママ、男はね、その安全日なんて言葉が一番信じられないんだよ。だから自分の好き勝手に使い捨てもできる都合のいい人形を欲しがるわけだ」
 ママは隈井の言葉に笑った。

「ダメ、こんな程度じゃママのケガの酷さも辛さも伝わらない。先生、しよ、もっと激しくしよ。わたしは先生にママのケガの詳細を伝えなくてはいけないの。私は身をもってママの受けた傷を私のお○んこに再現する、しなくてはいけないの」
 香子は真面目に自分の会陰を見てダメだしをした。
「おいおいおいおいおい、ちょっと、今日はもう勘弁してくれよ。前フリの楽しみさえなくいきなりだったから楽しむ余裕もなかった。今度にしてくれ」
「ダメ、ダメよ。私が先生にママの病状を伝えなければ、ママの治療ができないじゃない!」
 香子は真顔で怒っている。前かがみでしなだれたロングヘアーが開脚した股の間で床に触れている。
 髪に隠れた形のよい胸を隈井はごつい手で揉み上げた。
「あ、あん」
 隈井に揉まれる香子の表情は恋人とセックスに興じるときのように素直に喜んでいるようだった。

「香子」
「はい、ママ」
「先生はお疲れのようだから、今日はもうおよしなさい」
「・・・はい」
 香子は子どものように素直に困惑した顔になる。
「これから、美香の病室に先生と一緒になるたびに伝えてくれればいいわ。隈井先生が分かってくれるまで毎日よ」
「はい、ママ。私は隈井先生が分かってくれるまで毎日私の体でママの傷を再現してお伝えするようにします」

「おほほほほほお、こりゃ、かなわん!毎日かい!こんな激しいいヤツを」
 隈井は言葉とは裏腹に喜んでいる。
「隈井先生が分かってくれるか、美香の退院まで、香子は奉仕するのよ」
「はい、ママ。ママの言いつけを守ります」
 香子はそう言ってママに向かって満面の笑みを浮かべた。

「本当に目の当たりにすると怖いな。これが1時間前までママをババア呼ばわりしてメスを隠し持っていた香子とは別人のような態度と言葉遣い。しかも、自らすすんで俺に嵌めようと股を濡らすしな」
「別に特別なことはしていません。このコとちょっとお話をしただけですわ。これでも私のケガを直接診たかった?」
「いやいや、こういうシチュエーションとは。またまた、ママも大したテクニシャンだ。もしかして本当はママも人形を調製できる『ブリーダー』?」
「私なんてまだまだ。私はただこのコのココロの私が占める割合を、家族や友人、恋人や憧れのアイドルを思う気持ちを併せたくらいの量を占めるように言っただけですわ。ココロの奥の奥の方でね」
 ママは微笑んだ。
「そうすると香子にとってママは今、愛する家族・恋人や憧れのアイドル以上の存在かい?たまんないね、それじゃすべてにおいて、ママはこのコにとって絶対の存在なわけだ」
「何も強制的に隷属させる暗示より、よっぽど素直に服従しますわよ、不平も反抗も一切ない。自分の意志で動いていると本人は思っていますから」
「大したもんだ」

「さてと、最後に。香子ちゃん」
 ママの言葉に香子はテーブルから降りてママの前に全裸のまま直立した。
 隈井も身支度を始める。

「はい、ママ」
「さっき香子ちゃんに言ったとおり、隈井先生が分かってくれるか、美香の退院までに香子ちゃんは先生から300万円預かってね」
「はい、ママ。香子は先生から300万預かったらすぐママに連絡してお店に届けます」
「ななな、な、な」
 隈井は驚いて二の句がつけない。
「期限まで先生の言いつけは守りなさいね。でも先生の言葉より私の言葉のほうが優先するのよ」
「はい、もちろんママの言葉が香子にとっては一番大切です」
「いいコね」
「もしお金を預からないまま期限を迎えたら?香子ちゃん答えてちょうだい」

「はい、お金を預かれないまま期限を迎えたら、私は『隈井先生にもてあそばれ深く傷ついたので自殺します』と手紙とメールを家族・友人に送ってメスで頚動脈を深く傷つけます」
「な、なななな、なに言わせてんの!ママ!」
 隈井は、はきかけのズボンのままテーブルから転げ落ちた。
 黒服が数人駆けつけて隈井を助け起こした。
「そう。香子ちゃん、あなたは善悪の判断も生死の判断もしなくていいのよ。ママが全部決めてあげる。どう?うれしい?」
「うれしいぃ」
 香子は祈るように手を胸の前で組んでママの言葉に悦びを隠せない。



「ななな、どどどど、どうして、どうして・・」
 隈井はさっきからどもりっ放しだ。
「いけませんわ、先生。これは立派な調整。しかも素材を自ら持ち込んでのカスタマイズ依頼ですよ。商売は商売、頂くものは頂きますよ。まぁ、不慣れな私のようなもののカスタマイズだから割引させていただいてます」
「いぃ、いいいい、いつオレが彼女を調整してくれと言った?」
「ウフフフ、分かってるくせに。以心伝心というヤツかしら?何度もそれっぽいセリフ、口にしていらっしゃいました」
「ふ、ふ、ふざけんでくれ」
「だったら、なぜ今日は香子ちゃんではなく聖隷の麗奈を連れてきませんでしたの。規約を覚えていまして?」
「規約?」
「我われセルコンの施設には会員や許された者以外の入場はできません。彼女がこの施設に入った時点で先生は香子ちゃんが何の処置もされずにここから出れると思っていないでしょ?」
「う、う〜ん」
「今回はその規約を破った先生への罰も含めて少しきつくお仕置きさせていただきました」
「わ、わかったよ。払うよ!あ〜あ、バーゲン前にえらい散財だ!いいよ。これ置いていくから、勝手にしてくれ。キャッシュオンデリバリーだ、くそったれ」
 隈井は診療鞄の中の財布からゴールド会員のクレジットカードを無造作に黒服に渡した。



「お買い上げ、ありがとうございます(ウフフフ、本当は麗奈を制して香子を連れ立って病院を出た時点で麗奈から連絡があったのよ。聖隷はお買い上げいただいても組織の不利益には平気で主人を裏切り組織の利益のために動くのよ、先生)」
「ふん!ママの意地悪!」
 隈井は本当に泣きそうな顔になっている。
「先生はお帰りになるそうよ。車を店の前に、それから美香にも準備をさせて」
「バーゲンには意地でもいくからな!今回のエキシビションは新ブリーダーのTESTだそうじゃないか」
「はい、是非お楽しみに。その際は麗奈ともども香子もお連れ下さい。香子の深々度までの精神支配メンテナンスはその折に。それにバーゲンではなく、パーティですわ」
「分かったよ!じゃあな。香子の調製はあんがとよ。ママ、お前さんの言ったとおり、オレはコイツが欲しかった。ママの言ったとおりだよ、認める。じゃあなっ!」
 隈井と香子が店を出ていく。
「フフフ、素直なヒト」
 その後を追うように黒服に支えられ大き目のコートで隠すように覆われた美香が連れられていく。


「ママ、隈井様のゴールドカードはいかように?」
「ドライバーに託してそのまま病院に着いたらお返しして」
「カスタマイズ費用の精算決済は?」
「いいのよ。これに懲りたらあの先生ももう下手な行動を起こさないはず。それだけのお灸で十分よ。上には私の裁量の範囲で美香の秘匿のため必要最低限の人員確保を目的に堕としたと報告して」
「かしこまりました」
 黒服が小走りにカードを持って店外に出て行く。

「ま、意地汚いけど腕だけは確かだからね。あんなグレードの客まで久しぶりのTESTには興味津々なのね」
 ママは美香を送り出して一息ついた。
「それにしても・・・・・あのコ!ちょこまかと動いているのは聞こえてくるけど成果が出てるのか今日になってもなんの連絡もないわけ?」
 もうひとりの黒服に話をふる。
「はい、組織からも、受験者本人からも連絡はありません。加賀源内様のお電話からすでに受験者がLS(レディースワット)と接触がすすんでいるのかと推測されています」
「まったく、『陣内瑠璃子』、とんだ食わせ者かしら。まだまだ子どものクセに!少し釘をさしておかないといけないわ、携帯にさえ出ずに定時連絡もしないなんて。好き勝手に引っ掻き回されても困るわ。当日になって課題を提出できなくては私が怒られる」
 ママはソファにしなやかに腰掛けた。
「彼女にメッセンジャーを遣わせる。あの『はねっ返り』にお灸と進言のできる目一杯アクの強いキャラのヤツをね」
 その声に黒服が店のコードレスを仰々しく持ってきた。
「『ナイトホーク』を」
 ママの指示で黒服がプッシュボタンを押してママに渡した。
「『ナイトホーク』?私よ。あなたにお願いがあるの。TEST受験者のメッセンジャーとして、是非呼んできてもらいたいコがいるの。そうよ、『とっちゃんボーヤ』で。黙って、あなたの意見は聞かない。今夜中に連れてきて、いいわね」
 それだけ言うとママは『ナイトホーク』の怒鳴り声も聞かず電話を切った。
「まったく・・・。良きにつけ悪しきにつけ、今回のパーティーのキーマンか、『陣内瑠璃子』」






【東京 世田谷区 成城】


 午後10時、高級住宅街として知られる成城界隈はひっそりと静まり返り、雨音だけが周囲と家々とを隔絶するかのように響いていた。
 敷地面積も広く、住居のカーテンの隙間からもれる団欒の明かり意外、表の通りからは窺い知ることはきない。
 高い塀をめぐらせ、見上げるほどの鉄の門扉は訪れるものを拒むようにも思える。
 選ばれた者のみが手に入れたプライベートな聖域は、当然選ばれた者に許された者のみが立ち入ることが叶う、どの邸宅もそんな無言の威圧感を持っていた。

 その中の、真新しい瀟洒な洋風建築の建物の前に立つ人影は、臆することなく門扉の『伊集院』の表札脇のインターフォンをコールした。
押すと同時に周囲に設置された外灯の明かりが一斉に明るくなり訪問者の顔を照らす。インターフォンの黒いプレートに隠れたカメラは家人に訪問者の画像を瞬時に送った。

「あら?五十嵐先生じゃありませんこと?」
 インターフォンのマイク越しに家人の驚きを隠せないといった声が漏れた。訪問者は落ち着いた口調で激しくなり始めた雨音に声が消されぬよう少しばかりマイクに口を寄せた。
「こんばんわ、奥様。夜分遅くに失礼します。家庭教師の五十嵐です」
「どうしたんです?家庭教師のお仕事は、たしか明日の午後6時からのはずですのに」
 家人である母親の声は困惑していたが、相手が子どもの家庭教師とわかって不安の色はなかった。
「申し訳ありません。明日ではなく、どうしても琥南(コナン)君に伝えなければならないことがありまして」
「電話でいいじゃありませんか。琥南(コナン)はもうとっくに眠って・・・(ママーっ!だれぇ?早くお風呂入ろぉよぉ)」
 インターフォン越しに母親の後ろから元気な男の子の声が聞こえて、母親もインターフォン越しに息子の声が漏れては、プライベートな時間に訪れた訪問者にかける断りの言葉を失った。
 訪問者の『クスッ』と笑う声と表情が、煌々と照らされた防犯灯とカラーの画像付インターフォンの画面からこぼれた。
 母親の体面も、それを意に介さぬ子どもの声にすべてがぶち壊しになる見本になるようなシチュエーションだった。

「仕方ありませんわ、わざわざ雨の中お越しくださったのですもの。どうぞ、お入りください。ただし、用件は玄関先で手短にお願いします。琥南(コナン)はお風呂に入ったら明日の全校テストのために早く寝かせてあげたいのです」
 バツの悪そうな母親の声と共に重い鉄の門扉が自動でロックが外れて内側へと開いた。
「承知しました。ご無理を言って申し訳ありません」
 訪問者の五十嵐はインターフォンの前で深々と一礼すると敷地の中へ足を踏み入れた。家の玄関までは歩いてあと1分はかかる。



「うわーっ、五十嵐先生だぁー、いーがらーしせんせぇ、遊ぼうよ、ママにゲーム買ってもらったんだ、一緒にやろうよ」
 突然の来訪者が自分の家庭教師だとわかると、琥南(コナン)は隠れていた母親の後ろから飛び出して五十嵐の元に駆け寄った。
 そんな琥南(コナン)を五十嵐は意に介さぬといった風で無視して早紀と対峙していた。
 まだ学生でも通りそうな若くて、あどけなさも持ち合わせた母親が不機嫌な顔を隠さずに立っている。
「琥南、先生はあなたにお話があってきたのよ。お話が終わったら先生はすぐにお帰りになるの、夜はもう遅いし、あなたは寝る時間よ」
 母の早紀は琥南(コナン)をたしなめた。何の苦労もなく、育ちのよさを思わせる早紀の豊満で素晴らしいボディーラインがくっきりと浮かび上がるセーターにロングスカートのいでたちは家の裕福さをもうかがわせる。
「えーっ、ちょっとだけ!ねぇ、ママ、いいでしょ、ほんのちょっと!」
 琥南(コナン)は今度は早紀の腰にしがみついて駄々っ子のようにスカートの腰を揺さぶった。

「奥様、夜分本当に申し訳ありません」
「ご用件をおっしゃって下さい」
 深夜にもなろうかという時間に訪れた五十嵐に早紀は不快感をあらわにした。
「その前に、ご主人にも一言お断りを」
「その必要はありませんわ。主人はルクセンブルクの現地法人の立ち上げで帰国が明後日ですの。それまでは私が子ども達を守っていなければなりません。たとえ五十嵐先生であろうともお約束のないこんな時間でしたら本当はご遠慮いただきたかったのです。何かあっては私一人では非力ですので」
 そこまで聞いて五十嵐は靴を脱いだ。

「なら遠慮はいらないな。あがらせてもらうよ」
「な、なんなんです?先生、玄関先でと言ったはずです」
 すがりつく早紀を振り切るように五十嵐は勝手に応接へと入っていく。家庭教師の仕事で来なれた勝手知ったる他人の家だった。
「琥南(コナン)、お前に伝えることがある」
 30畳はあろうかというリビングの本皮張りソファに身をうずめて言った。雨で濡れたコートから滴る水が床やソファに落ちている。
「先生!一体どういうおつもりですか!あまりにも横柄な振る舞いではないですか。酔ってらっしゃるんですか?今日はもうお帰りください」
「やだね」
 いつもとは違う五十嵐の横柄な態度と母・早紀の剣幕から琥南(コナン)は事が尋常でないことを感じ取って部屋の隅で不安げな表情で萎縮していた。
「琥南(コナン)、こっちへ来い。来るんだよっ!さぁ、早く」
「帰ってください!いくら子どもの家庭教師だからといってこんな横暴なことが許されるはずありません!警察を呼びますよ!」
 理知的で若く美しい早紀の顔に怒りに満ちたシワが眉間による。
 琥南は普段全く目にすることのない見知った2人の大人の変わりように怖くなってとうとうその場で失禁してしまった。
「ママ、ママぁ〜、怖いよう、おしっこ、おしっこもらしちゃったぁ〜っ、びえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「帰ってください!息子だって怯えています。もう明日以降も来て下さらなくて結構です。ホーム学習派遣センターに文句言ってやるわ!なんてヒト!」
 早紀の怒りは収まらない。
「ママ、ママぁ〜、怖いよう、おしっこ、おしっこもらしちゃったぁ〜っ、びえぇぇぇぇぇぇぇぇ、びえぇぇぇぇぇぇ、冷たいよう〜」

「はぁぁ、なんだってこんなヤツ」
 五十嵐は落胆した表情で手を目にあてて深いため息をついた。
 そのあと、もう一度深いため息の後、指を3回鳴らした。
「『とっちゃんボーヤ、仕事だ・迎えに来たぞ』」

「はぁ?あなた一体何を言ってるの?ご自分が今何をしてるのか分かって?もう我慢できないわ、警察を呼びます!住居不法侵入で訴えます!」
 早紀は五十嵐の意味不明の所業に怒りをあらわにしてコードレスフォンを手に取った。早紀にはいつの間にか泣き止んだ琥南のことなど気にも留める余裕はなかった。

「うるせえよ!バカオンナ!キンキン声出すんじゃねぇ」
 早紀の目の前でふんぞり返って座る無言の五十嵐、早紀は自分の背後からの声にはっとして振り向くと小さな影がおもむろに早紀のスカートを背後から捲り上げてその中に潜り込む。
「えっ、ちょっと、な、何するの!こ、こら、いけません、そんなイタズラ!こ、琥南!」
 琥南はスカートの中に潜り込んで早紀のパンティの上から秘部の割れ目を筋に沿って3回なぞると最後はその割れ目部分を横切るように横に2回、ちいさな指でなぞった。
「あっ、あふぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうぅぅん、いっくうぅぅぅぅぅぅぅぅう」
 女が誰であれ絶頂に達する時には言うであろう言葉を早紀は琥南のイタズラのような指戯で恥ずかしげもなく口にした。
 次の瞬間、一瞬にしてパンティは潤沢に湿り、コードレスフォンを放り出して早紀は果ててその場で失神した。

「アテテテテテ」
 倒れこんだ早紀のスカートの間がもぞもぞと動いている。
「早く出てこいよ。このバカ琥南」
 ソファに座る五十嵐の声が荒い。
「うるせえなぁ、わかってんよ」
 スカートの中から這い出してきたのは、先ほど怖さのあまりに失禁して泣きじゃくっていたあの琥南だった。

「琥南、仕事だ。ママからお前に直々のご指名だ」
 表情にも出さずに五十嵐は言った。
「フン!少しはゆっくりさせろよ、ずっと封印しときやがって解いたそばから『仕事』かい!はぁ〜やってらんね」
 子どもの口にする言葉ではない。先ほどとは眼つきも仕草も全く稚拙さが排除され、大人びた言葉さえ琥南は口にした。
「誰に飼われてると思ってるんだ。勝手は許されない」
 五十嵐の言葉は冷たい。
「着替えぐらいさせろよ、ションベンちびらせたのはお前だろ!どうして、こう、穏便にコトが運べないかね、あんたは」
「誰が『あんた』だ。それにお前がびびって勝手に漏らしたんだろ。このションベンたれ」
「うっせぇ!お前は黙ってろ。おい!バカ女、早紀!」
 琥南の声と蹴りに早紀はパッと目を開けるとまるで兵士のように直立の姿勢になった。

「はい、琥南様」
「出かける。着替えをもってこい」
「はい。かしこまりました」
 さっきとはうって変わって従順な早紀は琥南を『琥南様』と呼び、いそいそと着替えを取りに行った。
「いい女だろ。結構体もいいんだぜ、あとで裸のディスコダンス見せてやるよ。腰の辺りなんかグイグイいやらしげに動かしてな」
 そう言いながら、失禁したズボンとパンツを五十嵐の前で脱ぎ始める。

「まったく、そういうところは子どもなんだな」
「あん?」
「普通の男ならレディの前で下半身の着替えなんかしないだろ」
「なんだ、『ナイトホーク』が恥ずかしがってんの?オレのこの立派なナニを見て?」
 下卑た笑いを浮かべながら、琥南はまるでクレ○ンし○ちゃんの象さんのポーズをとる。ただし、イチモツだけは異様に大人びていた。
「やめろって言ってんだろ!また封印してやってもいいんだ。タダのガキに戻るか!それともちょん切られたい?好きなことできなくなるよ!」
 『ナイトホーク』と呼ばれた五十嵐は琥南のイチモツを目の前に最後は女の言葉を垣間見せた。
「わかったよ。そう怒るなよ、また今度な。クヒヒヒ、お前もオンナなんだよね、それもとびきり可愛い」
「誰がっ!お前なんかに!」

 そのとき扉が開く。
「琥南様、お着替えをお持ちしました」
 早紀がひと揃えの着替えを持って入ってきた。
「よし、着替えさせろ。その前に小便くさくなったオレ様の体をお前が舐めてきれいにしろよ」
「はい」
 そう言うと早紀は無表情のまま、従順にひざまづいて小さな体を舐め始めた。
「おい、咥えてきれいにしろ」
「は、はい」
「辛い顔なんかすんじゃネえぞ、気分が萎えるからな」
「ウフっ、はいっ、琥南さまぁ」
 琥南の命令どおり早紀は琥南に向かって愛らしく微笑むとそそり立った琥南のイチモツに頬ずりを何度も繰り返す。
 まるで飼い猫が主人に媚を売る姿そのものだった。
 上目遣いに琥南を濡れた目で見つめると、見せるように妖しく唇の周りにゆっくりと舌を這わせた後、早紀は『はむっ』とくわえ込んだ。
 すでに母を思わせる威厳や母性など微塵も感じさせない乱れた姿だ。



「まったく、お前を見てると末恐ろしいね。封印して必要な時だけお前の自我を起こす組織のやり方に納得するよ」
「不憫だと言ってくれ。無理やりガキにもどされてちゃ、好きなオンナいじりだって忘却のかなた。せっかくの能力だって使えることすりゃ覚えてねえ」
「『とっちゃンボーヤ』、お前が突然変異なんだよ」
「そのネームで呼ばないでくれる?カッコ悪りぃから。せっかく勃たしてもらってるのに萎えちゃうよ、ボク」
「なにがボクだよ。いじめられてたくせに」
「フフン!そのおかげでオレは能力に目覚めた」
「えらそうに。痛くない、苦しくない、怖くないって言い続けてたって言うじゃないか。それもまぁ、自己催眠のはじめか」
「そうさ。オレにとっては俺自身しか守ってくれるやつなんかいなかった。親も誰だか知らない。いじめられるだけ、いじめられると自分に閉じこもるしかないもんな」
 琥南はそう言いながら早紀の頭を掴んでより奥まで咥え込む様に顔を引き寄せる。


「そのままじっと『いじめ』に耐えてやり過ごしていれば、普通の生活が送れたんだ。こんな世界に足なんか突っ込まずにいられたものを」
「満足してるぜ、この力を掘り起こした自分によ。封印され続けてるのはちょっとイヤだけどな。おい!イクぞ!全部飲めよな!」
「はい、下さい。早紀に全部、下さい」
 琥南は早紀に言いつけると早紀は軽くうなづいた後、喉をゆっくりと鳴らした。
「ふぅ〜、生き返るぜ。ナイトホーク、あんたはどうして能力を身に着けた。ん?まあいいよ、話したくないなら。オレはね、ある時、オレの言葉が本当になることに気づいた」
「どんなこと?」
「いじめてたヤツラに抵抗してた時、ちょっと悔し紛れに力を込めて言ったオレの言葉にヤツラ反応しやがった。声が出なくなったり、急にバカみたいに笑い始めたり。最後には死のうとするやつまで」
「それで気づいたのか」
 ナイトホークは改めてこのコを末恐ろしいと思った。大した訓練もせず、得ようと思ったわけでもない異様な力をこんな思慮分別が稚拙なうちに開花したことに。

「おい、早紀、オナニーして見せろ。激しいやつな。オレを喜ばせろよ!」
「は、はい。琥南さま。早紀は琥南さまが喜んでいただけるように激しいオナニーをいたします」
 そう言うといそいそと早紀は全裸になって広いリビングのカーペットの上に座るといきなり足を大きく開いて両手を股間へと運んでいった。
「あん、あぁぁん、琥南さまぁ、見て、早紀を見て、いやらしい早紀の音を聞・い・て」
 いくらもしないうちにクチュクチュと湿った音がリビングにもれ始めた。意にも介さず琥南は着替え始める。


「そのうちよ・・・」
 琥南は話を続けた。
「そのうち、クラスのいじめっ子のガキだけじゃなく、他のクラスメートや上級生、オレの生活していた施設の仲間にも言葉が効くことが分かってきたら、学校も俄然楽しくなってよ、まだ純粋にな」
「でも、それだけじゃウチの組織が目をつけたりはしない」
 ナイトホークは、このコと組織の関わりに興味が湧いていた。
「そのうち、クラスの仲間達がみんなオレに逆らわなくなってくると、今度は上級生や最後には先生までオレの言葉で絡めとっていった。と、言ってもそいつらを弄ぶわけじゃなく知識を吸い取らせてもらった」
「知識を?」
「そうさ、『大人の考え』ってやつをね。面白いね、実に興味深い。そうしたら、急に学校なんてガキの吹き溜まりの幼稚な施設に思えて」
「だからって、お前は外見は子どもだ。いくら大人の知識を取り込めたからといって通用するわけない」
「別にそれでもよかった。大人の話を聞いたところで性欲なんてものには何の関心ももてなかったよ、アレさえなければ。ただなんとなく一人ぼっちで誰かにこの能力の使い道について相談したくなったんだ」
「アレって?それがウチの組織ってコト?」
 
 琥南の視線がそれてる。すでに横たわって大きな喘ぎ声を漏らして乳房を揉みし抱き、股間を緩々に濡れそぼらせて乱れまくって琥南の名を呼ぶ早紀に釘付けになっていた。
「あぁぁ、琥南さまぁ、琥南さま、早紀もうぐちょぐちょ、いれてぇ、いかせてぇ、早紀をいかせてぇぇぇ」
「コイツ、いい女だろ。すごいぜ、入れたとたんにキュウって締め上げてくるんだ、腰をグイグイ使ってよ。こんどお前とも是非やってみたい」
 足元のスリッパでパカーンっと琥南の頭を叩いた。
「ってえな!ウソだよ、ウソ!イッツじょーく!」
「準備ができたんならいくぞ!」
「ったく!まだ靴下も履いてねぇよ!もっとゆっくりさせろよ!」
 そう言いながら琥南はナイトホークの隣に「よいしょ」と腰掛けて靴下を不慣れな手つきで履きやすいように口をたぐい寄せる。


「いつも、このオンナに履かせてもらってるから、慣れてねえんだ」
「靴下ぐらい自分で履けよ。人間が腐るぞ」
「うるせえな。ある日、うちの学校にインターンシップだかなんとかだとかで教員や学校カウンセラーを目指す大学生がやってきた。そのカウンセラーがたまたま見ちまったんだよ、俺が言葉でクラスメートを服従させてるところを」
「バカね。そういう時は周囲に気を配らないと。今度の仕事でそんなことやらないでよね」
「わかってんよ。いちいち、うるせえな。でよ、そのカウンセラー志望のヤツがオレを掴まえちゃ、ああーだこうだと聞きたがる。そいつも興味本位じゃなく親身のようだったからオレも心を許しちまっていろいろ話をした。ガキだったんだな」
「フ、今だって十分ガキじゃん」
「うるせえよ。いちいちチャチャ入れるんならしゃべんねえぞ」
「あっそ、いいよ、別に」
 そっけなく言うと、ナイトホークは立ち上がる仕草を見せる。

「ウソだよ、喋らせろよ。久々に封印を解かれたんだ、少しだけ本来のオレに戻るまでのアップだ。さて、ところがだ、この女、良家の子女だかお嬢様だか知らないがあまりにも真正直なバカだったから研究対象としてのレポートに書きやがった」
「アハハハハハ、わかった、そのオンナが所属していたのが、もしかしたら帝都女子大の緑川教授のゼミだったんだな」
「ちっ!先に言うなよ。話が続かねえ」
「なるほどね。緑川の目にとまったんだ。あの教授は長年、組織の識者会の理事だと噂も聞く。何人か帝都女子大の素材の調製を私もしたよ。金払いはいい」


「そんなこと、オレは知らねえからよ。放課後や休み時間に足しげくカウンセリング室に通っては色々話をしたな。オレの初恋かもな」
「プ、プフフフフフ、ぎゃははははぁ、とっちゃんボーヤの初恋!あはははは」
「笑うなよな、おかしかねえだろ!そういう年齢なんだから!」
 琥南はむくれた。
「おかしかない、可笑しくはない。そうだよね、あんたまだそういう年齢だ。どうもあんたと喋ってると年齢を忘れてしまう」


「言っただろ、体はガキでも知識と下半身はもう十分大人なんだぜ。ある日の放課後、いつものようにカウンセリング室に行ったら妙な声が聞こえてきた」
「妙な声?」
「びっくりした。先生の机の上にそのオンナが白衣に裸で突っ伏してやんの。しかも後ろでスカートを捲り上げて嵌めまくってるのがウチの担任の体育教師ときた」
「あら、まぁ?あなたの失恋ね、フフ」
「違うな、目覚めたんだよ。そこで、オレは急に股間が堅くなっていても立ってもいられなくなった」
「立ってもいられないんじゃなくて、勃ちっぱなしになったんでしょ。あはは、青い体験?青春してるわね。そこで自分でしたのかな?琥南くん」
「チッ、からかってやがる。そのとき、オレはコノ女を自分のものにして同じようにヒイヒイ言わせたい欲望に駆られた。そうしたら急に体の節々が軋むように痛くなって気づいたらオレの息子だけが大人みたいにでっかくなった」
「すごいわね、あなたの性欲。性欲が体までも自己催眠で変えてしまったってワケ?」

「もう、何も考えられなくなって部屋の中に入ってその女を犯したんだ」
「担任の先生はどうしたの?」
「裸のまま犬に見たいに吼えながら部屋を出て校庭から飛び出していったまんま2度と学校に帰ってこなかった。オレ、そいつにどんなことを命令したか覚えてねえんだ」
「可哀相に、あなた、結構罪深いわよ」
「男には厳しく、オンナには優しくだ。そのときのインターン何とかの学生カウンセラーのオンナがコイツだよ、早紀だ」
「えっ!?」
「嫌がって抵抗したよ。だろ?イケメンの体育教師に代わって自分の背丈の半分ちょっとしかない、文字通り『チビッコ』に犯されるんだ」
「あんた、このコ嵌めらるのに椅子でも使ったの?」
「うるせぇ!そこんとこは問題じゃねえ。嫌がられて暴れまわられて騒ぎ出されたら、それこそ騒ぎになっちまう。オレは慌ててコイツに力を使ってこういったんだ。『オマエはオレのオンナだ。もっと今の続きを楽しみたい。オマエの望むようにオレにお願いするんだ。オマエがリードしろ』」
「よくまぁ、そんなセリフ・・・」
「イチコロだったよ。コイツは今までオレに見せたことのないようなイヤらしい要求や仕草を見せながら、オレに犯されることを望んでリードしてきた。和姦だな」
「それって自慢してるの?」
「和姦なら犯罪じゃないんだろ?」
「あんたと喋ってると頭が腐る」
 ナイトホークは呆れ顔でつぶやいた。




「旦那とは名家同士の見合い結婚、コイツの在学中にも関わらずだ。どう見ても政略結婚だな。2人ともオレを息子だと信じてるがオレが一声かけりゃどうとでもなっちまう。都合のいい隠れ蓑だな」
「あんたがいなくなったら?」
「大丈夫だよ、2階で寝てる弟がいるから。もともと息子は一人だったと思わせればいい。父親の男にはコイツからキーワードを言わせれば済む」
「ふーん。学校は?」
「担任にキーワードを吹き込めば、朝の始業前の誤作動チャイムが、伊集院琥南の存在を学校丸ごと忘れさせられる。どう?オレって頭いいだろ。大人だろ」
 琥南は鼻を鳴らして自慢げだった。
「フン、まあまあってとこ」
「可愛くねえな。実はな、2階で寝ている赤ん坊は父親の男と早紀の間にできた子じゃねえんだよ、ククク。オレの弟じゃねえ。まぁ、オレも兄貴じゃねえがな」
「ま、まさか、あんた」
「クククククク、そうさ、オレと早紀の間にできた、オレの息子さ。ギャハハハハアハアハアハアハ」
「恐ろしいヤツ!本当はもうオヤジじゃないの?成長できないオヤジ」
「ククク、薬物で高校生から子どもに変えられちまったってか?正直、オレも自分の年齢なんか覚えちゃいねえ。封印されて起こされるたびに時差ボケしちまって、本当にこのまま成長できないかもな」


「あん、入れてぇぇ、琥南さまぁっぁ〜、わたしのご主人様ぁあ、太くて大きいその琥南さまのものでつらぬいてぇ、早紀もう我慢できないぃぃぃ」
 両手を琥南に突き出すように一杯に広げて早紀は求めていた。


「その後、オンナのことにばっかり興味がいって、そこらじゅうで女を喰いまくってたら組織に狙われた。逃げまくってたけど、それをとっ掴まえたのがアンタだろ、ナイトホーク」
「そう、か。なるほど、そうつながるのね」
「識者会はオレの可能性に魅力を感じながらも末恐ろしさに能力を封印して、このオンナの息子としておいたわけだ。下手にオレの中をいじくって能力が消えてなくなっちまうのも惜しかったんだろ」
「緑川教授はあるオークションの時に、いずれ大器のブリーダーが生まれると誇らしげに言ってた。あなたのことがお気に入りなのよ、殺しはしないわ、従順ならね」
「組織には逆らわないよ。封印なしで生活させてくれるならなんでもする。そう言っといてくれ」
「だったら、今度の仕事でも結果を出すことね」
「どんな仕事?」

「あなたと同じような突然変異型の高校生能力者への接触よ。今、組織のテストを受けている。あなたと同じで型に嵌まりたがらないから、あなたがそのコを見つけ出して中間報告を受けて。それと今後は好き勝手しないよう進言してくれればいいのよ」
「ふーん。あんま、気が進まないねぇ」
「舞台は女子校。はい、これが問題の『陣内瑠璃子』と名乗ってる受験者」
 ナイトホークは写真を手渡した。
「じょ、女子校!いい、すごくいい!それに、結構コイツイケてるじゃんか!お、オレが喰ってもいいか?」
 ガキのくせに琥南は興奮を隠せない。
「バカ!あんたが喰ってどうすんのよ!あくまでこのコにパーティー当日まで課題をしっかりこなすように言って!」
「オレ、どちらかというと優等生ぶったセリフ好きじゃねえ」
「好き嫌いでモノ言うな!いい、少しでも変な真似したら、しばらく封印されたまま使ってもらえないよ」


「あなたはそこの中等部へ潜り込んでね」
「な、なんで中等部?」
「高等部と中等部は同じ敷地内、しかも中等部までその学院は共学だから。だからあなたが選ばれた」
「ばれねぇか?オレ、こんなちっちゃくて中ボーに見えねえだろよ」
「小等部は幼稚部と一緒に2駅先のところにあるの。知識は大人なんでしょ?自分でなんとかしなさい。それとも自己催眠で体格まで変えてみせる?必要な手続はすべて済んでる、あとは私と一緒にママの所に行って細かい指示を受ける」


「わかったよ、やり方は任せてもらうぜ。少しくらい遊びたいからな」
「これによって、あなたの今後の待遇が変わるかも。それでも遊ぶ?」
「チクショウ!汚ぇぇ。足元見やがって!」
「さ、行きましょう」
「ちょっと待てよ。仕事ばかりじゃ、やってらんねえから、その前にアメでもくんねえか?」
 ぺロッと舌を出した。
「飴くらい、この家にあるでしょ」
「違う、違う。少しはいい思いさせろってこと。お前を喰いたいの、オレは。もう性感が敏感になってるはずだぜ、お前のよ」
 そう言って薄ら笑いを浮かべて琥南はナイトホークの脇腹をツンと指で小突いた。
「何をバカなことを!はうぅ!あぁぁぁぁぁぁ」
 ナイトホークは体を小刻みに震わせてその場にへたり込んだ。
「お、お前、わたしに、な、なにを・・・」
「きゃはははははは、オレとあれだけ近くにいて、あんだけ長く話していて気づかないお前も馬鹿なんだよ!おれはずっとあんたに向かって力を込めて言葉を発してた」
「何ですって!」
「男装の麗人、ナイトホーク様。いつのまにか言葉遣いが女に戻っていたのに気づかなかったのかい?あんたはオレの言葉にココロをほぐされていたのさ」
「く、くそっ!か、体の自由が・・・」
 へたり込んだまま起き上がることもできずにナイトホークはもがいて琥南を睨んでいる。
「無駄、ムダ。オレの能力にあんたは絡めとられた。油断したね、3つ数えるとあんたは自分が誰なのか、ここがどこかも気にならなくなって、このオレを求めるようになる。3つ数えるとお前はオレを全身で愛さずにはいられない。オレのものになれよ、ナイトホーク!」
「や、やめろぉっ」

「ふふふっふ、3、2、1」
「くそっ!」
「ゼロ!はいっ!」

 苦しげに睨んでいたナイトホークの顔がふっと和らいだ。目を潤ませて着ていたびしょぬれのコートをいそいそと脱ぎ始める。
「ははは、結構いい体してるじゃないか。どこで鍛えたんだい?女はね、腿と尻の境界がはっきり分かるほど、体が鍛え抜かれていることが分かるんだってよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁあ、こなん〜、琥南さまぁぁぁぁ、私を抱いてえぇぇ」
「ククク、聞いちゃいないか。いいザマだね、もう濡れてやがる。もっと広げろよ、そう。いいか、入れるぞ」
「はやく、はやくぅぅぅぅ」
 ナイトホークは周りを気にすることなく乱れていた。
「一気だぜ。お前がイった瞬間からお前はオレに逆らえない、お前はオレの意のままに動く人形になるんだ、いいな」
 琥南の言葉に我慢の限界にまで性感を高められたナイトホークは何度も首を縦に振ってうなづいた。
「入れて、早くいれてぇ」
 ナイトホークの腕が琥南の肩から背に回る。琥南は小さいから入れるには顔がナイトホークの胸の下にまでずれなければならない。
「よいしょっと。さあ、イっちまえ。そしてオレに従え!入れるぞ、おるりゃあああああああ」
「あぁぁぁぁっぁあああああぁぁ」


 琥南は笑いが隠せない。琥南のお目付けであるナイトホークを自分が取り込んだことに征服感を感じていた。
「クククク、これで有能なコマが増えた。あとで呪縛を解くキーワードも聞きだしてやる」
 満足げに琥南はほくそえんだ。


「さ、そろそろ行こうか」
 琥南はポンと肩を叩かれた。
「へっ?」
 気がつくと自分の下には早紀が満足そうな笑みを浮かべて寝息を立てている。
 声のした方を見るとソファにどっかりと座ったナイトホークが、来た時のまま濡れたコートで冷めた目で琥南を見下ろしていた。
「あ?お?おお、お、お、お、お、お、おまえっ!」
「バカが!このナイトホークを取り込もうなんて100万年早い!組織の枠からはみ出して暴走しようとする意欲満々だな、お前」
「くっそぉぉおぉ!いつのまにオレ様を嵌めやがったんだ!」

「お前はまだまだガキなんだよ。その甘さが分からないうちは歯向かうな。『とっちゃんボーヤ、眠れ!よい子』」
「や、やだ、戻りたく・・・あっあっああああああああああ」
 琥南は頭を抱えてうずくまった。


「さ、琥南くん出かけるよ」
 ナイトホークは家庭教師五十嵐の仮面を被って努めて明るく諭す。
「あれぇぇ?五十嵐せんせぇ、ぼくなんで裸なのおお?お母さんも裸で寝テるぅぅ」
 今までのふてぶてしい態度が一変して、あどけない子どもに戻ってしまった琥南が不思議そうに言った。
「いいから、早く着替えてね。これから楽しいところに行くんだよ」
「えっ?」
「お母さんが寝ている間に先生と夜のディズニーランド!」
「うっわぁぁぁぁ、うれしいなぁ!」
「さ、お母さんを起こさないように、そっと、そっとね」
「う、うん!そっとだね」
「そうよ、はやくね。ったく!最初からこうして連れて行けばよかったか・・」


「でもせんせい、ぼくひとりじゃお着替えできないの」
「ふぅ〜やれやれ、どっちにしたって手がかかるヤツ!」
 そう言いながら、五十嵐先生ことナイトホークは子どもに戻した『とっちゃんボーヤ』の着替えを手伝うと、その後、手を引いて新宿のママのもとに連れ出した。

「コイツまで動員させて、ママは一体何考えてるの。全く、おとなしくTESTの課題をこなそうとしない『陣内瑠璃子』ってどんなタマなのよ、まったくいい迷惑!」
 雨の中、ナイトホークは吐き捨てるように言った。
 はっと、自分の発した言葉にナイトホークは大きく頭を振った。
「フッ、まさか自分ほどのレベルで、コイツの術中に堕とされかかるとは。認めたくないものだな。緑川教授の言うコイツの潜在的なブリーダーとしての適性というものを」
 ナイトホークはしっかりと握った琥南の手を一度緩めると、あらためてしっかりと握り返した。








 
 


 

 

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