ファンタジーシティー


 

 

マイ・ディア・シスター (scene1-3)


−1−


 巫女の朝は早い。
 夜明け前に起き、白い一枚着(ローブ)を羽織って冷水を浴びることから、マヤの一日は始まる。
 井戸水は凍えるような冷たさだが、かまわずざぶざぶとかぶり続ける。
 いつもより念入りに。胸のうちに溜まった雑念を洗い流すように。
「なにをしておるのだ?」
「きゃっ」
 背後から呼びかけられて、手繰り寄せた水桶が手からこぼれ落ちた。
――じゃぶん
 井戸の底から響く重い水音に首をすくめる。
「あ…あのっ、おはようございま……あれ?」
 振り返っても誰もいない。
 ぐしぐしと目をこする。
――こつん
 小石かなにかが、頭に当たった。
 見上げると、赤毛の悪魔が社殿の屋根の上に座って朝の昭光を浴びている。
「おはようございます、イシュティアさま」
「うむ、早いな。それで、なにをしておるのだ?」
「はい。水垢離(みずごり)といいまして、心と身体を清めるための朝のお勤めです」
「たかが水浴びで清浄な心とやらが手に入れば苦労はなかろう」
「…くしゅんっ」
 ごもっともなお言葉だった。
 鼻水を拭いながらでは説得力がないだろうとは思いながら、一応言い返してみる。
「形から入るというのやり方もあるんじゃないでしょうか」
「それで気がらくになるのなら止めはせんがな。冷えた手で釣瓶を扱うと、皮膚が切れるぞ」
 イシュタは屋根から飛び降り、赤くなったマヤの手を握った。
 身体が内から、ぽかぽかと暖かくなってくる。
 濡れた白衣から湯気が立ち上り、アイロンでもかけたかのようにパリッとした形を取り戻す。
「どうだ、せっかく貴様の神が目の前にいるのだ。告解でもしてみるか。
 余が屋根に登っているのも気づかぬほど熱心に“心を清め”なければならぬ悩みがあるのだろう?」
「……悪魔は人の心が読めると聞いていますが」
「言葉にせねば貴様が救われまい。その、金髪のシスターをどうしたいのだ?」
 セアラ・ヴェルネ。マヤの先輩、大切なお姉さん。
「どうしたいんでしょう。自分でも、よくわからないんです。
 アレクさんは、セアラさんを支配して、自分のものにするっていうんです。
 セアラさんと一緒に、アレクさんに抱いてもらえるのは、きっと素敵なことだと思います。
 でも、ノエルさんのこととか見てたら、なんだかまた不安になっちゃいました」
「自分の主人が信用できないのかな」
「そういう言い方は卑怯です」
 考えが上手にまとまらないんけど、信用…とか、そういう問題じゃないと思う。
「アレクさんのためなら、わたしはどんな目に遭ってもかまいません。でも、ほかの人は別です。わたし、セアラさんのいいとこいっぱい知ってます。いつも凛々しくて、頼りになって、厳しいところもあるけどほんとはすごく優しくて…… そういうところがなくなっちゃうの、わたしは嫌です」
「だが、そのシスターとともに、アレクサンドルに仕えたいとは思っているのだろう?」
「はい」
 マヤは答える。
 都合のいい考えだとは、わかっているつもりだ。
「ならば、貴様が自分でやってみたらどうだ?」
「え?」
「余がくれてやったのはなにも性技ばかりではない。血の記憶を呼び覚ませ。検索のキーは催眠術(hyonosis)だ」
 握られた手から、魔力が伝わってくる。
 平衡感覚がくらみ、視界が白くなる。
 一瞬、意識が飛びかける。
「―――たかな?」
 ぼうっとしていて、聞き取れなかった。
 イシュタは耳元で、もう一度ゆっくりと呼びかけてくれる。
「思い出せたかな。催眠術のことを」
 催眠術。魔力によらず、人の心を操る技術。
 魔法ではないのだから、セアラの高い魔法防御は問題にならない。
 それどころか、彼女は被術者としての条件を完全に満たしている。
 頭の回転が速く、内省的で、マヤのことを信頼してくれる、まだ若い、女の人。
「わたしが、セアラさんを、操る。催眠術で、わたしとおなじ、アレクさんが大好きな、恋する乙女にしてしまう」
 口に出してみると、それはとてもすばらしいことに思えた。
 巫女の禁忌を破って、アレクに処女を捧げたときのように。
 欲望のままに振舞うのはきもちのいいことだ。
 まして、それが最愛の人のためになるのなら。
「ありがとうございます。わたし、アレクさんに話してみますね」



−2−


 アレクが目を覚ますと、すぐ隣に見慣れぬ半裸の女性がいた。
「どぅわっ」
 跳ね起きて、彼女の姿をまじまじと見つめる。
 長い鳶色の髪、同色の瞳、きりりと整った口元、スレンダーな肢体。
 彼女は低く落ち着いた声でアレクに言う。
「おはようございます、御主人様」
「ああ、おはよう、ノエル」
 ノエル・ランフォール、自警団員。アレクに絶対服従し、常にアレクの利益だけを考えて行動するよう洗脳された、忠実な下僕(しもべ)だ。
 今も身じろぎもせず、命令が与えられるのを待っている。
(そういう態度されると、変なこと言いにくいんだよなあ)
 アレクのモノは朝の生理現象で堅くなっている。
 舐めろとか跨れとか、どんな命令でも躊躇う素振りすら見せず従うのだろうが、それもいまいち気が乗らない。
 昨晩のように、魅了(チャーム)の魂晶石(ソウルクリスタル)で思慕と情欲をかきたてるか。
 って、その魂晶石はどうした。
「ノエル、魂晶石をどこにやったか知らないか? 昨日の夜、おまえに見せた、赤い宝石なんだが」
「申し訳ありません。私の記憶にはございません」
「落としたかな」
 アレクがベッドの下を覗き込もうとすると、ノエルが即座にそれを制した。
「御主人様は寝台の上をお探しください」
 言ってベッドの下に這い入る。
 アレクは、ベッドの上に集められた様々な大きさや素材の布地を、1枚1枚広げてから投げ捨てていく。
 1インチもある赤い宝石だ。見つからぬはずがないのだが。
――コンコン
 小屋の扉が叩かれた。
「入っていいよ」
「はいっ。おはようございます。なにかお困りですか?」
 真っ白な一枚着(ローブ)を着たマヤは、入ってくるなり小首をかしげる。
「いや、探し物を。赤い宝石なんだけど……」
「探し物…ですか。それ、魔法かかってたりします?」
「ああ、かかってるけど、なんで?」
 マヤは答えず、壁に掛かったコートの胸ポケットから魔石を取り出す。
「これでしょう? 失せ物探しは任せてください」
 えへん。マヤは笑顔で胸を張る。
「見つかりましたか。……けほっ、けほっ」
 ノエルがベッドの下から這い出てきた。
 髪や肩についた綿ぼこりをボロ布で払ってやる。
「俺が寝ぼけてた。悪かったな」
「私は御主人様の道具に過ぎません。どのようにでもお使いください」
 平坦な口調でどうにか言い切ったあと、ノエルは遠慮がちに口元を押さえる。
 様子を察したアレクが手元の布を渡すと、顔を伏せて小さく鼻をかむ。
 道具に徹するというのも難しいものだ。
「あんっ。見つけたのはわたしですよぉ」
 マヤが駆け寄ってきてアレクの腕をつかむ。
「ありがと。えらいよ、マヤちゃん」
 くしゃくしゃと髪をかき回し、額にキスをする。
「そのー、キスは唇にしてくれると…うれしいです」
 魂晶石を握ったまま、人差し指の先をくわえてマヤが呟く。
 上目遣いに見つめてくる瞳には、昨夜のノエルと同じように魅了の魔石の赤が宿っている。
 アレクはその手を取って、魂晶石をぎゅっと握らせる。
「…ちゅ…ん…む………」
 言われたとおりに唇を重ねると、熱心に舌をからめてくる。
 衣の中に手を差し入れて、胸を撫でる。
 マヤは幸せそうに柔らかく息を抜いて、アレクの舌を求め続ける。
 二人の唇の間から、あふれ出した唾液がこぼれる。
 アレクはそれを右手で受け止め、マヤの胸に揉み込むように塗りたくる。
 固くしこった乳首が、てのひらに感じられた。
「白衣の下、なにも着けてないんだね」
「朝のお勤めで、水をかぶったりするから……」
「下も?」
「はい……、はんっ」
 指で触って確かめる。
 マヤの秘裂は、既にべっとりと濡れ始めていた。
「ノエル、マヤちゃんのここを舐めてやれ」
「はい。マヤ様、失礼します」
 ベッドの下に潜っていたせいで魔石を見る機会がなかったらしく、ノエルは魅了の術にかかっていない。
 事務的にも思える態度で命令に応じ、マヤの股を開いて秘所を舌で撫でる。
「あふぅ…ふたりがかりなんて、ずるいです」
「もっといっぱい、いじめてあげるよ」
 左腕に背中を預けさせ、右手でさっきまでより激しく胸を揉みしだく。
 下半身はノエルに任せ、首筋を舐め、胸やわき腹をさする。
「あっ…ふあっ……ぁ…ああんっ…、あはぁ……はぁ…はぁ…はあぁ……」
 抵抗なのか快感からか、マヤはしきりに身をよじらせていたが、すぐにくてっと力が抜けて為すがままになる。
 あえぎ声を出す小さな口を唇でふさぐと、ノエルがマヤの秘部を舐める卑猥な水音だけが響く。
「くぅん、なんだか、身体の中が、ぞくぞくします……」
「感じてるんだね?」
「はい、感じてます。感じちゃってますっ、でもっ」
「でも……どうしたんだい?」
「こんなに、してもらってるのに、わたし、なんだか…ものたりないんです……」
 潤んだ目が、期待を込めて、アレクの股間を見つめる。
 ズボンのフックは外れているので、マヤの魂晶石を握った右手が、グーのまま、パンツのふくらみを撫でさする。
「やらしいなあ。マヤちゃんがこんな女の子だなんて、昨日まで思ってもみなかったよ」
「エッチな女の子でもいいって、言ってくれたじゃないですか」
 パンツが親指でずり下ろされる。
「ほら、アレクさんだって、こんなにかちかちになってる……」
「欲しい?」
「…挿れて…ほしいです、アレクさんのおちんちん」
「ノエル、手伝ってあげて」
「承知しました、御主人様」
 一声かけると、ノエルはマヤの背中側に回り込み、その身体を抱えあげる。
 ひざの裏に腕を回して両足を開かせた姿勢は、ちょうど子供におしっこをさせる時のようだ。
 さらけ出された秘所から蜜があふれ、ベッドに腰掛けたアレクの足の上に滴り落ちる。
「やぁっ、恥ずかしい……。わたし、いっぱい濡れちゃってますぅ……」
 恥ずかしいと言っていながら、その顔にあるのは恍惚とした陶酔の表情。
「ゆっくり下ろして」
「はい」
 ノエルは即座に指示に従う。
 アレクのモノの先端が触れ、マヤがうっとりと声を漏らす。
「あ……、そこです、そのまま挿れてください」
――じゅぶ
 たっぷりと蜜の染み出した膣が、アレクのモノを飲み込んでいく。
「んんっ……、…く…あ…あ………ああっ……」
 はだけた白衣からはみ出した薄い胸が、アレクの胸にこすりつけられる。
 濡れた肉同士が、ぴしゃんぴしゃんと音を立てる。
 太ももの上に乗せられたおしりまで、流れ出した愛液でぬるぬるになっている。
「あんっ…ごめん…なさい……、身体が、身体が勝手に動いちゃう……」
「とっても気持ちいい、マヤちゃんの中」
「嬉しいですっ、あっ、あのっ、アレクさんもっ、もっとっ、あんっ、そうですっ……」
 腰とひざをバネにして、下から強く突き上げる。
「はあっ、ふああっ」
 軽くイッてしまったマヤの身体が仰け反り、ふらりとうしろに倒れ込む。
「きゃっ」
 目を見開き、口を半開きにしたまま、マヤはノエルに受け止められていた。
「お怪我はありませんか?」
「…はい。ノエルさんのおかげです」
 元のようにアレクの首に腕を回して、マヤが呟く。
「ノエルさんの身体、熱くなってました」
「わ…私はっ!」
 ノエルが動揺して大声をあげる。
 面白い。
 アレクは命じた。
「浴衣の前を開いてみろ。下着もずらせ」
「はい……」
「澄ました顔して、あそこはべちょべちょじゃないか。乳首もツンと立ってる」
「申し訳ありません。私は一介の下僕(しもべ)の身でありながら、御主人様のお情けを想って、はしたなく欲情しています」
「来い」
 深く頭を垂れるノエルの、腕をつかんで抱き寄せる。
「マヤちゃん、手に持ってるの見せてあげて」
「はい」
 ひざの上に座ったままのマヤの右手から、赤い光がこぼれる。
「あ……御主人様……その光は…昨晩の……」
 ノエルの整った顔が、慕情と肉欲に蕩けた。
「お許しください」
 アレクとマヤの接合部に、ノエルの下腹部が押しつけられる。
 腰を振ってマヤの中を突くと、マヤの脚の付け根のあたりが、ノエルのクリトリスにこすれる。
「うっ、ぁ、ああっ…、あ…あ…」
 ノエルは喉を鳴らした。
 貫いてやれない代わりに、昨日と同じ快感を増幅する呪文を聞かせてやる。
「んっ、ぁっ、あっ、あっ、ああっ……」
 あえぎ声がだんだん大きくなっていく。
「御主人様……!!」
 いきなり、ノエルがしがみついてきた。
 アレクは支えきれずにベッドに倒れる。
 唇が強く押しつけられ、舌が唇を割って入る。
 むさぼるような、強引な口付け。
 おそらく自覚のないままに、服の布地越しに背中に爪を立ててくる。
 鋭い痛みも、今は快く感じられた。
 息苦しさも、ちっとも不快ではない。
 アレクまで、頭の中が真っ白になっていく。
「ぷはあっ」
 ようやく息をつくと、今度は視界がマヤの顔でいっぱいになった。
 子犬のように、ぺろぺろとアレクの頬や唇を舐めてくる。
「くすぐったいよ」
「えへへー、ちゅっ」
 ノエルとの激しいキスとは違う、じゃれ合うようなキス。
 アレクの舌や、歯や、歯茎を、舌先でくすぐるように舐めてくる。
「わたし、アレクさんとキスするの大好きですっ」
「じゃあ、ノエルとは?」
 マヤとキスをしている間、ノエルはずっとアレクの手指を口に含んだり頬にすり寄せたりしていた。
 そっと手を引き抜いて、ノエルの身体をマヤの方に押しやる。
「ノエルさんと…キス……? ……して…みたいです」
「御主人様? マヤ様?」
 戸惑うノエルに、マヤは手を差し出す。
「さあ、ノエルさん。わたしたちのエッチなところ、いっぱい見てもらいましょう」
 アレクの身体の上で、かわいらしい恋人と、忠実なしもべは、舌を絡ませ胸をすり合わせ始める。
――ごくん
 アレクは口の中にあふれた、三人分の唾液を飲み込んだ。
 童顔のマヤの方が、大人びた風貌のノエルを、積極的にリードしている。
「ちゅっ。さっきはいっぱい舐めてもらったから、今度はわたしが気持ちよくしてあげますよ。ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅっ」
 マヤはノエルの唇や頬に何度もキスを浴びせながら、幼い外見には似つかわしくない巧みでいやらしい手つきで、ノエルの柔肌を責めていく。
「ふふっ、こういうのはどうです?」
 唇を離して焦らすように間を持たせ、口付けを求めて近づくノエルの唇をいなし、ノエルの耳元に息を吹きかける。
「あっ…あ…マヤ様……、いいですっ……ありがとうございます……」
「アレクさん、見てください、ノエルさんは耳が敏感みたいですよ」
 耳たぶを甘噛みし、舌先を耳の奥にまで挿し込む。
「ひああっ……あ…あ…あああっ!!
 マヤ様の仰る通りですっ。御主人様、私は、私は耳が感じるんです」
 ノエルが身をよじって悶える。
 見ているよりも、混ぜてもらった方が面白いだろう。
 冷気の呪文をかけた指で二人の背中をさっと撫でる。
「はあんっ」
「……っ!!」
 マヤは甲高い悲鳴を上げ、ノエルは無言で、互いの身体を抱きしめあう。
 指先に冷気をまとわせたまま、人差し指と中指を、ノエルの膣内に挿し入れる。
 今のノエルには、その冷たさも鮮烈な快感になっているはずだ。
 さらに、親指の腹で、とっくに皮の剥けたクリトリスを転がすようにいじってやる。
「ご…ご…御主人様……、ぁ…ぁ…ああっ」
 ノエルはマヤの身体を強くつかんだまま悶える。
「やっ、はんっ、ノエルさんっ、だめぇ……、奥に、奥に入っちゃうっ……」
 アレクのモノを膣の中に納めたまま、マヤの身体が激しく揺さぶられる。
 一人は指に、一人は肉棒に、貫かれながら二人の少女は喘ぐ。
「はあっ、あっ、アレクさんっ、はあっ、はああんっ」
「御主人様ぁ、あ、ああっ、御主人様っ、あああっ!」
 抱き合った二人の動きが、だんだんとシンクロしていく。
 二人の蜜でぐしょくしょになったアレクの腰に、二人の尻が一斉に叩きつけられる。
 どちらを攻めているかなど関係なくなっていた。
 腰を振ってマヤの膣内をえぐっても、指でノエルのクリトリスやおしりの穴を撫でても、二人は自分が攻められているかのように快感にもだえた。
「ふああっ、はんっ、あ…あふぅ、あ…ああっ」
「ぁああっ、あんっ、くうっ、ん、あ…ああっ」
 マヤの軽快なソプラノと、ノエルの落ち着いたメゾ・ソプラノの、かすかにずれた二重奏。
 二人のクリトリスを強くひねって、テレパスで『達しろ』という命令を出す。
『あっ、あっ、あああああっ!!』
 高低二つのあえぎ声が、ステレオできれいに共鳴する。
 締め付けてくる膣の中に、アレクは精子を吐き出した。
 抱き合っていた二人の腕から力が抜け、アレクの身体の左右にそれぞれ倒れこむ。
「二人とも、とてもかわいかったよ」
 アレクは今朝の情事はもう終わりのつもりで言った。
 けれど、マヤはアレクの耳元で甘く囁く。
「ノエルさんの中にも、いっぱい出してあげてくださいね」
 その言葉を聞いて、ノエルは歓喜に震える。
「どうか、私にも御奉仕の機会を……」



−3−


「たとえ敵を欺くために自警団の任務を行っていても、私の意志は全て御主人様の下にあります。どうぞなんなりと御命令ください」
 革鎧を着込んだノエルは、直立不動でそう言った。
「ああ、わかってるよ」
「いってらしゃい。お気をつけて」
 ベッドの上に半裸で転がったまま、アレクとマヤは応じる。
「失礼いたします」
 深々と頭を下げてノエルは立ち去る。
 後ろ姿を見送ってから、マヤが言った。
「雰囲気、かわりましたね」
「ん?」
「ノエルさん、昨日は、もっとなにか、石か金属でできた人形みたいでした。
 でも今日は、一生懸命取り繕ってるけど、きっとわたしと同じ、アレクさんのことが大好きな女の子なんだなって思えました」
「そういうものか」
「でなければ、あんな出発の挨拶はしませんって」
 マヤは自信たっぷりに断言する。
「それにしても、ノエルさんが幸せそうにしていてくれてよかったです。
 これなら安心して、セアラさんにも、アレクさんのものになってもらえますから」
 セアラの名を聞いて、アレクの性器がまた膨張し始めた。
「手伝ってくれるかな?」
「もちろんです」
 精液と愛液に濡れた肉棒を、指先でもてあそびながらマヤは答える。
「イシュティアさまから、“催眠術”って技を教えていただいたんです。
 それを使えば、セアラさんも、アレクさんの虜にしてしまえると思います」
 マヤは一点の曇りもない笑みを浮かべている。
「今日のマヤちゃんは素直で正直だ。その魔石のおかげかな?」
「これですね?」
 マヤの手から、赤い光が広がる。
「持ってるだけで、アレクさんを想う気持ちが胸の中にじわーって広がって――
 今も、この赤い光を見てると、身体がポッと熱くなって、頭がアレクさんのことでいっぱいになっちゃうんです。
 あ、でも、勘違いしないでください。セアラさんに催眠術を掛けようっていうのは、この宝石を見る前から決めていたことですから」
「じゃあ、ヴェルネのことは、マヤちゃんに任せることにするよ。
 その石が一応ヴェルネ用のつもりだったんだけど、俺がやるよりも警戒されないだろうし」
「はい。それじゃあ、この宝石も借りちゃいます。
 準備したり、作戦考えたり、アレクさんも手伝ってくださいね」




 
 


 

 

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